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社会を知る/解説

キアゲハが外れ、ボバクマーモットが加わった。ウクライナの赤本の一覧

ウクライナの赤本(レッドデータブック)は1980年の最初の版から3回刊行され、2021年の省令で一覧が改められました。このとき動物27種、植物・菌類21種が外れ、ボバクマーモットなどが新たに載っています。第4版の本は2026年9月時点で確認できず、所管の省は2025年と2026年に名前を変えました。罰則と賠償の決まりとあわせて見ます。

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オリュカのひとこと

ウクライナの「赤本」には、どんな生き物が載っているのでしょう。最初の見出しで確かめられます。

ウクライナの「赤本」(Червона книга України、レッドデータブック)は、珍しい種や絶滅のおそれのある種を載せた国の公式の文書です。2002年の赤本法(第3055-III号)がその位置づけ、載せる種の7つの区分、種ごとに書く内容を定めていて、法律の中身と2021年の一覧の種数は動植物の名前を日本語にする記事で紹介しました。

ここでは、赤本がどう版を重ねてきたか、2021年の一覧で何が外れ何が加わったか、本としての新しい版がどうなっているか、そして違反したときの罰則と、所管する省の移り変わりを見ます。

1980年から2021年まで

赤本の版と、一覧を決めた主な文書を年の順に並べます。

年出来事典拠
1980年最初の版『ウクライナ・ソビエト社会主義共和国の赤本』。動物85種(亜種を含む)と高等植物151種ウニアン通信の記事
1992年最高会議の決議「ウクライナの赤本について」(10月29日、第2750-XII号)赤本法の結びの規定(2002年に効力を失ったと定める)
1994年・1996年第2版。1994年に動物編(382種)、1996年に植物編(541種)ウニアン通信の記事
2002年赤本法(2月7日、第3055-III号)法令データベース
2009年6月17日の省令で動物(第313号)と植物・菌類(第312号)の一覧を承認。同じ年に第3版の本が出る(動物542種、植物・菌類826種)2021年の省令の本文、2009年の動物の一覧、ウニアン通信の記事
2017年12月19日の省令第481号で、ヘラジカ(Alces alces)を「危急」の区分で動物の一覧に加える省令第481号
2020年6月10日、国家赤本委員会が新しい一覧を決定2021年の省令の本文
2021年動物(1月19日、第29号)と植物・菌類(2月15日、第111号)の新しい一覧。動物687種、植物・菌類857種省令と、その付属の一覧
1980年・1994〜1996年の種数と2009年の本の種数はウニアン通信の記事による。そのほかは法令データベースの本文(2026年9月26日確認)。
  1. オリュカ

    赤本を担当する省の名前は、ずっと同じだったのかな。

  2. タブリ

    省の名前が変わってきた順番は、この見出しの下の表でたどれるよ。

  3. スウネ

    いまの省の役割も、この見出しの下で確かめられるよ。

所管する省の名前の移り変わり

赤本法は省の名前を書かず、「環境保護の分野の国の政策を実施する中央の行政機関」のように役割で書いています。一覧を承認してきた省の名前は、次のように変わりました。

時期一覧や規程に出てくる省の名前確認した文書
2009年環境保護省(Міністерство охорони навколишнього природного середовища)2009年の省令第312号・第313号
2017年エコロジー・天然資源省(Міністерство екології та природних ресурсів)省令第481号
2021年環境保護・天然資源省(Міністерство захисту довкілля та природних ресурсів)省令第29号・第111号
2025年7月〜経済・環境・農業省(Міністерство економіки, довкілля та сільського господарства)内閣決定第903号(2025年7月21日)
2026年8月〜経済・環境省(Міністерство економіки та довкілля)内閣決定第1029号(2026年8月6日)
日本語の省名は本記事の訳。

2025年7月21日の内閣決定第903号は、経済省の名前を「経済・環境・農業省」に変え、環境保護・天然資源省と農業政策・食料省を廃止して、その仕事を移しました。2026年8月6日の内閣決定第1029号は、「経済・環境省」と「農業政策・食料省」のそれぞれの規程を承認しています。経済・環境省の規程は、赤本の管理と、赤本に載せる種・外す種の一覧の承認を、この省の仕事として挙げています。

2021年の一覧で外れた種、加わった種

2021年の二つの省令には、載せる種の一覧と並んで「赤本から外した種」の一覧が付いています。外されたのは動物27種、植物・菌類21種です。

  • 動物:キアゲハ(Papilio machaon)、Iphiclides podalirius(ウクライナ語 подалірій)、Acherontia atropos(бражник мертва голова)などのチョウ・ガ、Scarabaeus sacer(скарабей священний)、Helix lucorum(слимак великий строкатий)、カニ3種(Carcinus aestuarii など)、ヘビの Vipera berus nikolskii(гадюка Нікольського)など
  • 植物・菌類:ヒシの仲間の Trapa natans、サンショウモ(Salvinia natans)、Clathrus ruber(решіточник червоний)などのキノコ、地衣類、海藻

外した理由は、一覧には書かれていません。赤本法は、保護の結果、研究にもとづいて絶滅のおそれがないと認められた種を外すと定めています(第16条)。

加わった種には、ボバクマーモット(Marmota bobak、区分は「絶滅のおそれが高い」)、コジリス(ховрах малий、Spermophilus pygmaeus)、ヨーロッパウナギ(вугор європейський)、釣りや漁の対象でもあるコイ科の魚(підуст звичайний、в’язь звичайний)などがあります。いずれも2009年の動物の一覧には載っておらず、2021年の一覧に載っています(本記事で二つの一覧を突き合わせた)。

