カンボジアで日本の地雷探知機を学ぶ、ウクライナの除去員
日本はウクライナ国家非常事態庁に地雷探知機ALISを54台、地雷除去機を22台送り、操作の訓練を日本とカンボジアで、カンボジア地雷対策センターと組んで行ってきました。汚染の広さの推計は時点と発表主体で大きく違います。2023年のクレーン付きトラックから2025年の東京での国際会議までをたどります。
2023年1月、カンボジア。カンボジア地雷対策センター(CMAC)の研修施設に、ウクライナ国家非常事態庁(SESU。国際協力機構=JICAの表記では「非常事態庁」)の地雷除去の専門職員8人が招かれました。手にしていたのは、日本で開発された地雷探知機「ALIS(エーリス)」です。開発者の佐藤源之・東北大学教授(当時)が自ら操作を教え、CMACでALISを使いこなしてきた職員が講師を務めました。
ロシアの全面侵攻のあと、ウクライナでは広い土地が地雷や不発弾で使えなくなりました。日本がこの分野で送ってきた機材と訓練を、JICA・外務省・ウクライナ政府の公表資料でたどります。
汚染の広さは、時点と発表主体で数字が変わる
まず前提になる汚染の広さです。数字は発表のたびに変わり、主体によって数え方も違います。ここでいう「汚染」は、どこかに爆発物がある可能性があり、安全に使えない状態の土地を指します(JICA横浜の説明)。爆発物が見つかった土地だけを数えた面積ではありません。
| 時点 | 発表主体(出典) | 面積・割合 |
|---|---|---|
| 2022年11月 | ウクライナ国家地雷対策局(JICAの発表の注による) | 約16万平方キロ。国土の約4分の1 |
| 2023年1月 | 国家非常事態庁(JICAの発表の注による) | 国土のおよそ3分の1 |
| 2023年1月 | JICA横浜の記事(出所の明記なし) | 約17万4,000平方キロ。国土の約3分の1 |
| 2025年3月 | 国家非常事態庁など(JICAの記事による) | 国土の約23% |
| 2026年9月に閲覧 | ウクライナ経済省の国家地雷対策プラットフォーム「Demine Ukraine」 | リスクのある土地13万2,076平方キロ。本文では「最大14万4,000平方キロが汚染の可能性」とも記載 |
同じDemine Ukraineは、利用者に戻された土地を4万1,924平方キロとしています。そのうち除去作業によるものは171平方キロで、残る4万1,753平方キロは、現地での聞き取りや記録の確認などによる「非技術調査」を経て戻された土地です。地雷を実際に取り除いた面積と、調べた結果使えると判断された面積は、桁が違います。数字を見るときは、いつ、誰が、どういう土地を数えたのかを確かめる必要があります。発表と実績の読み分け方は「復興が進んだ」と発表されたとき、実際に何が終わったのかでも扱っています。
最初に送ったのは、クレーン付きトラック
JICAは2023年1月10日、国家非常事態庁と技術協力「人道的地雷・不発弾対策能力強化プロジェクト」の討議議事録を結びました。最初に供与を確認したのは、いすゞ自動車のトラックにタダノのクレーンを載せたクレーン付きトラックです。双日を含む3社とともに協議し、1月23日に確認しています。処理した爆発物には約500キロに達するものもあり、クレーンのような重機が運搬に役立つ、とJICAは説明しています。
2023年4月25日にはキーウで、トラックとALISの供与式が開かれました。JICAによれば、機材はドネツィク、ルハンシク、ヘルソン、キーウなど、ロシア軍が残した地雷や不発弾の除去が進む地域で使われる予定とされました。式に出席したウクライナ経済省の次官は、トラックがウクライナの工場で組み立てられたことで雇用を守った、と述べています。
ALISと、30トン近い地雷除去機
ALISは、金属探知機と地中レーダーを組み合わせた探知機です。金属探知機だけでは、反応したものが地雷か鉄くずかがわからず、すべて掘り出して確かめる必要があります。ALISは反応した物体の形を画面に映すため、掘る前に見分けやすくなります。JICAの2023年の記事によれば重さは約3キロで、従来の金属探知機と同じくらいです。
もう一つの柱が、重機型の地雷除去機です。国家非常事態庁の一行は2023年1月24日、山梨県北杜市で、日本の主要な地雷除去機メーカーである日建の実機を視察しました。JICA横浜はその機体を「約30トン近くある大型機材」と紹介しています。2024年のJICAの報告によれば、供与した除去機にはクレーンのついた「スウィングタイプ」も含まれ、先端の部品を付け替えれば、爆発物が混じるおそれのあるがれきの撤去にも使えます。
供与した台数は、JICAの資料では次のように増えています。
- 2025年5月のJICAのニュースレター:ALIS 50台、日本製の地雷除去機22台、クレーン付きトラックなど。除去機はハルキウ州、ミコライウ州などで使用
- 2025年10月のJICAの記事:ALIS 54台、地雷除去機22台
ALISは国家非常事態庁の要望を受けて改良され、2025年7月15日にはキーウ近郊で、更新したソフトウェアの使い方の研修が行われました。
なぜカンボジアなのか
訓練の場にカンボジアが選ばれているのは、日本が長く支えてきた地雷対策の組織があるからです。JICAによれば、協力は1998年に始まりました。灌木を切る機械などの機材の供与と組織づくりを続けた結果、CMACが1年間に除去や調査を通じて解放した土地の面積は、1995〜1999年の約10平方キロから、2023年には約282平方キロに広がりました。
