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ビジネス・復興/解説

壊れた家は修理費、失った家は住宅証書。ウクライナの「єВідновлення」

ロシアの攻撃で損傷・破壊された住宅に、ウクライナの国は補償を出しています。2023年の法律 № 2923-IXにもとづく制度で、Дія から申請でき、損傷なら修理の資金、失われた住宅なら新しい住宅を買う住宅証書か建て直しの資金が出ます。受け取れるのは住宅の持ち主であるウクライナ国民で、全面侵攻の開始時点で占領されていた地域の住宅は対象外です。

オリュカのひとこと

修理で住める家と、住めなくなった家で、補償の形はどう分かれるのでしょう。最初の見出しの定義から確かめましょう。

ロシアの攻撃で窓が割れ、屋根に穴が開いた家。砲撃で住めなくなった集合住宅の一室。ウクライナには、こうした住宅の持ち主に国が補償を出す制度があり、電子政府アプリ「Дія(ディーヤ)」から申請できる公的サービスとして「єВідновлення(イェヴィドノヴレンニャ)」と呼ばれています。

根拠は、2023年2月23日の法律 № 2923-IX「ロシア連邦の武力侵略が引き起こした戦闘行為、テロ行為、破壊工作によって損傷・破壊された不動産の一部の種類に対する補償と、損傷・破壊された財産の国家登録簿について」です。法律は、公布から2か月後に施行されると定めています。

壊れた家と、失われた家

法律は住宅を二つに分けて扱います。修理すれば住める「損傷した」住宅と、本来の用途に使えなくなった「破壊された」住宅です。対象は、集合住宅の住戸、一戸建て、菜園の家・別荘などの住宅と、一定の段階まで建設が進んでいた建設中の住宅です(第1条)。

損傷した住宅への補償は、次の三つの形で出されます(第10条)。

  • 修理の工事そのものを行う、または建材を用意する
  • 修理の工事と建材の購入に使い道を限った専用の口座へ、お金を振り込む
  • 持ち主が自分のお金で済ませた修理と建材の費用を、あとから振り込む

破壊された住宅への補償は、次の三つです(第8条)。

  • 一戸建てを建てるための資金を、使い道を限った専用の口座へ振り込む
  • 新しい住宅を買うための「住宅証書」(житловий сертифікат)を出す
  • 自治体の復興計画で建て直した住宅を、持ち主に引き渡す(2024年9月の改正で追加)

一戸建てを失った人はこのうちから選べますが、集合住宅の住戸を失った人への補償は住宅証書に限られます(第8条第2項)。

オリュカのひとこと

上限の額は、損傷の程度でどう変わるのでしょう。表の出典と、条文の時点もあわせて見ておきましょう。

修理の補償の上限

損傷した住宅の補償の手続きは、2023年4月21日の内閣決定第381号が定めています。この決定と所管省の案内ページ(2026年6月18日付)によれば、補償は損傷の程度で二つに分かれます。

補償の種類上限・額の決まり方支払い方と期限
修理(カテゴリーA:軽い損傷)20万フリヴニャまで1回で支払い。12か月以内に使う
修理(カテゴリーB:大きな損傷)集合住宅の住戸は20万〜35万フリヴニャ、一戸建ては20万〜50万フリヴニャ70%を先に支払い、途中の点検を経て残り30%。合わせて18か月以内に使う
住宅証書(失われた住宅)失われた住宅の面積と1平方メートルあたりの単価で決まる新しい住宅の売り手へ直接支払われる。証書は5年間有効
建て直しの資金(失われた一戸建て)同上50%ずつ2回。1回目は18か月以内に使い、90%以上を使ってから2回目。最初の支払いから3年以内に完成させる
出典:法律 № 2923-IX 第8条、内閣決定第381号(2026年9月時点の条文)、所管省の「єВідновлення」の案内ページ(2026年6月18日付)。修理の資金は用途を限った専用口座(єВідновлення カード)に入る。

所管省の案内は、損傷を受けたらまず国家非常事態庁(101番)と警察(102番)に通報して、損傷の事実を記録に残すよう勧めています。同じ家が繰り返し被害を受けた場合は、前回の申請の「修理の報告」から、あらためて申請できるとしています。

住宅証書で買える家、買えない家

住宅証書は、国が新しい住宅の購入代金の支払いを保証する電子の書類です(第1条)。破壊された住宅の補償の手続きは、2023年5月30日の内閣決定第600号が定めています。法律の定めのうち、使う人に関わる主なものは次のとおりです(第8条)。

  • 補償の額は、持ち主ごと・住宅ごとに、失われた住宅の面積と1平方メートルあたりの単価で決まる。共有の場合は持ち分に応じる
  • 新築・中古を問わず、住宅と、その建っている土地の購入に使える。家族など複数の人の証書を合わせて一つの住宅を買える
  • 占領地域と、戦闘地域・包囲下の地域として政府の一覧に載ったフロマーダ(基礎自治体)の住宅は買えない
  • 証書の額より高い住宅を買うときは、差額を自分で払う。安い住宅を買ったときの差額は登録簿に記録され、ロシアから得た賠償の資金から支払うとされている
  • 証書で買った住宅は、5年間売ることができない
  • 証書を使う申請は、証書が出てから5年以内に行う

