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人と暮らし/解説

ウクライナ最高峰ホヴェルラ、地図の2,061mと衛星測量の2,056m

ウクライナでいちばん高い山ホヴェルラは、事典や保護区の案内では標高2,061mとされています。一方、2018年に頂上を衛星測位で測ったポーランドの研究者は2,056.0m(誤差±0.5m)と発表し、19世紀以来の地図にも2,050.7〜2,058.0mの値がありました。山の位置、二つの保護区域、名前の書き方とあわせてまとめます。

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オリュカのひとこと

ウクライナでいちばん高い山は、どこにあるのでしょう。最初の見出しで確かめられます。

ホヴェルラ(Говерла)は、ウクライナでいちばん高い山です。ウクライナ国立科学アカデミーの『現代ウクライナ百科事典』(ЕСУ、2006年刊の第6巻)は、この山をウクライナ・カルパティアとウクライナ全体の最高峰とし、イヴァーノ=フランキーウシク州とザカルパッチャ州の境にあって、チョルノホラ山塊に属し、標高は2,061mだと書いています。2026年9月時点で、山を管理する保護区と国立自然公園の案内も2,061mを使っています。

ところが、2018年に頂上で衛星測位を行ったポーランドの研究者たちは、2,056.0m(誤差±0.5m)という値を発表しました。19世紀から1930年代の地図にも、2,050.7mから2,058.0mまで、いくつもの値が載っていました。山の位置と名前、数字の出どころを順に見ていきます。ウクライナの山地と川の全体像はウクライナの国土と水の記事、保護区の制度はウクライナの保護区の記事で扱っています。

チョルノホラの尾根の上

アルバータ大学カナダ・ウクライナ研究所(CIUS)の『Internet Encyclopedia of Ukraine』(IEU)によれば、チョルノホラはウクライナ・カルパティアで最も高い山群で、主稜はチョルナ・ティサ川から東のチョルヌィイ・チェレモシュ川まで約40km続きます。尾根の大部分はプルト川とティサ川の分水嶺で、何世紀ものあいだ、ガリツィアとザカルパッチャがそれぞれ属した国の境でもあった、と同じ項目は書いています。

ホヴェルラを測った研究者たちの論文(2020年)も、チョルノホラの尾根はかつてガリツィア・ロドメリア王国の境、のちにポーランドとチェコスロバキアの国境で、いまはザカルパッチャ州とイヴァーノ=フランキーウシク州の境だと説明しています。同じ論文によれば、ウクライナで標高2,000mを超える山は六つで、ホヴェルラ、ブレベネスクル、ピプ・イヴァン、ペトロス、レブラ、フティン・トムナティクのすべてがチョルノホラにあります。

ЕСУは、ホヴェルラを円錐形の山とし、南の斜面のほうが急だと書いています。斜面には更新世の氷河が残したカール(圏谷)やモレーンがあり、下の方はトウヒの森、その上は亜高山帯と高山帯の草地や低木の茂みです。東の斜面のふもとにはプルト川の源流の一つと滝があります。IEUも、プルト川のもとになる泉がこの山にあると書いています。ウクライナの国の百科事典『大ウクライナ百科事典』(ВУЕ)によれば、プルト川はイヴァーノ=フランキーウシク州とチェルニウツィー州、モルドバとルーマニアを流れてドナウ川に注ぐ、長さ953kmの川です。

IEUのチョルノホラの項は、この山群のふもとに住む人々をフツルとし、放牧の季節は5か月に及ぶと書いています。フツルについてはカルパティアの三つの集団の記事、山の草地での放牧はフツルの放牧の記事にまとめています。

山頂をはさむ、二つの保護区域

IEUは、ホヴェルラがカルパティア生物圏保護区とカルパティア国立自然公園の境にあると書いています。IEUの国立自然公園の項も、公園はウクライナで最初の国立公園として1980年に設けられ、イヴァーノ=フランキーウシク州にあって、ウクライナの最高峰ホヴェルラを生物圏保護区と分け合っている、と説明しています。

