ロシアのガスを買わなくなって10年、ウクライナのガスはどこから来るか
ウクライナの国営ガス会社ナフトガスは、2015年11月25日を最後にロシアからガスを買っていません。いまのガスは国内の採掘が中心で、足りない分を欧州から買い、地下の貯蔵施設に貯めて冬に使います。ロシアのガスを欧州へ運ぶ契約も、2025年1月1日に満了しました。
オリュカのひとこと
「買うこと」と「運ぶこと」は、なぜ別々の時期に止まったのでしょう。二つの日付を見出しごとに確かめましょう。
ウクライナは、天然ガスを自国の地下から採掘している国です。国営のエネルギー企業グループ「ナフトガス」(Нафтогаз України)は、自社グループの採掘がウクライナのガス生産の70%を超えると説明しています。採掘で足りない分は外国から買い、地下の貯蔵施設に貯えて冬に備えます。
その買い先に、ロシアは入っていません。ナフトガスがロシアからの購入を止めたのは2015年11月のことで、それから10年以上がたちます。一方で、ロシアのガスをウクライナ経由で欧州へ送る契約は、2025年1月1日まで続いていました。買うことと運ぶことは、別々の話として進んできました。
2015年11月25日に止まった購入
ナフトガスは2016年3月31日の発表で、「2015年11月25日、欧州市場のガス価格の下落を受けて、ロシアの供給者からのガスの購入を止めた」と書いています。同じ発表によれば、ガスプロムが示した2016年4〜6月期の価格は欧州の供給者の提示より高く、ナフトガスは4月1日以降も購入を再開しないと決めました。
発表は、2016年3月31日の時点でロシアからの輸入がない日が125日続き、冬の3か月を初めてロシアからの輸入なしで越えたとしています。その間もロシアのガスの欧州への輸送は続き、約270億立方メートルを運んだと書いています。ナフトガスはこのとき、条件を市場に合わせるための交渉には応じるとも述べていました。
つまり、ナフトガスがロシアから直接ガスを買わなくなったのは、2022年2月24日のロシアによる全面侵攻よりも6年あまり前です。最初の理由として示されたのは価格でした。
オリュカのひとこと
採掘量や貯蔵の容量は、いつ、誰が発表した数字でしょう。発表の日付とあわせて読んでみましょう。
国内の採掘と、地下の貯蔵施設
ナフトガスの2025年4月21日の発表によれば、グループの2024年の採掘量は146億立方メートルで、2017年以降でもっとも多い量でした。この年、傘下の採掘会社ウクルガスヴィドブヴァンニャ(Укргазвидобування)は83本の井戸を新たに稼働させたとしています。
貯蔵については、ナフトガスは会社案内のページで、ウクライナの地下ガス貯蔵施設の総容量を309.5億立方メートルとし、欧州で最大だと説明しています。暖房にガスを使う冬を前に、どれだけ貯められたかが毎年の関心事になります。
攻撃で減った採掘と、増えた輸入
全面侵攻のあと、採掘と貯蔵の施設はロシアの攻撃の標的になっています。ナフトガスの2026年2月17日の発表によれば、全面侵攻の開始から同社グループの施設への攻撃は401回にのぼり、そのうち229回が2025年に集中しました。2025年だけで、それより前の3年間の合計を上回ったとしています。もっとも厳しかったのは2025年10月で、1か月に25回の複合攻撃を受けたと書いています。
2026年に入っても攻撃は続き、ナフトガスは2026年8月7日、年初からの攻撃が287回に達し、2025年の1年分を超えたと述べています。これらの回数はナフトガスの発表によるもので、独立した機関が数えたものではありません。
採掘が落ちれば、その分を外国から買う必要が出ます。2025年4月21日の発表は、2025年2月の攻撃がもっとも大きな被害を出したとし、冬を越すために8億立方メートルを緊急に輸入したと書いています。同じ発表によれば、2025年の初めからの契約量は15億立方メートルで、そのうち3億立方メートルはポーランドのORLENから買った液化天然ガス(LNG)でした。輸入の資金として、欧州復興開発銀行(EBRD)とノルウェー政府から約4億3,000万ユーロを得たとしています。
発電所や送電網への攻撃と、分散型の電源については発電所が狙われ続ける国で、電気を小さく分けてつくるで扱っています。
2025年1月1日に満了した輸送契約
購入を止めたあとも、ウクライナのパイプラインはロシアのガスを欧州へ運び続けました。ナフトガスの2026年3月13日の発表は、2019年の契約のもとで、同社は契約が2025年1月1日に満了するまでガスプロムのためにウクライナ経由の輸送を担う義務を負っていた、と説明しています。