もう一つ、破壊された住宅の補償を受けるときの特有の決まりがあります。補償を受ける人は、その住宅の損害についてロシアに賠償を求める権利を、受け取った額の範囲で国や自治体に譲る契約を結びます(第8条第18項)。所管省の案内によれば、証書を使う前や建て直しの資金を受け取る前には、失われた住宅の所有権を登録簿の上で終わらせる必要があります。

誰が申請でき、誰が優先されるか

補償を受けられるのは、住宅の持ち主であるウクライナ国民と、その相続人などです(第2条)。集合住宅の共用部分の損傷については、管理組合などが受け取り手になります。制裁の対象になっている人や、国家の安全に対する罪で有罪になった人は除かれます。

法律は、2022年2月24日のロシアによるウクライナへの全面侵攻に伴う戒厳令の開始の時点ですでにロシアに占領されていた地域の住宅には、補償の定めが及ばないとしています(前文)。2014年から占領されている地域の住宅は、この制度の対象外です。

所管省の案内は、補償を受けられるのは所有権が「不動産物権の国家登録簿」に登録されている持ち主だとしています。2013年より前に取得した住宅は電子の登録簿に載っていないことがあり、その場合は前もって行政サービスセンター(ЦНАП)、公証人、国の登録官を通じて登録する必要があると説明しています。私有化されていない公営の住宅は、補償の対象になりません。

破壊された住宅の補償は、原則として申請の順に審査されます。そのうえで法律は、戦闘参加者、戦争による障害のある人、動員された人、多子家族、第I・II級の障害のある人、そして政府の定める基準にあたる国内避難民に、優先権を与えています(第9条。国内避難民は2024年12月の改正で追加)。

申請の方法と期限

申請は、Дія のアプリかポータル(統一国家電子サービスポータル)から電子で出すか、行政サービスセンター、社会保護の機関、公証人を通じて紙で出します(第4条第2項)。法律は、申請を登録された居住地や住宅の所在地にかかわらず出せるとしています(同第5項)。Дія の機能については「Дія」の電子パスポート、国境では使えず国外での法的効力もないで扱っています。

申請は、住宅のある自治体がつくる委員会が審査します。破壊された住宅の審査は申請から30日以内で、戦闘地域や占領下のフロマーダの住宅なら、さらに30日延ばせます(第6条第3項)。決定に不服があれば、裁判所に訴えることができます(第11条)。

破壊された住宅の補償の申請は、戒厳令の期間中と、その地域で戒厳令が終わってから1年以内に出すとされています(第4条第1項)。戒厳令が終わったあとに地雷や地雷除去などで損傷・破壊された住宅については、戒厳令の終了から3年以内に申請できます(最終・経過規定)。

お金はどこから出るのか

法律は、補償の財源として、国と自治体の予算(財産とインフラの復旧基金、武力侵略の影響の除去基金を含む)、国際金融機関などの資金、国際的な技術支援・資金支援、そして「ロシア連邦からの賠償その他の取り立て」を挙げています(第13条)。住宅証書で購入代金を払う手続きは、資金がないときには止まることがあると法律に書かれており(第8条第12項)、所管省の案内も、支払いは順番と資金の状況に従うと説明しています。

全面侵攻で住宅が受けた被害の全体の規模は、世界銀行などの被害・復興需要の評価が見積もっています。復興費用の見積もりは5回で3,485億ドルから5,877億ドルにで扱っています。

出典・参考資料

  1. Закон України «Про компенсацію за пошкодження та знищення окремих категорій об'єктів нерухомого майна внаслідок бойових дій, терористичних актів, диверсій, спричинених збройною агресією Російської Федерації проти України, та Державний реєстр майна, пошкодженого та знищеного внаслідок бойових дій, терористичних актів, диверсій, спричинених збройною агресією Російської Федерації проти України» № 2923-IX(2024年12月11日の版の現行条文。前文、第1〜4・6・8〜11・13条、最終・経過規定、改正法の一覧)
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  2. Постанова Кабінету Міністрів України від 21.04.2023 № 381(損傷した住宅の補償の手続き。カテゴリーA・Bの金額、70%・30%の支払い、12か月・18か月)
    発行:Кабінет Міністрів України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  3. Постанова Кабінету Міністрів України від 30.05.2023 № 600(破壊された住宅の補償の手続き。決定の日付・番号・題名)
    発行:Кабінет Міністрів України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  4. єВідновлення: Пошкоджене житло(2026年6月18日付。通報、カテゴリーA・B、支払いの段階)
    発行:Міністерство з відновлення, інфраструктури та транспорту України 確認日:2026-09-24
  5. єВідновлення: Знищене житло(2026年6月18日付。住宅証書、建て直しの資金の支払いと期限)
    発行:Міністерство з відновлення, інфраструктури та транспорту України 確認日:2026-09-24
  6. єВідновлення: Як отримати компенсацію(2026年6月18日付。登録簿、申請の窓口、繰り返しの損傷)
    発行:Міністерство з відновлення, інфраструктури та транспорту України 確認日:2026-09-24
  7. єВідновлення: Поширені запитання(2026年6月18日付。2013年以前の登録、私有化されていない住宅、所有権の終了)
    発行:Міністерство з відновлення, інфраструктури та транспорту України 確認日:2026-09-24

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