10%から25%へ、いまは16%。ウクライナ国立銀行の政策金利
ウクライナ国立銀行は2022年6月、全面侵攻のもとで政策金利を10%から25%に上げました。2023年7月から下げ、2024年12月から再び上げ、2026年9月18日からは16%です。決定ごとに国立銀行が挙げた物価の数字と理由、5%の物価目標の仕組みをまとめます。
オリュカのひとこと
8月の物価上昇率8.1%は、何と比べた数字なのでしょう。前年同月比と前月比の違いは本文の後半にあります。
ウクライナ国立銀行(НБУ、NBU)は2026年9月17日、政策金利を15.5%から16%に引き上げ、翌18日から適用しました。7月に続く2回連続の引き上げです。国立銀行によれば、2026年8月の消費者物価の上昇率は前年同月比8.1%でした。
政策金利は、ロシアによる全面侵攻の直前には10%でした。2022年6月に一気に25%へ上げ、1年余りそのままにしたあと、下げては上げてきました。国立銀行の決定の発表と公表資料から、2026年9月時点までの動きとその理由をたどります。将来の金利の見通しは扱いません。
政策金利は、国立銀行が銀行と取引するときの基準の金利
国立銀行の説明では、政策金利は国立銀行の「主要な金利」で、お金の値段の基準です。国立銀行は、銀行との取引の金利を変えることで、銀行どうしの短期の貸し借りの条件を動かし、それが企業や家計への貸出・預金の金利、フリヴニャの為替レート、物価に及びます。いまは銀行の手元資金が余っているため、銀行が国立銀行に1日だけ資金を預ける「オーバーナイト預金証書」の金利を政策金利と同じにしています。
目標は物価の安定で、国立銀行は消費者物価の上昇率5%を目標にしています。全面侵攻の前は「5%を中心に上下1ポイント」の幅を目標にし、9〜18か月で目標に戻すとしていました。いまの「柔軟なインフレ目標」では、幅のない5%を目標にし、戻すまでの期間を最長3年に延ばしています。国立銀行は、全面侵攻のあと為替レートの固定に移り、その後2024年にこの柔軟な方式に移ったと説明しています。
全面侵攻の直後は、金利を動かさなかった
政策金利は2022年1月21日から10%でした。国立銀行は2022年6月の発表で、全面侵攻が始まったとき、戦争による強い心理的な圧力のもとでは金利を変えても期待を落ち着かせられないと判断し、金利の決定を控えたと説明しています。そのかわり、銀行の業務と支払いを止めないことを優先し、為替レートを固定し、外貨の取引を制限しました。固定レートの水準と、その後の為替制度の変更は戦時下のウクライナ経済の数字──範囲、為替、推計値の見分け方で扱っています。
2022年6月3日、10%から25%へ
国立銀行は2022年6月2日、政策金利を15ポイント上げて25%にすると決め、翌3日から適用しました。発表が挙げた理由は次のとおりです。
- 2022年4月の消費者物価の上昇率が前年同月比16.4%に達し、さらに上がると見込まれた
- フリヴニャの資産の利回りが低く、家計や企業が貯蓄を外貨に替える動きが強まるおそれがあった
- 国立銀行が為替を支えるために売った外貨が、3〜4月の月平均20億ドルから5月には34億ドルに増えた
国立銀行は、金利を大きく上げることでフリヴニャの資産への関心を高め、外貨準備の減少を抑え、物価の上昇を抑えるとしました。
オリュカのひとこと
25%から16%まで、金利は一直線に下がってきたのでしょうか。適用の開始日ごとの表で確かめられます。
2023年7月から下げ、2024年12月から上げ、2026年に再び上げる
政策金利は2023年7月まで25%のまま据え置かれました。その後の変更は次のとおりです。
| 適用の開始 | 政策金利 | 国立銀行が挙げた主な事情 |
|---|---|---|
| 2022年1月21日 | 10% | (全面侵攻の前) |
| 2022年6月3日 | 25% | 4月の物価上昇率16.4%。外貨への逃避と外貨準備の減少を防ぐ |
| 2023年7月28日 | 22% | 6月の物価上昇率が12.8%に下がった(年初は26%超)。引き下げの開始 |
| 2023年9月15日 | 20% | |
| 2023年10月27日 | 16% | |
| 2023年12月15日 | 15% | 11月の物価上昇率が5.1%に下がった |
| 2024年3月15日 | 14.5% | |
| 2024年4月26日 | 13.5% | |
| 2024年6月14日 | 13% | |
| 2024年12月13日 | 13.5% | 11月の物価上昇率11.2%。その年の不作による食品の供給の減少 |
| 2025年1月24日 | 14.5% | |
| 2025年3月7日 | 15.5% | 1月の物価上昇率12.9% |
| 2026年1月30日 | 15% | 12月の物価上昇率8%。緩和の開始 |
| 2026年7月31日 | 15.5% | 6月の物価上昇率7.2%、基調的な物価上昇率は8.1%に加速 |
| 2026年9月18日 | 16% | 8月の物価上昇率8.1% |
