本文へ移動

ウクライナの人・文化・社会・未来を、日本と世界につなぐ

Ukrainavi Ukrainavi

日本とのつながり/データ・資料

日本赤十字社のウクライナ救援金102億円は、どこへ行ったか

日本赤十字社の「ウクライナ人道危機救援金」には、2026年8月末までに102億円余りが寄せられました。約50億円は2022年のうちに国際赤十字へ送られ、残りはウクライナ赤十字社と組んだリハビリ、巡回診療、在宅ケアなどの事業に使われています。受付は2027年3月末まで延長されています。

日本赤十字社(日赤)が2022年3月2日から受け付けている「ウクライナ人道危機救援金」には、2026年8月31日現在で102億4,211万8,053円が寄せられています(日赤の募集ページ。金融機関からの入金の時期による誤差があると注記されています)。受付期間は何度か延長され、いまは2027年3月31日までです。

この102億円は、どこで、何に使われているのか。日赤が公表している報告から、お金の流れを追います。

最初の半年で、50億円を国際赤十字へ

全面侵攻から5日後の2022年3月1日、日赤は国際赤十字に2,000万円の緊急資金援助を行い、翌2日に救援金の募集を始めました。

集まった救援金は、赤十字の二つの国際機関に送られました。紛争地で活動する赤十字国際委員会(ICRC)と、各国の赤十字社・赤新月社の連合体である国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC、日赤の表記では「連盟」)です。日赤の発表を並べると、送金は次のように積み上がりました。

発表日追加の資金援助送金の累計(IFRCとICRCの合計)
2022年3月1日2,000万円(緊急資金援助)
2022年3月18日7億円(決定)
2022年4月8日14億円(IFRCとICRCに7億円ずつ)
2022年4月25日7億円(3.5億円ずつ)28億2,000万円
2022年5月31日9億円(4.5億円ずつ)37億2,000万円
2022年6月30日10億円(5億円ずつ)47億2,000万円
2022年8月5日3億円(1億5,000万円ずつ)50億2,000万円(25億1,000万円ずつ)
日本赤十字社の各回の発表(2022年3月18日〜8月5日)から作成。累計は各発表に書かれた額。2026年9月24日に確認。

8月5日の時点で、IFRCとICRCへの送金は合わせて50億2,000万円、それぞれ25億1,000万円ずつになりました。いまの募集ページは「50億円送金済」(ICRCとIFRCに25億円ずつ)と書いています。3月1日の2,000万円を足すと、活動報告のページにある「総額50億2,000万円の資金援助」と一致します。

寄付はどう集まったか

一方、救援金の受付額は次のように推移しています。

時点救援金の受付額出典
2022年8月5日63億3,308万5,157円半年の報告(2022年9月7日)
2023年11月30日91億7,939万6,351円2年の報告(2024年2月28日)
2026年1月まで約100億円2025年度の総括(2026年3月18日)
2026年8月31日102億4,211万8,053円募集ページ
日本赤十字社の発表と募集ページから作成。2026年9月24日に確認。

いまの受付額の6割あまりは、最初の5か月ほどで集まったことになります。そのあと2023年11月末までにさらに28億円余り、そこから2026年8月末までの2年9か月では10億円余りが加わっています。

受付期間も、何度も延ばされました。当初は2022年5月31日まで。その後、9月30日、2023年3月31日、2024年3月31日、2025年3月31日と延び、2026年3月には、それまでの2026年3月31日から2027年3月31日まで延長されています。2022年9月に延長したとき、日赤はその理由を、紛争が長期化し、中長期と紛争終了後の復興・復旧に向けた支援が必要になるためと説明していました。

残りの50億円余り:ウクライナ赤十字社との二国間事業

50億円を国際赤十字に送ったあと、残りの救援金はどう使われているのか。日赤は2024年2月の報告で、2023年11月末までの受付額91億7,939万6,351円のうち50億円を国際赤十字に送り、残りの41億7,000万円で、ウクライナ赤十字社と協力する二国間事業などを進めていると書いています。

