開業に最大50万フリヴニャ、ウクライナの国の補助金「єРобота」
ウクライナ政府は2022年7月から、開業や事業の拡大に返済の要らない補助金を出す「єРобота」を続けています。2026年9月には、雇う人数で額が決まっていた「マイクログラント」を、開業と拡大の二つの枠に組み替えました。補助金の種類と額、雇用と納税の条件、これまでの件数をまとめます。
オリュカのひとこと
返さなくてよい補助金には、どんな条件が付いているのでしょう。仕組みを最初の見出しで確かめられます。
ウクライナ政府は2022年7月から、事業を始める人や広げる人に、返済の要らない補助金を出しています。まとめて「єРобота(イェロボタ)」と呼ばれる政府の事業で、申し込みは電子政府の「Дія」から行います(Дія については電子パスポートの記事も参照)。ロシアによるウクライナへの全面侵攻が始まって4か月後に動き出し、2026年9月には中心の補助金が大きく組み替えられました。
以下は、2026年9月24日時点でウクライナ最高会議の法令データベースに載っている内閣決定の条文と、経済・環境・農業省(以下、経済省)の発表にもとづきます。額の単位はフリヴニャです。
根拠は2022年6月の二つの内閣決定
中心になるのは、2022年6月21日の内閣決定第738号「企業への補助金のいくつかの問題について」です。2022年7月1日に効力を生じ、その後2026年5月までに30回あまり改正されてきました。この決定の中に、補助金の種類ごとの「手続き」(Порядок)が並んでいます。加工業の企業向けの補助金は、3日後の2022年6月24日の内閣決定第739号が定めています。
2026年9月時点で、第738号には次の手続きが入っています。
- 自分の事業を始める・広げるための「マイクログラント」(申し込みの受付は2026年8月1日まで)
- 果樹園・ベリー園・ぶどう畑をつくる・広げるための補助金
- 温室をつくる・広げるための補助金
- 戦闘参加者、戦争で障害を負った人と、その家族向けの事業の補助金(受付は2026年8月1日まで)
- 野菜・果物の貯蔵庫を建てるための補助金(2026年1月に追加)
- 小規模事業のエネルギー自立のための一時金(2026年1月に追加。受付は2026年5月31日まで)
- 事業を始める、または広げるための補助金(2026年5月に追加し、9月1日から適用)
お金の出どころは、失業に備える国の社会保険の基金と国の予算です。マイクログラントと新しい補助金では、基金のお金を国家雇用センターが管理します。お金は、オシャドバンク、プリヴァトバンクなど、センターと協定を結んだ銀行を通じて支払われます。
2026年9月から:開業と拡大の二つの枠
経済省は2026年5月7日の発表で、これまで別々の規則で動いていたマイクログラントを一つの手続きにまとめ、金額を柔軟にすると説明しました。9月1日から適用された新しい手続きの額は次のとおりです。
| 枠 | 基本の額 | 加算を含めた上限 | 雇用の条件 |
|---|---|---|---|
| 事業を始める(開業) | 10万〜30万 | 50万 | なし |
| 事業を広げる(拡大) | 50万〜150万 | 250万 | 新しく1人以上を雇う |
基本の額に、条件に応じた割合が足されます。18〜25歳の申請者は5%、退役軍人の事業、付加価値税の登録事業者、事業に関わるウクライナの特許の持ち主、事業の経験が6か月を超える国内避難民や移転した企業、2人を新しく雇う場合は20%、前線に近い9州(ドニプロペトロウシク、ドネツィク、ザポリッジャ、ミコライウ、オデーサ、スームィ、ハルキウ、ヘルソン、チェルニーヒウ)とキーウ州スラヴティチで事業をする場合や、侵略で壊れた設備を新しくする場合は30%、政府が定めた優先分野の事業は50%です。複数当てはまれば足し合わせますが、上の表の上限は超えません。
使い道も条文で決まっています。設備・機械・事業用の車両の購入が中心で、店舗などの修繕や原材料の購入は補助金の50%まで、事業用の賃料は25%まで、広告は10%まで、といった上限があります。申し込みには事業計画書が必要で、事業の期間を2年・3年・5年から選びます。
それまでのマイクログラント
2026年8月1日まで受け付けていたマイクログラントは、雇う人数で額が決まる仕組みでした。2026年1月以降の条文では、個人事業主として登録するだけなら10万まで(18〜25歳は2倍)、1人を雇えば20万まで、2人以上を雇えば35万まで、前線に近い地域ではそれぞれ30万・50万までです。経済省は、この「雇用が全員の条件」だった点を改め、開業の枠では雇用を求めないことにした、と説明しています。
オリュカのひとこと
「返さなくてよい」とは、具体的にどういう仕組みなのでしょう。この見出しで確かめられます。
返さなくてよい条件は「税で戻す」こと
補助金は返済の要らないお金ですが、条件があります。新しい手続きでは、事業の期間中に納めた税金と社会保険料(単一社会保険料)の合計が、受け取った補助金より少なかった場合、その差額を返さなければなりません。途中で契約をやめた場合も、それまでに納めた額との差額を返します。旧来のマイクログラントも同じ考え方で、期間は3年でした。経済省は2025年3月の発表で、補助金は事業の活動を通じて税金として国に戻る、と説明しています。
拡大の枠では、お金が入ってから3か月以内に新しい職を設けて人を雇い、選んだ期間に応じて18か月・24か月・54か月雇い続けることが条件です。3か月以内に雇わなければ、補助金を全額返します。一方で、補助金で買った資産がロシアの侵略で失われたことを書類で示せば、返す必要はありません。
