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ビジネス・復興/解説

1,000件を超える助成、ウクライナの防衛技術を育てるBrave1

Brave1は、ロシアの全面侵攻のさなかの2023年4月に、ウクライナの6つの政府機関が立ち上げた防衛技術の支援組織です。国の基金が段階ごとに最大800万フリヴニャの返済不要の助成を出し、国防省によれば2026年9月までに1,000件超、62億フリヴニャに達しました。運営の仕組みと根拠の法令、お金の行き先をまとめます。

オリュカのひとこと

返済のいらない助成は、開発のどの段階で、いくら出るのでしょう。4つの額を並べた節で確かめましょう。

ウクライナ国防省は2026年9月14日、防衛技術の支援組織「Brave1(ブレイヴ・ワン)」が2023年以来、防衛技術の開発に62億フリヴニャを出し、ウクライナの開発者が受けた助成は1,000件を超えたと発表しました。同省によれば、Brave1の助成は返済が要らず、受け取った会社が国に持ち分や知的財産権を渡す必要もありません。

ロシアによる全面侵攻のさなかに国が立ち上げ、スタートアップへの助成から始まったこの仕組みが、誰によって、どんな法令にもとづいて運営され、お金がどこに出ているのかを、政府と運営主体の公表資料からまとめます。個々の兵器の性能や戦果は扱いません。内容は2026年9月時点のものです。

2023年4月、6つの機関の覚書から

Brave1は2023年4月26日に発表されました。国防省の報道機関「アルミヤ・インフォルム」の同日の記事によれば、デジタル変革省、国防省、ウクライナ軍参謀本部、国家安全保障国防会議、戦略産業省、経済省の6機関が、防衛技術(defense tech)の分野の「統一の調整プラットフォーム」としてBrave1を設け、協力の覚書に署名しました。発表の場でデジタル変革相は、開発者が自分の事業を申し込み、軍の専門的な評価や助成を受けられるポータルを紹介しています。

発表時に掲げられた活動は次の5つでした。

  • Invest:治安・国防部隊が優先とした分野の開発者に助成を出す
  • Invent:治安・国防部隊が、ウクライナの開発者の中から有効な技術を見つけるのを助ける
  • Platform:この分野のすべての関係者をつなぐ場をつくる
  • Showcase:開発した技術を国防部隊に実演し、使った側の評価を返してもらう
  • Boost:優先とされた事業を総合的に支える

運営するのは国の「イノベーション開発基金」

Brave1のサイトは、Brave1を「イノベーション開発基金(Фонд розвитку інновацій)が実施する国の取り組み」と説明しています。基金の資金は、デジタル変革省の予算プログラムとして国家予算から出ます(2018年12月12日の内閣決定第1110号)。2023年3月10日の改正(内閣決定第219号)で、基金がスタートアップなどの事業に競争で資金を出すとき、その事業は、二重用途の技術を含む技術の発展や、革新の開発と導入に向けたものであることが定められました。

Brave1の名が内閣の決定に現れるのは、2024年3月8日の内閣決定第262号「国防のための革新と技術の発展の確保に関するいくつかの問題について」です。この決定で、基金は「Brave 1」の助成プログラムを設け、競争で選んだ開発に1件899万9,999フリヴニャまでの定額の助成を出せることになりました。

900万フリヴニャ以上の大型の支援は、同じ決定の手続きにもとづき、国防省、内務省、軍の司令部、国家親衛隊、国防省情報総局などの書面の要請を受けて「Brave 1」の競争で行います。受け手1社あたりの上限は9億フリヴニャです。この大型の支援を受けられるのはウクライナで登録された法人で、国や自治体が25%以上を持つ会社と非営利の組織は除かれます。ロシアが占領した地域に登録された会社、ロシアやベラルーシに子会社や支店を持つ会社、ロシアやベラルーシの国民が実質的な支配者にいる会社(ウクライナに合法的に定住する人を除く)、制裁の対象者がかかわる会社なども対象外です。

決定第262号は2025年と2026年に改められ、2026年6月24日の改正(内閣決定第829号)では、外国の資金を使う支援の手続きと、外国の技術を試験・調査する手続きが加わりました。

開発の段階ごとに4つの額

通常の助成は、基金の監督評議会が2025年11月20日に承認し、2026年8月25日まで改正を重ねた「Brave1助成プログラム第1号規程」で運用されています。額は開発の段階で分かれます。

上限額何のための助成か
50万フリヴニャアイデアの検証と研究
200万フリヴニャ実験室での試作品(ラボサンプル)づくり
400万フリヴニャ試作品をつくり、基金の立ち会いで試験場で試す
800万フリヴニャ製品として仕上げ、国防・治安部隊の部隊に試してもらう
Brave1助成プログラム第1号規程 第3.3項の主な区分(2026年8月25日の改正時点)。一部の分野は試験の方法や区分が異なる。

