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社会を知る/解説

キーウは日本より7時間遅く、夏は6時間。ウクライナの時刻と夏時間

ウクライナは1996年の内閣決定で、3月と10月の最終日曜日に時計を動かしています。日本との時差は冬7時間、夏6時間です。2024年に可決した夏時間をやめる法律は、2026年9月時点で署名されていません。1990年にモスクワ時間から離れた経緯と、占領地の時計もあわせて見ます。

画像:Ukrainavi

オリュカのひとこと

日本で正午のとき、キーウは何時でしょう。季節で答えが変わる理由は、最初の節から読めます。

日本で正午のとき、キーウは朝の5時です。ただし3月の終わりから10月の終わりまでは朝の6時になります。ウクライナは夏のあいだ時計を1時間進めるので、日本との時差は季節によって7時間と6時間に変わります。

この仕組みを決めているのは、1996年の内閣の決定です。最高会議は2024年に夏時間をやめる法律を可決しましたが、2026年9月時点でこの法律は効力を持っていません。以下、時刻の決まりと、その移り変わりを法令の文面から見ていきます。

キーウ時間は「第2の時間帯」

ウクライナの時刻を定めているのは、1996年5月13日の内閣決定第509号「ウクライナ領内における時刻の計算の手順について」です。決定は、ウクライナの時刻を「第2の時間帯の時刻(キーウ時間)」とし、毎年3月の最終日曜日の3時に時計を1時間進め、10月の最終日曜日の4時に1時間戻すと定めています。鉄道・船・航空・都市間バスの運行も、キーウ時間で行うとしています。

第2の時間帯とは、協定世界時(UTC)より2時間進んだ時刻のことです。冬のキーウはUTC+2、夏時間のあいだはUTC+3になります。決定の前文は、1996年からヨーロッパの国々で行われている時刻の計算の手順を考慮した、と書いています。最高会議の法令データベースでは、2026年9月24日時点でこの決定は効力のある文書として表示され、2025年12月の改正は、担当する省の名前を書き換えただけです。

夏時間の始まり夏時間の終わり
2026年3月29日(日)3時→4時10月25日(日)4時→3時
2027年3月28日(日)3時→4時10月31日(日)4時→3時
内閣決定第509号の規則(3月・10月の最終日曜日)から日付を割り出したもの。時刻はキーウ時間。2026年9月時点の決まりにもとづく。

日本との時差は冬7時間、夏6時間

日本の標準時は、1886年(明治19年)の勅令第51号が定めています。勅令は、英国グリニッジ天文台を通る子午線を経度の基準とし、1888年1月1日から東経135度の子午線の時刻を日本の標準時とすると書いています。経度15度が1時間にあたるので、135度はグリニッジより9時間進んだ時刻、つまりUTC+9です。

時期キーウ日本時差
10月の最終日曜日から3月の最終日曜日までUTC+2UTC+9日本が7時間進んでいる
3月の最終日曜日から10月の最終日曜日までUTC+3UTC+9日本が6時間進んでいる
内閣決定第509号と明治19年勅令第51号から計算。2026年9月時点。

たとえば、キーウの朝9時に始まるオンラインの授業は、冬は日本の16時、夏は15時に始まります。日本からウクライナの学校の授業を受ける仕組みについては日本の学校に通いながら、ウクライナの6科目だけを学ぶ仕組みで紹介しています。

1990年、モスクワ時間から離れた

ソ連の時代、ウクライナはモスクワ時間を使っていました。1990年6月11日、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国の最高会議は決議第15-XII号で、1990年7月1日から共和国の領内に「第2の時間帯の時刻」を定めました。決議の最初の文面には「モスクワ時間から1時間引いた時刻」という言い方があり、この語句は1992年の決議で削られています。

夏時間が始まったのは独立後です。1992年3月6日、最高会議は決議第2176-XII号で、ヨーロッパで行われている時刻の計算の手順を考慮して夏時間を導入すると決め、実施の手順を内閣に任せました。同じ月の内閣決定第139号(1992年3月20日)は、3月の最終日曜日の2時に進め、9月の最終日曜日の3時に戻すとしました。1996年の第509号は、戻す日を10月の最終日曜日に移し、進める時刻を3時、戻す時刻を4時に改めたものです。

2011年、夏時間をやめて、1か月で取り消した

最高会議は2011年9月20日、決議第3755-VI号で、2011年3月27日から「第2の時間帯の時刻に1時間を加えた時刻」を使うと決めました。夏時間のまま、秋に時計を戻さないという内容です。この決議は同年10月1日に公布されましたが、最高会議は10月18日の決議第3914-VI号でこれを取り消し、内閣に対して1か月以内に時刻の計算についての法律案を出すよう求めました。

オリュカのひとこと

可決された法律があるのに、なぜ時計はいまも季節で動くのでしょう。法案の記録と憲法第94条に手がかりがあります。

2024年に可決した法律は、署名されていない

夏時間をやめる法律案は、2020年10月9日に議員ルスラン・ステファンチュク氏が提出しました(法案第4201号)。2021年2月に第一読会で基本として採択され、2024年7月16日に「ウクライナにおける時刻の計算について」の法律第3856-IX号として可決されました。

