ウクライナの教育システムの特徴|幼稚園から大学までと地下学校について

優秀な人材が多いと評判のウクライナですが、どのような教育を受けたらそのような人材を多く輩出できるのか気になりますよね。

今回は、ウクライナの教育システムの特徴について解説します。国立音楽塾や一貫教育など、日本と異なる点が多いので教育に興味がある人は最後までご覧ください。

ウクライナの幼稚園での教育

ウクライナの幼稚園教育は、子どもたちの早期教育に重点を置いています。ウクライナには日本にはない特徴的な教育機関として、国立音楽塾があります。

4歳から入れる国立音楽塾

ウクライナでは、4歳から幼稚園とは別に国立音楽塾に入学できます。

この国立音楽塾は、子どもたちの創造力や表現力を育むための重要な教育機関です。音楽教育は、単に楽器の演奏技術を学ぶだけではなく、リズム感や音感、集中力を高める効果があるためです。

国立音楽塾の講師は国家公務員で、子どもたちは楽器演奏や歌唱、音楽理論を学びます。ここで音楽に対する理解が深まり、将来的に音楽家としてのキャリアを築くための基礎が形成されます。

また、音楽教育を通じて子どもたちは表現力を磨き、自信を持って自己表現する力を習得できるのが日本との違いです。

月謝は800フリヴニャ(約3,000円※1フリヴニャ=3.75円換算)程度で、成績優秀者は無料になるシステムです。特に成績優秀な子どもは国立音楽学校に進学し、音楽の高等教育を受けられます。

第37回日本管打楽器コンクールで1位を受賞したサックス奏者の五十嵐健太さんは、ウクライナのリセンコ記念国立音楽学校の卒業生です。

このコンクールをきっかけに、ウクライナの国立音楽学校が注目されるようになりました。

5歳から始まる義務教育への準備

ウクライナでは、5歳から義務教育への就学準備が始まります。基本的な読み書きや計算といった学力の基礎が築かれるとともに、社会性や協調性を養うための教育も行われます。

読み書きや計算の教育は、遊びを取り入れた楽しい方法で進められ、子どもたちが学びやすいように工夫されているのが特徴です。

具体的には、絵本の読み聞かせや数字遊びを通じて、子どもたちは文字や数字に親しむようになります。

さらに、グループ活動や共同作業を通じて社会性も養います。

子どもたちは友達と一緒に遊んだり、協力して課題を解決したりすることで、他者との関わり方やコミュニケーションのスキルを学びます。

これによって、義務教育での集団生活にも適応しやすくさせるのが目的です。

地下幼稚園の数は700か所以上

ウクライナには、700か所以上の地下幼稚園が存在しています。これらの幼稚園は、紛争や自然災害から子どもたちを保護するために設置されました。

地下幼稚園の最大の特徴は、その安全性です。地上の幼稚園とは異なり、地下に設置されているため、外部からの危険に対して安全を提供します。

また、地下幼稚園では、外部の騒音や公害からも守られているので、子どもたちは静かで安全な環境で学べるのが特徴です。

地下幼稚園は避難所としての機能も兼ね備えていて、非常時には地域住民の避難場所としても利用されます。

ウクライナの学校教育の基本

ウクライナの義務教育は6歳から8歳の間に始まり、9年間続くという独自の特徴を持っています。

日本の教育システムと異なるウクライナの教育システムは、子どもたちの発達段階に応じた柔軟な対応を可能にしています。

義務教育への入学年齢は6歳~8歳の間

ウクライナの子どもたちの入学年齢は、6歳から8歳の間で自由に選択可能です。これは、子どもたち一人ひとりの発達段階や家庭の状況に応じた柔軟な教育を提供するための配慮です。

柔軟な入学年齢設定によって早期に学習意欲が高まる子どももいれば、少し遅れて成長する子どももいるので、自分のペースで学びを始められます。

特に、幼児期の発達は個人差が大きいので、子どもたちにとってストレスなく進学の機会を与えているのが特徴です。

6歳でまだ社会的な準備が整っていない子どもは、8歳程度まで必要なスキルを身につける時間を持てます。

これによって子どもたちは学校生活をよりスムーズに開始し、学習に対する前向きな態度を維持できます。

義務教育は9年間

ウクライナの学校教育の在学期間は日本と同じ9年間です。初等教育から中等教育までが含まれています。義務教育では、ウクライナ語の習得やウクライナ史、数学や英語などの科目を勉強します。

