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Ukrainavi Ukrainavi

日本とのつながり/解説

クリミアは2014年、4州は2022年。日本はどちらの「併合」も認めていない

ロシアは2014年にクリミアを、2022年にウクライナ東部・南部の4州を自国に「編入」すると一方的に宣言しました。日本政府はそのたびに外務大臣談話で認めないと表明し、国連総会ではどちらの決議にも共同提案国として加わって賛成しています。談話の文言と国連の議事録から、日本の立場を確かめます。

オリュカのひとこと

談話の「併合」にかぎ括弧が付いているのはなぜでしょうか。外務大臣談話の文言から確かめましょう。

外務省が2024年3月19日に出した外務大臣談話は、こう書き出されています。「ロシアが違法に『併合』したウクライナ国内の地域(ルハンスク州、ドネツク州、ヘルソン州、ザポリッジャ州、クリミア自治共和国、セヴァストーポリ特別市)において、ロシアの『大統領選挙』が行われました」。

「併合」と「大統領選挙」がかぎ括弧に入っています。続く文はこうです。これらの地域の自国領への「併合」は「ウクライナの主権と領土一体性を侵害する明らかな国際法違反」で、「関連の国連総会決議とも相容れないものであり」、「決して認められず改めて強く非難します」。談話は、ロシアが自国領だと主張するこれらの地域を「ウクライナ国内の地域」と書いています。日本政府のこの立場がいつ、どの文書で示されてきたのかを、2014年と2022年に分けて並べます(確認は2026年9月時点)。

地名は、ルハンシク州(外務省の表記ではルハンスク州)、ドネツィク州(同ドネツク州)、ヘルソン州、ザポリッジャ州、クリミア自治共和国、セヴァストポリ市(同セヴァストーポリ特別市)と書きます。引用の中は外務省の表記のままです。

2014年3月、クリミア

クリミアについての外務大臣談話は、2014年3月1日に出ています。この談話は、日本は「クリミア半島における事態の推移を懸念をもって注視」しているとし、すべての当事者に法の支配と領土の一体性の尊重を求めました。翌2日の談話は、ロシア連邦院が3月1日に行った、ウクライナでのロシア連邦軍の使用権限に関する決定について「深刻な懸念と憂慮」を表明しています。

3月18日の談話は、それより踏み込んだものでした。

ウクライナ・クリミア自治共和国における住民投票は,ウクライナ憲法に違反し,法的効力はなく,我が国はその結果を承認しません。

外務大臣談話「クリミアにおける住民投票の結果を受けたロシアに対する措置について」(2014年3月18日)

同じ談話は、ロシアがクリミア自治共和国の「独立」を承認したことを、ウクライナの統一性、主権、領土の一体性を侵害するものだとし、日本は「力を背景とした現状変更の試みを決して看過できません」と述べました。そのうえで、ロシアとの間の査証緩和に関する協議を止め、新しい投資協定、宇宙協定、危険な軍事活動の防止に関する協定という三つの国際約束の締結交渉の開始を凍結すると発表しています。ロシアには、クリミアの独立承認を撤回し、「クリミアの併合に踏み出さないこと」を求めました。

3月24日には、オランダのハーグでG7首脳会合が開かれました。外務省の概要によれば、安倍晋三総理はこの席で、「力を背景とする現状変更」を許してはならず、これはウクライナという一地域の問題ではなく、アジアを含む国際社会全体にとって極めて重要だと強調しています。

国連総会決議68/262

3月27日、国連総会は決議68/262「ウクライナの領土一体性」を採択しました。決議は、3月16日にクリミア自治共和国とセヴァストポリ市で行われた住民投票は「有効性を持たず」、両者の地位を変更する根拠にはならないとし(第5項)、すべての国と国際機関に、この住民投票に基づく地位の変更を承認せず、承認と受け取られうる行動も控えるよう求めています(第6項)。

この日の総会の議事録(A/68/PV.80)によれば、日本の国連代表(議事録では Mr. Yoshikawa)は、日本はこの決議案に全面的に同意しているので共同提案国になったと述べ、ロシアによるクリミアの独立承認と「クリミアを併合する違法な試み」はウクライナの主権と領土一体性の侵害だと演説しました。採決は記録投票で行われ、賛成100、反対11、棄権58。日本は賛成しています。

4月29日の外務大臣談話は、「クリミア併合を始めとするロシアによるウクライナの主権及び領土の一体性を侵害する動き」が続いていることに深刻な懸念を示し、ウクライナの主権と領土の一体性の侵害に関与したと判断した23人について、日本への入国査証の発給を当分の間停止すると発表しました。

