ウクライナに住む家族の扶養控除。親族の証明、送金の記録、38万円の条件
日本で所得税を納める人は、ウクライナに住む家族を扶養控除の対象にできることがありますが、家族であることを示す書類と送金の記録を勤め先や税務署に出す必要があります。2023年からは30歳以上70歳未満の家族に「留学・障害者・年38万円以上の送金」の条件が加わり、扶養親族の所得の上限は2026年分から62万円になります。書類の種類と出す時期をまとめました(2026年10月時点)。
オリュカのひとこと
扶養控除の対象になる家族は、どう決まっているのでしょう。最初の見出しで確かめられます。
日本で働いて所得税を納めている人が、ウクライナに住む親や子、きょうだいの生活費を送っている場合、その家族を「扶養親族」として所得税の扶養控除を受けられることがあります。ただし、日本の外に住む家族(国税庁の言葉では「国外居住親族」)については、家族であることを示す書類と、お金を送ったことを示す書類を勤め先や税務署に出す決まりがあり、2023年からは30歳以上70歳未満の家族に新しい条件が加わりました。
以下は、所得税法・所得税法施行令・所得税法施行規則の条文(e-Gov法令検索)と、国税庁の「国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)」(2026年8月改訂)などを、2026年10月に確かめた内容です。家族が扶養控除の対象になるか、どの書類で足りるかは、勤め先(年末調整の担当)と税務署が判断するもので、この記事では判断しません。
扶養控除の基本:対象になる家族と控除の額
所得税法は、「扶養親族」を、納税者と生計を一にする親族(配偶者を除く)のうち、合計所得金額が一定額以下の人と定めています(第2条第1項第34号)。国税庁によれば、ここでいう親族は6親等内の血族と3親等内の姻族で、日本の外に住む親族でも同じです。「生計を一にする」は同居を必ずしも求めず、別居していても常に生活費などを送っている場合はこれに当たる、と国税庁は説明しています。
扶養親族のうち、その年の12月31日に16歳以上の人が「控除対象扶養親族」で、控除を受けられるのはこの人たちです。16歳未満の子は扶養親族ではあっても、所得税の扶養控除の対象にはなりません。控除の額は次のとおりです(第84条第1項)。
| 区分(年齢はその年12月31日現在) | 控除の額 |
|---|---|
| 一般の控除対象扶養親族(16歳以上で、下の二つ以外) | 38万円 |
| 特定扶養親族(19歳以上23歳未満) | 63万円 |
| 老人扶養親族(70歳以上) | 48万円 |
オリュカ
家族の所得の上限は、ずっと同じ額だったのかな。
タブリ
年分ごとの上限の移り変わりは、この見出しの下の表に順番に並んでいるよ。
スウネ
新しい上限がいつ施行されるかは、表のすぐ後の段落にあるね。
所得の条件は2年続けて引き上げられた
扶養親族になれる人の所得の上限(合計所得金額)は、2025年分と2026年分の所得税で続けて引き上げられました。給与所得控除の最低額(給与の収入から差し引く額の下限)も同じ法律で上がっています。
| 所得税の年分 | 扶養親族の合計所得金額の上限 | 給与所得控除の最低額 | 改正した法律 |
|---|---|---|---|
| 2020年分〜2024年分 | 48万円以下 | 55万円 | 平成30年法律第7号(2020年1月1日施行) |
| 2025年分 | 58万円以下 | 65万円 | 令和7年法律第13号(2025年12月1日施行、2025年分から適用) |
| 2026年分から | 62万円以下 | 74万円(2026年分・2027年分) | 令和8年法律第12号(2026年12月1日施行、2026年分から適用)。74万円は租税特別措置法第29条の4の特例で、所得税法第28条第3項の本則は69万円 |
2026年分の引き上げは2026年12月1日の施行です。国税庁は、この改正で新しく条件を満たした家族を扶養控除等申告書に書くときは、「異動月日及び事由」の欄に「令和8年12月1日 改正」などと書くよう案内しています。
19歳以上23歳未満で所得が上限を超える家族には、2025年分から「特定親族特別控除」があります(第84条の2。合計所得金額123万円以下)。日本の外に住む家族について受けるときも、下の二つの書類が必要です(所得税法施行令第262条第4項)。
オリュカのひとこと
日本の外に住む家族の条件は、いつから変わったのでしょう。この見出しの表で見比べられます。
日本の外に住む家族は、年齢によって条件が変わる
