ウクライナの輸出品ランキング|主要な貿易相手国と現状の課題

ウクライナは豊富な資源と広大な農地を持つ国で、その経済を支える主要産業は多岐にわたります。

ウクライナは国際市場で輸出品が高く評価されていて、日本を含む各国との貿易関係を重要視してきました。

この記事では、ウクライナの輸出品ランキングトップ10と貿易相手国Top5を紹介し、さらに日本との貿易や貿易に関わる課題について詳しく解説します。

ウクライナの経済成長を支える鍵となる貿易を理解し、国際市場でのウクライナの立ち位置を理解しましょう。

ウクライナの輸出品ランキングTop10

ウクライナは豊富な資源と広大な農地を活かし、さまざまな製品を世界各国に輸出しています。ここでは、TrendEconomyが発表した2023年のウクライナの主要輸出品をランキング形式で紹介します。

1.穀物(22%)

ウクライナは「欧州のパンかご」と称されるほど、穀物の生産が盛んな国です。主な輸出品は小麦、トウモロコシ、大麦などで、その中でも小麦は世界的にも高い評価を受けています。

ウクライナの肥沃な土壌と適した気候条件が、高品質な穀物の生産を可能にしている要因です。

ウクライナの穀物は食料としてだけでなく、バイオエタノールの原料として先進国で使用されています。近年は、ウクライナの農業技術の向上や輸出インフラの整備が、世界市場での競争力を高めています。

2.油脂・食用油脂・ワックス(15.6%)

ウクライナは食用油の大手輸出国でもあります。特に、ヒマワリ油は国内外で需要が高く、ウクライナの主要な輸出品となっています。

ヒマワリの栽培はウクライナ全土で行われて、国内消費だけでなく多くの国に輸出されてきました。

ウクライナのヒマワリ油は、その品質と安定供給によって、各国で食品産業や家庭用調理油として広く利用されています。

3.油糧種子・雑穀・薬用植物・飼料(7.79%)

油糧種子や雑穀もウクライナの重要な輸出品目です。これらは飼料として利用されることが多く、国内外の畜産業に欠かせないものです。

また、薬用植物も一定の需要があります。ウクライナの油糧種子や雑穀は高品質で栄養価が高いため、家畜の飼料として最適です。

この薬用植物は医薬品や健康食品の原料としても利用されていて、今後も安定して輸出できるウクライナの主要な輸出品です。

4.鉄鋼(7.31%)

ウクライナは鉄鋼の生産でも有名です。特に、鉄鉱石の豊富な地域であるドネツクやクルィヴィーイ・リーフが生産の中心地となっていて、生産された鉄鋼は国内外で広く利用されています。

鉄鋼業はウクライナの経済を支える重要な柱です。ウクライナの鉄鋼製品は、建設業や自動車産業などで広く使用されていて、その高い品質と耐久性が評価されています。

また、ウクライナの鉄鋼業は、効率的な生産プロセスと最新の技術を採用し、国際競争力を維持しているのが特徴です。

5.鉱石・スラグ・灰(5.16%)

ウクライナは鉱物資源も豊富です。鉄鉱石やマンガン鉱石が主な輸出品で、これらは国内の製鉄業にとっても重要な資源となっています。

また、スラグや灰も工業的に利用されています。ウクライナの鉱石は、高品質で安定した供給が可能で、各国の製鉄業やその他の重工業にとって不可欠です。

スラグや灰は、建設材料や肥料の原料として再利用されていて、環境負荷の低減と資源の有効利用を両立できる素材です。

6.電気機械器具・テレビや音声録音機及び再生機・部分品及び付属品(4.59%)

ウクライナの電気機械産業は、主に電子機器の製造を中心に発展しています。これらの製品は国内外で需要が高く、特に欧州市場で多く利用されてきました。

部品や付属品の輸出も盛んで、ウクライナの電子機器はその技術力と高品質によって、多くの国で高く評価されています。

特に、電気機械器具やテレビ、音声録音機器などの製品は最新の技術を取り入れた高性能な製品として需要があります。部品や付属品も、製品のメンテナンスやアップグレードに欠かせません。

7.木製品・木炭(4.11%)