同じ発表によれば、2022年5月、ロシアの占領軍の軍事行動によって、ソフラニウカ(Сохранівка)の入口地点からガスを受け入れることができなくなりました。ナフトガスはスジャの入口地点を使って輸送を続けましたが、ガスプロムは輸送の料金を全額は支払いませんでした。ナフトガスは2022年9月、契約の定めに従って国際商業会議所(ICC)の規則による仲裁をスイスで申し立てています。
| 年月日 | 出来事 |
|---|---|
| 2015年11月25日 | ナフトガスがロシアの供給者からのガスの購入を止める(欧州市場のガス価格の下落を理由に挙げた) |
| 2016年3月31日 | ナフトガスが、4月以降もガスプロムからの購入を再開しないと発表。ロシアからの輸入がない日が125日続き、冬の3か月を初めて輸入なしで越えたとする |
| 2019年 | ロシアのガスをウクライナ経由で運ぶための新しい契約が結ばれる |
| 2022年5月 | ロシアの占領軍の軍事行動で、ソフラニウカの入口地点からの受け入れができなくなる。スジャの入口地点で輸送を続ける |
| 2022年9月 | ナフトガスが、輸送料金の未払いをめぐりガスプロムを相手に仲裁を申し立てる |
| 2025年1月1日 | 2019年の輸送契約が満了する |
| 2025年6月16日 | 仲裁廷がガスプロムに14億ドル超の支払いを命じる最終判断を出す(2026年3月、スイス連邦最高裁判所がガスプロムの取消しの申立てを退けた) |
仲裁廷は2025年6月16日、ガスプロムに14億ドルを超える未払いの輸送料金と利息の支払いを命じました。ガスプロムはスイスで取消しを求めましたが、ナフトガスによれば、スイス連邦最高裁判所は2026年3月にこれを全面的に退けています。
買わない、運ばない、そのあとに残るもの
2015年の購入停止と2025年の輸送契約の満了で、ウクライナのガスとロシアのあいだに残っていた二つの取引は、どちらも終わりました。いま残っているのは、国内の採掘をどれだけ守れるかと、足りない分を欧州からどれだけの資金で買えるかという問題です。ナフトガスは2026年8月の発表で、採掘施設への攻撃と輸入の増加によって、国際的な資金支援の必要が大きく増えたと述べ、贈与による資金を優先するとしています。
出典・参考資料
- Умови постачання російського газу в ІІ кварталі роблять його неконкурентним в Україні(2016年3月31日。2015年11月25日の購入停止とその理由、125日間輸入なし、冬の3か月、約270億立方メートルの輸送)
発行:НАК «Нафтогаз України» 確認日:2026-09-24 - About Naftogaz(地下貯蔵施設の総容量309.5億立方メートル、欧州最大、国内生産の70%超)
発行:Naftogaz of Ukraine 確認日:2026-09-24 - Нафтогаз провів Україну через найважчу зиму: без газового блекауту, попри критичні виклики(2025年4月21日。2024年の採掘量146億立方メートル、83本の井戸、2025年2月の攻撃、8億立方メートルの緊急輸入、契約量15億立方メートル、ORLENのLNG、EBRDとノルウェーの約4億3,000万ユーロ)
発行:НАК «Нафтогаз України» 確認日:2026-09-24 - В 2025 році росія здійснила 229 атак на обʼєкти Групи Нафтогаз(2026年2月17日。攻撃401回、2025年に229回、2025年10月に25回)
発行:НАК «Нафтогаз України» 確認日:2026-09-24 - Naftogaz submits list to Foreign Ministry of priority international projects to support preparations for heating season(2026年8月7日。2026年初からの攻撃287回、資金支援の必要と贈与の優先)
発行:Naftogaz of Ukraine 確認日:2026-09-24 - Naftogaz definitively wins $1.4 billion lawsuit against Gazprom in Swiss Supreme Court(2026年3月13日。2019年の契約と2025年1月1日の満了、2022年5月のソフラニウカ、スジャ、2022年9月の仲裁、2025年6月16日の仲裁判断)
発行:Naftogaz of Ukraine 確認日:2026-09-24
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