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ビジネス・復興/解説

利益ではなく配当に9%。Дія Сіті の会社が選べる法人税

ウクライナのIT企業向けの法制度 Дія Сіті(ディーヤ・シティ)の会員企業は、利益に18%の法人税を払う代わりに、配当など会社の外へ出ていくお金に9%を払う方式を選べます。働く人の給与と報酬は、年24万ユーロ相当までが5%の所得税です。税法典の条文から、二つの仕組みと条件を説明します。

オリュカのひとこと

「引き出された資本」とは、何を指すのでしょうか。18%の利益課税と並べて読みましょう。

ウクライナの法人税(企業利潤税)の基本の税率は18%です。ところが、Дія Сіті(ディーヤ・シティ)という法制度に入った会社は、利益にかけるこの方式とは別に、「引き出された資本」に9%をかける方式を選ぶことができます。利益を会社の中にとどめているあいだは課税されず、配当などとして株主に払い出したときに課税される、という考え方の仕組みです。

Дія Сіті は、2021年7月15日の法律 № 1667-IX「ウクライナにおけるデジタル経済の発展促進について」がつくった制度です。税の特例は、2021年12月14日の法律 № 1946-IX が税法典を改正して定め、2022年1月1日に施行されました。会員企業(резидент Дія Сіті)になるための人員や報酬の要件、働く人との契約の形(ギグ契約など)と知的財産の扱いは、ウクライナの技術者と契約する前にで扱っています。この記事は税に絞ります。

会社の税:18%の利益課税か、9%の「引き出された資本」課税か

税法典136条8項は、会員企業のうち「特別な条件での納税者」(платник податку на особливих умовах)について、税率を課税標準の9%と定めています。同じ会員企業でも、この方式をとらない会社は通常の納税者として、136条1項の18%で利益に課税されます。

9%の方式で課税の対象になるのは、会社の利益そのものではなく、決められた種類の支払いです。税法典141条の9の1は、対象となる取引を列挙しています。たとえば次のようなものです。

  • 株主への配当の支払い(相手が同じ方式の会員企業である場合を除く)
  • 株主の脱退、会社の清算、自社株の買い戻しに伴って、出資を返したりお金を払ったりすること
  • 同じ方式の会員企業ではない相手に払う利息のうち、条文で定められたもの

列挙はこのほかにも続き、会社の外へ価値が移る取引を広く押さえる形になっています。関連する相手との取引の値段が、独立した当事者どうしの値段(いわゆる独立企業間価格)からずれている場合は、そのずれの部分には9%ではなく136条1項の基本の税率で課税する、という定めもあります(141条の9の1第3項)。

Дія Сіті の公式サイトは、この二つの方式を「『引き出された資本』に9%、または利益に18%」と紹介しています。

働く人の税:年24万ユーロ相当まで所得税5%

会員企業で働く人の給与や報酬には、軽い税率が用意されています。税法典170条の14の1によれば、会員企業から「会員企業の専門家」に払われる次の収入は、所得税率5%(167条2項)で課税されます。

  • 給与
  • ギグ契約による報酬(注文で作った著作物の対価と、その権利の移転の対価を含む)
  • 職務上の著作物をつくり、その権利を移すことへの対価

条件が三つあります。一つ目は時期で、5%が使えるのは会社が会員企業の資格を得た月の翌月からです。資格を得た月の分は通常の18%です。二つ目は金額で、5%の定めが適用されるのは、年間の給与・報酬が、その年の1月1日のウクライナ国立銀行の公式レートで24万ユーロ相当を超えない範囲とされています。三つ目は2025年の改正(2025年8月21日の法律 № 4577-IX)で加わったもので、防衛産業向けの別の制度 Дефенс Сіті(ディフェンス・シティ)の会員を兼ねる会社が払う収入は、この5%の対象から外れています。

Дія Сіті の公式サイト(2026年9月24日閲覧)は、働く人にかかる負担を「所得税5%、軍事税5%、統一社会拠出金は最低賃金の22%」と表示しています。統一社会拠出金(ЄСВ)は、日本の社会保険料にあたるものです。

株主の個人が受け取る配当

9%の方式をとる会員企業から個人の株主が受け取る配当には、所得税の特例もあります。税法典170条5項5号は、そうした会社が払う配当を、個人の課税所得に含めないと定めています。条件は、その会社が「2暦年続けて配当を払っていない」ことです。この条件にあたらない場合、ウクライナの利潤税の納税者である会社から受け取る配当の税率は、通常どおり5%です(167条5項2号)。

誰の、何に通常の場合Дія Сіті の特例
会社の利益企業利潤税18%(136条1項)利益ではなく配当などの支払いに9%(136条8項・141条の9の1)。選ばなければ18%
働く人の給与・ギグ報酬所得税18%(167条1項)所得税5%(167条2項・170条の14の1)。資格取得の翌月から、年24万ユーロ相当まで
個人が受け取る配当所得税5%(167条5項2号)2暦年続けて配当を払っていない会社からのものは課税所得に含めない(170条5項5号)
ウクライナ税法典の2026年9月24日時点の条文による。軍事税と統一社会拠出金は表に含めていない。条文の日本語は仮訳。

オリュカのひとこと

「25年の保証」は、何を25年守るという意味でしょうか。条文の書き方を確かめましょう。

25年の保証

法律 № 1667-IX の3条は、Дія Сіті の法制度を「期限を定めず、ただし最初の会員企業が登録された日から25年以上」続くものとし、その25年のあいだ、国が制度の効力と条件の安定を保証すると定めています。同じ条文は、この間に法律がより有利な条件を定めた場合には、会員企業と働く人にその有利な条件が適用される、としています。

ただし、税率の数字そのものは、これまでにも別の法律で書き換えられてきました。2024年12月4日の法律 № 4113-IX は、働く人の所得税を定める170条の14の1の一部を書き直しています。会社や働く人の実際の税負担を見積もるときは、その時点の税法典の条文と、国家税務局の説明を確かめる必要があります。

出典・参考資料

  1. Податковий кодекс України № 2755-VI(2026年9月24日時点の条文。136条1項・8項、141条の9の1第1〜3項、167条1項・2項・5項、170条5項5号、170条の14の1第1〜3項と各項の改正注記)
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  2. Закон України «Про внесення змін до Податкового кодексу України та інших законів України щодо стимулювання розвитку цифрової економіки в Україні» № 1946-IX(2021年12月14日。施行日2022年1月1日、統一社会拠出金法の改正)
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  3. Закон України «Про стимулювання розвитку цифрової економіки в Україні» № 1667-IX(2021年7月15日。3条 制度の期間と安定の保証)
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  4. Дія.City 公式サイト(「低い税率」の表示:所得税5%、統一社会拠出金は最低賃金の22%、軍事税5%、「引き出された資本」に9%または利益に18%、条件は25年固定)
    発行:Міністерство цифрової трансформації України 確認日:2026-09-24

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