2023年1月1日に施行された改正(令和2年法律第8号)で、控除対象扶養親族の定義が、日本に住む人(居住者)と日本の外に住む人(非居住者)で分かれました(第2条第1項第34号の2)。国税庁によれば、2023年分以後の所得税に適用されています。
| 日本の外に住む家族の年齢(12月31日現在) | 2022年分まで | 2023年分から |
|---|---|---|
| 16歳未満 | 控除の対象外 | 控除の対象外 |
| 16歳以上30歳未満 | 対象になりうる | 対象になりうる |
| 30歳以上70歳未満 | 対象になりうる | 次のどれかに当たる人だけ:①留学により日本に住所・居所がなくなった人、②障害者、③納税者からその年に生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている人 |
| 70歳以上 | 対象になりうる | 対象になりうる |
表の①から③は、どれも条件が細かく決められています。
- ①の留学:国税庁のQ&Aは、日本に住所か居所があった親族が外国の大学や高校などに留学し、留学の在留資格に当たる資格で外国にいるために日本に住所・居所がなくなった人、と説明しています。
- ②の障害者:日本の所得税法の障害者の定義に当たる人です。国税庁のQ&Aは、外国で交付された障害者手帳は日本の身体障害者手帳に当たらないとしています。
- ③の38万円:納税者からその家族一人への、その年の支払の合計です。38万円という額は、2025年と2026年の改正でも変わっていません(2026年12月1日施行の版で確認)。
30歳以上70歳未満で、①から③のどれにも当たらない家族は、扶養控除の対象になりません(国税庁のパンフレット)。
出す書類は二つ:親族関係書類と送金関係書類
日本の外に住む家族について扶養控除を受ける人は、その家族が自分の親族であることを示す「親族関係書類」と、生計を一にしていることを示す「送金関係書類」を出すか、見せる必要があります(所得税法第194条第5項〜第7項、第120条第3項)。30歳以上70歳未満の家族を③の38万円で対象にする場合は、送金関係書類が「38万円送金書類」になり、①の留学の場合は「留学ビザ等書類」も加わります。書類が外国語で書かれている場合は、日本語の翻訳文も必要です(所得税法施行規則第47条の2第7項・第8項)。
親族関係書類:家族であることを示す
所得税法施行規則第47条の2第7項は、親族関係書類を次のどちらかと定めています。
- 日本の国や地方公共団体が発行した書類(戸籍の附票の写しなど)と、その家族の旅券(パスポート)の写し
- 外国の政府や地方公共団体が発行した書類で、その家族の氏名、生年月日、住所または居所が書かれているもの
国税庁のQ&Aは、外国の書類の例として戸籍謄本に類する書類、出生証明書、婚姻証明書を挙げ、一つの書類で氏名・生年月日・住所がそろわないときや2親等以上の関係を示すときは、複数の書類を組み合わせてよいとしています。外国の運転免許証などの身分証明書だけでは親族関係が分からないため、当たりません。旅券の写しを除き、原本を出すか見せる必要があります。
扶養控除等申告書を出すたびに提出・提示するのが基本ですが、親族関係や住所に変わりがなければ、前の年に見せた書類をもう一度見せることもできる、とQ&Aは説明しています。
送金関係書類:お金を送ったことを示す
送金関係書類は、その年に、家族の生活費または教育費に充てるための支払を「必要の都度、各人に」行ったことを示す書類です(同条第8項)。
- 金融機関の書類またはその写しで、為替取引によって納税者から家族に支払ったことを示すもの(国税庁によれば、資金移動業者もここでいう金融機関に含まれる)
- クレジットカード会社の書類またはその写しで、家族がカードを使って買い物などをし、その代金を納税者が払ったことを示すもの
- 電子決済手段等取引業者の書類またはその写しで、電子決済手段の移転によって納税者から家族に支払ったことを示すもの(2024年分から)
国税庁のパンフレットとQ&Aによる具体的な扱いは次のとおりです。
- 外国送金依頼書の控え、インターネット送金の利用明細書や通帳の写しは、送金者の氏名、受け取った人の氏名、送金日、送金額が書かれていれば当たる
- クレジットカードは、納税者が契約して家族のために発行されたカードで、代金を納税者が払うもの(いわゆる家族カード)の利用明細書。カードの名義人である家族の分の書類として扱い、カードを使った日の年の分になる
- 書類は家族一人ずつに必要。たとえば両親の生活費をまとめて母親に送っている場合、その書類は母親の分にしかならない。外国の共同名義の口座への送金も、一人ずつに送ったことが分からなければ当たらない
