ウクライナとの社会保障協定はない。日本の健康保険と年金の加入
日本に住む人は国籍に関係なく、勤め先の健康保険か国民健康保険に入り、20歳から59歳までは年金にも入ります。日本とウクライナの間には社会保障協定がなく、ウクライナでの加入期間は日本の年金の10年に足せません。保険料、払えないときの免除、日本を離れるときの脱退一時金をまとめました。
日本は24か国と社会保障協定を結んでいますが、ウクライナとの協定はありません。厚生労働省の一覧(2026年6月2日現在)には、発効済み・署名済み・交渉中・予備協議中のどの欄にもウクライナの名前がありません。このため、ウクライナで年金に入っていた期間と日本の年金の期間を足し合わせる仕組みは使えません。それでも、日本に住む人は国籍に関係なく、日本の健康保険と年金に入るのが原則です。以下、入る制度の見分け方、保険料、日本を離れるときの脱退一時金を、出入国在留管理庁の『生活・就労ガイドブック』(日本語版第8版、2026年2月)、日本年金機構、厚生労働省の公式ページにもとづいて説明します。内容は2026年9月に確認したものです。
自分がどの保険に入るのか、加入の対象になるのかは、在留資格や働き方で変わり、この記事では判断しません。住んでいる市区町村の窓口か年金事務所で確かめてください。
医療保険:勤め先の健康保険か、国民健康保険か
ガイドブックは「日本に住む人は国籍に関係なく公的医療保険に加入することになります」と書いています。入るのは、勤め先の「健康保険」か、住んでいる市区町村の「国民健康保険」のどちらかです。
勤め先の健康保険
ガイドブックによれば、健康保険に入るのは、正社員、法人の代表者や役員のほか、同じ会社の正社員の週の決まった労働時間の4分の3以上働くパートタイマーやアルバイトです。それより短い人でも、週20時間以上、2か月を超えて使われる見込み、月の賃金8.8万円以上、学生でない、従業員51人以上の会社に勤めている、の五つを全て満たせば加入します。保険料は原則として会社と本人が半分ずつ負担し、扶養されている家族の保険料はかかりません。
この条件は変わっていく途中です。同じガイドブックは、会社の規模の条件が2027年10月1日以降は36人以上、2029年10月1日以降は21人以上と段階的に下がり、2035年10月1日以降はなくなること(厚生労働省の年金制度改正法の説明資料では、その間の2032年10月以降に11人以上となる段階もある)、賃金の条件も将来なくなることが決まっていると書いています。
国民健康保険
勤め先の健康保険に入らない75歳未満の人で、住民登録をしている人は、国民健康保険に入ります。ガイドブックは、外国人のうち次の人は加入の対象外だとしています。
- 在留期間が3か月以下の人(ただし、特定活動などの在留資格で、資料によって3か月を超えて在留すると認められる人は加入できる)
- 在留資格「短期滞在」の人
- 在留資格「特定活動」のうち、医療を受ける活動や、その人の日常の世話をする活動、観光・保養などの活動をする人
- 在留資格「外交」の人、在留資格のない人
- 日本と医療保険を含む社会保障協定を結んでいる国の人で、本国の加入証明書の交付を受けている人
加入や脱退の手続きは市区町村で行います。別の市区町村に引っ越すときや、勤め先の健康保険に入ったときは、脱退の手続きが必要です。保険料は世帯ごとに所得や人数から計算され、世帯主が納めます。所得や生活の状況によって保険料が軽くなる場合がある、ともガイドブックは書いています。
保険で受けられること
どちらの保険でも、医療費の窓口での負担は、6歳(小学校就学前)未満が2割、70歳未満が3割、70歳から74歳までが2割(現役並み所得者は3割)です。1か月の支払いが一定額を超えたときは、超えた分が戻る「高額療養費」があり、出産したときの「出産育児一時金」は1児につき原則50万円です。勤め先の健康保険には、病気やけがで続けて休んだときの「傷病手当金」もあります。病院にかかるときの準備は、病院に行く前の準備の記事にまとめました。
40歳以上で、3か月を超えて日本で生活する人は介護保険の加入対象にもなります。40歳から64歳までの人の介護保険料は、医療保険の保険料に上乗せされます。
年金:20歳から59歳までは全員が加入
国民年金法第7条は、日本国内に住所がある20歳以上60歳未満の人を国民年金の被保険者と定めています。国籍は条件に入っていません。ガイドブックの説明では、加入のしかたは三つに分かれます。
