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人と暮らし/実用ガイド

妊娠の届出から出生届まで、日本で出産するときの手続きと費用

日本で妊娠がわかったら、住んでいる市区町村に届け出て母子健康手帳を受け取ります。妊婦健診は全国すべての市区町村が14回以上を公費で助成し、出産の費用には健康保険から原則50万円の出産育児一時金が出ます。子どもが生まれたら14日以内に出生届、30日以内に在留資格の申請が要ります。

日本で妊娠がわかったとき、最初に向かう先は病院と、住んでいる市区町村の窓口です。妊娠の届出、母子健康手帳、妊婦健診の助成、出産の費用にあてる給付、生まれた子どもの届出と在留資格。手続きは妊娠から出産後まで続き、その多くを市区町村が受け持っています。

この記事は、母子保健法・戸籍法などの条文と、こども家庭庁、厚生労働省、出入国在留管理庁、日本年金機構の公表資料を2026年9月に確認した内容にもとづいています。自分がどの給付の対象になるか、いくら受け取れるかは、この記事では判断しません。加入している健康保険と、住んでいる市区町村の窓口で確かめてください。

妊娠がわかったら、市区町村に届け出る

母子保健法第15条は、妊娠した人は速やかに市町村長に妊娠の届出をするようにしなければならない、と定めています。届出をした人に母子健康手帳を交付するのは市町村です(同法第16条)。出入国在留管理庁の『生活・就労ガイドブック』は、届出をすると市区町村から次のものが提供される、と説明しています。

  • 母子健康手帳の交付
  • 妊婦健康診査を公費の補助で受けられる受診券または補助券の交付
  • 保健師などによる相談
  • 両親学級(母親学級・父親学級)の紹介

こども家庭庁の「母子健康手帳情報支援サイト」は、届出の際に保健師などとの面談があり、心配なことや困っていることも相談できる、と外国から来た人向けに案内しています。同じページは、外国語の母子健康手帳をもらえるかどうかも窓口で聞いてみるよう勧めています。

届出のあと、お金の支援もあります。こども家庭庁の「妊婦のための支援給付」は、2022年度の補正予算で始まった「出産・子育て応援交付金」を、2025年度から法律にもとづく制度にしたものです。同庁の案内によれば、医療機関で胎児の心拍が確認されたあと、住民票のある市区町村に申請でき、妊婦給付の認定後に5万円、出産予定日の8週間前の日から妊娠している子どもの人数を届け出ると、その人数×5万円が支給されます。流産・死産の場合も対象です。自治体によってはクーポンなどでの給付を選べます。

母子健康手帳に、ウクライナ語版はない

母子健康手帳は、母親の妊娠期から産後まで、子どもの新生児期から乳幼児期までの健康状態を一冊に記録するものです。妊婦は健診や保健指導を受けるたびに、手帳に必要な事項を書いてもらうことになっています(母子保健法第16条第2項)。手帳の様式は内閣府令で決まっており、こども家庭庁によれば2026年4月1日に新しい様式が施行されています。

外国語と日本語を並べた多言語版もあります。ただし、こども家庭庁のサイトで公開されている多言語版は英語、中国語、韓国語、ベトナム語、ポルトガル語、ネパール語、タガログ語、インドネシア語、スペイン語、タイ語の10言語で、ウクライナ語版もロシア語版もありません。子どもの予防接種の記録と母子健康手帳の関係は、ウクライナで受けた子どもの予防接種の記事で扱っています。

妊婦健診は、すべての市区町村が14回以上を助成

妊婦健康診査(妊婦健診)は、母体と胎児の状態を定期的に確かめるためのものです。こども家庭庁によれば、国の告示「妊婦に対する健康診査についての望ましい基準」は、妊娠初期から23週までは4週間に1回、24週から35週までは2週間に1回、36週から出産までは1週間に1回を推奨しており、出産までに14回程度になります。

費用は市区町村が公費で助成します。こども家庭庁が2026年4月8日に公表した調査(2025年4月1日時点)の結果は次のとおりです。

項目2025年4月1日時点
公費で助成する回数全国1,741のすべての市区町村が14回以上
妊婦1人あたりの公費負担額全国平均113,647円(金額を明示していない123市区町村を除く)
受診券の方式検査項目が書かれた「受診券方式」1,614市区町村(92.7%)、補助額が書かれた「補助券方式」など127市区町村(7.3%)
自己負担が出ないように公費負担額を設定していると回答1,141市区町村(65.5%)
住んでいる市区町村以外で受診した場合1,741のすべての市区町村が、医療機関との契約や償還払い(あとで払い戻す方法)などで公費負担あり
こども家庭庁「妊婦健康診査の公費負担の状況に係る調査結果について」(2026年4月8日公表)から作成。

健診で自己負担があるかどうか、受診券の使い方、別の市区町村に引っ越したときの扱いは、住む市区町村と医療機関によって違います。母子健康手帳を受け取るときに、あわせて聞いておくと確実です。

