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社会を知る/解説

「-IX」は第9期の議会。ウクライナの法令を原文で読む手がかり

ウクライナの法律の番号「4223-IX」の「IX」は、採択した最高会議の期を表します。内閣の決定の番号は毎年1から数え直され、法律には採択・公布・効力の発生・運用の開始と複数の日付があります。最高会議の法令データベースで、番号、日付、状態の表示、改正を織り込んだ「版」をどう読むかを、実際の法令を例に説明します。

オリュカのひとこと

法律の番号の末尾にある「IX」は、何を表しているのでしょう。ローマ数字の意味から読み解いてみましょう。

ウクライナの法律には「第4223-IX号」のような番号が付いています。後ろのローマ数字「IX」は、その法律を採択した最高会議(議会)の期を表し、IXは2019年8月29日に最初の会議を開いた第9期です。内閣の決定なら「第856号」だけで、同じ番号が別の年にもう一度出てきます。大統領令は「第512/2024号」のように年を含みます。

法令の原文は、最高会議が運営するデータベース「ウクライナの法令(zakon.rada.gov.ua)」で誰でも読めます。番号の読み方、日付の種類、状態の表示を知っておくと、ニュースで見た「新しい法律」がいつから効いているのか、いまも有効なのかを自分で確かめられます。以下は2026年9月時点のデータベースの表示にもとづきます。

誰が何を出すか

憲法によれば、法律は最高会議が採択し、議長と大統領が署名します(第94条)。大統領は憲法と法律にもとづいて「указ(大統領令)」と「розпорядження(大統領の指示)」を出し(第106条)、内閣は「постанова(決定)」と「розпорядження(指示)」を出します(第117条)。三つの機関の役割はウクライナの大統領、最高会議、内閣はそれぞれ何を決めるのかで説明しています。

法律の番号:ローマ数字は議会の期

法律の番号は、多くが「通し番号+ハイフン+ローマ数字」の形です。たとえば次のようになります。

番号法律採択日
3551-XII戦争退役軍人の地位とその社会的保護の保障について1993年10月22日
280/97-ВРウクライナの地方自治について1997年5月21日
1420-XIV最高会議の期の数え方の決定について2000年2月1日
435-IV民法典2003年1月16日
5029-VI国家の言語政策の原則について2012年7月3日
4223-IXウクライナの心の健康保護の制度について2025年1月15日
最高会議の法令データベースの各文書の表示から作成(2026年9月24日確認)。

ローマ数字の数え方には、一度切り替わった歴史があります。2000年2月1日の法律第1420-XIV号は、1991年8月24日の独立宣言のときに立法機関だった「ウクライナ・ソビエト社会主義共和国最高会議の第12期」を、独立したウクライナの最高会議の「第1期」とし、1994年と1998年に選ばれた議会をそれぞれ第2期、第3期とすると定めました。この法律自身の番号は「XIV」のままで、ソ連時代からの数え方が使われています。1993年の法律に「XII」が付いているのも同じ理由です。1990年代半ばの法律には、1997年の地方自治法の「280/97-ВР」や、1996年の憲法の「254к/96-ВР」のように、年と「ВР(最高会議)」を組み合わせた番号もあります。

2000年の法律より後に選ばれた議会の法律には、新しい数え方の期が付いています。2003年の民法典が「IV」、2012年の言語政策法が「VI」です。法律第4223-IX号の法案の記録には「第9期、第12会期に採択」と書かれています。

URLの数字は別の数え方

データベースのURLでは、ローマ数字の代わりに別のアラビア数字が使われます。文書の情報欄(カード)には、両方が「4223-IX または 4223-20」「435-IV または 435-15」「5029-VI または 5029-17」のように並べて示されています。見比べると、URLの数字は旧来の数え方(第12期、第14期…)を続けたもので、第9期は20、第4期は15にあたります。URLを手で打つときや、ほかの資料が「4223-20」と書いているときに、同じ法律だと分かるようにしておくと便利です。

