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人と暮らし/解説

カリーナはガマズミではない。ウクライナの動植物の名前を日本語にする

カリーナ、レレカ、カシュタン、ソロヴェイコ。ウクライナ語の植物や鳥の名前は、辞書の訳語と日本の同じ名前の種が一致しないことがよくあります。学名を間に置いて和名を引く手順、取り違えやすい11の名前、2021年の赤本の一覧、「国の花」は法律にあるのかをまとめました。

画像:Ukrainavi

オリュカのひとこと

歌に出てくるカリーナは、辞書の「ガマズミ」と同じ木なのでしょうか。学名でつなぐ手順から確かめられます。

ウクライナの歌や詩、ニュースには、カリーナ(калина)、レレカ(лелека)、カシュタン(каштан)、ソロヴェイコ(соловейко)のような植物や鳥の名前がよく出てきます。辞書を引くと「ガマズミ」「コウノトリ」「クリ」「ナイチンゲール」といった訳語が見つかりますが、多くの場合、それは日本で同じ名前で呼ばれている生き物とは別の種です。

二つの言葉をつなぐのは学名(ラテン語の名前)です。ウクライナ語の名前から学名を引き、学名から和名を引くと、取り違えを減らせます。

学名が、二つの言葉をつなぐ

ウクライナの「赤本(Червона книга України)」の法律(2002年2月7日、第3055-III号)は第12条で、赤本に載せる種ごとに、名前をウクライナ語とラテン語で示すと定めています。政府が2021年に承認した赤本の一覧も、ウクライナ語の名前と学名を並べています。日本の側では、植物の和名と学名を対応させた「植物和名-学名インデックス YList」(米倉浩司・梶田忠)が公開されています。

訳すときの手順は次のとおりです。

  • ウクライナ語の名前から学名を調べる。赤本に載る種なら公式の一覧で、載らない種は生物多様性の国際データベース(GBIF)などで引ける。
  • 学名から和名を調べる。植物ならYListで、動物は図鑑や生物名のデータベースで引く。
  • 和名が二つ以上ある、または和名がない場合は、学名を添えて書く。

オリュカのひとこと

マロニエも食べる栗の木も、「カシュタン」と呼ばれるのでしょうか。下の表で学名と和名を並べて見られます。

取り違えやすい名前

ウクライナ語の名前学名和名取り違えやすい点
калина звичайна(カリーナ)Viburnum opulusセイヨウカンボク(別名ヨウシュカンボク)日本のカンボクは同じ種の別の変種。ガマズミ(V. dilatatum)は別の種
лелека білийCiconia ciconiaシュバシコウ日本のコウノトリは C. boyciana で別の種
лелека чорнийCiconia nigraナベコウ黒いコウノトリ類。赤本に載っている
гіркокаштан звичайний(каштан とも)Aesculus hippocastanumマロニエ(別名セイヨウトチノキ)クリの仲間ではない
каштан їстівнийCastanea sativaヨーロッパグリ日本のクリは C. crenata で別の種
соловейко західнийLuscinia megarhynchosサヨナキドリウクライナにはもう1種いる
соловейко східнийLuscinia lusciniaヤブサヨナキドリ上の種と同じ「ソロヴェイコ」で呼ばれる
барвінок малийVinca minorヒメツルニチニチソウツルニチニチソウ(V. major)とは別の種
підсніжник білосніжний(підсніжник звичайний)Galanthus nivalisスノードロップ(別名ユキノハナ、マツユキソウ)赤本の一覧でも名前が二つ併記されている
білотка альпійськаLeontopodium alpinumエーデルワイスウクライナ語の名前は「白い」を含む語
бабак степовийMarmota bobakボバクマーモット(ボバックスとも)和名が一つに決まっていない
学名とウクライナ語の名前は、赤本の一覧(2021年)、GBIF(Catalogue of Life などの名前の一覧)、Internet Encyclopedia of Ukraine による。植物の和名は YList、動物の和名は Catalogue of Life に載る日本語名による(2026年9月閲覧)。

カリーナは、ガマズミ属のセイヨウカンボク

калина の学名は Viburnum opulus で、ガマズミ属の木です。YListでは、ヨーロッパに分布する基本の変種(var. opulus)の和名はセイヨウカンボク(別名ヨウシュカンボク)で、日本で「カンボク」と呼ぶのは同じ種の別の変種です。日本の「ガマズミ」は Viburnum dilatatum という別の種なので、калина を「ガマズミ」と訳すと、同じ属の別の木を指すことになります。