2026年3月の総括によれば、日赤は避難民が多く身を寄せるウクライナ西部を主な対象に、次の事業を行っています。

分野事業
保健医療訪問リハビリテーション支援イヴァーノ=フランキーウシク州
保健医療リハビリテーションセンター増改築支援リヴィウ州
保健医療巡回診療支援イヴァーノ=フランキーウシク州
社会福祉在宅ケア支援ヴィーンヌィツャ州、ジトーミル州
社会福祉コミュニティセンター支援ヴィーンヌィツャ州
その他緊急対応チーム支援ザカルパッチャ州、イヴァーノ=フランキーウシク州
日本赤十字社「2025年度の国際活動を振り返って ~総括編 第3号~」(2026年3月18日)の「現在実施中の二国間支援事業」から作成。州名は日赤の表記と異なる場合がある(ヴィーンヌィツャ州は日赤の表記では「ヴィンニツァ州」、イヴァーノ=フランキーウシク州は「イヴァノ=フランキウスク州」)。

日赤の活動報告のページは、事業の中身をもう少し詳しく書いています。在宅ケアは、家族が戦線に行って一人暮らしになった高齢者や、避難民、障がいのある人とその家族を、ソーシャルヘルパーが支えるものです。ヴィーンヌィツャ州のコミュニティセンターは、診療所、救急車、巡回診療、訪問看護といったサービスの拠点として建設が予定されています。このほか、救急車10台(救護班用5台と巡回診療用5台。国内での調達が難しいためIFRCを通じて調達)、ウクライナ赤十字社が行う現金給付への資金援助(とくに国内避難民を受け入れるホストファミリーが対象)、厳冬期の支援として、2022年に発電機や家庭用の薪ストーブ3,000台、2023年にセラミックヒーター1,000台などを整えたと報告しています。

人の派遣もあります。日赤は2024年5月から首都キーウに現地代表部を本格的に置き、事業を管理しています。これまでに理学療法士3人をウクライナに派遣してリハビリの技術指導を行い、全面侵攻の直後には、西部のウージュホロドで仮設診療所を立ち上げるために薬剤師と放射線技師を送りました。

ただし、二国間事業にこれまでいくら使い、いくらがこれからの事業のために残っているのかは、日赤の公開ページでは確認できませんでした。募集ページは、国際赤十字への送金額を除いた額を「この人道危機で援助を必要とする人々への支援および復興支援に充てさせていただいています」と書いています。

国際赤十字に送られたお金は、何に使われたか

日赤が送った50億円は、IFRCとICRCがそれぞれ出している緊急救援アピール(資金援助の要請)に充てられました。ここから先は、世界中の赤十字から集まった資金と一緒に使われるため、日赤の分だけを切り出すことはできません。わかるのは、アピール全体の規模と活動の中身です。

IFRCが2025年12月17日に出した改訂版のアピールによれば、2022年2月から2024年12月までに、IFRCのネットワークはウクライナ国内と45か国で2,200万件を超える人道支援サービスを届け、そのなかには200万件を超える心のケアのサービスが含まれます。IFRC事務局としての資金要請は8億スイスフラン、各国赤十字社の国内での活動を含めた全体では31億スイスフランとされています。アピールの期限は2027年12月31日まで延ばされました。

ICRCは1993年からウクライナで活動しています。2026年のアピールでは、ウクライナでの予算を1億5,550万9,000スイスフランとし、捕虜や拘束された民間人の保護、離ればなれになった家族の消息の確認に力を入れるとしています。ICRCによれば、この武力紛争に関連して消息の確認を求められている人は19万人を超え、その多くが軍人です。

赤十字の言葉づかいについて

この記事で参照した日赤の報告では、ロシアによる全面侵攻は「ロシアとウクライナ間の武力紛争」「ウクライナ人道危機」と書かれ、「侵略」という語は使われていません。これは赤十字の基本原則によるものです。日赤が掲げる7原則の一つ「中立」は、「戦闘行為の時いずれの側にも加わることを控え、いかなる場合にも、政治的、人種的、宗教的または思想的性格の論争には参加しない」としています。ICRCも2026年のアピールで、求められれば紛争の当事者の間に立つ「中立の仲介者」として動き続けるとしています。

同じ理由で、赤十字の支援はウクライナの外にも及びます。日赤の募集ページは使途を「ウクライナでの人道危機対応及びウクライナからの避難民を受け入れる周辺国とその他の国々における救援活動」としています。2022年の日赤の発表では、IFRCが支える周辺国の赤十字社としてポーランド、ハンガリー、スロバキア、モルドバ、ルーマニアとともにロシアとベラルーシも挙げられ、2025年のIFRCのアピールも、モルドバ赤十字社とロシア赤十字社への支援の枠を残しています。日赤の救援金がどの国でいくら使われたかの内訳は公表されていません。

