日本ではエンジニア不足が続いており、外国人エンジニアの採用がますます重要になっています。
技術力だけではなく、多様な視点や異文化から得られる知見も、日本企業にとって大きなメリットになります。
しかし、採用には文化的な違いや言語の壁など、デメリットも少なくありません。
本記事では、各国のエンジニアの特徴、外国人エンジニアのメリット・デメリット、日本語能力の重要性、採用方法などを解説します。
外国人エンジニアの採用を検討している企業は、参考にしてください。
国別の外国人エンジニアの特徴
外国人エンジニアは、国ごとに異なる技術力、働き方、そして文化背景を持っています。
外国人エンジニアの特徴を把握することは、企業の求めるスキルセットやマインドセットとのミスマッチを防ぐために重要です。
主要な国々のエンジニアの特徴を解説するので、外国人エンジニアの採用を検討している企業は必見です。
アメリカのエンジニアの特徴
アメリカのエンジニアは、創造性とイノベーションに優れています。
特に、シリコンバレーをはじめとするテックハブでは、最先端技術を駆使したスタートアップが数多く誕生しており、エンジニアたちは革新を推進しています。
アメリカのエンジニアは高度なスキルを持つだけではなく、起業家精神や独立性が育まれているのが特徴です。
能力主義の仕事観を持っているため、熱意のあるエンジニアが多い一方で、「Up or Out(昇進か退職か)」の考えから平均勤続年数は3年程度といわれています。
アメリカのエンジニアは、意見やアイデアを積極的に発信し、チーム内でもリーダーシップを発揮できる人材を探している企業におすすめです。
インドのエンジニアの特徴
インドのエンジニアは、世界的に見ても優れたプログラミングスキルやソフトウェア開発能力を持っています。
英語力が高く、グローバルなプロジェクトにおいてもコミュニケーションに問題がないことから、多国籍企業での活躍も目立ちます。
インドのエンジニアは結果を重んじているので、大規模プロジェクトの管理や複雑なプロジェクトを遂行する能力が高いのも特徴です。
インドにはベンガルールやハイデラバードのような世界的IT企業が多く集まる地域があり、アウトソーシング業務や遠隔地でのプロジェクト進行においても多くの実績を持っています。
インドは日本のように上下関係を重視する文化なので、プロジェクトを円滑に進めやすい反面、独自の宗教観への配慮も必要です。
中国のエンジニアの特徴
中国のエンジニアは、ハードウェア開発や製造分野で高い技術力を持っています。
中国政府が主導するイノベーション政策や巨大な国内市場を背景に、多くの中国人エンジニアたちは大規模プロジェクトでの実務経験を積んでいます。
また、開発サイクルが非常に速く、結果を迅速に出すことが求められる環境で働いているため、短期間で効率的に成果を出すことに慣れているのが特徴です。
国際交流基金の2021年のデータでは、日本語学習者は100万人を超えて世界一、中国の大学生の7割は英語を話せるなど、語学面でも優れています。
グローバル市場での成功を目指す企業にとって、中国人エンジニアの技術力とスピード感は大きなアドバンテージとなります。
ウクライナのエンジニアの特徴
近年、ウクライナは急速にIT産業を成長させ、エンジニアリングおよびソフトウェア開発において有力な人材供給国となっています。
多くのウクライナ人エンジニアは、優れたプログラミングスキルを有し、特にJava、Python、C#などの主要言語に精通しています。
また、ウクライナのエンジニアは国際的なプロジェクト経験も豊富で、ウクライナ語だけではなく英語やロシア語でのコミュニケーションも問題ありません。
ウクライナのIT企業はキーウやリヴィウといった主要都市に集中しており、アジャイル開発やDevOpsのような最新の開発手法を駆使して、高品質な製品を提供しているのが特徴です。
さらに、欧米と比較して人件費が安いので、コストパフォーマンスに優れた労働力として欧米諸国のアウトソーシング先としても高い人気を誇っています。
日本企業にとっても、高度な技術力と国際経験を持つウクライナのエンジニアは技術力とコストパフォーマンスに優れた人材として注目されています。
ウクライナのエンジニアの詳細は、以下の記事を参照してください。
隠れたIT大国|ウクライナのエンジニアの特徴と日本企業のメリット
日本のエンジニアの特徴
日本のエンジニアは、高度な品質管理と緻密な作業を行うことで知られています。
日本のプロジェクトは納期が最優先になるので、リソースを最適に分配し、突発的なトラブルに迅速に対応するスキルに秀でています。