申し込めない人も条文で決まっています。戦闘が続く地域や占領された地域に実際にいて事業をしている人、ロシア・ベラルーシに登録された出資者のいる会社、酒(ワインなどを除く)・たばこ・武器の製造や販売、両替をする事業などです。新しい手続きでは、銀行が申請者の信用などを確かめたうえで、地域の雇用センターが事業計画を審査し、面接も行います。交付を決めるのは国家雇用センターで、締切から20日以内に、点数の高い申請から予算の範囲で選びます。
農業と加工業の補助金
自分の事業のほかにも、事業の種類に合わせた補助金があります。条文と経済省の発表にある主な条件は次のとおりです。
- 果樹園・ベリー園・ぶどう畑(第738号):1〜25ヘクタールの植え付けに、1ヘクタールあたり40万、1件1,000万まで。事業費の半分(条件によっては約2割)は自分で負担する
- 温室(第738号):0.4〜2.4ヘクタールの温室に、面積に応じて200万・350万・700万まで。事業費の半分(条件によっては約2割)は自分で負担する
- 退役軍人と家族(第738号。2026年8月1日まで受付):雇う人数に応じて25万・50万・100万まで
- 加工業(第739号):経済省の2026年3月2日の発表によれば、設備を増やす補助金は800万まで、攻撃で被害を受けた工場の復旧は1,600万まで。国と企業の負担は原則半分ずつで、ウクライナ製の設備だけを買う場合は7対3、復旧と前線に近い地域の企業などは8対2。5人以上を雇い、3年のうちに補助金以上の税を納めることが条件
防衛技術の開発への助成は別の仕組みで、Brave1の記事で扱っています。
数字で見るєРобота
経済省の発表によれば、2022年7月の開始から2025年3月までに、約2万5,000の事業者が補助金を受け、総額は120億フリヴニャでした。内訳は次のとおりです。
| 補助金 | 件数 | 額 |
|---|---|---|
| 自分の事業(マイクログラント) | 2万2,488件 | 53億 |
| 加工業 | 926件 | 46億 |
| 果樹園と温室 | 268件 | 13億 |
| 退役軍人と家族 | 1,122件 | 5億2,500万 |
同じ発表で経済省は、補助金を受けた事業者が6万5,000を超える職を生み、90億フリヴニャを超える税を納めた(出した額の75%にあたる)としています。その後の発表では、自分の事業の枠で交付を決めた件数が2026年5月までに3万4,000件を超え、額はおよそ90億フリヴニャ、うち7,000件あまりは新しく事業を始めた個人、生まれた職は6万を超えるとされました。加工業は2026年3月までに1,316件・67億フリヴニャです。発表ごとに数えている範囲(全体か一つの枠か、交付か交付の決定か)が違うので、数字を比べるときは注意が必要です。
єРобота は、作り手を支える「メイド・イン・ウクライナ」の政策の一部としても位置づけられています。国産品の買い手にお金を戻す仕組みはナショナル・キャッシュバックの記事、金利を国が肩代わりする融資は中小企業融資「5-7-9」の記事にまとめています。
出典と記事の記録
出典・参考資料
- Постанова КМУ від 21.06.2022 № 738 «Деякі питання надання грантів бізнесу»2026年9月1日の版。補助金の手続きの一覧、マイクログラントの額と用途、退役軍人向けの補助金、果樹園・温室・貯蔵庫、開業と拡大の補助金の額・加算・雇用と納税の条件・返還、申請の受付の期限
発行:Верховна Рада України(法令データベース) 確認日:2026-09-24 - Постанова КМУ від 15.05.2026 № 616開業と拡大の補助金の手続きの追加、2026年9月1日の施行、マイクログラントと退役軍人向け補助金の受付を2026年8月1日までとする定め
発行:Верховна Рада України(法令データベース) 確認日:2026-09-24 - Постанова КМУ від 24.06.2022 № 739 «Деякі питання надання грантів для виробництв переробної промисловості»題名、2022年7月1日の施行
発行:Верховна Рада України(法令データベース) 確認日:2026-09-24 - єРобота: Гранти від держави на відкриття чи розвиток бізнесу2025年8月11日。6つの補助金の種類
発行:Міністерство економіки, довкілля та сільського господарства України 確認日:2026-09-24 - єРобота: 12 млрд грн інвестувала держава в розвиток малого й середнього бізнесу через гранти2025年3月12日。プログラム別の件数と額、雇用、納めた税
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発行:Міністерство економіки, довкілля та сільського господарства України 確認日:2026-09-24
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