レレカは、コウノトリの仲間の総称

Internet Encyclopedia of Ukraine(IEU)の「コウノトリ」の項目は、ウクライナ語の呼び名として лелека、бузько、чорногуз の三つを挙げ、ウクライナにはおもに2種がいると書いています。全土にいる白いシュバシコウ(Ciconia ciconia)と、カルパティア山脈とポリッシャにいる黒いナベコウ(Ciconia nigra)です。日本のコウノトリは Ciconia boyciana という別の種で、ウクライナ語では лелека далекосхідний(極東のレレカ)と呼ばれます。

カシュタンは、クリとは限らない

каштан は、食べる栗の木(каштан їстівний、Castanea sativa)にも、マロニエ(Aesculus hippocastanum)にも使われます。マロニエのウクライナ語の名前は гіркокаштан звичайний(苦い栗)で、каштан кінський(馬の栗)とも呼ばれます。街路樹の「カシュタン」を「栗の木」と訳す前に、どちらの木かを確かめる必要があります。

ソロヴェイコは2種いる

IEUによれば、ウクライナには西の соловейко(Luscinia megarhynchos)と東の соловейко(Luscinia luscinia)がいて、前者はおもにクリミアのほか、ザカルパッチャ、ポリッシャ、森林ステップの西部に、後者はウクライナ全土にいます。和名はそれぞれサヨナキドリ、ヤブサヨナキドリです。詩の中の「ソロヴェイコ」がどちらを指すかは、多くの場合決められません。

赤本で分かること

赤本の法律によれば、赤本は、ウクライナの領土と大陸棚、排他的経済水域で珍しい種や絶滅のおそれのある種を載せた「国の公式文書」です。内閣は少なくとも10年に1度、赤本を正式に刊行すると定められています。載せる種は、状態に応じて次の7つの区分に分けられます(第13条)。

  • зниклі(絶滅)
  • зниклі в природі(野生では絶滅)
  • зникаючі(絶滅のおそれが高い)
  • вразливі(危険が増している)
  • рідкісні(まれ)
  • неоцінені(評価されていない)
  • недостатньо відомі(情報が足りない)

いまの一覧は、赤本国家委員会(Національна комісія з питань Червоної книги України)の2020年6月10日の決定にもとづき、環境保護・天然資源省が2021年に承認したものです。動物は1月19日の省令第29号で687種、植物と菌類は2月15日の省令第111号で857種が載っています。動物の一覧は、2009年6月17日の省令で承認された前の一覧に代わるものです。

赤本の区分(2021年の一覧)
ナベコウ(лелека чорний)рідкісний(まれ)
シュバシコウ(лелека білий)一覧に載っていない
ズーブル(зубр、Bison bonasus)зниклий в природі(野生では絶滅)
ボバクマーモット(бабак степовий)зникаючий(絶滅のおそれが高い)
ヒグマ(ведмідь бурий、Ursus arctos)зникаючий(絶滅のおそれが高い)
クロヅル(журавель сірий、Grus grus)рідкісний(まれ)
エーデルワイス(білотка альпійська)зникаючий(絶滅のおそれが高い)
スノードロップ(підсніжник білосніжний)неоцінений(評価されていない)
環境保護・天然資源省令第29号(2021年1月19日)、第111号(2021年2月15日)の一覧による。2026年9月時点で効力のある版。

IEUのコウノトリの項目(1993年刊行の事典が初出)は「コウノトリは絶滅のおそれのある種となり、法律で保護されている」と書いていますが、2021年の赤本の一覧に載っているのは黒いナベコウだけで、白いシュバシコウは載っていません。事典の記述と、いまの一覧の年を分けて読む必要があります。ウクライナの保護区についてはウクライナの保護区に残る、耕されなかった草原と28の湖で紹介しています。

「国の花」「国の鳥」は法律にあるか

ウクライナ憲法第20条が国家の象徴として定めているのは、国旗、国章、国歌の三つです。花や鳥は含まれていません。三つの象徴については青と黄の国旗、三叉戟の国章、2003年に歌詞が決まった国歌で紹介しています。

