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文化・歴史/解説

聖メラニアの日の晩、仮装して家々を回る「マランカ」

「マランカ」は、聖メラニアの日の晩に若者が仮装して家々を回る、新年の前夜の行事です。事典は、女装した若者のマランカやヤギの役が家を訪ね、いたずらをして祝い歌で締めくくると書いています。国の無形文化遺産の目録には、ブコヴィナとベレルヤ村のマランカ、全国の「豊かな夕べ」の三つが載っています。日付が12月31日と1月13日に分かれる理由も説明します。

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オリュカのひとこと

仮装して家々を回る行事があるそうです。最初の見出しで確かめられます。

「マランカ」(Маланка)は、新年の前夜に若者たちが仮装して家々を回る、ウクライナの民間の行事です。アルバータ大学カナダ・ウクライナ研究所(CIUS)の『Internet Encyclopedia of Ukraine』(IEU)は、マランカを、ラテン教会の暦の聖シルウェステルの祝日にあたる大みそかの民間の祭りと説明し、名前は聖メラニア(メラニヤ)から来ていて、その日は民間の暦の1月13日、旧暦(ユリウス暦)の12月31日にあたると書いています。1993年に紙で出た項目の再録です。

2026年9月時点で、国の無形文化遺産の目録には、マランカに関わる項目が三つ載っています。行事の中身、日付が二つに分かれる理由、目録の記載を順に見ていきます。同じ晩に歌われる祝い歌(シチェドリウカ)は『シチェドリク』の記事、2023年の教会の暦の変更はウクライナのクリスマスの記事で扱っています。

女装したマランカと、ヤギの一団

IEUの「Malanka」の項によれば、伝統的には、女性の服を着た独身の若者が「マランカ」になり、ヤギに扮した者、老人、老婆、ロマやユダヤ人に扮した役などの登場人物と楽師を連れて、村の家を一軒ずつ回りました。家の中を「片づける」という名目で訪ねながら、実際にはさまざまないたずらをしたといいます。土地によっては、若い男女が家の中に犂(すき)を持ち込み、畑を耕すまねをしました。この民俗劇は、祝い歌で締めくくられました。

同じ項目は、マランカの伝統が古い農耕の主題と、幕間劇や人形劇ヴェルテプのような民俗の芝居とを組み合わせたものだと書いています。ヴェルテプについてはヴェルテプの記事にまとめています。

IEUの「Koza」(ヤギ)の項は、ヤギに扮した若者が家々を回って豊作を願う踊りを見せる民俗劇を説明し、ヤギには老人、ロマ、クマなどに扮した者と並んで「大みそかの娘」マランカが付き添うことがあったと書いています。IEUの「New Year」の項は、大みそかの主な儀礼として、クチャ(麦の粥)を食べること、子どもたちの祝い歌、家畜を家に入れる「ポラズ」、占い、麦を播くまねと並べて、「マランカを連れて村を回る」ことを挙げています。

マランカ、豊かな夕べ、豊かなクチャ

同じ晩の呼び名は、地域によって違います。IEUは、ウクライナの中部と東部では、この祭りが「シチェドルィイ・ヴェーチル」(Щедрий вечір、豊かな夕べ)や「シチェドラ・クチャ」(Щедра кутя、豊かなクチャ)とも呼ばれたと書いています。行事の名前には「メランカ」(Меланка)という形もあります。ウクライナの国の百科事典『大ウクライナ百科事典』(ВУЕ)は、「豊かな夕べ」を、クリスマスと新年の祝いの一連の行事に含まれる、1月13日の聖ヴァスィーリの日の前の晩と定義しています。

聖メラニアの日と、聖ヴァスィーリの日

マランカの晩の次の日は、聖ヴァスィーリ(大ワシリイ)の日です。ウクライナ正教会(OCU)の2026年の教会暦は、12月31日にローマの聖メラニアを、1月1日に「主の割礼」と大ワシリイを記念しています。

2023年まで、OCUとウクライナ・ギリシャ・カトリック教会(UGCC)はユリウス暦で祝日を数えていたので、旧暦の12月31日にあたる聖メラニアの日は、民間の暦では1月13日になっていました。二つの教会は2023年9月1日から日付の決まった祝日を新しい暦で祝うことにし、教会の暦の上では聖メラニアの日が12月31日になりました。IEUの「New Year」の項(1993年)が、ウクライナの人々は1月1日に公式の新年を、1月14日(旧暦の1月1日)に非公式の新年を、二度祝うと書いていたのは、この暦の差のためです。

