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社会を知る/解説

支援団体を知る前に確認したい、活動と会計の情報はどこまで公開されているのか

寄付や協力の相手を選ぶとき、どこまでの情報を法律が公開させているのかは、団体の法人格によって違います。この記事は特定の団体を推薦も評価もしません。日本とウクライナの法令と公的なデータベースに即して、何をどこで見られるのか、そして何は公開されていないのかを整理します。

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2022年2月24日のロシアによるウクライナへの全面侵攻のあと、日本でも支援を募る団体の名前を見かける機会が増えました。相手を選ぶとき、多くの人はまず団体のウェブサイトを読みます。ただ、そこにあるのは団体が自分で書いた説明です。それとは別に、法律が公開を義務づけている情報があり、その範囲は団体の法人格によってかなり違います。

この記事はどの団体が良いかを判定しません。確認の観点と、公開情報のどこを見るのかを、日本とウクライナの条文に即して示します。

1. まず法人格を見る。開示の義務はそこで決まる

団体の種類作成・備置き・公告・提出事務所での閲覧を請求できる人
NPO法人前年度の事業報告書・計算書類・財産目録・年間役員名簿等を毎事業年度初めの3月以内に作成し備置き(特定非営利活動促進法28条1項)/貸借対照表を定款所定の方法で公告(28条の2)/毎事業年度1回、所轄庁へ提出(29条)。所轄庁は過去5年分を閲覧・謄写させる(30条)社員その他の利害関係人(28条3項)
認定NPO法人・特例認定NPO法人上に加え、役員報酬・職員給与の支給に関する規程、収益の明細等の書類を備置き(54条2項)/助成金を出したらその実績も備置き(54条3項)/所轄庁へ提出(55条)、所轄庁が閲覧・謄写させる(56条)限定なし(54条4項)。ただし寄附者名簿は閲覧義務の対象外
公益社団法人・公益財団法人年度開始の前日までに当年度の事業計画書・収支予算書等を備置き(公益認定法21条1項)/財産目録・役員等名簿・報酬等の支給の基準を備置き(21条2項)何人も(21条5項)。名簿の住所部分は除外可(21条6項)
一般社団法人・一般財団法人計算書類等を備置き(一般社団・財団法人法129条1項2項)/一般社団法人は定時社員総会後に貸借対照表を公告(128条1項)社員及び債権者(129条3項)
任意団体(法人格なし)上記の法律はいずれも適用されない。法人番号も指定されない法令上の定めなし
出典:各法律の条文(e-Gov法令検索、2026年9月23日確認)。一般財団法人への第199条による準用は編集部で直接確認していない。

右の列がいちばん見落とされます。NPO法人の第二十八条第三項は「その社員その他の利害関係人から」と書き、誰でも請求できるとはしていません。認定を受けると第五十四条第四項が請求者を限定しなくなり、公益法人は第二十一条第五項で「何人も」に開かれます。一般社団・財団法人では「社員及び債権者」に戻り、寄付をしただけの人は含まれません。同じ「非営利団体」でも、書類を見せてもらえる立場かどうかが法人格で変わります。

認定NPO法人の寄附者名簿が閲覧義務から外れている点も押さえておく価値があります。誰が寄付したかは、備置きの対象であっても公開の対象ではありません。任意団体については、信用できないのではなく、法律が代わりに確かめてくれる部分がないということです。

公開情報の入口は二つあります。NPO法人は内閣府の「NPO法人ポータルサイト」で検索でき、定款や事業報告書、貸借対照表などを見られます。根拠は第七十二条第一項で、内閣総理大臣と所轄庁にデータベース整備を求めています。ただし同条第二項は、所轄庁と法人がそこに記録して積極的に公表するよう「努めるものとする」と書いており、記録すること自体は義務ではありません。ポータルで見つからないことが、直ちに違法を意味するわけではない、ということです。公益法人は内閣府の「公益法人Information」に法人検索や事業報告等の公開情報が置かれています。

