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ビジネス・復興/解説

岸壁は国のもの、荷役は会社のもの。ウクライナの港とコンセッション

ウクライナの港の岸壁や水面は国のもので、2013年にできた海港庁が管理します。2020年にはヘルソン港とオリヴィア港で初めてコンセッションが結ばれましたが、全面侵攻で止まりました。2025年12月にはチョルノモルシク港の入札が始まっています。法律の仕組みと案件の状態を、2026年9月時点の発表で見ます。

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オリュカのひとこと

港の岸壁と、荷役の会社は、誰のものなのでしょう。分かれ方を最初の見出しで整理できます。

ウクライナの海の港では、岸壁や航路、港内の水面は国のもので、それを預かるのが国営企業「ウクライナ海港庁」(АМПУ)です。一方、船から荷を揚げ降ろしする会社(ターミナル)には、国営のものも民間のものもあります。2020年には、国の港の一部を民間の会社に数十年単位で任せる「コンセッション」が初めて結ばれました。その仕組みと、全面侵攻のあとに止まった案件、動き始めた案件を、2026年9月時点の法令と政府の発表から見ていきます。

港からの穀物の輸出の経路と、2026年夏の港への攻撃は穀物の輸出経路の記事で扱っています。

国のものとして残す「戦略的な施設」

港の基本の法律は、2012年5月17日の法律第4709-VI号「ウクライナの海港について」です。この法律は、港の施設のうち、岸壁などの水辺の構造物(港内の水面、岸壁、桟橋、防波堤、航路の溝など)、複数の事業者が共同で使う施設、航路標識、船の交通を管理する仕組みを「港湾インフラの戦略的施設」と呼び、国の所有としています(第1条)。

第23条は、法律の施行の時点にあった戦略的施設を、民営化したり、ほかの方法で手放したりできないと定めています。その土地も民営化できません(第24条)。ただし岸壁(係留施設)は最長49年まで貸すことができ、岸壁や港に入る鉄道・道路、電気や水の設備は、複数の事業者が自由に使えることを条件に、コンセッションの対象にもできます。

一方で、荷役の会社が持つ設備や建物は、国・自治体・民間のどのものでもありえます(第23条)。この法律のあとに民間のお金で新しく造った岸壁などは、民間の所有になります。

区分持ち主例
戦略的施設国(海港庁が管理)港内の水面、岸壁などの水辺の構造物、航路標識、共同で使う鉄道・道路
ターミナル(荷役の会社の財産)国・自治体・民間クレーンなどの荷役の設備、倉庫、事務所
出典:法律第4709-VI号「ウクライナの海港について」第1条・第23条(2026年9月時点の条文)をもとに作成。

海港庁は2013年にできた

ウクライナ海港庁(Адміністрація морських портів України)は、内閣の2013年3月4日の命令第133-р号に基づいて設けられました。インフラ省は2013年3月19日の命令第163号で、それまでの国営の港の企業から戦略的施設とそれに関わる財産を切り分け、海港庁に移しました。荷役を続ける部分は、国営の「海の商業港」などの企業として残りました。

海港法第15条によれば、海港庁の役目は、国の財産の維持と近代化、航路の水深の維持、船の安全な航行の確保、港の使用料(港湾料)の徴収、港で事業をする会社に平等な競争の条件を保つことなどです。財源は港湾料と使用料で、施設の建設には国の予算を使うこともできます(第16条)。

海港庁の説明では、同庁はオデーサの本部と13の港の支所などからなり、2026年9月時点でコミュニティ・領土発展省の所管です。支所の一覧のうち、ベルジャンシク、マリウポリ、スカドウシクの港は「一時的に占領」と記されています。

オリュカのひとこと

港を長期間任せる仕組みで、最初に結ばれた案件はどこだったのでしょう。この節の表で確かめられます。

2019年のコンセッション法と、最初の二つの港

2019年10月3日の法律第155-IX号「コンセッションについて」は、国や自治体の施設の建設・改修・運営を民間の会社に任せ、その会社が施設を使って事業をする仕組みを定め、同時に海港法も改めました。任せる期間は案件ごとに決めます。

この仕組みで港の案件が二つまとまりました。

港契約の署名相手期間投資の約束(政府の発表)
ヘルソン港(国営企業「ヘルソン海商業港」の財産)2020年6月26日リソイル・ヘルソン社(ジョージアの企業グループ60%、スイスの企業40%の共同企業体)30年約3億フリヴニャ、ほかに地域の基盤に1,800万フリヴニャ超
オリヴィア港(ミコライウ州、国営企業「荷役会社オリヴィア」の財産)2020年8月20日カタールの港湾運営会社QTerminalsと、その現地法人35年約34億フリヴニャ、ほかに地域の基盤に8,000万フリヴニャ以上
出典:内閣の発表(2020年6月26日・8月20日)、ウクルインフォルム(2020年1月21日、共同企業体の持ち分)、コミュニティ・領土発展省の発表(2025年8月14日、オリヴィア港の期間)。

