特定活動(1年)か、補完的保護か。避難した人の在留資格の手続き
短期滞在で入国したウクライナの人は、就労できる「特定活動(1年)」に変更でき、情勢が改善されていないと認められる間は更新できます。2023年12月には補完的保護対象者の認定制度が始まり、認定されると原則として「定住者」になります。申請先、書類、期限、相談先を入管庁の案内に沿って説明します。
ロシアによるウクライナへの全面侵攻のあと、日本に避難してきた人が日本にとどまるための手続きは、大きく二つあります。在留資格「特定活動(1年)」への変更とその更新、そして2023年12月に始まった「補完的保護対象者」の認定です。もともと別の在留資格で日本にいた人には、また別の案内があります。以下は、出入国在留管理庁(入管庁)の公式ページと出入国管理及び難民認定法(入管法)の条文を、2026年9月に読んだ内容にもとづいています。
自分がどの手続きに当てはまるか、申請が許可されるかは、この記事では判断しません。決めるのは入管庁で、相談先は記事の後半にまとめました。
「ウクライナ避難民」は在留資格の名前ではない
入管庁は「ウクライナ避難民」を、ロシアによるウクライナ侵攻により、避難を目的として、2022年3月2日以降にウクライナまたは第三国から日本に入国した人として数えています。同庁の速報値では、2026年8月31日現在で入国者の累計は2,902人、そのうち日本に在留しているのは1,931人です。
ただし、これは入管庁が人数を数えるための区分で、在留カードに書かれる在留資格の名前ではありません。在留カードやパスポートに書かれているのは「短期滞在」「特定活動」「定住者」といった在留資格です。「難民」「避難民」「補完的保護対象者」という言葉の違いは、難民、国内避難民、避難者の違いの記事で説明しています。手続きを考えるときは、まず手元の在留カード(ない人はパスポートの上陸許可の証印)で、いまの在留資格と在留期間の満了日を確かめるところから始まります。
短期滞在で入国した人は「特定活動(1年)」へ
入管庁は、次の人について、就労できる「特定活動(1年)」への在留資格変更許可申請を受け付けるとしています。
ロシアによるウクライナ侵略により、避難を目的としてウクライナから本邦に「短期滞在」の在留資格で入国したウクライナ国籍の方又はウクライナに常居所を有する外国籍の方であって、本邦において行おうとする活動がいずれの在留資格にも該当しない方
出入国在留管理庁「在留資格『特定活動(1年)』への変更許可申請について」の「対象者」(2026年9月確認)
同じページが挙げる提出書類は、在留資格変更許可申請書(または在留期間更新許可申請書)、パスポートの写しや出入国の証印など対象者であることが分かる資料、理由書、身元保証書の四つです。申請書の様式、理由書と記入例はウクライナ語版も同じページに置かれています。
顔写真について、このページは「16歳以上の方は顔写真も必要です」と書いています。一方、入管庁の別の手続きページは、2026年6月14日以降に交付される在留カードから、写真が要らないのは1歳未満の人に変わったと説明しています。子どもの写真が要るかどうかは、申請の前に窓口で確かめてください。
この在留資格で働けない仕事
「特定活動(1年)」に変わると、日本で働くことができます。ただし入管庁は、客の接待をする飲食店、マージャン店やパチンコ店などの遊技場、深夜0時以降に営業して酒を出すナイトクラブ、性的なサービスを提供する店などを挙げ、そうした店では掃除や皿洗い、受付のような仕事であっても働いてはいけないと注意しています。迷ったときは最寄りの地方出入国在留管理官署(地方入管)に聞くよう案内しています。仕事の探し方はウクライナ語の通訳がいるハローワークの記事にまとめました。
更新は「情勢が改善されていない」と認められる間
同じページには、「ウクライナにおける情勢が改善されていないと認められる場合には、在留期間更新許可申請が可能です」とあります。更新の申請書(様式U)もこのページからダウンロードできます。
入管庁の在留期間更新許可申請の案内では、申請できるのは在留期間の満了日までで、在留期間が6か月以上ある人は満了日の3か月前から申請できます。許可されるときの手数料は、一般に6,000円(オンライン申請は5,500円)で、収入印紙で納めます。
満了日までに結果が出ない場合について、入管法第21条第4項が準用する第20条第6項は、満了日までに申請していれば、処分がされる時か、満了日から2か月が経つ日の終わりのいずれか早い時まで、引き続き同じ在留資格で日本にいられると定めています(入管庁は「特例期間」と呼んでいます)。申請中であることは在留カードの裏面に記載されます(オンライン申請の場合を除く)。これは満了日までに申請した場合の話です。満了日を過ぎてから申請することを前提にしないでください。
もともと別の在留資格で日本にいた人
全面侵攻の前から、留学や仕事、家族との暮らしのために日本にいたウクライナの人もいます。入管庁はこうした人について、「帰国に不安を抱く在留ウクライナ人の方々について、引き続き日本国内に留まることができるよう、在留許可の判断を適切に行っていきます」とし、ウクライナの情勢が改善されていないと認められる間は同じように対応するとしています。退去強制令書が出ている人についても、本人の意思に反して送還することはしない、と書いています。
