1993年の法律のまま130万人を超えた、ウクライナの退役軍人と家族
ウクライナで退役軍人を支える仕組みの土台は、ソ連崩壊の2年後、1993年に定められた法律です。政府の戦略は、退役軍人、戦死者の家族、戦争で障害を負った人を合わせて130万人を超えると書き、この法律のままでは実情に合わないと認めています。「戦闘参加者」という地位で受けられる支援と、2026年9月時点で進んでいる見直しをまとめます。
オリュカのひとこと
「退役軍人」と「戦闘参加者」は、同じ意味の言葉でしょうか。法律の第4条がどう分けているかを見てみましょう。
ウクライナ内閣が2024年11月29日に承認した「2030年までの退役軍人政策戦略」は、現状の分析をこう書き出しています。「長いあいだ、ウクライナの退役軍人政策はもっぱらソ連の過去に依拠してきた」。
同じ戦略は、退役軍人、戦死・死亡した人の家族、戦争で障害を負った人を合わせた数を「130万人を超える」としています。いつ時点の数かは書かれていません。ロシアの侵略が続けば、この数はさらに増えるとも述べています。
土台は1993年の法律
支援の中心にあるのは、1993年10月22日の法律「戦争退役軍人の地位とその社会的保護の保障について」(第3551-XII号)です。ソ連から独立して2年後に定められ、その後何度も改正されながら、いまも使われています。戦略はこの法律について、「現代化されないまま、2014年以降のウクライナの退役軍人を支える土台になった」と書き、法律上の「退役軍人」の定義が社会の理解と大きく違っていると指摘しています。
法律の第4条は、「戦争退役軍人」を三つに分けています。
- 戦闘参加者(учасники бойових дій)
- 戦争で障害を負った人(особи з інвалідністю внаслідок війни)
- 戦争参加者(учасники війни)
第5条は、戦闘参加者を「祖国を守る戦闘任務の遂行に、戦時・平時を問わず、軍の部隊やパルチザン、その他の編成の一員として加わった人」と定めています。
「戦闘参加者」に数えられる人
誰が戦闘参加者にあたるかは、第6条が一つずつ列挙しています。条文の前半に並ぶのは、第二次世界大戦やソ連時代の国外での戦闘に加わった人です。レニングラードの包囲下で働いた人や、1941〜42年のセヴァストポリの防衛に加わった人まで含まれています。1993年の法律が、まずソ連時代の戦争の退役軍人を対象に作られたことが、条文の並びからも分かります。
2014年以降の戦いに加わった人は、あとから加えられた項目で数えられています。
- 第19号:軍、国家親衛隊、保安庁、国境警備庁などの軍人で、「対テロ作戦」や、ドネツィク州・ルハンシク州でのロシアの武力侵略の撃退と抑止に直接加わった人
- 第20号・第21号:自発的に結成された義勇部隊の一員として戦い、その部隊が後に軍などに編入された人など
- 第25号:2022年2月24日から3月25日までの間に、民間人の防衛参加に関する法律にもとづいて、または義勇部隊の一員として、軍などと連携して防衛に加わった人
全面侵攻の最初の1か月に武器を取った民間人を数えるために、期間を区切った項目が設けられている点が目を引きます。どの書類で参加を証明するか、どの機関が地位を認めるかは、立場ごとに別の手続きが定められています。
地位で受けられるもの
第12条は、戦闘参加者が受けられる優遇を20以上の項目で並べています。主なものは次のとおりです。
- 医師の処方による薬の無償提供
- 住居費と公共料金(ガス・電気など)の75%割引。対象の面積や使用量には上限がある
- 市内の公共交通の無料乗車
- 年14日の有給の追加休暇
- 年金への上乗せ(就労能力を失った人の最低生活費の25%)
- 毎年、独立記念日の前に支払われる一時金。額は内閣が決める
一方で、条文に書かれていても使えない項目があります。保養施設での療養(またはその費用の補償)を定めた第3号は、2023年から2026年まで毎年、その年の国家予算法によって効力を止められています。法律の優遇がそのまま実行されるとは限らないことは、戦略が「優遇の宣言」と呼んで批判している点でもあります。
2018年にできた退役軍人省
支援を担う省庁は、2018年に新たに設けられました。内閣は2018年12月27日の決定第1175号で、退役軍人省(Мінветеранів)の規程を定めています。規程は同省を、退役軍人とその家族の社会的保護、心理的なリハビリ、社会・職業への適応、雇用などの政策をつくり、実行する中央の行政機関と位置づけています。
窓口は各地の行政サービスセンター(ЦНАП)にも置かれています。退役軍人省によれば、2025年10月1日の内閣決定第1226号にもとづき、ЦНАПの「退役軍人の統一窓口」で20以上の手続きができます。義勇兵としての戦闘参加者の地位の申請、戦傷者や戦死者の家族としての地位の申請、証明書の発行、一時金の申請などです。電話の相談窓口「統一退役軍人ライン」の番号は15-28です。
2024年の大統領令が求めたこと