公園は公式サイトで、設立の根拠を1980年6月3日のソ連ウクライナ閣僚会議の決定第376号と2010年3月23日の大統領令第215号(区域の拡大)とし、公園がチョルノホラの分水嶺より北の、標高500mから2,061mの範囲にあると書いています。ЕСУは、ホヴェルラを国立自然公園の保護区域(заповідна зона)の中にあるとしています。山頂の南側、ザカルパッチャ州の側では、カルパティア生物圏保護区がホヴェルラを案内する場所の一つとして紹介しています。チョルノホラの森の一部は、ヨーロッパのブナ林の世界遺産の構成資産にもなっています(ブナ林の世界遺産の記事)。

オリュカのひとこと

標高の数字は、資料によって違うようです。この見出しで見比べられます。

2,061mと、測り直した2,056m

ポーランドのAGH科学技術大学(クラクフ)の測地学の研究者4人は、2018年9月13日にホヴェルラとピプ・イヴァンの頂上で測量を行い、2020年6月11日、タイの学術誌『Maejo International Journal of Science and Technology』に結果を発表しました。大学の広報によれば、この仕事はイヴァーノ=フランキーウシクのプルィカルパッチャ国立大学との協力で行われました。

論文によれば、研究者たちは頂上のすぐそばの見通しのよい地点に衛星測位(GNSS)の受信機を置いて5時間観測し、そこから頂上までの高さの差を水準測量で測りました。ホヴェルラの頂上としたのは、刻みの入った十字のあるコンクリートの標識です。頂上にあるコンクリートの記念碑は、以前の三角点でもあったと論文は書いています。衛星測位で得られるのは地球を近似した楕円体からの高さなので、ウクライナで法的に使われている「正規高」の体系に合わせ、世界の重力場のモデル(EGM2008)で海面からの高さに直しています。

結果は、ホヴェルラが2,056.0m(±0.5m)、ピプ・イヴァンが2,019.4m(±0.5m)でした。論文は、どちらも「公式の標高より数メートル低い」と書いています。頂上には記念の標識がいくつもあり(ЕСУ)、カルパティア生物圏保護区によれば、ウクライナのすべての州の土を納めたカプセルを入れた板も置かれています。

標高は、資料によってどう違うのか

論文は、過去の地図と地名辞典に載ったホヴェルラの高さも集めています。それらと、事典や保護区の値を年代順に並べると次のとおりです。

年資料ホヴェルラの標高
1855〜1933年オーストリア=ハンガリーの地図(1855〜1914年)、ワルシャワで刊行された地名辞典『ポーランド王国地理辞典』(1880年)、ポーランドの地図(1930〜1933年)2,050.7〜2,058.0mのあいだで、資料によって違う。地名辞典にあるフィートの値(2,276.0mに相当)は、論文が「おそらく誤り」とする
1988年IEU(紙の『Encyclopedia of Ukraine』第2巻の再録)2,061m
2006年ЕСУ(第6巻)2,061m
2018年の測量(2020年発表)AGH科学技術大学の研究者の論文2,056.0m(±0.5m)
2026年9月時点ВУЕ、カルパティア生物圏保護区、カルパティア国立自然公園の案内2,061m
1855〜1933年の値は、論文の表1と本文による(表1の数字は論文の本文で「2,050.7〜2,058.0m」とまとめられている)。個々の地図の原本とは照合していない。ほかは各資料の記載(2026年9月27日確認)。

論文は、古い値どうしの違いを、海面の高さの基準の取り方、測量の精度、ウィーン尋やフィートからメートルへの換算の仕方によるものとしています。また、昔の測量では、三角点の塔や頂上の記念碑の上端が測られた可能性もあると書いています。AGH科学技術大学の広報記事は、オーストリアの領域では海面の基準をアドリア海のトリエステに置いていたと説明しています。

ただし、同じ大学の2021年の広報記事は、ホヴェルラの測定値を「2,055.5m」と紹介していて、論文の2,056.0mと一致しません。この記事では論文の値を使っています。事典と保護区の案内は、2026年9月時点でも2,061mのままです。

  1. オリュカ

    山の名前の書き方も、資料によって違うのかな。

  2. タブリ

    どの資料がどちらの書き方か、この見出しの下の表で見比べられるよ。

  3. スウネ

    名前の由来が一つの説明によることは、記事の終わりの「この記事で確認できていないこと」にあるよ。

「ホヴェルリャ」と「ホヴェルラ」

山の名前の書き方も一つではありません。IEUは項目の見出しを「Hoverlia」とし、ウクライナ語を「Говерля」(ホヴェルリャ)と書いています。1988年に紙で出た項目の再録です。いっぽう、2006年のЕСУ、ВУЕ、保護区と国立自然公園は「Говерла」(ホヴェルラ)と書いています。

