日本からウクライナの年金を受け取るには、毎年12月31日までに本人確認
ウクライナの年金は、国外に住んでいても受け取れます。ただし2024年の法改正で、一時的に国外に住む人への支払いはウクライナ国内の銀行口座に限られ、毎年12月31日までの本人確認が条件になりました。確認がなければ翌年1月から支払いが止まります。日本から使える確認の方法と、止まったときの再開の手続きを、条文にそって説明します。
ウクライナで年金を受け取っていた人が日本に避難してきたとき、その年金はどうなるのか。答えは、ウクライナの年金法と、2025年に定められた政府の手続きの中にあります。国外にいても年金は受け取れます。ただし毎年12月31日までに本人確認を済ませることが条件で、確認がないと翌年1月1日から支払いが止まります。
この記事は、ウクライナの「義務的国家年金保険法」(2003年、第1058-IV号)、2024年の改正法、2025年の内閣決定第299号を、ウクライナ最高会議の法令データベースで2026年9月に確認した内容にもとづいています。自分の年金がどう扱われるか、どの手続きが使えるかは、この記事では判断しません。年金を管理しているウクライナ年金基金(Пенсійний фонд України、ПФУ)で確かめてください。日本の年金との関係は日本の健康保険と年金の記事で扱っています。
国外に住むことは、支払いを止める理由ではなくなった
年金法にはもともと、年金受給者が国外に住んでいる間は、ウクライナが結んだ国際条約に別の定めがない限り支払いを止める、という規定がありました(第49条第1項第2号、第51条の第2文)。ウクライナ憲法裁判所は2009年10月7日の決定(第25-рп/2009号)で、この二つの規定を憲法に反すると判断し、効力を失わせています。
そのうえで、国外にいる人への支払い方を定めたのが、2024年4月25日に最高会議が可決した法律第3674-IX号です。同年6月22日に公表され、翌日から施行されました。この法律は年金法に第47-1条を加え、次のように定めています。
一時的にウクライナの外に住む人への年金の支払いは、ウクライナ国内にある銀行に開いた当座口座に対して、本人が毎暦年12月31日までに本人確認を受けることを条件として行う。
義務的国家年金保険法 第47-1条第1項(日本語訳は編集部)
同じ改正で、支払いを止める理由にも二つが加わりました。本人が国外での一時的な居住を理由に停止を申し出たとき(第49条第1項第2-1号)と、法令で定める本人確認を受けなかったとき(同第4-1号)です。これとは別に、年金を6か月続けて受け取らなかったときも支払いは止まります(同第4号)。
誰が「一時的に国外に住む人」にあたるか
手続きの細部は、内閣が2025年2月11日に決めた決定第299号の「手続き(Порядок)」に書かれています。この決定は2025年3月20日に政府の公報に掲載されて効力を持ちました。手続きは「一時的にウクライナの外に住む人」を、次のいずれかにあてはまるウクライナ国民と定めています。
- 1暦年のうち183日以上(出国日と入国日を含む)ウクライナの外にいる人
- ロシアの侵略に関連して、国外で一時的保護または難民の地位を得た人
定義には、ウクライナの出入国に関する法律(第4条)にもとづく国外永住の手続きをとっていないことも含まれています。また、ウクライナが結んだ国際条約にもとづいて年金を受け取っている人には、この手続きは適用されません。日本とウクライナの間には社会保障協定がありません(厚生労働省「社会保障協定の締結状況」2026年6月2日現在)。
日本で暮らす人が、この定義のどちらにあたるかは、在留資格の種類や滞在日数によって変わりえます。この記事では判断しません。
本人確認の方法は四つ
法律と決定第299号によれば、本人確認(фізична ідентифікація)は年金基金の機関か、年金を受け取っている銀行で行います。日本から使えそうなのは、それと同じ扱いになると定められた三つの方法です。
| 方法 | 決定第299号の定め |
|---|---|
| 年金基金の機関・銀行での本人確認 | 身分を証明する書類などで本人を確かめる。年金基金の機関か、年金を受け取っている銀行で行う |
| 「Дія.Підпис」(Дія ID)でのログイン | 行政アプリ「Дія」で作った電子署名を使い、年金基金の電子サービスのポータルにある個人のキャビネットにログインする |
| ビデオ会議での本人確認 | 年金基金の地方機関が行うビデオ会議で、身分を証明する書類を示す。手順は年金基金の理事会が定める |
| 在外公館による「生存していることの証明」 | 国外にいる人の申し出により、ウクライナの在外公館が、その人が生存していることを証明する |
在外公館の証明を使う場合は、証明書と、年金の支払いを続けてほしいという自由形式の書面の申請を、年金基金の地方機関(本人が登録されているところ)へ書留か価格表記の郵便で送ります。証明書をスキャンした写しと申請を、適格電子署名などを使って年金基金の電子サービスのポータルから出すこともできます(手続き第6項)。在外公館が生存の事実を証明できることは、ウクライナの公証法第38条にも定められています。
「Дія」に国外からログインするときの注意はДія の電子パスポートの記事に、駐日ウクライナ大使館の窓口と予約の方法は大使館の記事にまとめています。
12月31日を過ぎると
決定第299号の手続き第7項によれば、12月31日の時点で年金基金に本人確認の記録がない場合、翌年1月1日から年金の支払いが止まります。
止まった支払いは、再開できます。手続き第8項は、止まった日から1年以内に本人確認を受けた場合や、Дія.Підпис や年金基金のポータルを使った再開の申請があり、ビデオ会議で本人が確認された場合に、年金基金の地方機関の決定で支払いを再開すると定めています。国外にいる人や、一時的保護・難民の地位を得た人は、再開の申請を郵便で送ることもできます。
