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社会を知る/解説

ウクライナ軍で働く女性は7万5千人超、登録の義務は医療職だけ

ウクライナの法律は、女性が男性と同じ条件で軍務につくことを認め、戦時の召集は本人が志願した場合に限っています。兵役登録の義務は2021年から4年で3回書き換えられ、いまは医療・薬学の専攻を持つ女性だけが対象です。国防省などが公表した人数を、発表者と時点をつけて並べます。

オリュカのひとこと

「男性と同じ条件」と「召集は志願の場合だけ」は、条文の中でどう並んでいるのでしょう。第12項の引用から読んでみましょう。

2026年3月8日、ウクライナ軍(Збройні Сили України)の総司令官オレクサンドル・シルシキーは、国際女性デーのメッセージで「ウクライナ軍では現在7万5千人を超える女性が勤務し、そのうち5万5千人以上が軍人(військовослужбовиці)だ」と述べました。国防省の報道機関アルミヤインフォルム(АрміяInform)が伝えています。

ロシアによる全面侵攻のもとで、18歳から60歳の男性には出国の制限がかかっています(戒厳令の記事を参照)。女性の扱いは違います。ウクライナの法律は、女性が軍務につくことを男性と同じ条件で認める一方、戦時に女性を軍に召集できるのは本人が望む場合だけだと定めています。以下、女性の軍務を開いてきた法律と命令、兵役登録の義務の移り変わり、国防省などが公表してきた人数を、時点と発表者をつけて見ていきます。

法律は「男性と同じ条件で」と書いている

軍務の基本を定めるのは、法律「兵役義務と軍務について」(Про військовий обов’язок і військову службу)です。その第1条第12項に、2018年9月6日の法律第2523-VIII号が次の一文を加えました。

「女性は、母性と子どもの保護に関する法令が定める場合、ならびに性別による差別の禁止を除き、男性と同じ条件で兵役義務を果たす。これには、志願による(契約による)採用と召集、軍務、予備役での勤務、予備の兵役義務の履行、兵役登録の規則の順守が含まれる」(本記事による仮訳)。

この法律の題名は「ウクライナ軍とその他の軍事組織で軍務につく際の、女性と男性の平等な権利と機会の確保について」です。2018年10月17日に最高会議の新聞『ゴロス・ウクライーヌィ』に掲載され、公布から10日後に施行されました。

同じ第12項には、召集の条件も書かれています。2026年9月時点の条文では、兵役登録をしている女性を戦時に軍務へ召集したり、国防のための作業に従事させたりできるのは「志願による場合」に限られます。平時に女性が軍務や予備役につくのも、志願(契約)による場合だけです。

法律の前に命令があり、法律の後にも壁が残った

女性がつける職務の範囲は、法律だけでなく国防省の命令でも決められてきました。2016年6月3日の国防省命令第292号(6月22日に法務省で登録)は、下士官・兵の職務の暫定一覧のうち「女性軍人を任命してよい職務」を含む一覧を改めるものでした。この命令は、2018年12月13日の国防省命令第627号によって効力を失っています。2016年の変更は法律の改正ではなく、国防省の命令による一覧の改正でした。

法律が変わっても、すぐに現場が変わったわけではありません。国防省のリュドミラ・ダラハン事務次官(державний секретар)は2024年9月27日、キーウでの国際セミナーで、2018年に女性が戦闘職種で勤務できるようになったものの「その可能性は長いあいだ実現しないままだった」と述べました。国防省の発表によれば、ダラハン氏は、将校の職務を女性と男性で分けて定めた「部内限り(ДСК)」の命令が別にあり、2022年にその命令が改められて障害を越えられた、と説明しています。同じ発表は、2023年に女性用の夏の軍服ができ、それまでは儀礼用しかなかったとも伝えています。

兵役登録の義務は、4年で3回書き換えられた

ウクライナでは、兵役の対象となる人は居住地の地域徴兵・社会支援センター(ТЦК)で兵役登録をします。女性の登録の義務は、この数年で大きく変わりました。

  • 2021年:2021年3月30日の法律第1357-IX号(4月23日施行)が第1条第11項を改め、国防省の一覧にある、兵役の専門と関連する専攻・職業を持つ女性で、健康と年齢の条件を満たす人は兵役登録をする、と定めました。一覧は2021年10月11日の国防省命令第313号で定められ、同年12月17日の官報掲載で効力を持ちました。
  • 2022年9月:2022年2月7日の国防省命令第35号は、一覧の女性の登録を2022年10月1日からとしていました。国防省は2022年9月6日の命令第259号で、この日付を2023年10月1日に1年延ばしています。
  • 2022年10月:2022年10月7日の法律第2664-IX号が第11項を書き換え、義務の対象を、職業教育・専門前高等教育・高等教育を修了して医療または薬学の専攻を得た女性に絞りました。それ以外の一覧の専攻・職業を持つ女性は「本人が望めば」登録する、とされています。
  • 2025年:2025年1月9日の法律第4197-IX号が第11項をふたたび改め、基礎軍務を希望する女性の登録の手続きを加えました。医療・薬学の専攻を得た女性は登録の対象、それ以外の一覧の専攻・職業を持つ女性は希望による、という区別はそのまま残っています。

つまり2026年9月時点の条文では、登録が義務になっているのは医療または薬学の専攻を持つ女性だけです。そして登録をしていても、戦時の召集は本人が志願した場合に限られます。