書き方使われている例
Говерля(ホヴェルリャ)1939年にフストで1号だけ出た文芸の月刊誌『ホヴェルリャ』、1950年からニューヨークで本を出した出版社・書店「ホヴェルリャ」(いずれもЕСУの項目による)、IEUの見出し
Говерла(ホヴェルラ)ЕСУ(2006年)、ВУЕ、カルパティア生物圏保護区、カルパティア国立自然公園
HoverlaAGH科学技術大学の研究者の論文(英語)、ЕСУの英語の書誌
HowerlaAGH科学技術大学の広報記事(ポーランド語)
ЕСУ「Говерла」「Говерля」、IEU「Hoverlia」、各機関の公表による(2026年9月27日確認)。カナは本記事の表記。

名前の由来について、カルパティア生物圏保護区は、ハンガリー語の「hóvár」(雪の山)から来ていると説明しています。ЕСУとIEUは由来に触れていません。この記事の山名は、Ukrainaviのほかの記事にそろえて「ホヴェルラ」と書いています。

出典と記事の記録出典 11件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. Hoverlia見出しのウクライナ語「Говерля」、ウクライナの最高峰2,061m、チョルノホラ山群、プルト川の泉、生物圏保護区と国立自然公園の境。紙の第2巻〈1988年〉の再録
    発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-27
  2. Chornohora主稜約40km、プルト川とティサ川の分水嶺、ガリツィアとザカルパッチャの国の境、ピプ・イヴァンなどの標高、フツル、放牧の5か月。2008年更新
    発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-27
  3. Carpathian National Nature Park1980年設立、ウクライナで最初の国立公園、イヴァーノ=フランキーウシク州、ホヴェルラを生物圏保護区と共有。2008年更新
    発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-27
  4. Говерла執筆 О. О. Кагало。二つの州の境、チョルノホラ、2061m、円錐形、氷河地形、植生、プルト川の源流の一つと滝、記念の標識、国立自然公園の保護区域。第6巻、2006年12月
    発行:Енциклопедія Сучасної України(ウクライナ国立科学アカデミー百科事典研究所) 確認日:2026-09-27
  5. «Говерля»1939年にフストで1号だけ出た文芸の月刊誌
    発行:Енциклопедія Сучасної України 確認日:2026-09-27
  6. «Говерля»1950年からニューヨークの出版社・書店
    発行:Енциклопедія Сучасної України 確認日:2026-09-27
  7. Говерла(ウクライナ・カルパティアとウクライナの最高点、2061m)・Прут953km、ドナウ川の左の支流
    発行:Велика українська енциклопедія(国立学術機関「百科事典出版所」) 確認日:2026-09-27
  8. Говерла2061m、チョルノホラ、ハンガリー語 hóvár〈雪の山〉からという名前の説明、すべての州の土を納めたカプセルの板
    発行:Карпатський біосферний заповідник 確認日:2026-09-27
  9. Відомості з положення про Карпатський національний природний парк1980年6月3日の閣僚会議決定第376号、2010年3月23日の大統領令第215号、分水嶺より北の標高500〜2061m
    発行:Карпатський національний природний парк 確認日:2026-09-27
  10. J. Kudrys, M. Busko, K. Kozioł, K. Maciuk「Determination of normal height of Chornohora summits by precise modern measurement technique」Maejo Int. J. Sci. Technol. 2020, 14(02), 156-1652018年9月13日のGNSS測量、ホヴェルラ2,056.0±0.5m、ピプ・イヴァン2,019.4m、過去の地図の値2,050.7〜2,058.0m、国境と州境の説明、2,000mを超える六つの山、正規高とEGM2008
    発行:Maejo University(タイ) 確認日:2026-09-27
  11. Geodeci z AGH weryfikują wysokość szczytów. Dlaczego wartości rosną lub maleją?2021年10月8日。プルィカルパッチャ国立大学との協力、「2055,5 m」の記載、オーストリア領の海面の基準トリエステ
    発行:AGH科学技術大学(Akademia Górniczo-Hutnicza) 確認日:2026-09-27

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