ウクライナ語は2022年8月からVoiceTraに。翻訳アプリと窓口の通訳
国の研究機関 NICT の無料の音声翻訳アプリ VoiceTra は、2022年8月にウクライナ語を加え、音声での入力と読み上げに対応しています。旅行会話を一文ずつ訳すための研究用アプリです。自治体の窓口の翻訳機や映像通訳の例、翻訳機に伝わりやすい話し方、機械翻訳だけで済ませないほうがよい場面をまとめました。
オリュカのひとこと
VoiceTra のウクライナ語は、声で話しかけても使えるのでしょうか。できることを最初の表で確かめられます。
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の無料の音声翻訳アプリ「VoiceTra(ボイストラ)」は、2022年8月にウクライナ語を加えました。2026年9月時点で、ウクライナ語は音声での入力にも、訳した結果の読み上げにも対応しています。ただし NICT は、VoiceTra を個人の旅行者が試すことを想定した研究用のアプリだと説明しています。
市区町村の相談窓口では、翻訳機、タブレット越しの映像通訳、曜日を決めた通訳など、いくつかの道具が使われています。それぞれが何をしてくれて、何をしてくれないのかを、NICT、総務省、出入国在留管理庁と自治体の公表資料(2026年9月時点)で整理しました。
VoiceTra のウクライナ語
NICT のサポートページによれば、VoiceTra が翻訳できる言語は33言語で、ダウンロードも利用も無料です。言語によってできることが違い、NICT は次の三つを言語ごとに示しています。
| 機能 | 対応する言語の数 | ウクライナ語 |
|---|---|---|
| 音声で入力できる | 24言語 | 対応 |
| 何語かを自動で判別できる | 12言語 | 対象外 |
| 訳した結果が音声で出る | 24言語 | 対応 |
ウクライナ語は自動判別の対象ではないので、相手の言語としてウクライナ語を選んで使います。
更新履歴によると、ウクライナ語の翻訳・音声認識・音声合成が加わったのは、2022年8月2日公開の iOS 版 ver.8.8 と Android 版 ver.8.7 です。その後、2024年3月29日のサーバー更新で、ウクライナ語の音声認識の精度の改善、翻訳の強化、女性の声での読み上げの追加が行われました。
ウクライナ語は、はじめから国の計画の中心にあった言語ではありません。総務省が2020年3月に公表した「グローバルコミュニケーション計画2025」は、翻訳の精度を高める「重点対応言語」として15言語(日本語、英語、中国語、韓国語、タイ語、インドネシア語、ベトナム語、ミャンマー語、フランス語、スペイン語、ブラジルポルトガル語、フィリピン語、クメール語、ネパール語、モンゴル語)を挙げていて、ウクライナ語は入っていませんでした。
使う前に知っておくこと
- 旅行の会話を一文ずつ訳すためのもの。NICT のよくある質問は、旅行会話を一文単位で訳すことを前提にしていて、旅行会話以外の文、長い文章、単語だけの翻訳には向いていないと答えている
- 訳が合っているかを見る仕組みがある。訳した結果をもう一度自分の言語に訳し直した「逆翻訳」が表示される。入力した文と見比べて、意図が伝わっているかを確かめられる
- インターネットが要る。処理はクラウドで行うため、電波の届かない場所やオフラインでは使えない。1回の音声翻訳で約100キロバイトの通信が発生し、通信料は利用者の負担になる
- 人名や地名は訳せないことがある。固有名詞はある程度登録されているが、すべてではない
- 研究用のサーバーを使っている。NICT は業務での利用について、試験的には使えるが、VoiceTra の技術を使った民間のサービスも検討してほしいとしている。翻訳の内容が業務に与える影響や、提供を続ける期間は保証されない
2026年8月には、セキュリティ上の問題が見つかったとして、対応した ver.9.2.1 が公開されました。NICT は、ver.9.1.3 と ver.9.2.0 を使っている人に ver.9.2.1 への更新を求めていて、古い版ではバージョンアップのお願いが表示され、サービスを使えない状態になると案内しています。一時止めていたサービスは、8月10日に全面的に再開しました。
窓口で使われている三つの道具
出入国在留管理庁などが2022年10月にまとめた「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン~話し言葉のポイント~」は、多くの自治体の窓口に翻訳機器が配備されていると書いています。同庁が公表している「地域の相談窓口一覧」(2026年7月時点)にも、「その他の言語については翻訳機を使用」のような注記が多くの窓口に付いています。
同じ一覧と自治体のページを読むと、窓口の言葉の手当ては、大きく三つに分かれます。
| 道具 | しくみ | 例(2026年7〜9月の公表資料) |
|---|---|---|
| 機械翻訳(翻訳機・アプリ) | 機械が音声や文字を訳す | 北海道釧路市のくしろ国際交流プラザは「通訳・翻訳アプリ(38言語)」を使って対応できるとしている |
| 映像通訳 | タブレットの画面越しに、通訳のオペレーターと話す | 栃木県日光市は市役所市民課で、タブレットを使って通訳オペレーターと会話できる映像通訳サービス(13か国語)を用意し、言語によって対応できる時間が違うとしている |
| 通訳の人(対面・電話) | 通訳や相談員が、決まった曜日や電話で対応する | 北海道外国人相談センターは、ウクライナ語を含む10言語に対応し(対応する言語は曜日で違う)、その他の言語は電話通訳を使うとしている |
日光市のページは、13か国語にどの言語が入るかを書いていません。
一つの窓口がいくつかを組み合わせていることもあります。宮城県の石巻市外国人相談窓口は、同庁の一覧で「タブレット端末によるビデオ通訳や機械翻訳機により全25言語対応」とされ、市のページが挙げる25言語にはウクライナ語が入っています。同じページによれば、水曜日は中国の相談員、木曜日はベトナムの相談員が窓口にいます。
北海道外国人相談センターのページは、同じ番号(011-200-9595)で「北海道ウクライナ関連ワンストップサポート窓口」も案内しています。受付は9時〜12時と13時〜17時です(北海道国際交流・協力総合センターのページ、2026年9月24日確認)。