2. 「寄付金控除の対象」が保証していること

所得税法第七十八条第二項は、特定寄附金を、国・地方公共団体への寄附金、財務大臣が指定した寄附金、別表第一に掲げる法人など公益の増進に著しく寄与する法人への寄附金、公益信託の信託財産とするための寄附金と定義しています。これに租税特別措置法第四十一条の十八の二(認定NPO法人等)と第四十一条の十八の三(公益社団法人等)の特別控除が加わります。裏返すと、一般社団・財団法人や任意団体への寄付は原則として対象外です。控除の可否は法人格と認定の有無で決まるのであって、活動の質を採点したものではありません。

認定の基準(特定非営利活動促進法第四十五条第一項)が見ているのは、広く市民からの支援を受けているか(第一号)、運営組織と経理(第三号)、閲覧請求に応じること(第五号)、事業報告書等を所轄庁に提出していること(第六号)、設立から一年を超えていること(第八号)です。組織の形と情報公開の姿勢を見る基準であって、個々の送金が現地で役に立ったかを見る基準ではありません。有効期間は認定の日から五年です(第五十一条)。認定はある時点で基準を満たしたという事実であり、進行中の事業の成果の保証ではありません。

3. 会計は、比率ではなく構造を見る

「事業費の比率が高いほど良い団体」という見方には限界があります。ウクライナの「慈善活動および慈善団体に関する法律」(2012年、第5073-VI号)第十六条第三項は、慈善団体の管理費は当年の収入の20パーセントを超えてはならないと定めています。比率はここでは守るべき法律上の上限であって、団体を並べる目盛りとして設計されたものではありません。

日本側も同様です。特定非営利活動促進法第二十七条(会計の原則)が求めるのは、正規の簿記の原則に従うこと、計算書類(活動計算書と貸借対照表)と財産目録が実績と財政状態を真実に明瞭に表示すること、採用する基準と手続を毎事業年度継続して適用することです。事業費と管理費の線引きの方法は書かれていません。同じ人件費をどちらに寄せるかは団体が採用した基準しだいで、比率は団体をまたいで単純に比べられる数字ではありません

代わりに見られるのは構造です。ウクライナの同法第七条第一項は、公開募金を「不特定の人々のあいだで目的を定めた支援を自発的に集めること」と定義しています。目的を定めて集めた資金はその目的に縛られるため、年度末の残高は、それだけでは非効率を意味しません。複数年にわたる事業や使途の限られた寄付の反映かもしれないからです。逆に、単年度の数字で多年度の事業の達成度は測れません。事業報告書等は事業年度ごとに作られる(第二十八条第一項)ので、複数年度を並べて読む必要があります。

4. 活動報告は、主語を見る

活動報告で情報量が多いのは主語です。「支援しました」は団体が支出したこと、「届きました」は受け取った側で何かが確認されたことを述べています。別の事実で、証拠も別です。この区別そのものは、本サイトの復興プロジェクトの成果の確かめ方で金額と工事の段階に即して扱いました。ここでは団体を見る側の話に絞ります。

ウクライナの法律は、公開募金を行う人に報告経路をあらかじめ書面で定めることを求めています。慈善団体の名において募金する人は代表者の公証済み委任状にもとづいて行動し、その委任状には目的、場所、期間、使途の手順、そして慈善団体の財務報告への一般的なアクセスの手順を定めなければなりません(第七条第二項)。自分の名で募る場合は団体との契約に、団体以外の受益者のために募る場合は受益者側との契約に、同種の事項を定めます(同条第三項・第四項)。適法に募金している主体であれば、財務報告をどこで見られるかは、あらかじめ決まっているはずです。「財務報告はどこで見られますか」は、制度が想定している問いです。

出し渋られたときの根拠も同じ法律にあります。第十七条第三項は、慈善団体の収入と支出の構造および規模、資産の使用条件は、秘密情報でも営業秘密でもないと明記しています。ただし同条第一項は報告を「法律で定められた手続に従って」作成・提出するとしか書いておらず、すべての団体の財務報告が自動的にどこかに並ぶ制度ではありません。

