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社会を知る/解説

国勢調査では4万7千人、推計では最大40万人。ウクライナのロマと国の戦略

2001年の国勢調査でウクライナのロマは4万7,587人でしたが、政府の戦略は実際には20万〜40万人にのぼる可能性があると書いています。身分証を持たない人、学校、住まい、ロマ語の教育まで、2021年に承認された2030年までの戦略と行動計画が何を課題とし、何を決めたのかをたどります。

画像:Ukrainavi

オリュカのひとこと

4万7,587人と40万人は、同じものを数えた数字なのでしょうか。数え方の違いを最初の表で確かめましょう。

2001年12月5日時点の全ウクライナ国勢調査で、ウクライナに住むロマは4万7,587人と数えられました。人口の0.1%です。一方、ウクライナ政府が2021年に承認したロマについての国の戦略は、国際機関や市民団体の非公式の推計として、実際には20万人から40万人にのぼる可能性があると書いています。同じ人々について、公式の数と推計の間に4倍から8倍の開きがあります。

戦略の文面は、ロマの人数、暮らしの状況、住んでいる場所についての新しいデータが足りないことを、国が効果のある対策をとるうえでの課題の一つに挙げ、目標の最初に統計の更新を置いています。国が何を課題とし、何をすると決めたのかを、戦略と行動計画、欧州評議会の報告からたどります。

数え方で、4万7千人にも40万人にもなる

国勢調査の結果の表では、ロマは当時の呼び名「ツィハーニ(цигани)」の欄で集計されています。いまの政府の文書は「ロマ(роми)」、あるいは「ロマの民族的少数者」と書きます。たとえばザカルパッチャ州では1万4,000人(州の人口の1.1%)でした。ウクライナの国勢調査は2001年の一度しか行われておらず、これが最新の公式の数です。

数何の数か示している主体
4万7,587人2001年12月5日時点の国勢調査で、ロマとして数えられた人ウクライナ国家統計委員会(戦略の文面も同じ数を引用)
12万〜40万人「ほかの資料」による推計欧州評議会の人種差別・不寛容に反対する欧州委員会(ECRI)の第5次報告(2017年)
20万〜40万人国際機関・市民団体の非公式の推計、ECRIの第4次報告(2011年12月)内閣の戦略(2021年)の文面
ウクライナ国家統計委員会「全ウクライナ国勢調査2001年」、ECRI「Fifth report on Ukraine」、内閣命令第866-р号の戦略の文面から作成(2026年9月24日確認)。推計はいずれも調査にもとづく確定値ではない。

ECRIの第5次報告は、公式の数と推計がこれほど離れる理由として、身分証を持たず国に登録されていない人が多いこと、差別を恐れて民族を申告しない人がいること、ロマがルーマニア人として誤って記録されることを挙げています。そのうえで、本人の自己申告と同意を前提に、ロマの統合にかかわるすべての分野で統計をとる仕組みをつくるよう勧告しました。

2013年の最初の戦略と、その評価

国が最初にロマについての戦略を定めたのは、2013年4月8日の大統領令第201号で承認された「2020年までのロマの民族的少数者の保護とウクライナ社会への統合の戦略」です。ECRIの第5次報告によれば、同年9月に内閣が承認した行動計画には56の措置が並び、担当機関と期限は決められていましたが、予算はつけられていませんでした。

同じ報告は、この戦略は効果を上げず、行動計画の措置の多くは実施されないままだ、という多くの関係者の声を伝えています。最高会議人権コミッショナー(オンブズマン)の事務所も、戦略は形式的で、ロマが抱える問題の解決という目標に届いていない、とウェブサイトに書いていました。実施を担う省庁横断の作業部会が初めて開かれたのは、戦略の承認から3年余りたった2016年11月でした。

2030年までの戦略が掲げた八つの目標

いまの戦略は、内閣が2021年7月28日の命令第866-р号で承認した「ウクライナ社会におけるロマの民族的少数者に属する人々の権利と機会の実現を促進する2030年までの戦略」です。戦略の文面は、解決すべき問題として、身分証の欠如、法的な支援へのアクセスの乏しさ、社会の否定的な固定観念、学校を途中でやめる子どもの多さ、医療が届きにくいこと、隔離された居住地の住環境、低い就業率を挙げています。目標は八つです。

目標主な中身(戦略の文面から)
1. 統計の更新次の国勢調査にロマが参加するよう働きかける。人数・人口構成・暮らしの状況についての研究を支える
2. 法的な保護と差別への対策身分証・出生証明書の取得を助ける。行政・警察・医療などでの差別を防ぐ研修。無料の法律扶助を受けやすくする。自治体との間に立つ仲介者を支える
3. 教育就学前教育に通う子どもを増やす。中等教育を途中でやめるのを防ぐ。職業教育に進む人を増やす。無料のウクライナ語講座
4. 医療家庭医との契約(декларація)を結ぶ人を増やす。予防接種と健康診断。医療の場での偏見を防ぐ
5. 住環境住宅支援の制度を知らせる。所有権の登記を助ける。水道など公共サービスを使える人を増やす
6. 就業雇用の場での差別を防ぐ。国の雇用サービスを知らせる
7. 社会的な保護困難な状況にある子どもの早期の発見と支援。物乞いをする子どもへの対応
8. 文化・歴史・言語ロマ語の標準化と規範の整備。教育課程に少数民族の歴史と文化を入れる
内閣命令第866-р号(2021年7月28日)の戦略の文面から作成。2026年9月時点の版(2026年3月と9月に一部改正)。