オリュカのひとこと

7万5千人という数は、誰がいつ発表したものでしょう。この節では、発表者と時点をつけて人数を並べています。

人数は、発表した人と時点で変わる

女性の人数について、国防省はまとまった統計表を公開していません。確認できたのは、幹部の発言や演説の中で示された数字です。

発表日発表者時点女性の総数うち軍人前線など
2024年3月8日チェルノホレンコ国防次官発表時62,000人超45,587人
2024年5月1日カルムィコヴァ国防次官2024年1月66,900人47,200人接触線に約4,000人
2024年6月14日カルムィコヴァ国防次官2024年4月1日67,285人47,569人接触線に5,000人超
2024年9月27日ダラハン事務次官発表時68,000人48,000人超戦闘地域に約5,000人
2025年3月8日メリヌィク国防次官2025年1月1日70,000人超前線に5,500人超
2026年3月8日シルシキー総司令官発表時75,000人超55,000人超
出典:2024〜2025年は国防省のニュース、2026年は国防省の報道機関アルミヤインフォルム。いずれもウクライナ軍(ЗСУ)についての数字で、国家親衛隊や国境警備庁など他の組織は含まない。2026年9月24日に確認。

この表を読むときに、三つのことに注意が要ります。

一つめは、「女性の総数」と「軍人」の差です。どの発表も二つの数字を分けていて、総数のほうが2万人ほど多くなっています。総数には軍人ではない女性も含まれていますが、その内訳を発表は示していません。

二つめは、数字が一つの系列としてつながらないことです。2024年1月に6万6,900人とされた総数が、同じ年の3月8日の発表では「6万2千人超」になっています。数え方の違いなのか、発言の時点の違いなのかは、発表からは分かりません。

三つめは、「前線」の範囲です。発表によって「接触線」「前線」「戦闘地域」と言葉が違い、同じ範囲を数えているとは限りません。

それでも、増えている方向は各発表で一致しています。2024年6月の発表は「2021年から40%増えた」とし、2025年3月の発表は「2022年より20%多い」としています。シルシキー総司令官は2026年3月のメッセージで、国家の最高の称号「ウクライナ英雄」を受けた女性が5人(うち3人は死後の授与)、12年間の戦争で国家の勲章を受けた女性軍人が1,705人いるとも述べています。

条文と数字のあいだ

2018年の法律は女性の軍務を男性と同じ条件に置き、2022年以降の法改正は、女性への登録の義務を医療職に絞る方向に動きました。女性が軍に入る道は法律の上では広く開かれ、同時に、本人の意思によらずに女性を軍に入れる仕組みは狭められています。人数の増加は、この「志願」の枠の中で起きていることになります。

ウクライナの戒厳令と動員の仕組みそのものは、ウクライナの戒厳令で止まっていること、止められないことで扱っています。

出典・参考資料

  1. Закон України «Про військовий обов’язок і військову службу» № 2232-XII(第1条第11項・第12項、第37条。2026年9月時点の現行版)
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  2. Закон України № 2523-VIII(2018年9月6日。題名、第1条第12項への追加、施行は公布から10日後、『Голос України』2018年10月17日掲載)
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  3. Закон України № 1357-IX(2021年3月30日。第1条第11項の改正。文書カードで2021年4月23日施行)
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  4. Закон України № 2664-IX(2022年10月7日。第1条第11項の改正、医療・薬学の専攻を持つ女性の登録)
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  5. Закон України № 4197-IX(2025年1月9日。第1条第11項の改正)
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  6. Наказ Міністерства оборони України № 292(2016年6月3日。法務省登録 2016年6月22日 № 880/29010。女性軍人を任命できる職務を含む暫定一覧の改正、命令第627号による失効の注記)
    発行:Міністерство оборони України(zakon.rada.gov.ua 掲載版) 確認日:2026-09-24
  7. Наказ Міністерства оборони України № 313(2021年10月11日。女性が兵役登録をする専攻・職業の一覧、命令第35号による改正、2021年12月17日の官報掲載)
    発行:Міністерство оборони України(zakon.rada.gov.ua 掲載版) 確認日:2026-09-24
  8. Наказ Міністерства оборони України № 259(2022年9月6日。「2022年10月1日から」を「2023年10月1日から」に改める)
    発行:Міністерство оборони України(zakon.rada.gov.ua 掲載版) 確認日:2026-09-24
  9. 68 000 жінок у ЗСУ: Міноборони вдалося впровадити системні зміни у гендерній політиці — Людмила Дараган(2024年9月27日)
    発行:Міністерство оборони України 確認日:2026-09-24
  10. Кількість жінок в армії на початок січня 2024 року становила майже 70 тисяч – Наталія Калмикова(2024年5月1日)
    発行:Міністерство оборони України 確認日:2026-09-24
  11. У Швеції відбувся навчальний семінар з питань гендерної складової військових операцій(2024年6月14日。2024年4月1日時点の人数)
    発行:Міністерство оборони України 確認日:2026-09-24
  12. «Українські жінки – героїні нашого часу» - Катерина Черногоренко(2024年3月8日)
    発行:Міністерство оборони України 確認日:2026-09-24
  13. Понад 5 500 жінок сьогодні служать на передовій – Сергій Мельник(2025年3月8日)
    発行:Міністерство оборони України 確認日:2026-09-24
  14. «Понад 75 тисяч жінок у війську»: Олександр Сирський привітав захисниць(2026年3月8日)
    発行:АрміяInform(国防省の報道機関) 確認日:2026-09-24

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