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人と暮らし/実用ガイド

日本の病院に行く前に、保険の証明と症状のメモを用意する

日本で具合が悪くなったとき、病院の受付では保険の証明を見せ、問診票に症状を書きます。119番の通訳は英語・中国語・韓国語なら全国で受けられますが、ウクライナ語は地域の消防本部しだいです。かかる医療機関の探し方、予約で確かめること、ウクライナ語の問診票や医療用語集がどこにあるかをまとめました。

日本で具合が悪くなったとき、迷うことは大きく三つあります。どこにかかるか。何を持っていくか。症状をどう伝えるか。この記事は、その三つを病院に行く前に準備しておくためのものです。制度や窓口の情報は、2026年9月23日に各機関の公式ページで読める内容にもとづいています。

病気の見立てや、どの診療科に行くべきかの判断は、この記事ではしません。急に具合が悪くなった、けがをした、というときは、読み進めるより先に119番に電話してください。

急を要するときは119番

出入国在留管理庁が監修する『生活・就労ガイドブック』(日本語版第8版、2026年2月)は、急病やけがのときの119番のかけ方を次のように案内しています。

  • 119番に電話をかけると、オペレーターが「火事ですか。救急ですか。」と尋ねるので、「救急です。」と伝える。
  • 救急車に来てもらいたい場所や目印を伝える。
  • 具合の悪い人の症状と年齢を伝える。
  • 自分の名前と連絡先を伝える。

言葉について、総務省消防庁は、119番通報のときに電話通訳センターを介して通報者・消防・通訳の三者で話す「三者間同時通訳」の導入を進めています。同庁の資料によれば、2025年1月1日現在、全国720の消防本部のうち673本部が導入しており、「全ての消防本部で英語、中国語、韓国語に対応しており、これら以外の言語は、地域の実情に応じ消防本部ごとに選択し対応している」とされています。

つまり、ウクライナ語で119番の通訳を受けられるかどうかは、住んでいる地域の消防本部によります。全国一律にウクライナ語の通訳がある、とは書かれていません。救急隊が現場で使う翻訳アプリ「救急ボイストラ」の対応言語(同庁の掲載で15種類)にも、ロシア語は含まれますが、ウクライナ語は含まれていません。同庁が公開している訪日外国人向けの「救急車利用ガイド」も16言語で、ウクライナ語版はありません。

だからこそ、事前にできる準備があります。自分の住所を日本語で書いたメモを、すぐ出せる場所に置いておくこと。近くの目印(駅、学校、コンビニエンスストアの名前など)を一つ覚えておくこと。英語で話せるなら、英語を使うほうが通訳につながりやすいことも覚えておいてください。日本政府観光局(JNTO)の案内ページは、周りの日本人に「救急車を呼んでください。」と書いた文を見せて呼んでもらう方法を示しています。

どこにかかるか

『生活・就労ガイドブック』は、日本の医療機関の役割を三つに分けて説明しています。日常的な病気やけがは「診療所・クリニック」、手術や入院、救急医療が必要な場合は「中小病院」、重症の救急患者や高度な医療が必要な場合は「大病院」です。軽い病気やけがなら、まず近くの診療所に行くよう勧めています。

医療機関を探す方法として、同じガイドブックは次のものを挙げています。

  • 医療情報ネット(ナビイ) 厚生労働省が運営する、全国の医療機関の検索サイト。
  • 日本政府観光局(JNTO)の医療機関検索 外国語で受診できる医療機関(都道府県が指定する、外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関など)を探せます。もともとは訪日旅行者向けのページです。
  • 住んでいる市区町村や、都道府県などに約400か所ある医療安全支援センターへの相談。日本語が話せない人は、市区町村、地域の国際交流協会、NPO法人にも相談できる、とされています。

JNTOの検索で言語を選ぶ一覧には、2026年9月23日時点でロシア語はありますが、ウクライナ語はありません。また、JNTOのページ自身が「外国語に対応している医療機関は限られます」と書いています。検索で見つけた病院でも、行く前に電話で確かめるのが確実です。

保険の証明を持っていく

『生活・就労ガイドブック』は「日本に住む人は国籍に関係なく公的医療保険に加入することになります」と説明しています。勤め先の健康保険に入っていない人は、住民登録をしている75歳未満の人であれば、原則として国民健康保険に入ることになります。ただし同ガイドブックは、在留期間が3か月以下の人や在留資格「短期滞在」の人など、加入の対象から外れる場合も列挙しています。自分がどちらに当たるかは、住んでいる市区町村の窓口で確かめてください。国民健康保険の手続きは住民登録と結びついているので、住民登録の言葉は別の記事にまとめました。