身分証については、戦略自身が、身分証や国籍を証明する書類を持たない人は、さまざまな推計でロマの4〜8%にあたると書いています。出生の登録、財産の登記、住所の登録、雇用の記録など、ほかの書類を持たない人はさらに多く、それが社会保障や行政サービスを受けられない原因になっている、としています。ECRIは2020年6月に公表した結論で、身分を証明するための裁判の手数料をロマについて免除するよう求めた勧告が、実施されていないと判断しました。手数料の減免を受けるには、支払えないことを書類で証明する必要があり、書類を持たない人には使いにくいためです。

誰が、何を、いつまでに

戦略の実施をまとめるのは、国家民族政策・良心の自由局(ДЕСС)です。内閣は2022年4月19日の決議第468号で、ДЕСС の長を座長とする省庁横断の作業部会を設けました。内務省・教育科学省・保健省などの次官のほか、人権オンブズマンの代表や、同意を得たロマの市民団体の代表も加わります。

具体的な行動計画として、内閣は2023年12月22日の命令第1197-р号で、2024〜2025年の計画を承認しました。計画は23の項目に分かれ、たとえば次のような期限と目標を置いています。

  • 2025年:ロマの人数、人口構成、暮らしの状況、居住地についての調査を行い、性別・年齢別のデータを公表する。調査結果をもとに、ロマがまとまって住む場所とその課題を示すオンラインの地図をつくる
  • 2024〜2025年:教育・医療・就業へのアクセスや、国内避難民となった人の必要についての聞き取り調査
  • 身分証を持たない人からの無料の法律扶助の申し込みを、2024年に200件、2025年に300件まで増やす
  • 州とキーウ市は、3か月以内に地域ごとの行動計画をつくる

戦略は、各省庁と州が毎年1月31日までに ДЕСС に報告し、ДЕСС が3月31日までにまとめの報告書を公表すること、2025年に中間評価、2030年に最終評価を行うことを定めています。

オリュカのひとこと

ロマ語を学校で教えるには、まず何を整える必要があるのでしょう。行動計画が挙げる準備をこの節で確かめられます。

ロマ語を学校で教えるための準備

戦略は目標8で、教育科学省、国立科学アカデミー、国立教育科学アカデミー、欧州評議会などによる、ウクライナでのロマ語の標準化と規範の整備の共同プロジェクトを進めるとしています。2024〜2025年の行動計画は、そのために次のことを挙げています。

  • ロマ語のアルファベットの承認に向けた協議と、基本の語彙集と読み物の用意
  • 1〜4年生向けのロマ語の教育課程の試行と、選択科目として教えるための教材づくり
  • 低学年と中学年向けの選択科目「ロマ学(Ромознавство)」の教育課程
  • ロマ語の教員の養成を、国の人材需要の中期予測に入れるための協議

ロマ語はEUの公用語ではないため、学校の言葉の定め(教育法第7条、完全普通中等教育法第5条)の上では、ハンガリー語やルーマニア語とは扱いが異なり、5年生から上の学年では授業時間の80%以上をウクライナ語で行うことになっています。どの言語でも、少数民族の人々には、公立の学校や民族文化団体を通じて自分たちの言語を学ぶ権利が法律で保障されています。先住民族として法律に挙げられた民族についてはウクライナの先住民族法の記事があります。

出典と記事の記録出典 9件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. 内閣命令第866-р号「ウクライナ社会におけるロマの民族的少数者に属する人々の権利と機会の実現を促進する2030年までの戦略の承認について」2021年7月28日。2026年9月12日の版。国勢調査の数、推計、身分証の4〜8%、八つの目標、監視と報告
    発行:ウクライナ最高会議(法令データベース) 確認日:2026-09-24
  2. 内閣命令第1197-р号「戦略の実施のための2024〜2025年の行動計画の承認について」(2023年12月22日)と行動計画の本文付属文書
    発行:ウクライナ最高会議(法令データベース) 確認日:2026-09-24
  3. 内閣決議第468号「戦略の実施を調整する省庁横断作業部会の設置について」2022年4月19日。構成
    発行:ウクライナ最高会議(法令データベース) 確認日:2026-09-24
  4. 全ウクライナ国勢調査2001年 民族別の人口構成ツィハーニ4万7,600人・0.1%
    発行:ウクライナ国家統計委員会 確認日:2026-09-24
  5. 全ウクライナ国勢調査2001年 ザカルパッチャ州の民族別の人口構成ツィハーニ1万4,000人・1.1%
    発行:ウクライナ国家統計委員会 確認日:2026-09-24
  6. 教育法(法律第2145-VIII号)第7条少数民族の言語を学ぶ権利
    発行:ウクライナ最高会議 確認日:2026-09-24
  7. 完全普通中等教育法(法律第463-IX号)第5条第6項EUの公用語以外の少数民族の言語の学級は、5年生以降ウクライナ語80%以上
    発行:ウクライナ最高会議 確認日:2026-09-24
  8. ECRI Report on Ukraine (fifth monitoring cycle)2017年6月20日採択、9月19日公表。第59〜65段落:人数の推計、2013年の戦略の評価
    発行:欧州評議会 人種差別・不寛容に反対する欧州委員会(ECRI) 確認日:2026-09-24
  9. ECRI Conclusions on the implementation of the recommendations in respect of Ukraine subject to interim follow-up2020年4月7日採択、6月2日公表。裁判手数料の免除の勧告
    発行:欧州評議会 人種差別・不寛容に反対する欧州委員会(ECRI) 確認日:2026-09-24

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