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人と暮らし/実用ガイド

ウクライナで受けた子どもの予防接種は、日本でどう数えられるか

日本の定期接種は市区町村が行い、対象の年齢なら公費で受けられます。ウクライナで受けた接種は、記録をもとに医師が判断し保護者が同意すれば、受けた回数として数えられることがあります。二つの国の予定表の違いと、記録や予診票の用意の仕方をまとめました。

ウクライナで子どもに予防接種を受けさせてきた家族が日本で暮らし始めると、次に何を受ければよいのか、ウクライナで受けた分はどう扱われるのかが分からなくなりがちです。二つの国では、受けるワクチンの種類も時期も違うからです。

この記事は、日本の予防接種の仕組み、ウクライナで受けた接種の数え方、二つの国の予定表の違い、記録の見せ方を、2026年9月に厚生労働省、こども家庭庁、ウクライナ保健省の法令などで確認した内容にもとづいてまとめたものです。どのワクチンをいつ受けるべきかという医療上の判断は、ここではしません。必ず医師と、住んでいる市区町村の窓口で相談してください。

日本の「定期接種」は市区町村が行う

日本の子どもの予防接種の中心は、予防接種法にもとづく「定期接種」です。予防接種法第5条は、市町村長が、その区域内に住む対象者に予防接種を行わなければならない、と定めています。厚生労働省によれば、A類疾病の定期接種は対象者全員が受けるべきもので、住んでいる市町村で受ける場合は公費で受けられます。受ける側には、受けるよう努める義務(努力義務)があり、16歳未満の子どもの場合は保護者が受けさせるよう努めることになっています(同法第9条)。

注意したいのは年齢です。定期接種には対象の年齢が決まっています。厚生労働省は、定期接種を受けそびれたり受ける機会がなかったりした人が対象の年齢以外で受ける予防接種は「任意接種」になる、と説明しています。出入国在留管理庁の『生活・就労ガイドブック』も、市区町村が勧める予防接種は無料の場合があり、自分で希望して受ける予防接種は自己負担になる、と書いています。

もう一つは住民登録です。たとえば、さいたま市は、海外から転入した子どもについて、接種日の時点で市に住民登録があり、対象の年齢に当てはまれば公費で定期接種を受けられる、と案内しています。住民登録の言葉は別の記事にまとめています。

ウクライナで受けた接種は、医師の判断で数えられる

厚生労働省が市区町村に示している「定期接種実施要領」(2026年9月1日改正)には、次の一文があります。

なお、接種回数を決定するに当たり、海外等で受けた予防接種については、医師の判断と保護者の同意に基づき、既に接種した回数分の定期接種を受けたものとしてみなすことができることに留意すること。

厚生労働省「定期接種実施要領」第1総論8(2026年9月1日改正後全文)

つまり、ウクライナで受けた接種は、記録があって医師がそう判断し、保護者が同意すれば、日本の定期接種を受けた回数として数えられることがあります。自動的に数えられるわけではありません。そのため、何をいつ受けたかが分かる記録が大切になります。

さいたま市は、海外から転入した子どもの家族に、次の順で準備するよう案内しています。

  • 海外で受けた予防接種の記録を用意する。
  • 記録に書かれたワクチンの種類を確かめ、記録に日本語で書き添える。
  • 定期接種を行っている医療機関に相談する。

さいたま市が参考として示している岡山県予防接種センターの「外国語予防接種用語集」(2026年1月29日更新)には、ロシア語の欄はありますが、ウクライナ語の欄はありません。ウクライナ語で書かれた記録は、ワクチンの名前(商品名)や病名を英語など他の言語に置き換えてから照らし合わせることになるかもしれません。

二つの国の予定表を並べる

下の表は、日本の定期接種(厚生労働省が示す標準的な接種年齢)と、ウクライナの「予防接種カレンダー」の年齢別の接種を並べたものです。ウクライナ側は、ウクライナ保健省令第595号(2011年)の別表で、2025年に改定された現在の版です。