どちらも、国際金融公社(IFC)と欧州復興開発銀行(EBRD)が準備を手伝いました。コンセッションでは、港の財産は国のものとして残り、会社は投資を約束し、国に使用料を払います。

全面侵攻のあと、二つの港は止まった

ヘルソン市は2022年3月から11月までロシア軍に占領されました。業界紙ラティフンディストが2025年10月2日に伝えたところでは、ヘルソン港のコンセッションを担う会社は「引き渡された形のコンセッションの対象は、もう存在しない」として契約の大きな見直しを求め、コミュニティ・領土発展省は、コンセッションの期間を一時止めることや、港が動かない間の支払いの免除などを話し合っていると認めました。

オリヴィア港のコンセッションについて、同省は2025年8月14日、全面侵攻のために止まっていると説明したうえで、QTerminalsと再開に向けた覚書を結んだと発表しました。背景にあるのは、2025年6月19日の法律第4510-IX号「官民連携について」です。同省によれば、この法律は2025年10月から、戦争のような不可抗力を理由にコンセッションの条件を変え、期間を一時止められるようにしました。

チョルノモルシクの二つのターミナル

オデーサ州のチョルノモルシク港では、新しい案件が動いています。コミュニティ・領土発展省は2025年12月20日、同港の第1(汎用)ターミナルとコンテナ・ターミナルのコンセッションの入札を始めました。ウクルインフォルムが2026年5月13日に伝えた同省の説明では、75日間の「競争的対話」の段階に入っています。同省は、全面侵攻のさなかに進める最初の港の官民連携の案件だとしています。EBRDとIFCが助言し、期間は40年、1,000人を超える雇用の維持と、年25万TEU(20フィートコンテナ換算)までのコンテナ輸送の回復を見込んでいます。2026年9月時点で、落札者は発表されていません。

売却された港もある

戦略的施設以外の財産は、民営化の対象にもなります(海港法第25条)。国有財産基金によれば、ドナウ川の国営企業「ウスチ=ドゥナイシク海商業港」は2023年1月の競売で民間企業に2億100万300フリヴニャで売られ、同年8月24日に引き渡されました。同基金は、港の中のほかの事業者の扱いについて、買い手と海港庁が覚書を結んだとも伝えています。

ロシアが占領している港では、どの仕組みも動いていません。2014年から占領されているクリミアの港に加え、2022年からはベルジャンシク、マリウポリ、スカドウシクの港が占領されています。オデーサの港の成り立ちはオデーサと自由港の記事にあります。

出典と記事の記録出典 11件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. Закон України «Про морські порти України»2012年5月17日 第4709-VI号。第1条の定義、第15条、第16条、第23条、第24条、第25条、第26条
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  2. Закон України «Про концесію»2019年10月3日 第155-IX号。第3条の期間
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  3. Наказ Мінінфраструктури від 19.03.2013 № 163国営の港の企業の再編と海港庁の設立
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  4. Про підприємство2013年の設立、2013年3月4日の内閣命令第133号、所管、13の支所、占領された港
    発行:ウクライナ海港庁(АМПУ) 確認日:2026-09-24
  5. Підписано перший договір концесії морського порту в Україні, - Владислав Криклій2020年6月26日。ヘルソン港、30年、約3億フリヴニャ、1,800万フリヴニャ超、IFC・EBRD
    発行:ウクライナ内閣(2022年1月のウェブアーカイブで確認) 確認日:2026-09-24
  6. Укладено договір концесії морського порту “Ольвія”, - Владислав Криклій2020年8月20日。QTerminals、約34億フリヴニャ、8,000万フリヴニャ以上、IFC・EBRD
    発行:ウクライナ内閣(2022年1月のウェブアーカイブで確認) 確認日:2026-09-24
  7. Херсонський морський порт передали в концесію2020年1月21日。入札の開始、共同企業体の持ち分
    発行:ウクルインフォルム 確認日:2026-09-24
  8. Укладено меморандум щодо відновлення концесії у морському порту “Ольвія”2025年8月14日。35年、停止、覚書、法律第4510-IX号
    発行:コミュニティ・領土発展省(現・復興・インフラ・運輸省のサイトに掲載) 確認日:2026-09-24
  9. Мінрегіон веде переговори з концесіонером Херсонського порту про перегляд договору через війну2025年10月2日。LIGA.net の報道を引用
    発行:Latifundist.com 確認日:2026-09-24
  10. Концесія у порту Чорноморськ: розпочався етап конкурентного діалогу2026年5月13日。2025年12月20日の開始、75日、EBRD・IFC、40年、1,000人超、25万TEU
    発行:ウクルインフォルム 確認日:2026-09-24
  11. Фіналізовано приватизацію Усть-Дунайського порту2023年。1月の売却、2億100万300フリヴニャ、8月24日の引き渡し、海港庁との覚書
    発行:ウクライナ国有財産基金 確認日:2026-09-24

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