第9学年の終了時に全国共通試験が行われ、合格者には基礎中等教育修了証が授与されます。上級中等教育へ進むためには、この基礎中等教育修了証が必要です。

ウクライナの学校教育と日本との違い

ウクライナの学校には、日本とは異なる点が多く存在します。

日本では義務教育は6歳〜15歳(小学校6年間と中学校3年間)ですが、ウクライナでは6歳〜15歳、7歳〜15歳と明確な決まりはありません。

ウクライナの学校は、数学教育に力を入れていることでも知られています。高度な数学教育が行われ、子どもたちは複雑な数学的概念や問題解決スキルを学びます。

これは、将来の科学技術分野での活躍を見据えた教育の一環です。

さらに、ウクライナの学校教育では、科学、技術、工学、数学(STEM)分野の教育が重視されています。

ウクライナの子どもたちは実践的なスキルと理論的知識を同時に身につけられるので、グローバルな競争力を持つ人材として活躍できるようになります。

ウクライナの義務教育はレベルが高い

ウクライナの義務教育がどのような環境で行われているのか、興味を持っている人もいるでしょう。義務教育を受けるウクライナの子どもたちの環境を紹介します。

ウクライナの高度な数学教育

ウクライナの学校教育では、高度な数学教育が重視されています。専門の教師が指導を行い、子どもたちは複雑な数学問題に取り組むことで、論理的思考力や問題解決能力を養っています。

数学教育はウクライナの教育の強みの1つとされていて、早い段階から高い水準の内容が教えられてきました。

数学教育は初等教育から始まり、中等教育に進むとさらに高度な内容が加わります。代数、幾何、統計、確率論など、さまざまな数学の分野を深く学ぶ機会が提供されます。

また、ウクライナの数学教育は、問題解決能力の育成にも力を入れてきました。授業では実際の生活や科学技術に関連する問題を取り上げ、子どもたちが自分で考え、解決策を見つける力を養っています。

このようなアプローチは単に公式を覚える日本の数学教育とは異なり、実際の問題に応用できるスキルを身につけることが目的です。

ウクライナの国内数学オリンピック

ウクライナでは、毎年国内数学オリンピックが開催されています。このオリンピックは、数学に優れた才能を持つ子どもたちが集まって競い合う場です。

参加者は高度な数学問題に挑戦し、その能力を発揮する機会を得ます。国内数学オリンピックでは複雑な問題が出題され、参加者は限られた時間内にこれらの問題を解決することが求められます。

2018年にルーマニアで開催された国際数学オリンピックでは、ウクライナは4位を記録しています。同年の日本は13位だったので、ウクライナの数学力が高いことが証明されました。

近年は政治不安からウクライナは国際数学オリンピックのランキングに入っていませんが、再びウクライナの数学力が評価されると予測されています。

ウクライナの学校給食

国連WFPは、ウクライナの700校以上に及ぶ学校給食を提供しています。政治不安から食糧の確保が難しくなっているウクライナ国内の子どもたちを支援するためです。

また、国連WFPは支援する食糧の79%をウクライナで調達し、国の支援も同時に行っています。生活苦の家庭も増えているウクライナでは、学校給食は子どもたちの栄養バランスを保つために重要です。

日本の学校給食では、ウクライナの文化を理解するためにウクライナ料理が提供される機会も増えました。

日本でもウクライナから移住してくる人が増えているため、ウクライナ出身の子どもへの配慮もあるでしょう。

学校教育では、食育も大切です。今後もウクライナの子どもが美味しい給食を食べられるよう国連や各国からの支援が続くでしょう。

ウクライナの義務教育以降の進路

ウクライナでは、義務教育が終わると以下の進路が選べます。

  • 上級中等学校
  • 職業技術学校

日本では高等学校への進学が一般的ですが、ウクライナではどのような進路があるのかを解説します。

上級中等学校

ウクライナの上級中等学校は、主に大学進学を目指す学生向けです。このコースでは、一般的な学問を深く学び、大学入試に備えます。

大学入試には高度な学力が求められるため、学習内容も以下のように多岐にわたります。

  • 国語
  • 数学
  • 科学
  • 歴史
  • 外国語など

これによって学生は総合的な知識を身につけ、大学での専門的な学習に備えます。ウクライナの上級中等学校は、特定の学問への興味や将来のキャリアに対する目標を持つ学生に適しています。