また、日本の職場文化では報連相(報告・連絡・相談)が重要視されており、チーム全体の協力と調整が不可欠です。
日本企業は年功序列や勤続年数によって担当するポジションが決まることが多いため、上下関係と協調性を重視し、円滑なコミュニケーションが求められます。
そのため、コミュニケーション能力が高く、丁寧な仕事をするのが日本人エンジニアの特徴です。
外国人エンジニアを採用するメリット
外国人エンジニアの採用は、単なる労働力の補充に留まらず、企業に以下のようなメリットを提供します。
- 技術力と多様性の向上
- 労働力不足の解消
- 多言語対応力の強化
技術力の向上や組織内での多様性の確保はもちろん、企業がグローバル展開を目指す上での重要な戦略的要素としても重視されています。
技術力と多様性の向上
外国人エンジニアは、それぞれ異なる文化的背景や技術的バックグラウンドを持っているため、企業に新しい視点を提供します。
特に、最新技術や特定分野の専門知識を持つエンジニアは、企業内での技術革新を加速させる大きな原動力となります。
また、異なる文化の中で培われた独自の問題解決能力や視点は、従来の考え方にとらわれない柔軟でクリエイティブなソリューションを生み出してくれることも大きなメリットです。
多様なバックグラウンドを持つ外国人エンジニアが集まると、プロジェクトチームのディスカッションがより多角的になります。
複雑な課題に直面しても、従来になかった新しい視点からのアプローチが可能となり、チーム全体の問題解決能力や生産性向上につながります。
労働力不足の解消
日本国内のエンジニア不足は、IT業界で顕著に表れています。
急速に進むデジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)のニーズに応じて、専門スキルを持つエンジニアの需要は増加しており、対応するために外国人エンジニアの採用が加速しています。
日本のエンジニアだけでは、急速に拡大するIT需要を満たすことが難しいのが現状です。
外国人エンジニアは、この労働力不足を解消するための重要なリソースとして、日本企業で重要視されています。
また、特定の分野に特化した外国人エンジニアを採用すると、技術の導入や開発の初期段階から専門家を配置できます。
より高品質なサービスを提供できるようになるため、競合他社に対して優位性を持った企業運営が可能です。
多言語対応力の強化
グローバル市場に進出している、またはこれから進出を計画している日本企業にとって、多言語に対応できる外国人エンジニアは貴重な人材です。
特に、英語をはじめとする多言語に堪能な外国人エンジニアは、海外のクライアントやパートナー企業とのコミュニケーションをスムーズに行ってくれます。
さらに、外国人エンジニアは、国際的なプロジェクトにおいて多国籍チームの中でリーダーシップを発揮でき、異なる文化や働き方を持つメンバーとの協調を促進します。
外国人エンジニアの多様な経験は、プロジェクトの成功率を高めるだけではなく、企業全体の国際競争力をも高めてくれるのがメリットです。
外国人エンジニアが主導するグローバルプロジェクトは、日本企業が海外市場での展開を加速させる上で重要です。
外国人エンジニアを採用するデメリット
外国人エンジニアを採用すると、企業は多くのメリットを受けられますが、デメリットや課題も無視できません。
特に、言語の壁やビザ取得にともなう手続き、コストが企業に負担をかける場合があります。採用してから問題を抱えないように、それぞれのデメリットを解説します。
コミュニケーションの障壁
外国人エンジニアを採用する際、デメリットになるのが言語の問題です。
外国人エンジニアの多くは英語を話せますが、日本語能力が十分でないエンジニアは社内外のコミュニケーションが不十分になってしまいます。
日常会話レベルの日本語ができたとしても、ビジネスの場では高度な言語スキルが求められるため、専門的な技術用語やビジネス日本語に対応できないと業務進行の障害となる可能性があります。
特に、日本の企業文化においては、「報連相」と呼ばれるコミュニケーションが重要です。
報連相を徹底するためには、単に日本語を理解するだけではなく、日本独自のビジネス慣習や文脈も理解しなくてはいけません。
しかし、外国人エンジニアがビジネス日本語に適応するまで、コミュニケーションエラーや誤解が生じるリスクが高まります。
また、クライアントや社外のステークホルダーとやり取りを行う場面では、言語の壁がプロジェクトの進行に直接的な影響を与える可能性もあります。
ビザの取得・更新の負担