出産の費用と、出産育児一時金

『生活・就労ガイドブック』は、妊娠・出産は病気ではないため、基本的には健康保険が適用されないと説明しています。帝王切開などの手術の費用は例外として適用されます。その代わりにあるのが「出産育児一時金」です。

厚生労働省によれば、出産育児一時金は、公的医療保険の加入者が出産したときに、子ども1人につき原則50万円が加入先の保険者から支給される制度です。支給の条件は、出産した時点で日本の公的医療保険に入っていることと、妊娠4か月(85日)以上での出産であることの二つで、出産の方法や場所は問いません。支給額は2023年4月に、それまでの原則42万円から原則50万円に引き上げられました。ガイドブックは、妊娠22週に達していないなど産科医療補償制度の対象にならない出産では48万8千円になる、と書いています。

受け取り方は三つあります。

  • 直接支払制度:出産する施設が本人に代わって申請し、保険者から施設に直接支払われる。窓口で払うのは、費用の総額から一時金を差し引いた残り
  • 受取代理制度:本人が保険者に申請し、受け取りを施設に任せる
  • 償還払い:施設にいったん全額を払い、あとで本人が保険者に申請して受け取る

費用が一時金より少なかった場合は、差額を保険者に請求できます。申請の期限は出産日の翌日から2年以内です。直接支払制度を使えるかどうかは施設によって違うため、分娩を予約するときに確かめてください。厚生労働省のサイト「出産なび」(birth-navi.mhlw.go.jp)では、施設ごとのサービス内容と出産費用を調べられます。

一時金の前提は、公的医療保険に入っていることです。国民健康保険と勤め先の健康保険の加入については、日本の健康保険と年金の記事にまとめています。

働いている人、国民年金に入っている人

勤め先の健康保険に本人として入っている人が、出産のために仕事を休み、給与を受けられなかったときは、「出産手当金」を受けられます。ガイドブックによれば、対象は出産(予定)日以前42日(多胎妊娠は98日)から出産日後56日までの範囲で休んだ期間で、額は1日につき原則として賃金の3分の2に相当する額です。

国民年金の第1号被保険者(自営業や、勤め先の年金に入っていない人など)には、保険料の免除があります。日本年金機構によれば、出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間(多胎妊娠は3か月前から6か月間)の国民年金保険料が免除され、この期間は保険料を納めたものとして将来の老齢基礎年金に反映されます。届出は出産予定日の6か月前からでき、出産後でも出せます。窓口は住民登録をしている市区町村の国民年金の担当です。

2026年に決まった、出産の給付の見直し

出産の費用の仕組みは、これから変わることが決まっています。2026年5月29日に成立し、6月5日に公布された「健康保険法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第31号)は、出産に対する保険給付として「分娩費」と「出産時一時金」を新しく設けました。法律案要綱によれば、分娩費は標準的な分娩の費用を勘案して厚生労働大臣が定める額で、保険者が本人に代わって施設に支払うことができます。厚生労働省の法律の概要は、その目的を「出産に伴う妊婦の経済的負担を軽減するため」と説明しています。

施行は「公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日」とされています。2026年9月の時点で、出産の費用に使われているのは、上で説明した出産育児一時金です。新しい給付の施行後も、国に届け出た特例の施設で出産する場合は、当分の間、出産育児一時金の規定が使われます。同じ法律には、妊婦健診の望ましい基準と標準額を国が定める母子保健法の改正も含まれています。

生まれたら:14日以内の出生届と、30日以内の在留資格

ガイドブックは、日本で子どもが生まれたら父または母が出生の届出をしなければならない、と書いています。期限は、戸籍法第49条が定める14日以内です。同条は、出産に立ち会った医師や助産師などが作成する出生証明書を届書に添付するよう求めています。提出先は、子どもが生まれた場所か、届出人の所在地の市区町村です(ガイドブック)。

日本国籍を持たない子どもが生まれた日から60日を超えて日本にいる場合は、生まれた日から30日以内に、地方出入国在留管理官署で在留資格の取得を申請する必要があります(ガイドブック)。申請には出生届出書記載事項証明書など、出生を証明する書類が要るため、先に市区町村で出生届を済ませます。ガイドブックは、生まれてから60日を過ぎても在留資格を取得していないと、住民票が消され、国民健康保険や児童手当などの行政サービスを受けられないことがある、と注意しています。

父母とも外国籍の場合、日本で生まれても子どもは日本国籍を取得しません。本国への届出とパスポートの手続きは、父または母の国籍国の大使館に問い合わせるよう、ガイドブックは案内しています。ウクライナの国籍法第7条は、生まれた時点で父母の一方でもウクライナ国民であった人はウクライナ国民である、と定めています。駐日ウクライナ大使館の窓口と予約の方法は、大使館の記事で扱っています。

