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人と暮らし/解説

金利3%で借りる人、7%で借りる人。ウクライナの住宅ローン「єОселя」

ウクライナの政府住宅ローン「єОселя」は2022年10月に始まり、2026年9月15日までに2万8,579件が実行されました。軍人・医療従事者・教員・研究者と、2026年7月からは退役軍人も年3%、国内避難民とその他の市民は年7%です。借りる人にも買える家にも、国籍、住宅の広さ、築年数などの条件があります。

オリュカのひとこと

同じ住宅ローンなのに、金利が3%の人と7%の人に分かれるのはなぜでしょう。借りる人の区分を見てみましょう。

ウクライナの住宅ローン「єОселя(イェオセーリャ)」で、2026年9月15日までに実行された融資は2万8,579件、総額は507億7,200万フリヴニャです。事業を担う株式会社ウクルフィンジトロ(Укрфінжитло)が公表している週ごとの集計によるものです。2023年12月27日時点の集計では6,228件だったので、およそ2年9か月で4倍以上になりました。

єОселяは、ロシアによる全面侵攻が続くなかで、2022年10月1日に始まった政府の住宅ローン制度です。電子政府アプリ「Дія(ディーヤ)」で申し込み、国が利息の一部を肩代わりします。金利は借りる人の職業や立場によって3%と7%に分かれます。以下の条件は2026年9月時点のものです。

根拠は2022年8月の内閣決定第856号

制度の土台は、内閣が2022年8月2日に定めた決定第856号「株式会社『ウクライナ金融住宅会社』による、ウクライナ市民への手頃な住宅ローンの提供の若干の問題について」です。決定は2022年10月1日に効力を生じ、その後2026年6月17日の決定第794号まで、14回改正されています。制度名のєОселяは、Дія の案内ページが使っている名前で、同じページは制度を「ウクライナ大統領が発案した」と説明しています。

融資をするのはウクルフィンジトロ自身か、同社と一般協定を結んだ銀行です。2026年9月15日時点の集計には、オシャドバンク(1万44件)、プリヴァトバンク(6,951件)、ウクルハズバンク(6,771件)など11行の名前が並んでいます。

3%で借りられる人、7%で借りる人

決定第856号の条件では、融資の金利(基本金利)は契約から10年間が年7%、11年目からは年10%です。そのうえで、決まった立場の人には、国の側が利息の差額を毎月補い、実際に払う金利を最初の10年間は年3%、11年目からは年6%に下げます。

区分(決定第856号 第3項)実際に払う金利
1. 契約で勤務する軍人、国家親衛隊・国境警備庁・保安庁などの職員、警察官、検察官、動員・予備役の招集で兵役に就いている人と、それぞれの家族3%(11年目から6%)
2. 国立・公立の医療機関の医療従事者3%(同)
3. 国立・公立の教育機関の教員3%(同)
4. 国立・公立の教育機関・研究機関の研究者3%(同)
5. 戦争退役軍人(戦闘参加者、戦争で障害を負った人、戦争参加者)、戦死した退役軍人・防衛者の家族3%(同)。2026年7月17日以降の契約から
6. 国内避難民(と、その人のために家を買う一親等の家族)7%(11年目から10%)
7. その他の市民で、住宅を持っていないか、持っていても基準の面積より狭い人7%(同)
内閣決定第856号(2026年7月17日の版)の第3項・第10項から作成。区分の説明は要約。

医療従事者・教員・研究者は、国立・公立の機関に勤めていることが条件です。銀行は3か月ごとに勤め先を確かめ、民間の職場へ移るなどして区分から外れると、金利は基本金利の7%に戻ります。

2026年7月、退役軍人が3%の側に移った

区分5の退役軍人は、以前から申し込むことはできましたが、利息の補てんを受けられるのは区分1〜4に限られていました。2026年6月17日の決定第794号がこれを「区分1〜5」に改め、同年7月17日から、退役軍人も3%で借りられるようになりました。ただし同じ改正は、それより前に退役軍人として借りた人には、契約の全期間にわたって補てんをしないとも定めています。すでに7%で借りている退役軍人の金利は、この改正では下がりません。

「戦闘参加者」などの地位そのものについては、1993年の法律のまま130万人を超えた、ウクライナの退役軍人と家族で説明しています。

借りる人の条件

  • ウクライナ国籍を持ち、契約のときに18歳以上。完済のときに70歳を超えないこと
  • 本人と家族が、ウクライナ国内に基準の面積(1人なら52.5平方メートル、2〜3人なら73.5平方メートル、4人目から1人につき21平方メートルを加える)以上の住宅を持っていないこと。占領地や戦闘が続く地域にある住宅、破壊された住宅は数えない
  • 申し込む前の36か月に、基準を超える広さの住宅を手放していないこと
  • 同じ制度や、過去の国の住宅支援で融資・補償を受けていないこと
  • 返済能力があること。審査は銀行がそれぞれの内部規則で行う

頭金は、25歳以下なら住宅価格の10%以上、26歳以上なら20%以上です。返済期間は最長240か月(20年)です。

買える家の条件

対象はマンションの一室か一戸建てで、ウクライナの国内にあることが条件です。ただし、占領されている地域と、戦闘が続いている地域(地域発展省の一覧で終わりの日が決まっていない地域)の住宅は買えません。