病気日本の定期接種ウクライナの年齢別の接種
B型肝炎生後2か月、3か月、7〜8か月の3回生後2、4、6、18か月の4回(母親の状態などにより生後1日目にも)
結核(BCG)生後5〜8か月に1回(1歳まで)生後24時間以降、産院を退院するまでに1回
ジフテリア・百日せき・破傷風5種混合として生後2か月から(追加接種あり)。11歳からDT生後2、4、6、18か月。6歳と16歳にジフテリア・破傷風、成人は26歳から10年ごと
ポリオ5種混合に含まれる不活化ワクチンで生後2、4、6、18か月と6歳
Hib感染症5種混合に含まれる生後2、4、6、18か月
麻しん・風しんMRワクチンで1歳と、小学校入学前の1年間おたふくかぜと合わせた3種混合で12か月と4歳
小児の肺炎球菌生後2か月から(追加接種あり)年齢別の表にはない
ロタウイルス生後2か月から年齢別の表にはない
水痘1歳から年齢別の表にはない
日本脳炎3歳から、9歳年齢別の表にはない
HPV(ヒトパピローマウイルス)小学6年〜高校1年相当の女子12〜13歳の女子に1回(2026年1月1日から)
日本は厚生労働省「予防接種・ワクチン情報」のワクチン一覧と各ワクチンのページ、ウクライナは保健省令第595号「予防接種カレンダー」(2025年11月14日の保健省令第1722号などによる改正後)。2026年9月に確認。ウクライナの「年齢別の表にはない」は、年齢別の定期の表に載っていないという意味で、健康状態などによる接種は別に定められている。

表から分かることを三つ挙げます。

一つ目。ウクライナでは、日本より早い時期に受けるものがあります。BCGはウクライナでは生後すぐ、日本では標準的に生後5〜8か月です。ウクライナで生まれた子どもは、日本に来る前にすでに受けている場合があります。

二つ目。日本の定期接種には、ウクライナの年齢別の表にないものがあります。肺炎球菌、ロタウイルス、水痘、日本脳炎です。ウクライナで任意に受けていることもあるので、記録を確かめてください。受けていない場合、日本で定期接種として受けられるかは年齢によって変わります。

三つ目。同じ病気でも、使うワクチンの組み合わせが違います。ウクライナの麻しん・風しんの接種はおたふくかぜを含む3種混合ですが、日本の定期接種はMR(麻しん・風しん)で、おたふくかぜのワクチンは厚生労働省が任意接種の例として挙げています。

ウクライナの予定表は近年たびたび改定されています。上の表は現在の版なので、子どもが受けた年齢が表と違っていても不思議ではありません。記録の日付をそのまま医師に見せるのがいちばん確実です。

記録をどう見せるか

ウクライナの保健省令(予防接種の実施に関する規則)は、接種の記録を「子どもの発達記録」(様式112/о、Історія розвитку дитини)などの医療記録に書き、ワクチンの商品名、製造者、量、ロット番号、使用期限を記すよう定めています。手元にこうした記録や、その写し・抜粋があれば、日本の医療機関で見せる材料になります。

日本では、子どもが予防接種を受けると、母子健康手帳に記録されます(定期接種実施要領)。母子健康手帳には外国語と日本語を併記した版がありますが、こども家庭庁の「母子健康手帳情報支援サイト」で公開されているのは、英語、中国語、韓国語、ベトナム語、ポルトガル語、ネパール語、タガログ語、インドネシア語、スペイン語、タイ語の10言語で、ウクライナ語版はありません。実施要領は、接種をしたら予防接種済証を交付し、乳幼児・小児についてはその代わりに母子健康手帳に記載する、と定めています。ウクライナで受けた分を母子健康手帳に書き写してもらえるかは、市区町村に聞いてください。