- 知り合いに頼んで現金を手渡ししている場合は、送金関係書類がないことになり、扶養控除を受けられない。手渡ししたという申立書も送金関係書類にはならない
- 同じ家族への送金が年3回以上のときは、決められた事項を書いた明細書と、その年の最初と最後の送金の書類を出し、残りは自分で保管する方法もある
「38万円」の数え方
30歳以上70歳未満の家族を③で対象にする場合、送金関係書類で、その家族一人へのその年の支払の合計が38万円以上であることを示します(所得税法施行規則第47条の2第10項)。国税庁のQ&Aによれば、金融機関から送った場合は、家族の口座に入った日ではなく、送金をした日の年の支払として数えます。送金手数料は、書類に額が書かれていれば含めてよいとされ、37万円を送って手数料が1万円かかった場合は38万円の支払があったものとして差し支えない、という例が示されています。
国税庁のQ&Aによれば、38万円以上かどうかは、扶養控除等申告書を出す時点ではその年の支払の見込みで判断し、年末調整のときには実際に払った額で確かめます。結果として38万円に届かなかった場合は、年末調整でその家族の扶養控除を受けることはできません。
オリュカ
書類は、いつ、どこへ出せばいいのかな。
タブリ
出す時期ごとの書類は、この見出しの下の表に順番に並んでいるよ。
スウネ
対象になるかを誰が判断するかは、記事の終わりの「この記事で確認できていないこと」にあるね。
いつ、どこに出すか
会社などから給与を受け取る人は、書類を勤め先に出し、勤め先を経由して税務署に届く形になります(所得税法第194条)。出す時期は書類によって違います。
| 時期 | 出すもの | 根拠 |
|---|---|---|
| その年の最初の給与を受け取る日の前日まで | 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書と、親族関係書類(①の留学の場合は留学ビザ等書類も) | 所得税法第194条第1項・第5項 |
| 年末調整のとき(その年最後の給与を受け取る日の前日まで) | 家族に送った額の合計を書いた扶養控除等申告書と、送金関係書類(③の場合は38万円送金書類) | 所得税法第194条第6項・第7項 |
| 確定申告をするとき | 確定申告書に親族関係書類と送金関係書類などを添えるか、見せる。年末調整で扶養控除を受けた分の書類は不要 | 所得税法第120条第3項、国税庁のパンフレット |
国税庁のQ&Aによれば、年末調整のときに送金関係書類を出さなかった家族は、扶養控除に含めずに計算されます。その年の源泉徴収票ができる前に出せば計算をやり直してもらえることがあり、源泉徴収票ができたあとは、本人が確定申告をすることになります。確定申告と年末調整の一般的な流れは所得税と住民税の記事にまとめています。
国税庁は、外国語版のパンフレット「非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ」を、英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語、フィリピノ語で公開しています。ウクライナ語版はありません(2026年10月時点)。
きょうだいで同じ親を扶養控除の対象にはできない
二人以上の納税者の扶養親族に当たる人は、そのうち一人の納税者の扶養親族にだけ当たるものとみなされます(所得税法第85条第6項)。どの納税者の扶養親族にするかは、まず各人が出す申告書の記載で決まり、決まらないときの順序が施行令第219条に定められています。国税庁は、きょうだいで均等に送金していても、重ねて控除の対象にすることはできず、だれか一人だけが対象にできると説明しています。
住民税と健康保険は、別の決まりで動く
住民税(市区町村民税)にも扶養の仕組みがありますが、所得税とは条文が別です。たとえば16歳未満の子は所得税の扶養控除の対象になりませんが、住民税の均等割を課さない所得の基準を市区町村が計算するときには、16歳未満の扶養親族の数も含めます(地方税法施行令第47条の3第1号)。国税庁のQ&Aは、日本の外に住む16歳未満の扶養親族について、一定の場合に親族関係書類や送金関係書類を市区町村に出すことになっていると書き、住民税のことは住んでいる市区町村に尋ねるよう案内しています。住民税の仕組みは所得税と住民税の記事にあります。
勤め先の健康保険の「被扶養者」は、税の扶養とは別の制度です。健康保険法第3条第7項は、被扶養者を原則として日本国内に住所がある人と定めています(留学中の学生など、厚生労働省令で定める例外がある)。税で扶養控除を受けている家族が、健康保険の被扶養者になるとは限りません。健康保険の加入は健康保険と年金の記事にまとめています。