いまの見直しの出発点の一つは、2024年8月22日の大統領令第512号「戦争退役軍人とその家族、戦死した退役軍人・防衛者の家族を支える緊急措置について」です。大統領令は内閣に対し、2030年までの退役軍人政策戦略と、兵役から市民生活への移行の仕組みをつくる2032年までの戦略を「ただちに」承認するよう求めました。冒頭で触れた戦略はその3か月後に承認され、根拠となる文書の一つにこの大統領令を挙げています。
同じ大統領令は、退役軍人が集まり支え合う「退役軍人の空間(ветеранські простори)」を各地で使いやすくすること、同じ経験を持つ人どうしの自助グループ、職業訓練と地域ごとの労働市場の分析、退役軍人と家族のための相談センター「統一退役軍人ライン」の設置の検討も挙げています。州の行政府には、地域社会と協力して、心の健康を支える拠点づくりや雇用の後押しを進めるよう求めました。
オリュカのひとこと
見直しの出発点が「誰を退役軍人とするか」なのは、なぜでしょう。戦略が挙げる課題をこの節で確かめましょう。
見直しは「誰を退役軍人とするか」から
戦略は、2014年以前に地位を得た人と、いま国を守っている人とでは必要な支援が違うと書いています。さらに、2014年以降の戦いを経験したうえで全面侵攻後に再び動員された人と、全面侵攻で初めて兵役に就いた人とでは、市民生活の立て直しに必要なものが大きく違う可能性があるとして、二つを分けて分析する必要を認めています。
そのうえで戦略は、退役軍人の地位を申請できる人の範囲の見直しや、地位を与え、取り消す手続きの更新を課題に挙げています。退役軍人省のサイトによれば、同省はばらばらの規定を一つにまとめる法典の草案づくりを進めており、法典にするか別の法律にするかも検討中です。同省は、すでにある権利と保障は維持することを原則にするとしています。
退役軍人の数が戦争のたびに増えていくなかで、1993年の法律を土台にしたまま支援を広げてきた仕組みが、作り直しの段階に入っています。戦時下の制度全般についてはウクライナの戒厳令で止まっていること、止められないことも参照してください。
出典・参考資料
- Закон України «Про статус ветеранів війни, гарантії їх соціального захисту» № 3551-XII(1993年10月22日。第4・5・6条(第19〜21・25号)・第12条、第12条第1項第3号の効力停止の注記、2026年9月23日時点の版)
発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24 - Розпорядження КМУ № 1209-р «Про схвалення Стратегії ветеранської політики на період до 2030 року…»(2024年11月29日。現状分析の「ソ連の過去に依拠」「130万人を超える」、二つの集団、地位の範囲の見直し)
発行:Кабінет Міністрів України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24 - Постанова КМУ № 1175 «Деякі питання Міністерства у справах ветеранів»(2018年12月27日。退役軍人省の規程、同省の位置づけと任務)
発行:Кабінет Міністрів України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24 - Указ Президента України № 512/2024 «Про невідкладні заходи щодо підтримки ветеранів війни…»(2024年8月22日。二つの戦略の承認の要求、退役軍人の空間、自助グループ、統一退役軍人ラインの検討、州行政府への要請)
発行:Президент України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24 - Які послуги можна отримати в «єдиних ветеранських вікнах» у ЦНАПах(2025年10月1日の内閣決定第1226号、20以上の手続き、統一退役軍人ライン15-28)
発行:Міністерство у справах ветеранів України 確認日:2026-09-24 - Мінветеранів активізувало розробку кодексу про ветеранську політику(法典の草案づくり、法典か法律かの検討、既存の権利の維持)
発行:Міністерство у справах ветеранів України 確認日:2026-09-24
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