住んでいる地域の窓口と対応言語は、出入国在留管理庁の「あなたの住んでいるところの相談窓口を探す」で調べられます。使い方は日本で暮らし始めたときの相談窓口の記事にまとめています。同庁の一覧は、各地域のすべての窓口を載せているわけではなく、最新の情報と違う場合がある、と注記しています。
オリュカのひとこと
翻訳機に伝わりやすい日本語とは、どんな話し方なのでしょう。「ハサミの法則」をこの節で確かめましょう。
翻訳機を通すときの話し方
「話し言葉のポイント」は、翻訳機器に普通の日本語で話しかけるよりも、伝えたいことを整理した日本語で話しかけるほうが、機器の翻訳の精度が上がると書いています。翻訳機器を使うときにも、「はっきり言う」「最後まで言う」「短く言う」(頭文字をとって「ハサミの法則」)が役に立つ、としています。これは窓口の職員向けの手引きですが、翻訳アプリに話しかける側にも同じことが言えます。
書き言葉についての「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」(2020年8月、出入国在留管理庁・文化庁)は、インターネットで情報を出すときは、読み手が機械翻訳にかける可能性を考えて、ふりがなを付けない文書もできるだけ用意すると効果的だ、としています。
同じガイドラインは、東京都国際交流委員会の2018年の調査を引いています。東京に住む外国人が希望する情報発信の言語(複数回答)は「やさしい日本語」76%、「英語」68%、「日本語」22%で、「機械翻訳された母国語」は12%でした。
機械翻訳だけで済ませないほうがよい場面
「話し言葉のポイント」は、やさしい日本語は分かりやすさを優先して情報を整理するため、制度の詳細、複雑な話題の説明、命に関わる医療の内容、人権に関する相談などでは、うまくいかないことがあるとしています。そのときは、多言語での対応や翻訳機器の活用などのほかの手段を合わせて使い、必要に応じて柔軟に切り替えることが大切だ、としています。いくらやさしく話しても意思の疎通が難しいと感じたら、通訳や機械翻訳の利用に切り替える、とも書いています。
VoiceTra についても、NICT は翻訳の内容が業務に与える影響を保証していません。契約や医療の説明のように、取り違えると困ることがらでは、次のような手を考えてください。
- 通訳のいる窓口や電話相談を探す。ウクライナ語で相談できる国の窓口は日本で暮らし始めたときの相談窓口にある
- 病院では、保険証の情報や症状をあらかじめメモにしておく(日本の病院に行く前に)
- 機械翻訳を使ったときは、逆翻訳などで自分の言いたいことと合っているかを見る。大事な点は、相手に言い換えてもらって確かめる
翻訳アプリは、あいさつや道案内、ちょっとした確認には心強い道具です。訳が合っているかどうかを最後に確かめるのは、使う人自身です。
出典と記事の記録
出典・参考資料
- VoiceTra サポートページ トップ33言語、無料、研究用アプリ、民間サービスの検討、2026年8月10日の全面再開
発行:国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) 確認日:2026-09-24 - VoiceTra 特徴音声入力24言語・自動判別12言語・音声出力24言語、言語ごとの対応、逆翻訳
発行:国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) 確認日:2026-09-24 - VoiceTra よくある質問旅行会話を一文単位、固有名詞、オフライン不可、約100KB、業務での利用、保証されないこと
発行:国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) 確認日:2026-09-24 - VoiceTra ご利用にあたって個人の旅行者の試用を想定した研究用アプリ、直接的な営利目的での利用不可
発行:国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) 確認日:2026-09-24 - VoiceTra 更新履歴2022年8月2日のウクライナ語追加、2023年12月6日・2024年3月29日のサーバー更新、2026年8月の ver.9.2.1
発行:国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) 確認日:2026-09-24 - 多言語音声翻訳アプリ「VoiceTra」バージョンアップのお願いセキュリティ上の問題、ver.9.2.1
発行:国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) 確認日:2026-09-24 - 「グローバルコミュニケーション計画2025」の公表2020年3月31日
発行:総務省 確認日:2026-09-24 - グローバルコミュニケーション計画20252020年3月。重点対応言語15言語
発行:総務省 確認日:2026-09-24 - 在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン~話し言葉のポイント~2022年10月。翻訳機器の配備、整理した日本語と翻訳精度、ハサミの法則、難解な話題と手段の切り替え
発行:話し言葉のやさしい日本語の活用促進に関する会議(出入国在留管理庁が掲載) 確認日:2026-09-24 - 在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン2020年8月。機械翻訳を意識する、東京都国際交流委員会の調査の引用
発行:出入国在留管理庁・文化庁 確認日:2026-09-24 - 地域の相談窓口一覧令和8年7月時点。釧路市、北海道外国人相談センター、石巻市、日光市の欄と注記
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-24 - あなたの住んでいるところの相談窓口を探す
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-24 - 外国人相談窓口を開設しています25言語、水曜日・木曜日の相談員
発行:石巻市 確認日:2026-09-24 - 外国人住民のみなさんへ在住外国人相談、映像通訳サービス13か国語
発行:日光市 確認日:2026-09-24 - 北海道外国人相談センター北海道ウクライナ関連ワンストップサポート窓口、電話番号と受付時間
発行:公益社団法人 北海道国際交流・協力総合センター 確認日:2026-09-24
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