接種の前には「予診票」という問診の用紙に記入します。公益財団法人予防接種リサーチセンターは、定期接種の予診票を翻訳した外国語版を公開しており、2026年度版にはウクライナ語の予診票もあります(予診票のみ。説明の冊子はありません)。営利目的で使わないことと利用実績の報告を条件にしているので、使えるかどうかは、接種を受ける医療機関や市区町村に尋ねてみてください。

病院にかかる前の準備全般と、ウクライナ語で使える問診票・医療用語集については、日本の病院に行く前の準備の記事にまとめています。

相談の前に確かめること

  • 住んでいる市区町村に住民登録をしているか。
  • 子どもの年齢で、どの定期接種が対象になるか(市区町村の予防接種の担当窓口)。
  • ウクライナで受けた接種の記録があるか。ワクチンの名前と日付が読めるか。
  • 記録にない接種がある場合、日本で受けられるか、費用はかかるか(医療機関と市区町村)。
  • 予診票や説明をウクライナ語、ロシア語、英語で用意してもらえるか。

最後にもう一度。この記事は予防接種の仕組みと記録の扱いを書いたもので、どのワクチンを受けるべきかは書いていません。子どもの接種の予定は、記録を見た医師と一緒に決めてください。

出典・参考資料

  1. 予防接種法(昭和23年法律第68号)第5条、第9条
    発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-09-23
  2. 定期接種実施要領(改正後全文・令和8年9月1日改正)(第1総論8:海外等で受けた予防接種は医師の判断と保護者の同意に基づき接種済みとみなすことができる、16:母子健康手帳への記載と予防接種済証、2(3):多言語による周知)
    発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23
  3. 予防接種・ワクチン情報(ワクチン一覧と標準的な接種年齢)
    発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23
  4. よくある質問(A類疾病は公費、任意接種の例として流行性耳下腺炎、対象年齢以外で受ける接種は任意接種)
    発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23
  5. MRワクチン(第1期1歳、第2期5歳以上7歳未満で小学校入学前の1年間)
    発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23
  6. BCGワクチン(生後5か月〜8か月、生後1歳まで)
    発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23
  7. B型肝炎ワクチン(生後2か月、3か月、7〜8か月)
    発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23
  8. HPVワクチン(定期接種の対象者は小学6年〜高校1年相当の女子)
    発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23
  9. 生活・就労ガイドブック 日本語版 第8版(第4章 4-3 予防接種:市区町村が勧める予防接種は無料の場合がある、希望して行う予防接種は自己負担)
    発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-23
  10. 海外から転入された子どもの予防接種について(住民登録と対象年齢、記録の準備と日本語の書き添え、医療機関への相談。更新日2026年3月27日)
    発行:さいたま市 確認日:2026-09-23
  11. 外国語予防接種用語集(2026年1月29日更新。収録言語にロシア語はあり、ウクライナ語はない。さいたま市のページに掲載)
    発行:岡山県予防接種センター 確認日:2026-09-23
  12. 外国人の方へ(母子健康手帳 多言語版10か国語の一覧)
    発行:こども家庭庁 母子健康手帳情報支援サイト 確認日:2026-09-23
  13. Foreign Language 外国語(外国語版「予防接種と子どもの健康2026年度版」、予診票のみ翻訳している言語にウクライナ語、利用規約)
    発行:公益財団法人予防接種リサーチセンター 確認日:2026-09-23
  14. Наказ МОЗ України від 16.09.2011 № 595 «Про порядок проведення профілактичних щеплень в Україні…»、Календар профілактичних щеплень в Україні(年齢別の接種表と注1〜7)
    発行:Верховна Рада України(法令データベース) 確認日:2026-09-23
  15. Положення про організацію і проведення профілактичних щеплень(第12項:接種記録を記す医療記録の様式と記載事項)
    発行:Верховна Рада України(法令データベース) 確認日:2026-09-23

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