ウクライナは広大な森林資源を有していて、木製品や木炭の輸出も重要な産業です。木材は建築資材として利用され、木炭は家庭用燃料として需要があります。

これらの製品は国内の需要だけではなく、欧州やアジア市場にも供給されています。

ウクライナの木製品は、その品質と耐久性によって、建設業や家具製造業などで広く使用されてきました。
木炭はバーベキューや暖房用燃料として人気があり、その生産と輸出は安定しています。ウクライナの森林管理は持続可能な方法を採用しているので、環境保護にも貢献しています。

8.食品廃棄物・調製された動物飼料(3.86%)

ウクライナの農業産業から出る副産物も、動物飼料として有効活用されています。これによって、食品廃棄物の削減と資源の有効利用が図られています。

調製された動物飼料は、畜産業にとって重要な飼料源です。ウクライナの動物飼料は栄養価が高く、家畜の健康と成長を促進するため、国内外で高い需要があります。
また、食品廃棄物のリサイクルによって環境への負荷を軽減し、持続可能な農業の実現に貢献しています。

9.原子炉・ボイラー・機械類・その部品(2.64%)

ウクライナは機械工業も発展していて、原子炉やボイラー、さまざまな機械類を製造しています。

これらの製品は国内のインフラ整備だけではなく、国外にも需要があるので長年輸出されてきました。

ウクライナの機械類は、その技術力と信頼性によって、現在でも多くの国で使用されています。特に、原子炉やボイラーは、各国のエネルギー供給や工業プロセスにおいて重要な役割を果たしています。

10.肉類(2.46%)

ウクライナの畜産業は、国内外で高い評価を受けています。特に、豚肉や鶏肉の生産が盛んで、鶏肉はEUや中東に数多く輸出されています。

ウクライナの豊かな農地と厳格な品質管理が、肉類の生産の基盤です。ウクライナの肉類は、その新鮮さと品質によって、各国の消費者から高い評価を受けています。

畜産業もウクライナの農業経済の重要な部分を占めていて、その発展が期待されています。

ウクライナの貿易相手国Top3

ウクライナには数多くの貿易相手国がありますが、今回は、その中でもTrendEconomyが発表した2023年の輸出国Top3を紹介します。

ウクライナの経済を支える貿易相手国を知り、ウクライナとの関係への理解を深めましょう。

ポーランド

ポーランドはウクライナにとって重要な貿易相手国の1つです。ウクライナはポーランドに対して農産物を輸出し、ポーランドからは乳製品や自動車部品、果物や野菜を輸入しています。

ウクライナとポーランドは地理的にも近いので、貿易の効率化と物流コストの面でも多くのメリットがあります。

しかし、EUがウクライナからの農畜産物の輸入制限を解除してからも、ポーランドは制限を独自に輸入制限を継続しました。

ウクライナはこの禁輸措置が国際義務に違反しているとし、ポーランド、ハンガリー、スロバキアの3カ国を世界貿易機関(WTO)に提訴しています。

そのため、ポーランドからの武器輸入も止まってしまい、現在は対立構造が深くなりつつあります。

ルーマニア

ルーマニアもウクライナにとって重要な貿易相手国です。特に、農産物や工業製品の取引が盛んで、相互に経済を支え合っています。

ルーマニアもウクライナと地理的に近いこともあって、両国の貿易関係は緊密です。

ウクライナはルーマニアに対して穀物や鉱物資源を輸出していますが、ルーマニアからの輸入品についての情報は得られませんでした。

現在は、ロシアが農産物の輸出をめぐる合意の履行停止を発表し、ウクライナとルーマニアを隔てるドナウ川を使ってウクライナの農産物を世界へ輸出するための準備が進められています。

しかし、ウクライナの穀物の一部がルーマニア市場に流れてしまっている影響で価格が下落し、ルーマニアの農家が打撃を受ける事態に直面しています。

中国

中国はウクライナにとって重要な貿易相手国の1つです。2019年には、ロシアを抜いて中国がウクライナにとって最大の貿易相手国になりました。

特に、農産物や鉱物資源の輸出が多く、中国市場への供給が重要となっています。

ウクライナの穀物輸出は中国の食料安全保障に大きく貢献し、トウモロコシや大麦などを中心にウクライナの高品質な穀物需要は高まっています。

中国からは電子機器や機械製品が輸入され、ウクライナの工業化と技術革新に貢献しています。

両国間の貿易は経済成長とともに拡大し、中国が掲げる「一帯一路」構想の下でのインフラ投資が進むことで、貿易量はさらに増加するでしょう。

ウクライナの貿易に関わる主要産業

ウクライナの貿易を支えているのは、国内の主要産業です。ここでは、ウクライナの主要産業について解説します。

農業

ウクライナは「欧州のパンかご」と呼ばれるほど、農業が盛んな国です。広大な農地と肥沃な土壌、適した気候条件に恵まれていて、穀物、油糧種子、野菜、果物など多様な農産物を生産しています。