ウクライナに送金するときに、あわせて確かめたいこと
ウクライナへの送金の条件や、銀行が受取人や目的を尋ねることがある点、ロシアに占領されている地域に関わる送金が銀行の確認や取引制限の対象になりうる点は、ウクライナへの郵便と送金の記事にまとめています。
扶養控除は、日本の居住者が受ける日本の所得税の控除です。日本とウクライナの両方で居住者になりうる人の判定や、2026年から使われている新しい租税条約は日本・ウクライナの租税条約の記事で、日本からウクライナの年金を受け取る手続きはウクライナの年金の記事で扱っています。
家族が扶養控除の対象になるか、手元の書類で足りるか、翻訳文をどう用意するかは、まず勤め先の年末調整の担当者に、確定申告をする人は住所地の税務署に確かめてください。
出典と記事の記録
出典・参考資料
- 所得税法第2条第1項第34号〜第34号の5 扶養親族の定義、第28条第3項 給与所得控除、第84条 扶養控除、第84条の2 特定親族特別控除、第85条 判定の時期・二以上の居住者の扶養親族、第120条第3項 確定申告書の添付書類、第194条 給与所得者の扶養控除等申告書。2026年10月1日施行の版
発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-10-24 - 所得税法の改正履歴と各時点の条文2022年10月1日版と2023年1月1日版〈令和2年法律第8号〉の第2条第1項第34号の2、2025年10月1日版と2025年12月1日版〈令和7年法律第13号〉の第2条第1項第34号・第28条、2026年12月1日施行の版〈令和8年法律第12号〉とその附則
発行:e-Gov法令API(デジタル庁) 確認日:2026-10-24 - 所得税法施行令第219条 二以上の居住者がある場合の扶養親族及び特定親族の所属、第262条第3項・第4項 確定申告書に関する書類
発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-10-24 - 所得税法施行規則第47条の2第7項 親族関係書類、第8項 送金関係書類、第9項 留学ビザ等書類、第10項 38万円の書類
発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-10-24 - 地方税法施行令第47条の3 個人の市町村民税の均等割の非課税の基準
発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-10-24 - 健康保険法第3条第7項 被扶養者
発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-10-24 - タックスアンサーNo.1180 扶養控除令和8年4月1日現在法令等。控除の額、扶養親族の範囲、令和8年分からの62万円、非居住者の控除対象扶養親族
発行:国税庁 確認日:2026-10-24 - 扶養控除に関するQ&A「生計を一にする」の意義、日本国外に住む親族、兄弟で扶養している場合
発行:国税庁 確認日:2026-10-24 - 非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ令和7年6月。必要な書類と提出の時期、送金関係書類の例
発行:国税庁 確認日:2026-10-24 - 国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)令和8年8月最終改訂。Q3〜Q7、Q12〜Q15、Q19、Q21、Q25、Q26、Q32〜Q44
発行:国税庁 確認日:2026-10-24 - 非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ外国語版の一覧
発行:国税庁 確認日:2026-10-24 - 令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A令和8年5月。適用時期、扶養控除等申告書の記載
発行:国税庁 確認日:2026-10-24 - 租税特別措置法第29条の4 給与所得控除の最低控除額等の特例。2026年12月1日施行の版〈令和8年法律第12号〉
発行:e-Gov法令API(デジタル庁) 確認日:2026-10-24
記載内容に誤りを見つけた場合は、訂正のご連絡からお知らせください。確認のうえ、訂正した内容と経緯を記事に記載します。