  1. オリュカ

    新しく加わった種の数は、誰が数えたのかな。

  2. スウネ

    その数え方は、公式の一覧ではなく、この見出しの下の団体の説明にあるようだよ。

  3. タブリ

    二つの一覧を比べる数え方は、この見出しの下で確かめられるよ。

「何種が加わったか」は誰が数えたのか

新たに載った種の数は、省令そのものには書かれていません。自然保護団体「ウクライナ自然保護グループ」(UNCG)は2022年2月の記事で、動物は171種が初めて載り27種が外れ、植物・菌類は52種が初めて載り21種が外れたと書いています。

この数は、一覧の数と矛盾しません。2009年の動物の一覧は542種で、2017年にヘラジカが加わって543種になりました。ここから27種を外して171種を加えると687種です。植物・菌類は、2009年の826種から21種を外して52種を加えると857種になります(826種はウニアン通信の記事の数字)。

第4版の本はまだ確認できない

赤本法は、内閣が少なくとも10年に1度、赤本を正式に刊行すると定めています。第3版は2009年なので、次の版は2019年までに出るはずでした。UNCGは2022年2月、第4版が出ていないこと、2021年に省が「独立30周年まで」の刊行を目指して入札を公告し、のちに取り消したことを伝えています。

環境保護・天然資源省のサイトには、第4版の「動物編」を351万フリヴニャ、「植物編」を426万5,000フリヴニャで作成・刊行する調達の根拠の説明が載っていますが、公表の日付は示されていません。2026年9月時点で、第4版の本が刊行されたことを示す公式の発表は確認できませんでした。

オリュカのひとこと

赤本に載る生き物を傷つけると、どんな罰があるのでしょう。この見出しで確かめられます。

違反したときの罰則と賠償

赤本法は、生息地を壊すこと、許可なく採ったり殺したりすることなどを違反として挙げ、罰則はほかの法律に委ねています(第20条)。主なものは次のとおりです。金額は「非課税最低所得」(неоподатковуваний мінімум доходів громадян)の何倍か、という単位で決められています。

法律条対象主な罰
行政違反法典第90条赤本の種の生息地を壊す、殺す、許可なく採る、飼育中に死なせるなど市民は20〜30倍、職員は30〜50倍の罰金と没収
行政違反法典第88条赤本の種の違法な持ち出し・持ち込み市民は50〜100倍、職員は70〜120倍の罰金(没収することもある)
刑法第248条第1項赤本に載る動物の狩猟など1,000〜3,000倍の罰金、160〜240時間の社会奉仕、3年以下の保護観察または自由の制限
出典:行政違反法典・刑法の条文(ウクライナ最高会議の法令データベース、2026年9月26日確認)。刑法には集団や職権によるなど重い場合の規定(第248条第2項)もある。

罰とは別に、失われた個体ごとの賠償の額を内閣が決めています。2012年11月7日の内閣決定第1030号で、法令データベースによれば最後の改正は2018年(第796号)です。UNCGは2022年の記事で、2021年に新しく載った種はこの額の表に入っておらず、賠償を計算できないと指摘しました。2026年9月時点で、この決定が2021年の一覧に合わせて改正されたことは確認できません。

赤本に載る種が記録されている保護区の例は、ドナウ・デルタの保護区の記事やウクライナの保護区の記事で紹介しています。

出典と記事の記録出典 15件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. Закон України «Про Червону книгу України» №3055-III2002年2月7日。第16条の除外、第20条の責任、第12条の10年ごとの刊行、結びの規定で1992年の決議第2750-XIIを廃止。2024年11月15日の版、2026年9月26日時点で有効
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-26
  2. 環境保護・天然資源省令第29号(2021年1月19日。国家委員会の2020年6月10日の決定、2009年の省令第313号と2017年の第481号の廃止)と付属の一覧687種
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-26
  3. 同 付属「赤本から外した動物の一覧」27種と、それぞれの以前の区分
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-26
  4. 環境保護・天然資源省令第111号(2021年2月15日。2009年の省令第312号の廃止)と付属の一覧857種
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-26
  5. 同 付属「赤本から外した植物・菌類の一覧」21種
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-26
  6. 環境保護省令第313号(2009年6月17日)と動物の一覧542種、ヘラジカの狩猟の2年間の禁止
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-26
  7. エコロジー・天然資源省令第481号2017年12月19日。ヘラジカを541-1として追加
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-26
  8. 内閣決定第903号「経済・環境・農業省に関する若干の問題」2025年7月21日。改称と、環境保護・天然資源省の廃止
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-26
  9. 内閣決定第1029号2026年8月6日。経済・環境省の規程、赤本の管理と一覧の承認
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-26
  10. Кодекс України про адміністративні правопорушення第88条・第90条
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-26
  11. Кримінальний кодекс України第248条
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-26
  12. 内閣決定第1030号2012年11月7日。賠償の額。2018年の第796号による改正が最後
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-26
  13. Червона книга України знов у глухому куті?2022年2月10日。171種・27種、52種・21種、第4版が出ていないこと、2021年の入札の取り消し、賠償の表
    発行:ウクライナ自然保護グループ(UNCG) 確認日:2026-09-26
  14. Обгрунтування закупівлі «Послуга з підготовки та видання четвертої редакції Червоної книги України (тваринний світ)»351万フリヴニャ。日付の表示なし。植物編426万5,000フリヴニャの同種のページあり
    発行:環境保護・天然資源省 確認日:2026-09-26
  15. В Україні готують четверте видання Червоної книги1980年・1994年・1996年・2009年の版と種数
    発行:ウニアン通信(УНІАН) 確認日:2026-09-26

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