  • 築年数:区分1〜5の人は原則として築3年以内。チェルニーヒウ州、スームィ州、ハルキウ州、ザポリッジャ州、ヘルソン州では築20年以内まで認められる。国内避難民は全国で築20年以内。その他の市民は築3年以内
  • 広さ:借りられる額の計算に使う面積は、マンションで最大115.5平方メートル、一戸建てで最大125.5平方メートル
  • 価格:1平方メートルあたりの価格の上限は、地域発展省が地域ごとに示す住宅建設費の2倍。上限を超えた分は頭金で払う
  • 別荘・菜園の家、建築文化財に登録された建物は対象外

Дія の案内ページは、ヴィーンヌィツャ州で1人暮らしの医師が52.5平方メートルの新築を買う例を挙げ、1平方メートルの上限を4万3,710フリヴニャ、住宅の総額を229万4,775フリヴニャと計算しています。上限は地域と時期で変わるため、この数字は計算の例として読んでください。

申し込みは Дія から、契約は銀行の窓口で

申し込みは Дія のアプリかポータルで行い、家族構成、収入、買いたい住宅の情報を入れて銀行を選びます。収入は、税務と社会保険の国の登録簿にある直近6か月分が自動で添付されます。銀行から条件の提示が届いたら、本人が銀行に出向いて書類を出し、契約を結びます。

国外からの送金など、国の登録簿に載っていない収入は、本人が銀行に出向いて示すことになっています。決定には、国外に住んでいる人を対象から外す規定は見当たりません。一方で、ウクライナ国籍であること、ウクライナの登録簿にある収入で審査されること、銀行の窓口に本人が行くこと、住宅はウクライナ国内の占領・戦闘地域以外にあることが前提です。国外に住んでいる人が使えるかどうかは、個別に銀行やウクルフィンジトロに確かめる必要があります。

ほかの支援との組み合わせ

  • 破壊された住宅の補償「єВідновлення」で受け取った住宅証書は、єОселяの頭金に使える(壊れた家は修理費、失った家は住宅証書。ウクライナの「єВідновлення」
  • 占領地から避難した人向けの住宅バウチャーも、頭金に使える
  • 国内避難民と前線に近い地域の住民には、2025年9月10日から、頭金の70%(住宅価格200万フリヴニャ以下など条件あり)と、1年目の毎月の返済額の70%(年15万フリヴニャまで)を国が払う仕組みがある(内閣決定第998号)。承認は融資の実行前に得る必要がある

オリュカのひとこと

2万8,579件は、いつまでに実行された件数でしょう。表の集計日と出典をあわせて確かめましょう。

数字で見るєОселя

区分件数
軍人・治安機関の職員1万3,162
その他の市民7,905
国内避難民2,437
教員1,901
医療従事者1,899
退役軍人751
研究者524
合計2万8,579
ウクルフィンジトロ「єОселя の統計」(2026年9月15日時点)から作成。制度開始からの累計。

最も多いのは軍人と治安機関の職員で、全体の46%を占めます。地域別では、キーウ州が8,292件、キーウ市が6,122件で、合わせると件数の50.4%、金額の55.3%になります。一方、ハルキウ州は365件、ザポリッジャ州は87件、ミコライウ州は100件で、ヘルソン州、ドネツィク州、ルハンシク州は地域別の表に載っていません。占領地と戦闘が続く地域の住宅は対象外という規定がありますが、州ごとの差の理由をウクルフィンジトロは説明していません。

買った住宅の種類は、中古(二次市場)が1万5,334件(53.7%)、建設中の住宅を開発業者から買ったものが9,302件(32.5%)、新築(一次市場)が3,943件(13.8%)です。

国内避難民の暮らしを支えるほかの給付は国内避難民への住居給付、延長の上限は半年×2回から6回へで、Дія の仕組みは「Дія」の電子パスポート、国境では使えず国外での法的効力もないで扱っています。

出典・参考資料

  1. Постанова КМУ від 02.08.2022 № 856 «Деякі питання забезпечення приватним акціонерним товариством “Українська фінансова житлова компанія” доступного іпотечного кредитування громадян України»(第3・8・9・10・12・16項、施行日、改正の一覧。2026年7月17日の版)
    発行:Кабінет Міністрів України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  2. 同上 2026年5月22日の版(改正前:補てんの対象が区分1〜4)
    発行:Кабінет Міністрів України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  3. Постанова КМУ від 17.06.2026 № 794(区分5への補てんの拡大、施行日2026年7月17日)
    発行:Кабінет Міністрів України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  4. Постанова КМУ від 13.08.2025 № 998(国内避難民・前線地域の住民への頭金・返済の70%の国の支援、施行日2025年9月10日)
    発行:Кабінет Міністрів України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  5. Статистика за програмою єОселя, інформація на дату 15.09.2026(件数・金額・区分別・銀行別・住宅の種類・州別)
    発行:Укрфінжитло 確認日:2026-09-24
  6. Статистика за програмою єОселя, інформація на дату 27.12.2023(6,228件)
    発行:Укрфінжитло 確認日:2026-09-24
  7. єОселя — Програма доступного кредитування житла(大統領の発案という説明、区分、ヴィーンヌィツャ州の計算例)
    発行:Дія(Міністерство цифрової трансформації України) 確認日:2026-09-24
  8. є-Оселя(申し込みの手順、よくある質問:勤め先が変わったときの金利、єВідновлення との併用、70%の国の支援)
    発行:Укрфінжитло 確認日:2026-09-24

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