外国人エンジニアを採用する際、就労ビザの取得や更新が必要です。ビザの申請手続きには、書類の準備や提出、審査プロセスなど時間と労力がかかります。
さらに、就労ビザが取得できなかった場合や更新が認められなかった場合、その外国人エンジニアを継続して雇用できなくなるリスクも存在します。
ビザの取得は、基本的にエンジニアが所属する企業側が申請手続きをサポートする必要があり、企業はこのためのリソースを割かなければなりません。
また、国や地域によってビザの要件や審査基準が異なるため、外国人エンジニアが特定の国から来る場合には、複雑な規制に対応するための専門的な知識が必要になります。
ビザの更新が必要な場合、その都度コストや労力が発生し、企業の採用コストが予想以上に膨らむ可能性もあります。
外国人エンジニアにとっても、ビザの更新がうまくいかないと日本でのキャリアが中断されるリスクがあるため、モチベーションや安心感に影響を与えかねません。
外国人エンジニアの採用方法
外国人エンジニアの採用には、グローバルな人材市場にアクセスするための求人サイトの活用や文化適応力を考慮した面接、さらにはビザ取得に関するサポートの提供が欠かせません。
外国人エンジニアの具体的な採用方法を解説します。
求人サイトやエージェントの活用
外国人エンジニアを採用する際に有効なのが、求人サイトやエージェントの活用です。
以下のようなグローバルに展開している求人サイトには、英語をはじめとする多言語での求人情報を提供するプラットフォームが存在しています。
- ビズリーチ
- Daijob
上記のサイトは日本国内外からアクセス可能なため、海外のエンジニアに直接リーチできる環境が整っています。
例えば、LinkedInは国際的に認知されたビジネスSNSでエンジニアのスキルや経験を確認し、積極的なアプローチが可能です。
また、ビズリーチやDaijobのような専門性の高い求人サイトでは、外国人を対象とした求人や日本語能力が問われないポジションの求人も掲載されています。
さらに、外国人エンジニア専門のエージェントを活用すると、候補者の選定や書類選考、面接までをスムーズに進められます。
専門のエージェントは、候補者のスキルや経験、文化的な背景を事前に把握しているため、企業に最適な人材を紹介可能です。
特に、リモートでの採用や国際的な労働市場の知識が必要な場合、エージェントを活用すると、採用の手間を大幅に削減できます。
技術スキルと文化適応力を重視した面接
外国人エンジニアを採用する際、技術スキルの確認はもちろんのこと、日本での生活や企業文化に適応できるかどうかも重要です。
面接では単に技術的なテストを行うだけではなく、文化適応力やコミュニケーション能力の評価が求められます。
技術面では、候補者が必要なプログラミング言語や開発ツールに習熟しているかを確認するために、コーディングテストや技術課題を課すことが一般的です。
さらに、面接官が候補者の文化的な適応力を評価するための質問を行うことも効果的です。
過去に異なる文化や環境でのプロジェクトにどのように対応したか、チーム内でのコミュニケーションにどのようにアプローチしてきたかなどを質問すると、適応力や柔軟性を見極められます。
就労ビザサポートの提供
外国人エンジニアを採用する上で、就労ビザの取得や更新に関するサポートは不可欠です。
日本で外国人が合法的に働くためには、適切なビザの取得が必須で、企業側がこのプロセスを円滑に進めるためのサポートが欠かせません。
ビザの申請には多くの書類が必要で審査に時間もかかるため、企業は早期に手続きを開始し、エンジニアが日本で安心して働けるように準備を整えましょう。
企業側が積極的にビザ申請の手続きをサポートし、必要な書類(雇用契約書や在留資格認定証明書など)を準備すると、ビザ取得までの時間を短縮できます。
さらに、ビザ取得後も更新手続きや在留期間の延長など、継続的なサポートが求められます。
上記のサポートを提供すると、外国人エンジニアは安心して日本で働けるため、安定した人材確保につながります。
外国人エンジニアの採用で企業に新たな価値を作ろう
外国人エンジニアの採用は、企業に技術力の向上や多様性の推進といった多くのメリットをもたらします。
一方で、言語の壁や文化的な違いといった課題が存在しますが、その課題は適切なサポート体制を整えることで十分に克服可能です。
異文化理解の促進や日本語学習支援、長期的なキャリア形成のサポートを通じて、外国人エンジニアが能力を発揮できる環境を整えられます。
高度な技術を持つ外国人エンジニアを安定的に確保すると、グローバルな競争力を強化できるため、国際市場への進出がより現実的になります。