主な輸出品目は小麦、トウモロコシ、大麦、ヒマワリ油などで、これらは世界市場で高い需要があります。

特に、ヒマワリ油の輸出はウクライナの食用油市場の重要な部分を占めてきました。農業はウクライナのGDPに大きく貢献し、雇用の創出にも貢献しています。

さらに、持続可能な農業技術の導入や、輸出インフラの整備が進められているので、国際市場での競争力を高めています。

鉱業

ウクライナは豊富な鉱物資源を有しているので、鉱業も重要な産業の1つです。鉄鉱石、マンガン鉱石、石炭などの資源が主要な輸出品となっていて、国内外の製鉄業やエネルギー産業にとって重要な資源です。

特に、鉄鉱石の生産はウクライナ経済の重要な柱で、ドネツクやクルィヴィーイ・リーフ地域で盛んに行われています。

ウクライナの鉱業は技術革新と効率化を進めつつ、環境保護にも配慮した持続可能な採掘が行われています。鉱物資源の輸出はウクライナの国際収支を改善し、経済成長を支える重要な要素です。

IT産業

近年、ウクライナのIT産業は急速に成長を遂げています。

ウクライナは高度な技術力と豊富な人材を有していて、ソフトウェア開発、ITサービス、アウトソーシングなど多岐にわたる分野で国際的に評価されているためです。

特に、首都キーウやリヴィウなどの都市を中心に多くのスタートアップ企業が誕生し、ITクラスターが形成されています。

ウクライナのIT企業は、コスト競争力と高い技術力を武器に、グローバル市場で活躍しています。

英語を話せるエンジニアも多いので、外国企業とのパートナーシップが増加し、ウクライナのIT産業は国際市場での価値を高めています。

政府もIT産業の発展を積極的に支援するために税制優遇措置やインフラ整備などを進めているので、今後さらにITベンチャー企業が増加していくでしょう。

ウクライナの主要産業の詳細や地域別の産業については、以下の記事で詳しく解説しています。

参照:ウクライナの主要産業|農業・工業・IT・観光業と地域別の産業構造を解説

ウクライナの貿易に関わる課題

ウクライナの貿易には、いくつかの課題があります。これらの課題を克服することで、ウクライナの貿易収支が増加し、さらなる経済成長が期待されています。

ロシアへのエネルギー依存

ウクライナはエネルギーの供給においてロシアに依存している部分が多く、これが経済的なリスクとなっています。

具体的には、ウクライナは天然ガスの多くをロシアから輸入していて、政治的な緊張が経済に直接影響を及ぼす可能性があるためです。

2014年のクリミア危機以降、ロシアとウクライナは関係が悪化し、エネルギー供給の不安定さが顕在化しました。

この状況を改善するために、ウクライナ政府はエネルギーの多様化を目指し、再生可能エネルギーの導入や他国からのエネルギー輸入を模索しています。

通関手続きの遅延

ウクライナの通関手続きは時折遅延が発生し、貿易の円滑な進行を妨げる要因となっています。

輸出入手続きが煩雑で時間がかかることが、ウクライナの国際競争力を低下させてきました。

通関手続きの遅延はビジネスコストの増加や取引の遅延を招き、結果として貿易相手国の信頼を損なう可能性があります。

これを改善するために、ウクライナ政府は電子通関システムの導入や、ワンストップサービスの提供を進めています。

さらに、職員の研修を強化し、賄賂や不正行為を防止するための厳格な監視体制を導入することも重要です。

国際的な貿易基準に準拠した手続きを確立することで、ウクライナの貿易環境が改善され、外資系企業の参入が促進されるでしょう。

ウクライナにとって貿易は経済を支える重要基盤

ウクライナにとって、貿易は経済を支える重要な基盤です。農業、鉱業、製造業などの主要産業を中心に、国際市場での競争力を高めることがウクライナの経済成長につながります。

また、世界の国々にとっても、ウクライナの穀物や鉱物は重要です。食糧を安定供給し、製造を下支えするためには、ウクライナの協力が欠かせません。

今後もウクライナは世界の食糧庫としての存在感を高め、安定した貿易体制を構築していくことが期待されています。