  1. オリュカ

    マランカは、どちらの晩に行う行事なのかな。

  2. スウネ

    資料ごとの書き方が、この見出しの下に並べてあるよ。

  3. タブリ

    暦が変わった順番は、すぐ前の見出しの本文に戻れば読めるよ。

12月31日の晩か、1月13日の晩か

教会の暦が変わったあとも、マランカをどの晩に行うかは、資料によって書き方が違います。

  • ウクライナ文化研究センター(文化省の機関)は、目録の「ブコヴィナのマランカ」の項目を、「ひと晩(12月31日または1月13日)に、恐ろしいものと滑稽なものをすべて演じて新しい年に入る」ことを目的とする、カーニバルの性格を持つ伝統と説明しています。
  • 同じセンターは、イヴァーノ=フランキーウシク州のベレルヤ村のマランカについて、「旧暦の新年の前日、1月13日」の朝に参加者がマランカ役の家に集まり、村の通りを練り歩き始めると書いています。
  • ВУЕの「豊かな夕べ」の項は、1月13日の晩と定義しています。
  • OCUの2026年の教会暦では、聖メラニアの日は12月31日です。

二つの教会の決定は礼拝の暦を改めたもので、村や町の行事の日付を定めたものではありません。二つの日付は、どちらかが誤りというより、暦の数え方の違いを表しています。

無形文化遺産の国内目録にある三つの項目

ウクライナの無形文化遺産の国内目録(Національний перелік елементів нематеріальної культурної спадщини України)は、文化省が省令で項目を加えていく一覧です。2026年6月の版には、マランカと「豊かな夕べ」に関わる項目が三つあります。

保護番号項目の名前地域(目録の記載)目録に加えた省令
031н.к.с.ブコヴィナのマランカの新年の伝統(Новорічна традиція буковинського маланкування)チェルニウツィー州のチェルニウツィー地区・ドニステル地区・ヴィジュニツャ地区の町と村(クラスノイリシク、ヴェルィキー・クチュリウ、ボヤヌィ、ヴァシキウツィなど19か所)2022年7月6日 第228号
072н.к.с.ベレルヤ村の伝統的なマランカの儀礼(Традиційний обряд Маланка с. Белелуя)プルィカルパッチャ地方、とくにイヴァーノ=フランキーウシク州コロミヤ地区のベレルヤ村(スニャティン共同体)2023年7月12日 第380号(7月27日 第406号で修正)
085н.к.с.ウクライナの「豊かな夕べ」の伝統(Традиція Щедрого вечора в Україні)ウクライナの全土。地域ごとの特色があり、国外のウクライナ系の人々のあいだでも行われている2023年12月26日 第768号(2024年1月18日 第24号で修正)
文化省「無形文化遺産の国内目録」(2026年6月の版)、2022年7月6日の文化・情報政策省令第228号、ウクライナ文化研究センターの項目の説明による(2026年9月27日確認)。031の町と村の数は、目録の列挙を本記事で数えたもの。省令を出したのは当時の文化・情報政策省。

2022年の省令は、目録の専門家評議会の勧告として、ブコヴィナのマランカについて、担い手の共同体や関心を持つ団体・個人を広く巻き込み、2022年9月15日までに1〜5年の保護の計画を作ること、行事にかかわる手仕事の調査を計画することを求めました。ウクライナ文化研究センターは、「豊かな夕べ」の伝統について、キリスト教より前にさかのぼる長い歴史があり、新年の前夜に家々を回る形で祝われ、祝いが豊かであるほど新しい年の暮らしがよくなると信じられてきた、と説明しています。

  1. オリュカ

    マランカは、ウクライナのどの地域の行事なのだろう。

  2. スウネ

    事典と国の目録で書き方が違うことが、この見出しの下にあるよ。

  3. ヨリクネ

    ブコヴィナという地域名は、この節のリンク先の記事で確かめられるよ。

マランカは、どこの行事か

行事の広がりについても、資料によって書き方が違います。IEU(1993年)は、マランカの伝統は「ドニプロ川の流域で最も広く行われていた」と書いています。いっぽう、国の目録に個別の項目として載っているのは、西部のブコヴィナ(チェルニウツィー州)とプルィカルパッチャ地方(イヴァーノ=フランキーウシク州)の行事です。「豊かな夕べ」の項目は、地域を限らずウクライナ全土としています。ブコヴィナという地域名がどの州にあたるかは州の名前とは別の地域名の記事にあります。