内閣の決定と大統領令の番号

内閣の決定の番号は、年ごとに1から数え直されます。そのため同じ番号が毎年出てきます。たとえば「第856号」は、2021年8月4日の決定(住宅のファイナンスリースの条件)と、2022年8月2日の決定(住宅ローン「єОселя」の条件)の二つがあり、しかも2022年の第856号は2021年の第856号を改正しています。内閣の決定を引用するときは、番号に必ず日付か年を添えます。

データベースのURLでは、年と種類の記号が加わります。決定(постанова)は「856-2022-п」、指示(розпорядження)は「1209-2024-р」のようになります。後者はデータベースの番号欄では「第1209-р号」と表示されます。大統領令は番号に年が含まれていて、「512/2024」がそのままURLにも使われます。

єОселяの制度の中身は金利3%で借りる人、7%で借りる人。ウクライナの住宅ローン「єОселя」で紹介しています。

オリュカのひとこと

一つの法律に日付がいくつもあると、どれが始まりの日か迷います。段階ごとの違いをこの節で確かめましょう。

採択、署名、公布、効力の発生、運用の開始

法律には少なくとも四つの日付があります。憲法第94条によれば、最高会議が採択した法律には議長が署名し、大統領は受け取ってから15日以内に署名して公布するか、提案をつけて議会に差し戻します。法律は、法律自身に別の定めがない限り、公布から10日後に効力を生じます。ただし新聞などに掲載される前に効力を生じることはありません。

心の健康の法律(第4223-IX号)の記録をたどると、次のようになります。

日付できごと
2025年1月15日最高会議が採択(法律の日付として番号とともに示される日)
2025年1月20日議長の署名を経て、大統領に送られる
2025年2月6日大統領の署名を経て議会に戻る
2025年2月7日議会の新聞『ホロス・ウクライーヌィ』に掲載
2025年2月8日効力を生じる(набрання чинності)
2026年2月7日運用が始まる(введення в дію)
最高会議の法令データベースの文書カードと、法案第12030号の記録から作成(2026年9月24日確認)。

この法律は「公布の翌日に効力を生じ、公布から1年後に運用を始める」と定めていました。「効力を生じる」と「運用が始まる」は別の段階で、ニュースで「法律が発効した」と書かれていても、中身が動き出すのは先ということがあります。

もっと先のものもあります。2023年8月24日の法律「法令の制定活動について」(第3354-IX号)は、2023年9月20日に効力を生じましたが、運用の開始は「戒厳令が終わるか解除されてから1年後」とされています。データベースの記録では、運用の開始の欄が2026年9月時点でも「効力を生じる予定」の状態のままです。戒厳令についてはウクライナの戒厳令で止まっていること、止められないことを参照してください。

内閣の決定も同じで、2026年6月17日の決定第794号は、6月23日に政府の新聞『ウリャドヴィイ・クリエル』に掲載され、決定が自ら定めた7月17日に効力を生じました。

公布は官報と議会・政府の新聞で

憲法第57条は、市民の権利と義務を定める法令は、法律の定める方法で住民に知らされなければならず、知らされていないものは効力を持たないとしています。公布の方法を定めた1997年6月10日の大統領令「法令の公式の公布と効力の発生の手続きについて」によれば、公式の掲載先は『ウクライナ官報(Офіційний вісник України)』と政府の新聞『ウリャドヴィイ・クリエル』で、最高会議の法令については『ホロス・ウクライーヌィ』と『最高会議公報』、大統領の法令については『大統領公報』も含まれます。同じ大統領令は、ほかの出版物に載った法令は情報としての性格しか持たず、公式の適用には使えないとしています。

データベースの各文書の末尾には「Публікації документа(文書の掲載)」の欄があり、どの新聞・官報の何号に載ったかが示されています。

「чинний」と「редакція」を見る

データベースの文書の末尾には「Законодавство України станом на 24.09.2026 чинний」のように、何日時点のデータで、文書がどの状態にあるかが表示されます。主な表示は次のとおりです。