5. ウクライナ側の団体を確認する場合

ウクライナには「法人、個人事業者および公的形成体の国家登録に関する法律」(第755-IV号)にもとづく統一国家登記簿(Єдиний державний реєстр、ЄДР)があります。第十一条第一項は、登記簿の情報は「公開され、誰でもアクセスできる」(納税者登録カードの番号とパスポートのデータを除く)と定めます。第十一条第二項第一号は、電子サービスポータルを通じた無料アクセスの対象として、所在地、活動の種類、法人を代理して行為できる者、代表権の制限の有無、終了手続中かどうかなどを挙げ、名称や識別コードで検索して閲覧・印刷できるとしています。登記される内容は第九条にあり、名称、識別コード、組織法的形態、公的形成体の種類と活動目的、設立者の一覧などです。ここは登録情報の登記簿であって、財務諸表の公開の場ではありません

正直に書いておきます。編集部は、この無料検索を実際に開けていません。ウクライナ法務省の無料検索ページ(usr.minjust.gov.ua)は、本記事作成時点の日本からの接続では接続タイムアウトとなりました。画面上で実際にどの項目が表示されるか、日本からの利用に制限があるかは確認できていません。上に書いたのは、あくまで法律がそう定めているという事実です。戦時下のアクセス制限の有無も確認できていません。

6. 急いで決めないための手順

制度の設計上、できたばかりの団体には、まだ提出された報告がありません。NPO法人の提出は毎事業年度一回(第二十九条)、認定の基準は設立から一年を超える期間の経過を求めています(第四十五条第一項第八号)。最初の年度が終わるまで、外から見られる公的な記録は原則としてありません。落ち度ではなく制度がそうなっているだけで、材料が薄いときに急いで判断しなくてよい、ということでもあります。

  • 法人格は何か。名乗りではなく、法人番号公表サイトや所轄庁の情報で裏を取る
  • その法人格には法令上どこまでの開示義務があるか。自分は閲覧を請求できる立場か
  • 公開されている書類を実際に開く。開いて読むまでは「公開されている」は確認済みではない
  • 募っている資金は目的を定めたものか。定めているなら、その目的で使われたことはどの書類に現れるか
  • 活動報告の主語は何か。自団体の支出の報告か、受け取った側での確認の報告か
  • 現地の相手方がいるなら登記上実在するか。ЄДРで確かめられるのは登録情報までで、会計は別に尋ねる
  • 急ぐ理由が示されているか。示されていないなら、次の年次報告が出るまで待つ選択肢がある

これらは団体を疑うための観点ではありません。公開情報の範囲は法人格によって違い、それを知らないまま「情報が少ない団体」と判断するほうが間違いやすいからです。制度の違いを、団体の姿勢の違いと取り違えないことが最初の一歩になります。

最後に本媒体自身のことも書きます。「相手の会計を確かめてください」と言う以上、同じことは本媒体にも当てはまります。本サイトが読者からの寄付や募金の取次ぎを行う場合には、受け入れる主体、使途、会計の公開方法、手数料の有無を記事上で明示します。それを書いていない募集は、この記事の基準では、読者が確かめようのない募集です。

出典・参考資料

  1. 特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第27条・第28条・第28条の2・第29条・第30条・第45条・第51条・第54条・第55条・第56条・第72条
    発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-09-23
  2. 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成十八年法律第四十九号)第21条・第57条
    発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-09-23
  3. 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第128条・第129条
    発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-09-23
  4. 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第78条
    発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-09-23
  5. 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)第41条の18の2・第41条の18の3
    発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-09-23
  6. タックスアンサー No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)(令和8年4月1日現在法令等)
    発行:国税庁 確認日:2026-09-23
  7. NPO法人ポータルサイト
    発行:内閣府 確認日:2026-09-23
  8. 国・都道府県公式公益法人行政総合情報サイト 公益法人Information
    発行:内閣府 公益認定等委員会事務局・公益法人行政担当室 確認日:2026-09-23
  9. 法人番号公表サイト(公表される基本3情報の確認)
    発行:国税庁 確認日:2026-09-23
  10. Закон України «Про державну реєстрацію юридичних осіб, фізичних осіб — підприємців та громадських формувань» № 755-IV, статті 9 і 11
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-23
  11. Закон України «Про благодійну діяльність та благодійні організації» № 5073-VI, статті 7, 16, 17
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-23
  12. Безоплатний пошук у Єдиному державному реєстрі(編集部の環境では接続できず、内容は未確認)
    発行:Міністерство юстиції України 確認日:2026-09-23

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