新たに2人雇えば金利は5%に。ウクライナの中小企業融資「5-7-9」
ウクライナ政府は2020年から、中小企業が銀行から借りるお金の利息の一部を国が肩代わりする融資制度を続けています。企業が払う金利が5%・7%・9%に下がることから「5-7-9」と呼ばれます。内閣の決定の条文から、金利の決まり方と、全面侵攻のあとに加わった特例を説明します。
オリュカのひとこと
「5-7-9」の三つの数字は、何によって分かれるのでしょうか。金利の決まり方を本文で確かめましょう。
「5-7-9%」の名で知られるウクライナの中小企業向けの融資制度は、銀行が貸すお金の金利を国が一部負担し、企業が実際に払う金利を下げる仕組みです。根拠は、2020年1月24日の内閣決定 № 28「国の金融支援の提供について」と、それが定める手続き(Порядок)です。この決定は2026年8月までに50回以上改正されてきました。
制度を運営するのは、当初は企業発展基金(Фонд розвитку підприємництва)でした。2026年2月16日の内閣決定 № 203で、条文の中の名前が「国立発展機関」(Національна установа розвитку)に置き換えられています。以下は、2026年9月24日時点の条文にもとづきます。
銀行の金利と、企業が払う金利
企業は、この制度に参加する「指定銀行」に融資を申し込みます。指定銀行は、手続きの付属書が定める基準を満たし、国立発展機関と協力の契約を結んだ銀行です。企業が要件を満たすかどうかを判断し、審査して貸すのは銀行です。
条文は金利を二段階で決めています。一つは銀行が設定する「基本金利」で、上限は個人の預金金利の指標 UIRD(3か月)に数ポイントを足した値です。たとえば、1年以上営業している零細企業が設備などに投資するための融資では「UIRD+4ポイント以下」、中規模企業なら「UIRD+2ポイント以下」とされ、個人事業主以外の基本金利は年23%を超えられません。もう一つが企業の払う「補償金利」で、基本金利との差額を国立発展機関が毎月、銀行に開いた預託口座(エスクロー)から払います。
5%、7%、9%の決まり方
制度の名前は、投資目的の融資の補償金利から来ています。2026年9月時点の条文では次のとおりです。
| 融資の目的と企業 | 企業が払う金利(年) |
|---|---|
| 投資目的・零細企業と小企業 | 7%。融資を受けてから最初の暦四半期がまるごと終わるまでに新たに2人以上雇えば5% |
| 投資目的・中規模企業 | 9%。雇用を1人増やすごとに0.5ポイント下がり、下限は7% |
| 投資目的・創業1年以内の企業 | 5% |
| 運転資金 | 15%(農業生産者は10%) |
雇用の条件は、融資のあいだずっと見られます。銀行は四半期ごとに企業の平均従業員数を確かめ、零細・小企業が人を減らせば、1人につき1ポイント補償金利が上がります(上限は7%)。中規模企業は、1人増減するごとに0.5ポイント上下します。
ただし同じ第16項は、戒厳令のあいだと、その終了から180日のあいだは、雇用を増やす・保つという条件を適用しないことがある、としています。
オリュカのひとこと
全面侵攻のあとに加わった特例は、どんな企業に向けたものでしょうか。条件を条文で確かめましょう。
全面侵攻のあとに加わった特例
2022年2月24日にロシアによるウクライナへの全面侵攻が始まると、内閣はこの決定を短い間隔で改正しました。3月12日の決定 № 274は農業生産者への融資を、3月18日の決定 № 312は軍や被害を受けた住民の需要に応える事業、戦闘地域から安全な地域への企業の移転などを、支援の目的に加えました。2022年7月1日時点の条文では、後者は戒厳令のあいだと終了後1か月は補償金利0%、その後は5%とされています。
その後、手続きは2023年3月14日の決定 № 229で全文が書き直されました。2026年9月時点の条文に、戒厳令のあいだ一律に0%という定めはありません。代わりに、戦争の被害と結びついた優遇がいくつも置かれています。
- 「高い軍事リスクの地域」で事業を行い、生産設備もそこにある企業の投資目的の融資:最初の5年は1%、その後は5%。運転資金は7%
- ロシアの攻撃で壊れた財産の建て直し・修理のための融資:最初の2年は0.1%、その後は規模と雇用の条件に応じて5%・7%・9%。借りられる額は、被害を記録した書類にある損害額まで
- ガスタービン、ガスエンジン、バイオガスの発電設備、ディーゼル・ガソリン・ガスの発電機を買う・設置するための融資:0%
「高い軍事リスクの地域」は、開発を所管する省が定める、戦闘が行われている(行われた)地域または占領された地域の一覧に入っている地域などを指します。キーウ市とキーウ州は除かれています。また、国の支援の総額を3年間で20万ユーロ相当までに抑える上限は、戒厳令のあいだは適用されません。
借りられる額と、いつまで申し込めるか
1社(関連する会社と合わせて)が支援を受けられる融資の総額には、目的ごとの上限があります。個人事業主は300万フリヴニャ、優先分野でない運転資金は500万フリヴニャ、優先分野でない投資は6,000万フリヴニャ、戦争で壊れた財産の建て直しと高い軍事リスクの地域の企業は1億5,000万フリヴニャなどです。投資目的の融資の期間は最長10年です。
申し込める期間は、決定 № 28の効力が生じた日から8年と定められています。
2026年に加わった条件
2026年の改正で、条件はいくつか厳しくなっています。2026年9月1日以降に融資を受ける中規模企業は、年間の利払い予定額に対する営業上の稼ぎの比率(利払い能力の指標)が5未満であることが条件になりました。利息を払う力が大きい中規模企業は、対象から外れることになります。また同じ日から、農業以外の企業への融資にも世界銀行の環境・社会基準の適用が広がりました(戒厳令のあいだは、建て直し・発電設備・高い軍事リスクの地域向けなどの融資を除く)。
融資の件数や総額といった実績は、この記事では扱っていません。制度の条件を読むときは、どの時点の条文かを必ず確かめてください。2020年から数えて50回を超える改正があり、同じ「5-7-9」の名前の下で、中身はかなり変わってきています。
出典・参考資料
- Постанова Кабінету Міністрів України від 24 січня 2020 р. № 28 «Про надання фінансової державної підтримки»(2026年9月24日時点の条文。改正履歴、手続き第2・3・4・8・9・10・11・12・14・16・17項、付属書)
発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24 - Постанова Кабінету Міністрів України від 24 січня 2020 р. № 28(2022年7月1日時点の版。手続き第4項・第13項、決定 № 274・№ 312による戒厳令下の特例)
発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
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