この記事は、Ukrainavi の立場としては「ロシアによる全面侵攻」と書きます。そのうえで、赤十字が別の言葉を使う理由は、寄付を考えるときに知っておいてよいことです。支援団体が何をどこまで公開しているかの見方は、支援団体の情報はどこまで公開されているかでも扱っています。

出典・参考資料

  1. ウクライナ人道危機救援金(受付金額2026年8月31日現在、受付期間2022年3月2日〜2027年3月31日、ICRC・IFRCへの送金額、日本赤十字社が行う支援、使途の説明)
    発行:日本赤十字社 確認日:2026-09-24
  2. ウクライナ人道危機救援(活動実績。総額50億2,000万円の資金援助、二国間事業の内容、救急車10台、厳冬期対策、現地代表部と人的派遣)
    発行:日本赤十字社 確認日:2026-09-24
  3. 【速報6】ウクライナ危機:日本赤十字社より国際赤十字に7億円の追加資金援助を決定(2022年3月18日)
    発行:日本赤十字社 確認日:2026-09-24
  4. 【速報9】ウクライナ危機:日本赤十字社より国際赤十字に14億円の追加資金援助を実施(2022年4月8日)
    発行:日本赤十字社 確認日:2026-09-24
  5. 【速報11】ウクライナ危機:国際赤十字に7億円の追加資金援助実施 救援金募集期間を9月末まで延長(2022年4月25日。累計28億2,000万円、IFRCが支える周辺国の赤十字社)
    発行:日本赤十字社 確認日:2026-09-24
  6. 【速報15】ウクライナ危機:国際赤十字に9億円の追加資金援助を実施(2022年5月31日)
    発行:日本赤十字社 確認日:2026-09-24
  7. 【速報19】ウクライナ危機:国際赤十字に10億円の追加資金援助を実施(2022年6月30日)
    発行:日本赤十字社 確認日:2026-09-24
  8. 【速報22】ウクライナ危機:国際赤十字に3億円の追加資金援助を実施(2022年8月5日。累計50億2,000万円)
    発行:日本赤十字社 確認日:2026-09-24
  9. ウクライナ人道危機から半年:赤十字活動の軌跡とこれから(2022年9月7日。3月1日の2,000万円、8月5日時点の受付額、2023年3月31日までの延長)
    発行:日本赤十字社 確認日:2026-09-24
  10. ウクライナ人道危機:あれから1年、多くの命が脅かされてから。(2023年3月1日。受付期間2024年3月31日まで)
    発行:日本赤十字社 確認日:2026-09-24
  11. ウクライナ人道危機から2年、赤十字の活動は今(2024年2月28日。2023年11月30日時点の受付額、残り41億7,000万円、2025年3月31日までの延長)
    発行:日本赤十字社 確認日:2026-09-24
  12. 依然として続く不安定な状況下でのウクライナ赤十字社との歩み(2024年12月4日。2024年5月からのキーウ現地代表部)
    発行:日本赤十字社 確認日:2026-09-24
  13. ウクライナ人道危機から4年(2026年3月10日。2027年3月31日までの延長)
    発行:日本赤十字社 確認日:2026-09-24
  14. 2025年度の国際活動を振り返って ~総括編 第3号~(2026年3月18日。2026年1月までの受付額約100億円、実施中の二国間支援事業)
    発行:日本赤十字社 確認日:2026-09-24
  15. ウクライナ人道危機 ~リハビリ支援を通して聞こえてくる人びとの声~(2026年6月10日。理学療法士3人の派遣)
    発行:日本赤十字社 確認日:2026-09-24
  16. 赤十字の7原則(中立の原則の文言)
    発行:日本赤十字社 確認日:2026-09-24
  17. Revised Emergency Appeal MGR65002 Ukraine and Impacted Countries(2025年12月17日。資金要請額、2022年2月以降の実績、期限の延長、モルドバ赤十字社・ロシア赤十字社への支援の枠)
    発行:国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)、日本赤十字社のサイトに掲載 確認日:2026-09-24
  18. ICRC Appeal 2026: Ukraine(予算、1993年からの活動、消息確認の対象19万人超)
    発行:赤十字国際委員会(ICRC)、日本赤十字社のサイトに掲載 確認日:2026-09-24

記載内容に誤りを見つけた場合は、訂正のご連絡からお知らせください。確認のうえ、訂正した内容と経緯を記事に記載します。