- 第1号被保険者:自営業者、学生など、次の二つに当てはまらない人。手続きは住んでいる市区町村で本人が行う。
- 第2号被保険者:会社などに勤めて厚生年金保険に入っている人。手続きは会社が行う。厚生年金保険に入る条件は、健康保険と同じ。
- 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者。手続きは配偶者の勤め先を通じて行う。
保険料と、払えないとき
第1号被保険者の国民年金保険料は、2026年度(2026年4月〜2027年3月)は月額17,920円です(日本年金機構)。納付期限は納付する月の翌月末日で、口座振替やコンビニエンスストアなどで納められます。
収入が減った、失業したなどで払うのが難しいときは、免除(全額、4分の3、半額、4分の1)や納付猶予を申請できます。日本年金機構は、全額免除を受けた期間も、老齢基礎年金を受け取るときに全額納めた場合の2分の1を受け取れる、手続きをせずに未納にするとこの2分の1は受け取れない、と説明しています。免除や猶予の期間中に障害を負ったり亡くなったりした場合も、要件を満たせば障害基礎年金や遺族基礎年金を受けられます。申請できるのは、納付期限から2年を過ぎていない期間です。
年金は老後のためだけのものではありません。ガイドブックは、保険料の未納が続くと、障害を負ったときの障害基礎年金や、亡くなったときに遺族が受ける遺族基礎年金を受け取れない場合がある、と注意しています。
日本とウクライナの間に、社会保障協定はない
社会保障協定は、国どうしで結ぶ取り決めです。日本年金機構は、その目的を二つ挙げています。働いている国と自分の国の両方で保険料を払う「二重負担」を防ぐこと。そして両国の年金の加入期間を足し合わせ、年金を受け取るのに必要な期間を満たしやすくすることです。
日本年金機構によれば、2025年12月1日にオーストリアとの協定が発効し、発効済みの協定は24か国になりました。厚生労働省の「社会保障協定の締結状況」(2026年6月2日現在)では、ほかに署名済みがポーランド、政府間交渉中がトルコ、ノルウェー、ベトナム、予備協議中等がタイで、ウクライナはどこにも入っていません。
日本の老齢基礎年金を受け取るには、保険料を納めた期間と免除された期間などを合わせて10年以上が必要です(ガイドブック)。協定がないため、ウクライナで年金に入っていた期間を日本の10年に足すことはできません。ウクライナの年金を日本に住みながら受け取れるかどうかは、ウクライナ側の制度の問題で、この記事では扱っていません。
日本を離れるとき:脱退一時金
日本国籍のない人が、日本の年金に6か月以上入って保険料を納めたあと、日本を出国して住所がなくなった場合は「脱退一時金」を請求できます。日本年金機構とガイドブックが挙げる主な要件は次のとおりです。
- 日本国籍を持っていない。
- 国民年金の保険料を納めた期間など、または厚生年金保険に入っていた期間が6か月以上ある。
- 老齢年金を受け取るのに必要な10年の期間を満たしていない。
- 障害年金などを受ける権利を持ったことがない。
- 日本に住所がなく、国民年金・厚生年金保険の被保険者でもない。
- 日本に住所がなくなってから2年以内に請求する。
国民年金の脱退一時金の額は、最後に保険料を納めた月の年度の保険料額をもとに計算され、上限は60か月(5年)分です。日本年金機構によれば、最後に保険料を納めた月が2026年4月から2027年3月までの場合、6か月以上12か月未満で53,760円、60か月以上で537,600円です。厚生年金保険の脱退一時金は、給与の額と加入期間から別の計算式で決まります。
| 国民年金の保険料を納めた期間など | 国民年金の脱退一時金の額 |
|---|---|
| 6か月以上12か月未満 | 53,760円 |
| 12か月以上18か月未満 | 107,520円 |
| 24か月以上30か月未満 | 215,040円 |
| 36か月以上42か月未満 | 322,560円 |
| 60か月以上 | 537,600円 |
請求する前に知っておくことがあります。
- 受け取ると、それまでの日本の年金の加入記録はすべてなくなります。ガイドブックは、将来日本の老齢年金を受け取る可能性を考えて、請求するかをよく考えるよう注意しています。
- 請求書は外国語と日本語の併記で、対応している外国語の中にロシア語はありますが、ウクライナ語はありません(日本年金機構、2026年9月時点)。
- 日本年金機構が請求書を受け取った日にまだ日本に住所があると、受け取れません。市区町村に転出届を出してから請求します。