オリュカのひとこと

この行事は、暦の改正でどう動いたのでしょう。この年表で確かめられます。

年表で見るマランカと「豊かな夕べ」

年出来事典拠
1917年の革命のあとソ連のウクライナでマランカの伝統が衰えるIEU「Malanka」
1930年代の初め新年の祝いの一部としてマランカが復活する。同じころ、クラブや学校などに新年のツリーが持ち込まれるIEU「Malanka」「New Year」
1960年キーウの学生が祝い歌を歌って回り、伝統的な新年の祝いを復活させようとする。この動きは各地に広がるIEU「New Year」
1970年代当局が学生たちの祝い歌の広がりを禁じるIEU「New Year」
1980年代半ば多くの民間の団体が伝統的な新年の習わしを復活させる。1991年のあと、とくに西部で広まるIEU「New Year」
2022年7月6日「ブコヴィナのマランカの新年の伝統」が国内目録に加わる(031н.к.с.)文化・情報政策省令第228号
2023年7月12日「ベレルヤ村の伝統的なマランカの儀礼」が国内目録に加わる(072н.к.с.)省令第380号
2023年9月1日OCUとUGCCが日付の決まった祝日を新しい暦で祝い始める。教会の暦の上で聖メラニアの日が12月31日にOCUの主教会議の決定、UGCCの主教シノドの決定
2023年12月26日「ウクライナの『豊かな夕べ』の伝統」が国内目録に加わる(085н.к.с.)省令第768号
出典は記事末尾の一覧。IEUの二つの項目は、どちらも1993年に紙で出たものの再録。

IEUの「New Year」の項は、ソ連の当局が新年の伝統的な儀礼を宗教の一部とみなして禁じ、儀礼は家族の中にとどまるようになったとも書いています。一方で同じ事典の「Malanka」の項は、マランカが1930年代の初めに新年の祝いの一部として復活したと書いていて、二つの項目の書き方は同じではありません。

出典と記事の記録出典 12件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. Malanka別名 Меланка、聖シルウェステルの祝日にあたること、聖メラニアの日=1月13日〈旧暦12月31日〉、中部・東部の呼び名、登場人物、いたずらと犂、祝い歌、幕間劇とヴェルテプ、ドニプロ川流域、1917年以後の衰退と1930年代初めの復活、ユリウス暦の新年。紙の第3巻〈1993年〉の再録
    発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-27
  2. Kozaヤギの民俗劇、付き添う役にマランカ〈大みそかの娘〉。紙の第2巻〈1988年〉の再録
    発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-27
  3. New Year新年を二度祝うこと、大みそかの主な儀礼、ソ連の禁止、1930年代初めのツリー、1960年のキーウの学生、1970年代の禁止、1980年代半ばからの復活。紙の第3巻〈1993年〉の再録
    発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-27
  4. Щедрий вечір1月13日の聖ヴァスィーリの日の前の晩、クリスマスと新年の一連の行事
    発行:Велика українська енциклопедія(国立学術機関「百科事典出版所」) 確認日:2026-09-27
  5. Національний перелік елементів нематеріальної культурної спадщини України2026年6月の版。031н.к.с.、072н.к.с.〈2023年7月12日第380号、第406号で修正〉、085н.к.с.〈2023年12月26日第768号、2024年1月18日第24号で修正〉の名前・地域・省令
    発行:Міністерство культури України 確認日:2026-09-27
  6. Наказ МКІП від 06.07.2022 № 22831番「Новорічна традиція буковинського маланкування」031.нкс、分野、チェルニウツィー州の町と村、専門家評議会の勧告〈2022年9月15日までの保護計画、手仕事の調査〉
    発行:Міністерство культури та інформаційної політики України 確認日:2026-09-27
  7. 031 н.к.с. Новорічна традиція буковинського маланкування「ひと晩〈12月31日または1月13日〉」の説明。Internet Archive 2026年4月21日の保存版
    発行:Український центр культурних досліджень(Міністерство культури України) 確認日:2026-09-27
  8. 072 н.к.с. Традиційний обряд Маланка с. Белелуя Івано-Франківської області旧暦の新年の前日1月13日の朝に集まり練り歩く。Internet Archive 2026年4月19日の保存版
    発行:Український центр культурних досліджень 確認日:2026-09-27
  9. 085 н.к.с. Традиція Щедрого вечора в Україні全土と国外、キリスト教以前にさかのぼるという説明、新年の前夜の家回り。Internet Archive 2026年6月10日の保存版
    発行:Український центр культурних досліджень 確認日:2026-09-27
  10. Церковний календар 202612月31日 ローマの聖メラニア、1月1日 主の割礼と大ワシリイ
    発行:Православна Церква України(pomisna.info) 確認日:2026-09-27
  11. Постанова Архієрейського Собору від 24 травня 2023 р. «Про врегулювання календарного питання»2023年9月1日から新ユリウス暦
    発行:Православна Церква України(pomisna.info) 確認日:2026-09-27
  12. Історичне рішення: УГКЦ в Україні переходить на новий календар日付の決まった祝日を2023年9月1日から新しい暦で
    発行:Українська Греко-Католицька Церква 確認日:2026-09-27

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