2022年、4州

2022年2月21日、ロシアはウクライナ東部の「ドネツク人民共和国」と「ルハンスク人民共和国」の「独立」を承認する大統領令に署名しました。翌22日の外務大臣談話は、これを「ウクライナの主権及び領土一体性を侵害し、国際法に違反するもの」で「決して認められるものではなく」、強く非難するとしています。その2日後の2月24日、ロシアによるウクライナへの全面侵攻が始まりました。

9月30日、プーチン大統領はドネツィク、ルハンシク、ザポリッジャ、ヘルソンの4州を「編入」すると発表します。同じ日の外務大臣談話は次のとおりです。

これらの地域における「住民投票」と称する行為及びロシアによるこれらの地域の「編入」と称する行為は、ウクライナの主権と領土一体性を侵害し、国際法に違反する行為であり、決して認められてはならず、強く非難します。

外務大臣談話「ロシアによるドネツク、ルハンスク、ザポリッジャ及びヘルソンの『編入』について」(2022年9月30日)

談話は続けて、ロシアの侵略によって一時的な支配下に強制的に置かれた地域でのこうした行為は「武力によって領土を取得しようとする試みにほかならず」、国連憲章を含む国際法に反し、「そのような試みは無効」だと書いています。

国連総会決議ES-11/4

10月12日、国連総会の緊急特別会合は決議ES-11/4「ウクライナの領土一体性:国連憲章の原則を守る」を採択しました。決議は、9月23日から27日に4州の一部で行われた違法ないわゆる住民投票と、それに続く併合の試みは国際法上の有効性を持たず、4州の地位を変える根拠にはならないと宣言し(第3項)、すべての国と国際機関にその変更を承認しないよう求めています(第4項)。ロシアには、2022年2月21日と9月29日の4州の地位に関する決定を即時・無条件に撤回し、ウクライナの国際的に承認された国境の内側から全軍を撤退させるよう要求しました(第5項)。

決議案(A/ES-11/L.5)の提案国の欄には、日本の名前がはじめから入っています。採決の前の10月10日の会合の議事録(A/ES-11/PV.12)によれば、ロシアがこの決議案を無記名投票で採決するよう求める提案を配っていたことを受けて、アルバニアが記録投票で行うことを確認する動議を出し、賛成107、反対13、棄権39で採択されました。日本はこの動議に賛成しています。

採決の日の10月12日午前の会合の議事録(A/ES-11/PV.13)によれば、日本の国連代表(議事録では Mr. Ishikane)は、ドネツィク、ルハンシク、ヘルソン、ザポリッジャの4州を武力によってロシアの領土に併合しようとすることは国連憲章と国際法に明らかに違反し、総会はこれを受け入れてはならないと述べ、この採決は「どちらかの側を選ぶこと」ではなく法の支配を守る共同の意思を示すものだと訴えています。10月12日の採決は賛成143、反対5、棄権35。日本は賛成しました(A/ES-11/PV.14)。

日付文書日本の立場
2014年3月18日外務大臣談話クリミアの住民投票は憲法違反で法的効力がなく、結果を承認しない
2014年3月27日国連総会決議68/262共同提案国。賛成(賛成100、反対11、棄権58)
2014年4月29日外務大臣談話「クリミア併合を始めとする」動きへの懸念。23人への査証の停止
2022年2月22日外務大臣談話「ドネツク人民共和国」「ルハンスク人民共和国」の「独立」承認は国際法違反で、認められない
2022年9月30日外務大臣談話4州の「住民投票」と称する行為と「編入」と称する行為は認められず、無効
2022年10月12日国連総会決議ES-11/4提案国。賛成(賛成143、反対5、棄権35)
2023年3月21日日・ウクライナ共同声明違法な併合の試みに対する不承認の政策に引き続き完全にコミット
2023年9月9日外務大臣談話「併合」した地域での「地方議会選挙」等は認められない
2024年3月19日外務大臣談話「併合」した地域での「大統領選挙」は断じて認められない
外務省の外務大臣談話・共同声明(和文仮訳)と、国連総会の議事録(A/68/PV.80、A/ES-11/PV.12、A/ES-11/PV.14)から作成。2026年9月時点で確認。

「併合」のあとも続く談話

日本政府の表明は、2022年で終わっていません。2023年3月21日に岸田文雄総理とゼレンスキー大統領がキーウで出した共同声明は、第3項で、両首脳が「ロシアによるウクライナ領土の違法な併合の試みに対する不承認の政策」に引き続き完全にコミットしていると強調しています。