病院の受付で大切なのは、保険に入っていることを示すものを見せることです。同ガイドブックは「病院や診療所では、マイナ保険証等を提示してください。マイナ保険証等を提示しなかった場合、医療費が全額自己負担となります。」と書いています。マイナ保険証とは、健康保険証として使う利用登録をしたマイナンバーカードのことです。同ガイドブックには、マイナ保険証と並んで「資格確認書」という書類も出てきます。自分がどちらを使うのかは、加入している保険の窓口で確かめてください。

保険を使ったときに窓口で払う割合は、同ガイドブックによれば、6歳(小学校就学前)未満が2割、70歳未満が3割、70歳から74歳までが2割(現役並みの所得がある人は3割)です。加入した直後でマイナ保険証の登録が済んでおらず、資格確認書も手元にないときは、いったん全額を払い、あとで申請して認められれば自己負担分以外が戻る(療養費)という仕組みも説明されています。

予約と受付で確かめること

JNTOの案内ページは、病院での流れを「受付」「問診票の記入」「医師の診察と処置、処方箋」「会計」の順に示しています。そのうえで、受付をするときに、診療に必要なおおまかな費用をあらかじめ聞くよう勧めています。支払いについては、大きな病院ではクレジットカードが使えるが、クリニックでは現金で支払うのが一般的だ、とも書いています。

電話や窓口で予約するときに、次のことを先に確かめておくと、当日の行き違いが減ります。

  • 日本語以外(英語など)で対応できるか。通訳を頼めるか、付き添いの人を連れて行ってよいか。
  • 予約が必要か、受付の時間は何時から何時までか。
  • 持っていくもの(マイナ保険証または資格確認書、在留カード、服用中の薬など)。
  • 支払いの方法(現金だけか、カードが使えるか)と、おおまかな費用。

症状を伝える準備

診察の前には、たいてい「問診票」という用紙に症状を書きます。厚生労働省は、外国人患者の受け入れのための「外国人向け多言語説明資料」を公開しており、2022年7月にウクライナ語の資料が加わりました。ウクライナ語版には英語と日本語が併記され、診療申込書のほか、内科、小児科など診療科ごとの問診票が含まれています。同省はこの資料を「日本国内の医療機関を対象に提供」するものとしていますが、ページへのリンクは原則として自由とされています。かかる病院にウクライナ語の問診票があるかを聞き、なければこのページを見せて相談する、という使い方ができます。

JNTOも、自分の医療に関する情報を記録しておく用紙と、症状を指さしで伝えるためのシートをPDFで公開しています。JNTOは救急病院について「受け入れ先の病院は、自身で決めることはできません。状況によっては、問診なしで、治療に入らざるを得ない」と書き、あらかじめ記入しておくことが大切だとしています。

病院に行く前に、次のことを自分の言葉でメモしておくと、通訳を介するときにも、翻訳アプリを使うときにも役立ちます。何がいつから、どこが、どのように、という順に書くと伝わりやすくなります。

  • いつから、どこが、どのように具合が悪いか。
  • 熱を測ったなら、その時刻と体温。
  • いま飲んでいる薬(薬の箱や説明書があれば持っていく)。
  • これまでにかかった大きな病気、手術、アレルギー。
  • ウクライナなどで受けた検査の結果や診断書があれば、その書類。

難民事業本部(RHQ)がウクライナ語の「医療用語集」をPDFで公開しており、出入国在留管理庁のページからリンクされています。これは日本で暮らし始めたときの相談窓口の記事でも紹介しました。

医療通訳について知っておくこと

厚生労働省は、医療機関に医療通訳者を配置するための支援をしているほか、話す人の少ない言語(同省は「希少言語」と呼んでいます)について、医療機関が使える遠隔の電話通訳サービスを委託事業として実施しています。ただし、この遠隔通訳は事前に登録した医療機関が使う仕組みで、患者が自分で申し込むものではありません。対象の言語にウクライナ語が含まれるかは、この記事では確認できていません。

日本政府観光局の「Japan Visitor Hotline」(050-3816-2787、365日24時間)は、病気のときに外国語で受診できる医療機関の紹介もしますが、対応言語は英語・中国語・韓国語で、対象は訪日旅行者です。原則として三者間の通訳や予約の代行はしない、とされています。