- 受取口座に、ゆうちょ銀行と一部のインターネット専業銀行は使えません。
制度はこれから変わります。2025年6月に成立した年金制度改正法で、再入国許可を受けて出国した人は、その許可の有効期間内は脱退一時金を受け取れないこと、支給の上限を5年から8年に引き上げることが決まりました。厚生労働省の資料では、この見直しは公布から4年以内の政令で定める日に始まるとされています。2026年9月時点で、日本年金機構のページは上限60か月の説明のままです。
どこで手続きするか
| 制度 | 入る人 | 手続きする場所 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 条件を満たして会社などで働く人 | 勤め先 |
| 国民健康保険 | 勤め先の保険に入らない75歳未満で、住民登録をしている人(対象外の在留資格あり) | 住んでいる市区町村 |
| 国民年金(第1号) | 日本に住所がある20歳以上60歳未満で、第2号・第3号でない人 | 住んでいる市区町村 |
| 厚生年金保険 | 条件を満たして会社などで働く人 | 勤め先 |
| 脱退一時金 | 日本を出国し、住所がなくなった外国籍の人(要件あり) | 日本年金機構(郵送または電子申請) |
『生活・就労ガイドブック』にはウクライナ語版があり、医療の章と年金・福祉の章も読めます。ただし多言語版は第7版で、日本語版の第8版とは版が違います。住民登録と保険の関係は日本の住民登録で出てくる言葉、相談先は日本で暮らし始めたときの相談窓口の記事にまとめています。
出典・参考資料
- 社会保障協定の締結状況(2026年6月2日現在。発効済24か国、署名済ポーランド、政府間交渉中トルコ・ノルウェー・ベトナム、予備協議中等タイ)
発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23 - 社会保障協定(協定の二つの目的、2025年12月1日のオーストリア協定発効で24か国)
発行:日本年金機構 確認日:2026-09-23 - 協定を結んでいる国との協定発効時期および対象となる社会保障制度(相手国の一覧)
発行:日本年金機構 確認日:2026-09-23 - 生活・就労ガイドブック 日本語版 第8版(第6章2 医療保険:健康保険と国民健康保険の加入要件・保険料・給付。第7章1 年金:国民年金の3区分、保険料、免除、未納の影響、厚生年金保険の加入要件と企業規模要件の段階的撤廃、脱退一時金の要件と注意点。第7章2 介護保険)
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23 - 国民年金保険料(2026年度の月額17,920円、納付期限)
発行:日本年金機構 確認日:2026-09-23 - 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度(免除の4種類、申請できる期間、全額免除期間の年金額への反映)
発行:日本年金機構 確認日:2026-09-23 - 脱退一時金の制度(支給要件、上限60月、最後の納付月が2026年度の場合の支給額表)
発行:日本年金機構 確認日:2026-09-23 - 脱退一時金を請求する方の手続き(請求書の対応言語、添付書類、ゆうちょ銀行等で受け取れないこと、提出先と方法)
発行:日本年金機構 確認日:2026-09-23 - 年金制度改正法が成立しました(2025年6月13日成立)
発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23 - 年金制度改正法の主な改正内容(脱退一時金の見直し:再入国許可の有効期間内は支給しない、上限5年から8年、公布から4年以内の政令で定める日から)
発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23 - 国民年金法(第7条 被保険者の資格)
発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-09-23 - 生活・就労ガイドブック(全体版の言語一覧。ウクライナ語版があること)
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23
記載内容に誤りを見つけた場合は、訂正のご連絡からお知らせください。確認のうえ、訂正した内容と経緯を記事に記載します。