ロシアがこれらの地域で選挙を行うたびに、外務大臣談話も出されています。2023年9月9日の談話は、ルハンシク、ドネツィク、ヘルソン、ザポリッジャの各州とクリミア自治共和国で行われたロシアの「地方議会選挙」等について、違法な「併合」に基づく「選挙」の実施も「決して認められません」としました。2024年3月19日の談話は、冒頭に引いたとおり、ロシアの「大統領選挙」について同じ立場を示しています。この談話は対象の地域にセヴァストポリ市を加え、「昨年9月に実施されたロシアによる『地方議会選挙』等に引き続き」と、前年の談話との連続性にも触れています。

オリュカのひとこと

談話の言葉は、2014年から2022年でどう変わったのでしょうか。文言を並べて読みましょう。

文言の移り変わり

談話を並べると、言葉の選び方が変わってきたことが分かります。2014年3月18日の談話は、ロシアに「クリミアの併合に踏み出さないこと」を求め、4月29日の談話は「クリミア併合」とかぎ括弧なしで書いています。2022年9月30日の談話では、「住民投票」と称する行為、「編入」と称する行為と、ロシアの行為の名前をかぎ括弧に入れました。2023年と2024年の談話は「違法に『併合』した」という形です。

外務省は、こうした表記の使い分けの理由を談話の中で説明していません。はっきりしているのは内容のほうです。住民投票の結果を承認しない(2014年)、編入と称する行為は無効(2022年)、違法な併合の試みを承認しない政策に完全にコミットする(2023年の共同声明)。国連総会の二つの決議でも、日本は提案国に名を連ね、賛成票を投じています。

ロシアによる侵略とウクライナ政府の関係についてはウクライナの独立とロシアによる侵略の年表 1991〜2026年、ウクライナの州とその下の行政区分については24の州、136の地区、1,469のフロマーダで分かれるウクライナで扱っています。

出典・参考資料

  1. ロシアが違法に「併合」したウクライナ国内の地域におけるロシアの「大統領選挙」の実施について(外務大臣談話、2024年3月19日)
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  2. ロシアが違法に「併合」したウクライナ国内の地域における「地方議会選挙」等の実施について(外務大臣談話、2023年9月9日)
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  3. ロシアによるドネツク、ルハンスク、ザポリッジャ及びヘルソンの「編入」について(外務大臣談話、2022年9月30日)
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  4. ロシアによる「ドネツク人民共和国」及び「ルハンスク人民共和国」の「独立」の承認について(外務大臣談話、2022年2月22日)
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  5. クリミアにおける住民投票の結果を受けたロシアに対する措置について(外務大臣談話、2014年3月18日)
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  6. クリミア半島における情勢について(外務大臣談話、2014年3月1日)
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  7. クリミア半島における情勢について(外務大臣談話、2014年3月2日)
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  8. ウクライナ情勢を受けたロシアに対する制裁について(外務大臣談話、2014年4月29日)
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  9. G7首脳会合(概要)(2014年3月24日、ハーグ。安倍総理の発言)
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  10. 日本とウクライナとの間の特別なグローバル・パートナーシップに関する共同声明(和文仮訳、第3項)
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  11. A/RES/68/262 Territorial integrity of Ukraine(第5・6項)
    発行:国連総会 確認日:2026-09-24
  12. A/68/PV.80 General Assembly, 80th plenary meeting, 27 March 2014(日本代表の演説・共同提案・記録投票の結果と日本の投票)
    発行:国連総会 確認日:2026-09-24
  13. A/ES-11/L.5 draft resolution(提案国の一覧)
    発行:国連総会 確認日:2026-09-24
  14. A/ES-11/PV.12 Eleventh emergency special session, 12th plenary meeting, 10 October 2022(記録投票とする動議の採決と日本の投票)
    発行:国連総会 確認日:2026-09-24
  15. A/ES-11/PV.13 Eleventh emergency special session, 13th plenary meeting(日本代表の演説)
    発行:国連総会 確認日:2026-09-24
  16. A/ES-11/PV.14 Eleventh emergency special session, 14th plenary meeting, 12 October 2022(採決の結果と日本の投票)
    発行:国連総会 確認日:2026-09-24
  17. A/RES/ES-11/4 Territorial integrity of Ukraine: defending the principles of the Charter of the United Nations(第3・4・5項)
    発行:国連総会 確認日:2026-09-24

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