上級中等学校を選択した学生は、大学進学後にさらに専門的な分野での学習を深め、研究者や専門職としてのキャリアを追求することが可能です。

職業技術学校

熟練労働者を育成するウクライナの職業技術学校は、特定の技術や知識を習得することを目的としています。

職業技術学校では実践的なスキルを学び、卒業後すぐに企業で活躍できるように準備します。職業技術学校は、特定の技術者や職人を目指す学生に適した進路です。

職業技術学校のカリキュラムは、理論と実践のバランスを重視しています。学生は、授業で得た知識を実際の作業やプロジェクトを通じて応用し、以下のような実務能力を高めます。

  • エンジニアリング
  • 建築
  • コンピュータ科学など

職業技術学校の卒業生は、企業や産業界で即戦力として活躍できる高い専門性を持つ労働者として評価されます。

ウクライナの人気大学ランキングTop3

ウクライナには多くの優れた大学がありますが、その中でも特に人気の高い3つの大学を紹介します。

今回紹介する大学は、高い学問的評価と豊富な教育資源を持ち、多くの優秀な卒業生を輩出してきました。

タラス・シェフチェンコ記念キーウ国立大学

タラス・シェフチェンコ記念キーウ国立大学は、ウクライナで権威のある国立大学の1つです。

この大学は1834年に設立され、その長い歴史と伝統にもとづいて高い学問的評価を築いてきました。14の学部で多岐にわたる学問分野が学べます。

この大学は、ウクライナ国内外で認められた多くの優秀な卒業生を輩出していて、政界、経済界、文化界など多方面で活躍しています。

卒業生として有名なのが、東京オリンピック柔道女子48キロ級で銅メダルに輝いたダリア・ビロディド選手です。

大学の研究活動も活発で、多くの国際的な学術交流や共同研究が行われています。これによって、学生は最新の研究成果や技術に触れる機会を持ち、グローバルな視野を養えます。

ハルキウ工科大学

ハルキウ工科大学は、ウクライナで優れた工科大学の1つです。この大学は、1885年に設立され、工学や技術分野に特化した教育機関としての地位を確立しています。

以下のような技術と高度な専門知識を学ぶことができるため、多くの学生にとって魅力的な選択肢となっています。

  • 家電建設学部
  • コンピュータ・情報技術学部
  • 経済学部
  • 経営学部など

ハルキウ工科大学では、工学、物理学、情報技術、機械工学などの分野で優れた教育プログラムが提供されていて、学生は実践的なスキルを身につけられます。

さらに、ハルキウ工科大学は多くの国際的なパートナーシップを持ち、学生は海外での研修や留学の機会を活用できるのが魅力的です。

イヴァン・フランコ記念リヴィウ国立大学

イヴァン・フランコ記念リヴィウ国立大学は、ウクライナで評価の高い国立大学の1つです。この大学は1661年に設立され、文学や人文科学、自然科学など多岐にわたる学問分野を提供しています。

イヴァン・フランコ記念リヴィウ国立大学は、その高い学問的評価で知られており、国内外の学術界で高く評価されてきました。

アジア・アフリカ言語文化研究所や国際日本研究センターとも連携しているので、グローバルに活躍できる人材を目指せます。

イヴァン・フランコ記念リヴィウ国立大学は活発な研究活動を行っていて、多くの研究プロジェクトが国内外の機関と共同で実施されています。

ウクライナの教育は進んでいて優秀な学生を輩出している

ウクライナでは義務教育が始まる前から読み書きや音楽教育などを徹底していて、基礎学力だけではなく芸術の才能を伸ばしやすい環境です。

国際数学オリンピックでも何度も入賞していることから、近年IT産業の発展が著しいのも納得できます。

日本でもウクライナの子どもを受け入れる学校や施設が増えているので、現地の教育システムを参考にしてください。