表示意味
чинний効力がある憲法、法律第4223-IX号
втратив чинність効力を失った法律第5029-VI号(2018年2月28日、憲法裁判所が違憲と判断)
набирає чинностіこれから効力を生じる(または運用が始まる)法律第3354-IX号の運用の開始
最高会議の法令データベースの文書カードの表示から作成(2026年9月24日確認)。

5029-VI号は、2012年の言語政策の法律です。その後の国家語法については店の応対は1年半後、地方紙は5年後に。段階を踏んだウクライナの国家語法で扱っています。

もう一つ大事なのが「редакція(版)」です。改正の多い法令は、データベースでは改正を織り込んだ版で表示されます。たとえば єОселяの決定第856号には「Редакція від 17.07.2026, підстава — 794-2026-п」とあり、2026年7月17日の時点の版で、その根拠が決定第794号だと分かります。憲法は「Редакція від 01.01.2020, підстава — 27-IX」です。

本文の中の波かっこ「{ }」には、どの項がどの改正で変わったかの注記が入っています。以前の版も、カードの「Історія(履歴)」から開けます。ニュースや論文が引用した条文と、いま表示されている条文が違うときは、まず版の日付を比べてください。

よく出てくる言葉

ウクライナ語意味
закон法律(最高会議)
указ大統領令
постанова決定(内閣。最高会議の決議も同じ語)
розпорядження指示(内閣・大統領)
скликання議会の期
прийняття採択
набрання чинності効力の発生
введення в дію運用の開始
редакція版(改正を織り込んだ本文)
підстава根拠(その版を生んだ改正の法令)
この記事で使った語の対訳。訳語は一例。

出典・参考資料

  1. Конституція України(第57・94・106・117条、版の表示「Редакція від 01.01.2020, підстава — 27-IX」、状態の表示)
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  2. Закон України від 01.02.2000 № 1420-XIV «Про визначення порядку обчислення скликань Верховної Ради України»
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  3. Закон України № 4223-IX 文書カード(識別子「4223-IX або 4223-20」、採択・効力発生・運用開始の日、掲載紙)
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  4. Закон України № 4223-IX 本文(最終規定第1項:翌日に効力、1年後に運用開始)
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  5. Проєкт Закону № 12030(第9期・第12会期に採択、大統領への送付と署名つきでの返送の日付)
    発行:Верховна Рада України 確認日:2026-09-24
  6. Закон України № 3354-IX «Про правотворчу діяльність» 文書カード(効力発生2023年9月20日、運用開始は戒厳令の終了・解除から1年後)
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  7. Закон України № 5029-VI «Про засади державної мовної політики» 文書カード(状態「Втратив чинність」、2018年2月28日の違憲判断、識別子)
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  8. Цивільний кодекс України № 435-IV 文書カード(識別子「435-IV або 435-15」)
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  9. Закон України № 280/97-ВР «Про місцеве самоврядування в Україні» 文書カード(1997年5月21日)
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  10. Постанова КМУ від 02.08.2022 № 856(版の表示「Редакція від 17.07.2026, підстава — 794-2026-п」、2021年の第856号の改正)
    発行:Кабінет Міністрів України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  11. Постанова КМУ від 04.08.2021 № 856 文書カード
    発行:Кабінет Міністрів України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  12. Постанова КМУ від 17.06.2026 № 794(効力発生2026年7月17日、Урядовий кур'єр 2026年6月23日)
    発行:Кабінет Міністрів України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  13. Розпорядження КМУ № 1209-р 文書カード(識別子「1209-2024-р」)
    発行:Кабінет Міністрів України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  14. Указ Президента України № 512/2024 文書カード
    発行:Президент України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  15. Указ Президента України від 10.06.1997 № 503/97 «Про порядок офіційного оприлюднення нормативно-правових актів та набрання ними чинності»(第1・2項)
    発行:Президент України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  16. Постанова Верховної Ради України від 29.08.2019 № 1-IX «Про Тимчасову президію першої сесії Верховної Ради України дев’ятого скликання»(第9期の最初の会期)
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  17. Закон України № 3551-XII(1993年10月22日)
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24

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