1つの開発者(法人)が1会計年度に受けられる助成は、合計3,000万フリヴニャまでです。すでに軍での採用の手続き(コード化)を終えた製品や、運用が認められた製品には使えません。申請は法令順守の審査を経て、基金の監督評議会が決めます。評議会は、必要なら開発者に評議会の前でのプレゼンを求めます。

国防省の発表では、助成のねらいは、製品の技術成熟度(TRL。1が着想、9が量産できる製品)を戦場で使える水準に上げることです。規制改革を支援する機関BRDOが防衛技術の製造者に行った調査では、Brave1の助成でTRLが平均1.7上がり、回答者の79%が、同じような支援はほかでは得られないと答えたとされています。

オリュカのひとこと

62億フリヴニャは、どこへどう配られた額なのでしょう。内訳の数字と発表の時点をあわせて見ましょう。

62億フリヴニャの内訳

仕組み件数
通常の助成プログラム977件23億フリヴニャ
特別助成プログラム(「ミサイル」「人工知能」の分野)20件1億4,500万フリヴニャ
EU4UA Defence Tech(EUの支援、2026年)11件8,100万フリヴニャ
助成コンペ(国防省・参謀本部などと決めた優先分野)34件37億フリヴニャ
ウクライナ国防省の発表(2026年9月14日)。合計すると約1,040件、約62億フリヴニャになる。

通常の助成で件数が多かった分野は、無人航空システム(215件)、無人地上車両(199件)、電子戦と信号・電子情報の収集(49件)でした。額が最も大きい助成コンペは34件で、国防省によれば、巡航・弾道ミサイル、地対空ミサイル、自律技術の開発や、爆薬の生産の拡大に充てられています。

EUの支援による「EU4UA Defence Tech」は、予算が1億5,000万フリヴニャを超え、約40件の助成を見込むプログラムで、2026年にはこのうち11件が出されました。

助成のほかの役割

デジタル変革省のBrave1のページは、設立から2年の成果として、クラスターに加わる開発者が1,500を超え、無人機、ロボット、電子戦、通信、人工知能などの分野で3,600を超える解決策が集まり、8,500万ドルを超える民間の投資が呼び込まれたと書いています。防衛技術の「マーケットプレイス」であるBrave1 Marketを立ち上げたことも挙げています。国防省は、Brave1が資金のほかに、試験、軍からの評価の受け取り、提携づくり、軍への導入も手伝っているとしています。

戦時下のウクライナの産業全体の比重は戦時下のウクライナの産業──農業・製造・サービス・エネルギーの比重、中小企業向けの国の融資は新たに2人雇えば金利は5%に。ウクライナの中小企業融資「5-7-9」で扱っています。

出典・参考資料

  1. Brave1 has awarded more than 1,000 grants to Ukrainian defense developers(2026年9月14日。62億フリヴニャ、1,000件超、プログラム別の件数と額、TRLの調査、持ち分・知的財産を求めないこと)
    発行:Міністерство оборони України 確認日:2026-09-24
  2. В Україні запустили кластер з розвитку оборонних технологій BRAVE1(2023年4月26日。6機関、覚書、5つの活動)
    発行:АрміяInform(Міністерство оборони України) 確認日:2026-09-24
  3. Ukraine launches BRAVE1 defence tech cluster to stimulate development of military innovations and defence technologies(2023年4月26日。6機関)
    発行:Кабінет Міністрів України 確認日:2026-09-24
  4. Про Brave1(イノベーション開発基金が実施する国の取り組み)
    発行:Brave1 確認日:2026-09-24
  5. Положення про Грантову програму Brave1 № 1(2025年11月20日承認、2026年8月25日までの改正。第1.1・3.2〜3.4・9項)
    発行:Фонд розвитку інновацій 確認日:2026-09-24
  6. Постанова КМУ № 262 «Деякі питання забезпечення розвитку інновацій та технологій для потреб оборони»(2024年3月8日。第2項、手続き第1〜6項、2026年6月24日の改正までの版)
    発行:Кабінет Міністрів України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  7. Постанова КМУ № 1110(2018年12月12日。イノベーション開発基金の予算の使い方)
    発行:Кабінет Міністрів України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  8. Постанова КМУ № 219(2023年3月10日。決定第1110号の改正、二重用途の技術)
    発行:Кабінет Міністрів України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  9. Brave1 — Проєкти(設立2年の成果として示された開発者数・解決策の数・民間投資、Brave1 Market)
    発行:Міністерство цифрової трансформації України 確認日:2026-09-24

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