法律の中身は次のとおりです。

  • キーウ時間を「首都キーウがある時間帯の時刻で、協定世界時のUTC+2にあたる」と定め、国内で一つの時刻とする(第1条・第4条)
  • 時計を季節で進めたり戻したりすることは行わない(第4条第2項)
  • 日付はグレゴリオ暦で数える(第3条)
  • 2025年1月1日から効力を持つ(第8条)

最高会議の法案の記録によると、この法律は2024年8月21日に大統領の署名に回されました。2026年9月24日時点で、記録はそこで止まっています。憲法第94条は、法律が効力を持つのは公式に公布されてから(法律が別に定めればその日から)としており、公布されていないこの法律は効力を持っていません。ウクライナの時計は、いまも1996年の内閣決定のとおりに動いています。法律の番号や「署名」「公布」の読み方は「-IX」は第9期の議会。ウクライナの法令を原文で読む手がかりで説明しています。

もしこの法律が効力を持てば、ウクライナは一年中UTC+2になり、日本との時差は一年中7時間になります。

占領された地域の時計

ロシアに占領された地域では、ロシアが時計をモスクワ時間に合わせています。クリミアとセヴァストポリでは、2014年3月30日に時計がモスクワ時間に進められました(ロシアの国営通信社タスの報道)。ロシアの「時刻の計算について」の連邦法(2011年第107号)は、2023年4月14日の改正で、占領したクリミア、セヴァストポリ、ドネツィク州、ルハンシク州、ザポリッジャ州、ヘルソン州を、ロシアの名前で自国の「第2の時間帯(モスクワ時間、UTC+3)」に並べています。

このため、冬のあいだ占領地の時計は、ウクライナの他の地域より1時間進んだ時刻を示します。夏はウクライナもUTC+3なので、同じ時刻になります。

これらの地域は、国際的に認められたウクライナの領土です。国連総会は2014年3月27日の決議第68/262号でクリミアとセヴァストポリの「住民投票」を無効とし、2022年10月12日の決議ES-11/4でも、ドネツィク、ヘルソン、ルハンシク、ザポリッジャの4州をめぐるロシアの行為は国際法上効力がないと宣言しました。ウクライナの法律(2014年の一時的被占領地域に関する法律第9条)も、占領地に法律によらずに作られた機関の決定を無効としています。日本の立場はクリミアは2014年、4州は2022年。日本はどちらの「併合」も認めていないにまとめています。

時刻を書き写すときに

ウクライナの発表やニュースにある時刻は、ふつうキーウ時間です。日本時間に直すときは、その日が夏時間の期間かどうかをまず見ます。3月と10月の最終日曜日の前後は、同じ「7時」でも日本時間では1時間ずれます。占領地から伝えられる時刻は、冬はモスクワ時間で書かれている可能性があります。

出典と記事の記録出典 16件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. Про порядок обчислення часу на території України内閣決定第509号、1996年5月13日。キーウ時間、夏時間の開始・終了の規則、前文、運行はキーウ時間、改正履歴、2026年9月24日時点で効力あり
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  2. Про внесення змін до деяких актів Кабінету Міністрів України…内閣決定第1653号、2025年12月10日。第509号の改正は省名の変更だけであること
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  3. Про зміну порядку обчислення часу на території Української РСР最高会議決議第15-XII号、1990年6月11日。1990年7月1日から第2の時間帯
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  4. Про запровадження на території України дії літнього часу最高会議決議第2176-XII号、1992年3月6日。夏時間の導入、「モスクワ時間から1時間引いた」の語句の削除
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  5. Про порядок обчислення часу на території України内閣決定第139号、1992年3月20日。3月最終日曜2時・9月最終日曜3時
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  6. Про зміну порядку обчислення часу на території України最高会議決議第3755-VI号、2011年9月20日。公布日2011年10月1日
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  7. Про визнання такою, що втратила чинність, Постанови… «Про зміну порядку обчислення часу…»最高会議決議第3914-VI号、2011年10月18日
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  8. Проект Закону про обчислення часу в Україні №4201 картка登録日、提出者、第一読会、可決日、大統領への送付日2024年8月21日、以後の記録なし
    発行:ウクライナ最高会議 確認日:2026-09-24
  9. Закон України «Про обчислення часу в Україні» №3856-IX 最高会議議長の署名した本文第1条・第3条・第4条・第8条
    発行:ウクライナ最高会議 確認日:2026-09-24
  10. Конституція України第94条:法律の署名・公布・効力の発生
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  11. 明治十九年勅令第五十一号本初子午線経度計算方及標準時ノ件
    発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-09-24
  12. Федеральный закон «Об исчислении времени» 107-ФЗ 第5条2023年4月14日第130-ФЗによる改正後の第2時間帯の構成
    発行:コンスルタント・プラス(ロシアの法令データベース) 確認日:2026-09-24
  13. Crimea and the federal city of Sevastopol switch over to Moscow time2014年3月30日の切り替え。ロシア側の報道
    発行:タス通信 確認日:2026-09-24
  14. A/RES/68/262 Territorial integrity of Ukraine2014年3月27日
    発行:国連総会 確認日:2026-09-24
  15. A/RES/ES-11/4 Territorial integrity of Ukraine: defending the principles of the Charter of the United Nations2022年10月12日採択
    発行:国連総会 確認日:2026-09-24
  16. Про забезпечення прав і свобод громадян та правовий режим на тимчасово окупованій території України法律第1207-VII号、第9条
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24

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