25歳で動員の対象に。2024年に書き換えられたウクライナの兵役の法律
ウクライナでは2024年4月、徴集兵として登録される年齢の上限が27歳から25歳に下がり、25歳になると動員で召集されうる「兵役義務者」に移るようになりました。翌5月の法改正では登録データの更新が義務になり、アプリ「Резерв+」が始まっています。2026年9月時点の条文で、何が変わったのかを整理します。
オリュカのひとこと
「動員年齢」という言葉は、法律のどこに書かれているのでしょう。最初の見出しで、条文の言い方を確かめましょう。
2022年2月24日、ロシアによるウクライナへの全面侵攻が始まった日に、ゼレンスキー大統領は戒厳令とは別の大統領令 № 65/2022 で総動員を布告しました。最高会議は3月3日に法律 № 2105-IX でこれを承認しています。総動員はその後も繰り返し延長され、2026年9月時点で最新の延長は、大統領令 № 597/2026 による2026年8月2日からの90日間です。
戒厳令と動員は法的には別の制度です。戒厳令のもとで何が制限されているかは、ウクライナの戒厳令で止まっていること、止められないことで扱いました。ここでは、動員と兵役そのものの法律が、全面侵攻のあと、特に2024年と2025年にどう書き換えられたかを見ていきます。条文は、2026年9月24日時点で最高会議の法令データベース(zakon.rada.gov.ua)に載っている版によります。
「動員年齢」という言葉は、法律にはない
2024年春、「ウクライナが動員年齢を27歳から25歳に下げた」と報じられました。ただ、条文に「動員年齢」という言葉はありません。変わったのは、兵役の登録の区分の境目です。
法律「兵役義務と兵役について」(1992年3月25日 № 2232-XII。以下、兵役法)は、兵役の登録に載る人を次のように分けています(第1条)。
- 徴集兵(призовники):兵役の登録に載せられた人。18歳からの基礎兵役に送られうる若い世代がここに入る
- 兵役義務者(військовозобов’язані):「特別な期間」に軍などを補充するための予備(запас)にある人
- 予備役兵(резервісти):軍の予備の勤務(військовий резерв)に就いている人
法律「動員の準備と動員について」(1993年10月21日 № 3543-XII。以下、動員法)の第22条は、動員のときに召集される人を兵役義務者と予備役兵としています。つまり、徴集兵の区分にいるあいだは、動員の召集の対象になりません。
2023年5月30日に最高会議が採択した法律 № 3127-IX は、兵役法の中の「27歳」という語をすべて「25歳」に置き換える、1条だけの法律です。これにより、徴集兵の登録は25歳まで(兵役法第37条)となり、25歳に達した徴集兵は兵役義務者の登録に移ることになりました。移った人は予備の一員として、動員の召集の対象に入ります。報道の「動員年齢の引き下げ」は、この仕組みを指しています。
この法律は採択から10か月以上たって、2024年4月3日に官報にあたる最高会議の機関紙「Голос України」に掲載され、翌日に施行されました。
予備にとどまる年齢の上限は、兵・下士官で60歳です(兵役法第28条)。後で触れる身分証の携帯義務などが「18歳から60歳の男性」を対象にしているのは、この区分と関係しています。
2024年5月18日に施行された大きな改正
同じ2024年の4月11日、最高会議は法律 № 3633-IX「兵役、動員、兵役の登録の個別の問題について、いくつかの法律を改正する法律」を採択しました。2024年1月30日に提出された法案 № 10449 がもとになっており、4月17日に公布され、公布の翌日から1か月後の5月18日に施行されています。動員法、兵役法、戒厳令法など多くの法律をまとめて書き換えた改正で、暮らしに直接かかわるのは次の点です。
オリュカのひとこと
登録データの更新は、どんな方法でできるのでしょう。アプリ「Резерв+」の役割をこの節で確かめましょう。
登録データの更新と、アプリ「Резерв+」
改正法の経過規定は、兵役の登録に載っている人に、施行から60日以内に住所・電話番号・電子メール(持っている場合)などの個人データを更新するよう義務づけました。ウクライナ国内にいる人は、地域の徴兵・社会支援センター(ТЦК та СП)、行政サービスセンター(ЦНАП)、または電子の個人ページ(電子キャビネット)で更新します。国外にいる人は、センターの公式サイトに載っている電子メールや電話番号への連絡、または電子キャビネットで更新するとされています。
改正で動員法第22条に加わった条文は、兵役の登録に載っている人が「任意で」電子キャビネットを登録するとしています。国防省はその器として、施行と同じ5月18日にスマートフォン用のアプリ「Резерв+(レゼルヴ・プリュス)」の提供を始めました。国防省は前日の発表で、18〜60歳の兵役義務者などに対し、7月16日までの60日間にデータを更新するよう求め、アプリでは国防省の登録簿「Оберіг」の自分の情報を見られると説明しています。6月18日からは、身分をその場で確かめられるQRコードも表示されるようになりました。
召集令状と、身分証の携帯
改正後の動員法第22条は、センターからの召集令状(повістка)に書くべき項目を定めています。氏名と生年月日、発行したセンター、呼び出しの目的、出頭の場所と日時、発行者の署名(電子署名を含む)、令状の登録番号、出頭しなかった場合の結果と理由を知らせる義務の説明です。やむをえない理由で出頭できなかったときは、令状の日時から3日以内に理由を知らせる義務があり、正当な理由として、災害、本人の病気、戦闘とその影響、近親者の死亡が挙げられています。
同じ条の第6項は、動員の期間中、18歳から60歳の男性に、兵役の登録の書類を持ち歩き、センターの担当者、警察官、国境地帯では国境警備庁の担当者に求められたら示す義務を課しています。確認の様子は写真や動画で記録されることになっており、この記録の規定は2024年7月17日から適用されています。
動員法第23条は、動員による召集を猶予される人を列挙しています。健康上の理由、家族の扶養や介護、特定の公職などで、条件は細かく分かれています。猶予にあたるかどうかは本人の書類と手続きで決まるため、個別の条件には立ち入りません。
国外にいる人の領事手続き