通訳の手配は病院によって違います。予約のときに「通訳はありますか」と聞き、無い場合は、日本語か英語で話せる人に付き添ってもらえるかを考えておくのが現実的です。

ウクライナ語で読める案内

『生活・就労ガイドブック』には、やさしい日本語を含む19言語版があり、ウクライナ語版もあります。医療の章(第6章)と、緊急・災害の章(第10章)は、章ごとのPDFでも公開されています。ただし、日本語版は第8版(2025年8月1日時点の制度にもとづく)であるのに対し、多言語版は第7版(2025年12月公開)です。保険証の扱いなど最近変わった制度は、版によって書き方が違う可能性があります。

相談先が分からないときの窓口は、日本で暮らし始めたときの相談窓口にまとめています。

準備することどこで確かめるかウクライナ語
119番のかけ方と通訳消防庁、生活・就労ガイドブック三者間通訳は英語・中国語・韓国語が全国共通。ほかの言語は消防本部ごと
かかる医療機関医療情報ネット(ナビイ)、JNTOの医療機関検索、市区町村JNTOの検索の言語一覧にはない
保険の証明市区町村の窓口(国民健康保険)、勤め先(健康保険)市区町村による
問診票厚生労働省「外国人向け多言語説明資料」あり(英語・日本語併記)
医療用語難民事業本部の医療用語集(出入国在留管理庁のページからリンク)あり
生活全般の案内生活・就労ガイドブックあり(多言語版は第7版)
各機関の公式ページの2026年9月23日時点の記載から作成。個別の診療や保険の加入を判断するための表ではない。

最後に一つだけ。この記事は、病院に行く前の準備を書いたものです。どの病気か、どの科に行くべきか、どの保険に入れるかは、ここでは決められません。迷ったら医療機関や市区町村の窓口で聞いてください。命に関わると思ったら、119番です。

出典・参考資料

  1. 生活・就労ガイドブック 日本語版 第8版(第6章 医療:医療機関の種類と探し方、公的医療保険の加入要件、自己負担割合、マイナ保険証等の提示、療養費。第10章 緊急・災害:119番のかけ方)
    発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23
  2. 生活・就労ガイドブック(全体版の言語一覧。ウクライナ語版があること)
    発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23
  3. 外国人生活支援ポータルサイト(多言語版第7版の公開日、医療・緊急の章ごとのウクライナ語PDF)
    発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23
  4. 電話通訳センターを介した三者間同時通訳(仕組みの説明、導入消防本部数)
    発行:総務省消防庁 確認日:2026-09-23
  5. 電話通訳センターを介した三者間同時通訳 ~119番多言語対応の導入状況~(令和7年1月1日現在、720本部中673本部、全本部で英語・中国語・韓国語に対応)
    発行:総務省消防庁 確認日:2026-09-23
  6. 多言語音声翻訳アプリ「救急ボイストラ」(対応言語15種類の一覧)
    発行:総務省消防庁 確認日:2026-09-23
  7. 訪日外国人のための救急車利用ガイド(掲載言語16の一覧)
    発行:総務省消防庁 確認日:2026-09-23
  8. 急な病気・けがのとき(医療機関検索の言語一覧、病院での受付から会計までの流れ、費用・支払いの説明、救急病院の注意事項、Japan Visitor Hotlineの対応言語と範囲)
    発行:日本政府観光局(JNTO) 確認日:2026-09-23
  9. 外国人向け多言語説明資料 一覧(令和4年7月にウクライナ語資料を追加、英語と日本語の併記、医療機関向けの提供であること、リンクは原則自由)
    発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23
  10. 希少言語に対応した遠隔通訳サービスのご案内(医療機関が事前登録して使う委託事業であること)
    発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23
  11. 医療の国際展開・外国人患者の受入れ(医療通訳者の配置支援、外国人患者を受け入れる医療機関のリスト等の一覧)
    発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23
  12. 「外国人患者を受け入れる医療機関の情報を取りまとめたリスト」について(厚生労働省と観光庁が連携して一元化したリスト)
    発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23
  13. 医療・介護・保育でお困りのウクライナのみなさんへ(難民事業本部のウクライナ語「医療用語集」へのリンク)
    発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23

記載内容に誤りを見つけた場合は、訂正のご連絡からお知らせください。確認のうえ、訂正した内容と経緯を記事に記載します。