いまの在留資格にもとづく活動を続けている人は、その在留資格のまま在留できる、ともしています。情勢を理由に在留の継続を希望する人は、最寄りの地方入管に相談するよう案内されています。
補完的保護対象者の認定
2023年12月1日、「補完的保護対象者」の認定制度が始まりました。入管法第2条第3号の2は、補完的保護対象者を「難民以外の者であつて、難民条約の適用を受ける難民の要件のうち迫害を受けるおそれがある理由が難民条約第一条A(2)に規定する理由であること以外の要件を満たすもの」と定めています。入管庁はこれを、条約上の「難民」ではないものの「難民」と同様に保護すべき紛争避難民などを確実に保護する制度だと説明しています。
認定されると何が変わるか
入管庁の説明では、認定された人には次のことがあります。
- 難民と認定された人と同じく、原則として在留資格「定住者」が与えられる。
- 永住許可の要件のうち「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」を満たさなくても、法務大臣の裁量で永住許可を受けられる。
- 希望すれば、日本での自立した生活を目的とする「定住支援プログラム」に参加できる場合がある(申込みの受付は公益財団法人アジア福祉教育財団 難民事業本部)。
- 難民旅行証明書は受けられないが、再入国許可書は受けられる。
「定住者」は、入管庁の『生活・就労ガイドブック』で「就労活動に制限のない在留資格」に分類されています。
申請のしかた
入管庁の手続案内によると、申請先は住居地を管轄する地方入管で、原則として本人が窓口に出向いて申請します。16歳未満の人や、病気などで本人が出向けない人は、父母、配偶者、子または親族が代わりに申請できます。手数料はかかりません。申請期間を制限する規定はなく、標準処理期間は6か月とされています。
必要なものは、難民・補完的保護対象者認定申請書(各国語版がある)、写真、補完的保護対象者であることを証明する資料または主張する陳述書で、パスポートや在留カードを窓口で示します。入管庁は、認定は申請者が出した資料や供述にもとづいて行われ、申請者は自ら立証することが求められる、と書いています。認定されなかったときは、通知を受けた日から7日以内に法務大臣に審査請求ができます。
補完的保護対象者の認定を申請した人は補完的保護対象者に当たるかだけを判断され、難民の認定を申請した人は難民と補完的保護対象者の両方について判断される、とも同庁は説明しています。
数字で見る最初の2年
入管庁の報道発表によれば、2024年に補完的保護対象者の認定を申請した人は1,273人で、主な国籍はウクライナでした。この年に補完的保護対象者と認定された人は1,616人、難民の申請をして難民とは認定されなかったものの補完的保護対象者と認定された人が45人です。2025年は申請者が311人(主な国籍はウクライナ)に減り、補完的保護対象者と認定された人は474人でした。認定された人のうちウクライナ国籍の人が何人かは、報道発表の本文には書かれていません。
終わった制度:避難民であることの証明書
入管庁が発行していた「ウクライナ避難民であることの証明書」は、2023年11月30日で発行を終えています。同庁は、証明書を持っていない人は、パスポートに押された「ウクライナ避難民」のスタンプを自治体や金融機関の人に見せるよう案内しています。スタンプもない場合は近くの入管に聞くように、とのことです。なお「特定活動(1年)」に変更して交付される在留カードには、ウクライナ避難民であることは書かれません。
相談先
- 地方入管のウクライナ避難民受入支援担当:住んでいるところの近くの入管で相談できます。窓口の探し方は日本で暮らし始めたときの相談窓口の記事にあります。
- 外国人在留総合インフォメーションセンター:0570-013904、平日の午前8時30分から午後5時15分まで(土日祝日と12月29日から1月3日を除く)。入管庁は、手続きの一般的な案内はできるが、個別の事案の許可の見通しや審査の進み具合には答えられない、と書いています。
- 難民事業本部(RHQ)の補完的保護対象者向けの相談:0120-400-250、平日9時30分から12時30分、13時30分から17時まで。入管庁のページが挙げる対応言語は日本語、英語、ミャンマー語、フランス語、ウクライナ語、ロシア語です。
- 弁護士・行政書士:入管庁の手続案内では、届け出た弁護士や行政書士が申請を取り次ぐことができるとされています。
| 手続き | 主な対象 | 申請先・手数料 | 結果として得られるもの |
|---|---|---|---|
| 在留資格変更(特定活動(1年)) | 避難を目的に「短期滞在」で入国したウクライナ国籍の人など | 地方入管。許可時の手数料は一般に6,000円 | 就労できる「特定活動(1年)」。一部の業種では働けない |
| 在留期間更新(特定活動(1年)) | 上の在留資格をすでに持つ人 | 地方入管。満了日までに申請 | 情勢が改善されていないと認められる場合に更新 |