CMACは2010年以降、JICAと組んで、地雷に苦しむ他の国の担当者を教える側に回っています。コロンビア、ラオス、アンゴラ、イラクなどの政府関係者が研修を受け、JICAは2024年10月の記事で500人以上、2025年10月の記事で600人以上としています。ウクライナはその流れに2023年から加わりました。
2024年7月から8月には、地雷除去機の操作と維持管理の研修が、まず日本でメーカーの協力を得て約2週間、続いてカンボジアの訓練場で約2週間行われました。女性を含む14人が参加しています。JICAの報告の注によれば、全面侵攻から2024年7月までに国家非常事態庁の職員113人が負傷し、うち21人が亡くなっています。
2025年10月、東京での会議
外務省によれば、2025年10月22日と23日、東京で「ウクライナ地雷対策会議2025(UMAC2025)」が開かれました。2023年のクロアチア、2024年のスイスに続く3回目で、ヨーロッパの外で開かれたのは初めてです。75の国・国際機関の代表を含む約600人が参加し、「復興に向けた加速」を全体テーマに、人、技術、ネクサス(地雷対策から復旧・復興への移行)の三つについて議論しました。1日目に成果文書が発表され、次回はEUが主催します。
外務省の発表によれば、茂木敏充外務大臣は開会のスピーチで、日本の支援策をまとめた「ウクライナ地雷対策支援イニシアティブ」を通じて、人材育成や能力強化、社会経済の活性化、医療・福祉分野への貢献などの支援を進めると述べました。
会議のあとも、学び合いは広がっています。JICAによれば、2026年4月にジュネーブで開かれた地雷対策の国際会合で、コロンビアの大統領府平和高等弁務官事務所、ウクライナ経済環境省、JICAの三者がワークショップを開き、地雷対策の品質管理や情報管理の経験を交換しました。
Demine Ukraineは「支援額の大きいパートナー」の欄に、米国、EUに続けて日本の名前を載せています。日本の協力の中身は、機材を送ることと、それを使う人を育てることの二つです。どちらも、使われている現場で成果が確かめられるまでには時間がかかります。
出典・参考資料
- ウクライナ向け人道的地雷・不発弾対策能力強化プロジェクトを開始:ウクライナ非常事態庁にクレーン付きトラックを供与(2023年1月。R/D締結1月10日・いすゞ/タダノ/双日・2022年11月時点の約16万平方キロ)
発行:国際協力機構(JICA) 確認日:2026-09-23 - 日本の技術でウクライナの地雷除去へ! カンボジアで日本製の地雷探知機の研修を実施(2023年3月。2023年1月の研修・8人・ALISの仕組みと重さ)
発行:国際協力機構(JICA) 確認日:2026-09-23 - 地雷探知機ALISと不発弾等輸送用トラックをウクライナに供与(2023年4月。4月25日の供与式・使用予定地域・2023年1月時点の約3分の1・国土60万3,700平方キロ)
発行:国際協力機構(JICA) 確認日:2026-09-23 - ウクライナ非常事態庁が地雷除去に関する視察で北杜市訪問(2023年1月24日・日建の地雷除去機・約17万4,000平方キロ)
発行:JICA横浜 確認日:2026-09-23 - ウクライナの人々の安心・安全のために:ウクライナ非常事態庁に日本製地雷除去機の研修を実施(2024年7〜8月の研修・14人・スウィングタイプ・職員113人負傷うち21人死亡)
発行:国際協力機構(JICA) 確認日:2026-09-23 - 「支援される国」から「世界の地雷対策リーダー」へ カンボジアと共に目指す地雷ゼロの世界(2024年10月。1998年からの協力・約10平方キロから約282平方キロ・500人以上)
発行:国際協力機構(JICA) 確認日:2026-09-23 - ウクライナに対するJICAの協力 Vol.4(2025年5月。ALIS 50台・除去機22台・ハルキウ州とミコライウ州・2025年3月時点の23%)
発行:国際協力機構(JICA) 確認日:2026-09-23 - ウクライナの現状と東京で開催される地雷対策会議の意義(2025年10月。ALIS 54台・除去機22台・2025年7月15日の研修・600人以上)
発行:国際協力機構(JICA) 確認日:2026-09-23 - 国と国をつなぐ、学びの輪 - 世界に広がる地雷・不発弾対策の知見(2026年4月のジュネーブでのワークショップ)
発行:国際協力機構(JICA) 確認日:2026-09-23 - ウクライナ地雷対策会議2025(参加75の国・機関と約600人・過去の開催国・3つの論点・成果文書)
発行:外務省 確認日:2026-09-23 - ウクライナ地雷対策会議(UMAC2025)開会セッション(令和7年10月22日。ウクライナ地雷対策支援イニシアティブ)
発行:外務省 確認日:2026-09-23 - 「ウクライナ地雷対策会議(UMAC)2025」外務大臣主催レセプションの開催(次回はEUが主催)
発行:外務省 確認日:2026-09-23 - Demine Ukraine(国家地雷対策プラットフォーム。リスクのある土地132,076平方キロ・利用者に戻った土地41,924平方キロ・最大144,000平方キロ・支援額の大きいパートナー)
発行:ウクライナ経済省 確認日:2026-09-23
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