表の日付は、金利が適用され始めた日です。決定は適用の前日に発表されることが多く、たとえば2026年9月の引き上げは、9月17日付の理事会決定第313号で、9月18日に効力を生じています。
引き下げを始めた2023年7月の発表で、国立銀行は、物価の上昇が予想より速く鈍り、外貨の市場が落ち着いていることを理由に挙げています。同じ年の10月3日には、為替レートを固定する方式をやめ、銀行間の外貨市場の取引でレートが決まる「管理された変動」に移りました。国立銀行は、2023年の最初の8か月で物価の上昇率が26.6%から8.6%に下がったことを、移行の条件の一つに挙げています。
2026年9月の引き上げの理由
9月17日の発表は、引き上げの理由として次のことを挙げています。
- 中東での戦争の激化で燃料の価格が予想より上がり、8月の物価上昇率は国立銀行の7月の見通しをやや上回った
- ロシアによる重要インフラへの攻撃の影響で、公共料金の一部が速く上がった
- 電力、物流、人件費など企業のコストの上昇が続き、基調的な物価上昇率が高い
- 7〜8月に国際支援の入りが予想より少なく、外貨準備が減った。支援の多くは、改革の法案を最高会議が可決することが条件になっている
国立銀行は、金利を上げることでフリヴニャの資産の魅力と外貨市場の安定を保ち、物価の見通しを抑え、5%の目標に向けて上昇率を下げていくとしています。同時に、安全保障の状況が悪化して消費や雇用が冷え込めば、金融の引き締めを緩めることも検討するとしています。
国家統計局の公表では、2026年8月の消費者物価は前月比で0.1%の上昇でした。国立銀行が引く8.1%は、前年の同じ月と比べた数字です。
数字を読むとき
- 政策金利は、銀行が企業や家計に貸す金利そのものではない。国の利子補給で企業の負担を下げる融資の仕組みもある(新たに2人雇えば金利は5%に。ウクライナの中小企業融資「5-7-9」)
- 物価上昇率は、前年同月比か前月比かで大きく違う。国立銀行の発表は主に前年同月比を使う
- 国立銀行の見通し(物価や成長率の予測)は、前提が変われば変わる。実績の数字とは分けて引く
出典と記事の記録
出典・参考資料
- NBU Key Policy Rate2018年以降の政策金利と適用開始日の一覧
発行:ウクライナ国立銀行 確認日:2026-09-24 - NBU Raises Key Policy Rate to 16%2026年9月17日。8月の物価上昇率8.1%、理由、理事会決定第313号、9月18日から適用
発行:ウクライナ国立銀行 確認日:2026-09-24 - NBU Raises Key Policy Rate to 15.5%2026年7月30日。6月の物価上昇率7.2%・基調8.1%、決定第225号
発行:ウクライナ国立銀行 確認日:2026-09-24 - NBU Cuts Key Policy Rate to 15%2026年1月29日。12月の物価上昇率8%、決定第27号
発行:ウクライナ国立銀行 確認日:2026-09-24 - NBU Raises Key Policy Rate to 15.5%2025年3月6日。1月の物価上昇率12.9%、決定第75号
発行:ウクライナ国立銀行 確認日:2026-09-24 - NBU Raises Key Policy Rate to 13.5%2024年12月12日。11月の物価上昇率11.2%、決定第430号
発行:ウクライナ国立銀行 確認日:2026-09-24 - NBU Cuts Key Policy Rate to 15%2023年12月14日。11月の物価上昇率5.1%、決定第448号
発行:ウクライナ国立銀行 確認日:2026-09-24 - NBU Cuts Key Policy Rate to 22%2023年7月27日。6月の物価上昇率12.8%、決定第258号
発行:ウクライナ国立銀行 確認日:2026-09-24 - NBU Raises Key Policy Rate to 25%2022年6月2日。全面侵攻後に金利の決定を控えた理由、4月の物価上昇率16.4%、外貨の売却額
発行:ウクライナ国立銀行 確認日:2026-09-24 - NBU Introduces Managed Flexibility of Exchange Rate2023年10月2日発表、10月3日から。物価上昇率26.6%から8.6%
発行:ウクライナ国立銀行 確認日:2026-09-24 - About Monetary Policy5%の目標、全面侵攻前の目標の幅と期間、2024年の柔軟なインフレ目標への移行
発行:ウクライナ国立銀行 確認日:2026-09-24 - Monetary Policy Instruments政策金利の役割、オーバーナイト預金証書の金利との関係
発行:ウクライナ国立銀行 確認日:2026-09-24 - Main Indicators2026年8月の消費者物価指数、前月比100.1
発行:ウクライナ国家統計局 確認日:2026-09-24
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