再開したときに、止まっていた期間の分がどう払われるかは、年金法第46条第1項の条件によります。同項は、本人の責任で受け取らなかった年金は、請求の日の前3年を上限として過去の分を払い、そのうち12か月分までを一度に、残りを毎月分けて払う、と定めています。
口座はウクライナ国内の銀行に
第47-1条のとおり、国外に一時的に住む人の年金は、ウクライナ国内にある銀行の口座に払い込まれます。決定第299号は、年金の支払いを扱う銀行の手続きを定めた1999年の内閣決定第1596号にも、同じ趣旨の一文を加えました。年金を受け取る口座を持つ銀行は、本人確認をした受給者の情報を毎月25日までに年金基金に送ります。
ウクライナの口座に入った年金を日本でどう引き出せるか、手数料がどうなるかは、銀行ごとに違います。この記事では扱っていません。
戒厳令の間だけの特例ではない
ウクライナでは2022年2月24日のロシアによる全面侵攻のあと、内閣は2022年2月26日の決定第162号で、戒厳令の期間の年金の支払いと配達の特例を定めました。ただし、国外に住む人への支払いを定めた第47-1条は年金法の本則で、戒厳令の期間に限るという定めはありません。戒厳令が終わっても、この条文が改められない限り、毎年の本人確認は続くことになります。
なお決定第299号は、占領地域に住む人や、占領地域から政府の管理地域に移った人への支払いも定めていますが、この記事では国外に住む人の部分だけを扱っています。
手続きの前に確かめること
- 自分の年金を管理している年金基金の地方機関はどこか
- 今年の本人確認が、すでに済んだ扱いになっているか(12月31日が期限)
- 年金を受け取る口座が、ウクライナ国内の銀行にあるか
- Дія.Підпис を使えるか。使えない場合、ビデオ会議か在外公館の証明のどちらを使うか
- 在外公館で生存の証明を受ける場合の予約と必要書類(駐日ウクライナ大使館)
- 支払いが止まっている場合、再開の申請をどこに、どの方法で出すか
ここに書いた条文と手続きは、2026年9月に確認した現行の版(年金法は2026年8月2日時点の版、決定第299号は2026年2月5日時点の版)です。年金基金の案内は変わることがあるため、手続きの前に年金基金で最新の扱いを確かめてください。
出典・参考資料
- Закон України «Про загальнообов'язкове державне пенсійне страхування» від 09.07.2003 № 1058-IV(第1条 фізична ідентифікація の定義、第46条第1項、第47-1条、第49条第1項、第51条。2026年8月2日時点の版)
発行:Верховна Рада України(法令データベース) 確認日:2026-09-24 - Закон України «Про внесення змін до деяких законів України щодо врегулювання питання обчислення страхового стажу та пенсійного забезпечення» від 25.04.2024 № 3674-IX(第47-1条・第49条第1項第2-1号と第4-1号の追加、本人確認と同等の三つの方法、施行日。Голос України 2024年6月22日掲載)
発行:Верховна Рада України(法令データベース) 確認日:2026-09-24 - Рішення Конституційного Суду України від 07.10.2009 № 25-рп/2009(年金法第49条第1項第2号と第51条第2文を違憲とした決定)
発行:Верховна Рада України(法令データベース) 確認日:2026-09-24 - Постанова Кабінету Міністрів України від 11.02.2025 № 299 «Про деякі особливості виплати пенсій…»と同決定で承認された Порядок(第1項・第2項の定義、第4項、第6項の本人確認と郵送・電子申請、第7項の支払停止、第8項の再開、第1596号決定の改正。2026年2月5日時点の版。Урядовий кур'єр 2025年3月20日掲載)
発行:Верховна Рада України(法令データベース) 確認日:2026-09-24 - Закон України «Про нотаріат» від 02.09.1993 № 3425-XII(第38条第8号:在外公館が生存の事実を証明する)
発行:Верховна Рада України(法令データベース) 確認日:2026-09-24 - Постанова Кабінету Міністрів України від 26.02.2022 № 162 «Про особливості виплати та доставки пенсій, грошових допомог на період введення воєнного стану»(戒厳令期間の年金の支払いの特例)
発行:Верховна Рада України(法令データベース) 確認日:2026-09-24 - 社会保障協定の締結状況(2026年6月2日現在。ウクライナは発効済・署名済・交渉中・予備協議中等のいずれにもない)
発行:厚生労働省 確認日:2026-09-24 - Громадянам, які перебувають за кордоном: особливості проходження ідентифікації(決定第299号の本人確認の方法の案内)
発行:Донецька обласна державна адміністрація(ドネツィク州行政府) 確認日:2026-09-24
記載内容に誤りを見つけた場合は、訂正のご連絡からお知らせください。確認のうえ、訂正した内容と経緯を記事に記載します。