ウクライナ語で読める資料

出入国在留管理庁の『生活・就労ガイドブック』にはウクライナ語版があり、第4章「Пологи та виховання дітей」(出産と子育て)で、妊娠の届出、妊婦健診、出生届、本国への届出、出産育児一時金、出産手当金を読めます。ただしウクライナ語版は第7版で、2025年8月1日時点の制度にもとづく日本語版の第8版とは版が違います。病院に行く前の準備と医療通訳については病院の記事、相談先は相談窓口の記事にあります。

窓口で確かめること

  • 妊娠の届出に何を持っていくか。通訳を頼めるか。外国語の母子健康手帳があるか(市区町村)
  • 妊婦健診の受診券・補助券の使い方と、自己負担が出る健診があるか(市区町村・医療機関)
  • 妊婦のための支援給付の申請の時期と方法(市区町村)
  • 出産する施設で直接支払制度を使えるか。費用の見込みはいくらか(医療機関)
  • 出産育児一時金・出産手当金の申請先(加入している健康保険。国民健康保険なら市区町村)
  • 出生届と在留資格の申請に必要な書類(市区町村・地方出入国在留管理官署)

ここに書いた制度と数字は2026年9月に確認したものです。出産の給付は法律の改正で変わる予定があり、市区町村ごとの運用にも違いがあります。手続きの前に、それぞれの窓口の最新の案内で確かめてください。

出典・参考資料

  1. 母子保健法(昭和40年法律第141号)第13条、第15条、第16条(妊婦健診の望ましい基準、妊娠の届出、母子健康手帳の交付と記載)
    発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-09-24
  2. 戸籍法(昭和22年法律第224号)第49条(出生の届出は14日以内、出生証明書の添付)
    発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-09-24
  3. 生活・就労ガイドブック 日本語版 第8版(2025年8月1日時点。第1章2-4 在留資格の取得、第4章 出産・子育て:妊娠の届出で提供されるもの、妊婦健診の頻度、出生届、本国への届出、健康保険の適用、出産育児一時金50万円と48万8千円、受け取り方、出産手当金)
    発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-24
  4. 生活・就労ガイドブック ウクライナ語版 第7版(Розділ 4 Пологи та виховання дітей)
    発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-24
  5. 生活・就労ガイドブック 言語別一覧(ウクライナ語版の掲載)
    発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-24
  6. 外国の方が日本で妊娠したら(届出時の面談、外国語の母子健康手帳を窓口で尋ねること)
    発行:こども家庭庁 母子健康手帳情報支援サイト 確認日:2026-09-24
  7. 外国人の方へ(母子健康手帳 多言語版10か国語)
    発行:こども家庭庁 母子健康手帳情報支援サイト 確認日:2026-09-24
  8. 母子健康手帳について(府令様式 令和8年4月1日施行)
    発行:こども家庭庁 確認日:2026-09-24
  9. 妊婦健診に関する取組み(望ましい基準による頻度、14回程度、公費助成)
    発行:こども家庭庁 確認日:2026-09-24
  10. 妊婦健康診査の公費負担の状況に係る調査結果について(2026年4月8日公表、2025年4月1日時点:14回以上、平均113,647円、受診券方式1,614、自己負担が生じない設定1,141、居住地以外での受診)
    発行:こども家庭庁 確認日:2026-09-24
  11. 妊産婦への伴走型相談支援と経済的支援の一体的実施(妊婦のための支援給付。2025年度から法律に基づく制度)
    発行:こども家庭庁 確認日:2026-09-24
  12. 「妊婦のための支援給付」のご案内(リーフレット:5万円と子どもの人数×5万円、胎児心拍確認後の申請、申請時期、流産・死産も対象、クーポン)
    発行:こども家庭庁 確認日:2026-09-24
  13. 出産育児一時金等について(原則50万円、支給要件、三つの支払方法、申請期限2年、2023年4月の引き上げ、出産なび)
    発行:厚生労働省 確認日:2026-09-24
  14. 国民年金保険料の産前産後期間の免除制度(前月から4か月、多胎は6か月、届出時期と窓口。更新日2024年11月1日)
    発行:日本年金機構 確認日:2026-09-24
  15. 第221回国会(令和8年特別会)提出法律案(健康保険法等の一部を改正する法律案の概要・要綱:分娩費と出産時一時金の創設、特例分娩取扱施設の経過措置、母子保健法の改正、施行期日)
    発行:厚生労働省 確認日:2026-09-24
  16. 健康保険法等の一部を改正する法律案 審議経過(2026年5月29日参議院可決、6月5日公布、法律第31号)
    発行:衆議院 確認日:2026-09-24
  17. Закон України «Про громадянство України» від 18.01.2001 № 2235-III(第7条 出生による国籍取得)
    発行:Верховна Рада України(法令データベース) 確認日:2026-09-24

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