カリーナやコウノトリを「ウクライナの国花」「国鳥」と紹介する文章もありますが、憲法の象徴の規定にはあたりません。IEUは、コウノトリが巣をかけた家は平和で豊かに暮らせるという民間の信仰や、昔話で人を助ける役を担うことを記しています。ソロヴェイコは民謡によく歌われ、соловейко は親しい人への呼びかけにも使われるとされます。ヒメツルニチニチソウ(барвінок)は、民間の伝承や復活祭、結婚の儀礼で大きな役割を持つと書かれています。これらは文化の中での位置づけで、法律上の指定とは別のものです。

訳すときの書き方

初めて出すときは、カナとウクライナ語、学名を並べると、読む人が自分で確かめられます。たとえば「カリーナ(калина、学名 Viburnum opulus、和名セイヨウカンボク)」のように書きます。詩や歌で種まで決められないときは、「ガマズミ属の木」「コウノトリの仲間」のように、分かる範囲の言い方にとどめます。

ロシア語の辞書を経由すると、別の語に行き着くことがあります。シュバシコウはロシア語で белый аист、ボバクマーモットは байбак とも呼ばれ、ウクライナ語の лелека、бабак とは語が違います。二つの言葉の違いはウクライナ語とロシア語はどこが違うのかで紹介しています。

出典と記事の記録出典 19件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. Закон України «Про Червону книгу України» №3055-III2002年2月7日。第3条の定義、第12条のウクライナ語・ラテン語の名前と10年ごとの刊行、第13条の区分
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  2. Про затвердження переліків видів тварин, що заносяться до Червоної книги України環境保護・天然資源省令第29号、2021年1月19日。国家委員会の2020年6月10日の決定、2009年の省令第313号の廃止、一覧687種、各種の区分
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  3. Про затвердження переліків видів рослин та грибів, що заносяться до Червоної книги України環境保護・天然資源省令第111号、2021年2月15日。一覧857種、各種の区分
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  4. Конституція України第20条:国家の象徴
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  5. Storkウクライナ語の三つの呼び名、2種の分布、民間の信仰、1993年の記述
    発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-24
  6. Nightingaleウクライナの2種の分布、民謡、呼びかけ
    発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-24
  7. PeriwinkleVinca minor の民間伝承・儀礼での役割
    発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-24
  8. 植物和名-学名インデックス YListViburnum opulus、V. dilatatum、Aesculus hippocastanum、Castanea sativa、Vinca minor、Galanthus nivalis、Leontopodium alpinum、Vinca major の和名と別名
    発行:米倉浩司・梶田忠 確認日:2026-09-24
  9. GBIF Backbone Taxonomy:Ciconia ciconiaウクライナ語・ロシア語・日本語の名前
    発行:GBIF 確認日:2026-09-24
  10. GBIF Backbone Taxonomy:Ciconia boycianaウクライナ語 лелека далекосхідний、和名コウノトリ
    発行:GBIF 確認日:2026-09-24
  11. GBIF Backbone Taxonomy:Ciconia nigra和名ナベコウ
    発行:GBIF 確認日:2026-09-24
  12. GBIF Backbone Taxonomy:Viburnum opulusウクライナ語 калина звичайна
    発行:GBIF 確認日:2026-09-24
  13. GBIF Backbone Taxonomy:Aesculus hippocastanumウクライナ語 гіркокаштан звичайний、каштан кінський
    発行:GBIF 確認日:2026-09-24
  14. GBIF Backbone Taxonomy:Castanea sativaウクライナ語 каштан їстівний
    発行:GBIF 確認日:2026-09-24
  15. GBIF Backbone Taxonomy:Luscinia megarhynchosウクライナ語 соловейко західний、和名サヨナキドリ
    発行:GBIF 確認日:2026-09-24
  16. GBIF Backbone Taxonomy:Luscinia lusciniaウクライナ語 соловейко східний、和名ヤブサヨナキドリ
    発行:GBIF 確認日:2026-09-24
  17. GBIF Backbone Taxonomy:Marmota bobak和名、ロシア語 байбак
    発行:GBIF 確認日:2026-09-24
  18. GBIF Backbone Taxonomy:Ursus arctos和名ヒグマ
    発行:GBIF 確認日:2026-09-24
  19. GBIF Backbone Taxonomy:Grus grusウクライナ語 журавель сірий、和名クロヅル
    発行:GBIF 確認日:2026-09-24

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