3633-IX は戒厳令法にも条文を加えました。18歳から60歳の男性が在外公館で領事手続きをするとき、法律の期限までに個人データを更新していなければ、更新と同時でなければ手続きが行われません。例外や、旅券の作成に兵役の登録の書類が必要になる点は、戒厳令の記事の「国外にいるウクライナ人男性への影響」で説明しています。
2025年に始まった18〜24歳の1年契約
25歳未満の徴集兵は動員の対象になりません。その世代に向けて、政府は志願による契約の仕組みを設けました。内閣決定 № 153(2025年2月11日、13日施行)が定めた、2年間の「実験事業」です。国防省は同じ日に「Контракт 18-24(契約18〜24)」として始めると発表し、18〜24歳の人に向けた志願の仕組みだと説明しました。決定の文言は「18歳から25歳までの市民」です。
| 項目 | 内閣決定 № 153 の定め(2026年9月時点の版) |
|---|---|
| 対象 | 18歳から25歳までの市民。軍、国家親衛隊、国境警備庁の兵(рядовий склад)の職 |
| 契約の期間 | 1年。無人システムを運用する職は2年(2025年7月30日の決定 № 942 で追加) |
| 条件 | 契約期間中に、前線での戦闘に通算6か月以上(無人システムの職は12か月以上)直接加わること |
| 一時金 | 100万フリヴニャを3回に分けて支給(20万・30万・50万) |
| 訓練 | 基礎訓練45日以上、専門訓練14日以上、部隊での適応課程14日(1年契約の場合) |
| 満了後 | 除隊から12か月は動員の召集を受けない。戒厳令のもとでも国境を越える権利を持つ。住宅ローンを金利0%で借りられる |
兵役法も、戒厳令のもとで契約で入隊する18歳から25歳の兵の勤務期間を1年と定めています(第23条第3項。3633-IX による書き換え)。内閣決定 № 153 は、その枠の上に一時金や満了後の扱いを加えたものです。実験事業の期間は2年で、終わってから2か月以内に国防省などが結果を内閣に報告し、法律の改正を提案することになっています。
これとは別に、内閣は2025年8月、国境通過の規則を改め、18歳から22歳の男性には戒厳令のもとでの出国の制限が及ばないことにしました。この改正の中身も戒厳令の記事で扱っています。
日本にいる人が確かめること
日本に住むウクライナの男性がデータの更新や領事手続きをするとき、どの規定が自分にあたるかは、年齢、登録の区分、健康状態、家族の状況によって変わります。ここでは判断できません。駐日ウクライナ大使館と、国防省が公式に案内している手段で確認してください。条文は短い間隔で改正されてきており、ここに書いた内容も、2026年9月24日時点の版によるものです。
出典・参考資料
- Указ Президента України № 65/2022 «Про загальну мобілізацію»(2022年2月24日。2105-IX による承認、延長の注記:№ 597/2026 による2026年8月2日からの90日間)
発行:Президент України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24 - Закон України «Про військовий обов'язок і військову службу» № 2232-XII(1992年3月25日。第1条の定義、第23条第3項、第28条、第37条、3127-IX による置き換えの注記)
発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24 - Закон України «Про мобілізаційну підготовку та мобілізацію» № 3543-XII(1993年10月21日。第22条、第23条)
発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24 - Закон України № 3127-IX «Про внесення змін до Закону України „Про військовий обов'язок і військову службу“»(2023年5月30日採択、2024年4月3日公布、翌日施行)
発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24 - Закон України № 3633-IX «Про внесення змін до деяких законодавчих актів України щодо окремих питань проходження військової служби, мобілізації та військового обліку»(2024年4月11日採択、法案 № 10449、2024年5月18日施行、経過規定の60日の更新義務、戒厳令法への領事手続きの条文)
発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24 - Постанова КМУ № 153 «Про реалізацію експериментального проекту щодо підвищення мотивації до проходження окремими категоріями громадян України військової служби…»(2025年2月11日。№ 387、№ 942 による改正を含む)
発行:Кабінет Міністрів України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24 - «Контракт 18-24»: Міноборони запускає новий формат добровільної служби(2025年2月11日。事業の開始と呼び名、18〜24歳向けの志願の仕組み)
発行:Міністерство оборони України 確認日:2026-09-24 - Ministry of Defence launches Reserve+ mobile application(2024年5月17日。5月18日の施行、18〜60歳、7月16日までの60日間、Оберіг、6月18日からのQRコード)
発行:Міністерство оборони України 確認日:2026-09-24
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