| 補完的保護対象者の認定 | 入管法第2条第3号の2に当たると主張する人 | 住居地を管轄する地方入管。手数料なし。標準処理期間6か月 | 原則として「定住者」。永住許可の要件の一部緩和 |
| 別の在留資格からの相談 | 全面侵攻の前から日本にいた人など | 最寄りの地方入管 | 個別に判断。現在の在留資格で活動していればそのまま在留可 |
最後に一つだけ。在留資格は、期限を一日過ぎただけで扱いが大きく変わることがあります。満了日を手帳やスマートフォンに書き込み、3か月前になったら動き始めてください。どちらの手続きが自分に合うか分からないときは、決める前に相談先に聞いてください。
出典・参考資料
- 在留資格「特定活動(1年)」への変更許可申請について(対象者、措置内容、更新の条件、提出書類4点、16歳以上の顔写真、ウクライナ語の様式・理由書)
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23 - 日本に在留しているウクライナの方への対応(在留許可の判断、退去強制令書が発付されている人の扱い、現在の在留資格での在留継続)
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23 - 日本で働くときに注意すること(「特定活動」で働けない仕事の種類)
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23 - ウクライナ避難民であることの証明書(2023年11月30日で発行終了、パスポートのスタンプ、在留カードに避難民である旨が記載されないこと)
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23 - ウクライナ避難民に関する情報(計上の定義、2026年8月31日現在の速報値:入国者2,902人・在留者1,931人)
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23 - 日本に在留しているウクライナのみなさんへ(在留継続の手続の一覧)
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23 - 補完的保護対象者認定制度(2023年12月1日開始、定住者の付与、永住許可要件の緩和、定住支援プログラム、再入国許可書、立証、審査請求7日以内)
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23 - 難民認定手続・補完的保護対象者認定手続(申請先、本人出頭と代理、必要書類、受付時間、手数料なし、標準処理期間6か月、2026年6月14日以降の在留カードの写真の扱い)
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23 - 条約難民・補完的保護対象者・第三国定住難民への支援について(定住支援プログラム、RHQの補完的保護対象者向け電話・受付時間・対応言語)
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23 - 在留期間更新許可申請(申請期間、手数料6,000円・オンライン5,500円、取次者)
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23 - 特例期間とは?(在留カード裏面の申請中の記載)
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23 - 外国人在留総合インフォメーションセンター等(電話番号・受付時間・回答できないこと)
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23 - 令和6年における難民認定者数等について(2025年3月14日報道発表。補完的保護対象者の申請者1,273人・主な国籍ウクライナ、認定1,616人と45人)
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23 - 令和7年における難民認定者数等について(2026年3月27日報道発表。申請者311人・主な国籍ウクライナ、認定474人)
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23 - 出入国管理及び難民認定法(第2条第3号の2、第20条第6項、第21条第4項、第61条の2)
発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-09-23 - 生活・就労ガイドブック 日本語版 第8版(第3章1-1 就労活動に制限のない在留資格に「定住者」)
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23
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