国内避難民への住居給付、延長の上限は半年×2回から6回へ
ウクライナは2022年3月から、国内避難民に月2,000フリヴニャ(障害のある人と子どもは3,000フリヴニャ)の住居給付を払っています。戒厳令のあいだ毎月という形は2023年8月に半年ごとの給付に変わり、延長の上限は2024年8月の2回から2026年9月の6回まで引き上げられました。国外に30日を超えて出ると止まる規定もあります。
オリュカのひとこと
延長の上限「2回」と「6回」は、それぞれいつの決定の数字でしょうか。改正の日付と並べて読みましょう。
ロシアによるウクライナへの全面侵攻のあと、国内で住まいを離れた人(国内避難民)に、国が毎月お金を払う制度があります。正式な名前は「国内避難民への住居給付」(допомога на проживання внутрішньо переміщеним особам)。根拠は2022年3月20日の閣僚会議決定第332号で、2026年9月3日の第1087号まで、36本の決定で改正されてきました。この記事は、ウクライナ最高会議の法令データベースに載っている決定の本文(2026年9月23日時点の版)を2026年9月に読んだ内容です。
国内避難民は、国境を越えて避難した「難民」や「避難者」とは別の言葉です。言葉の違いは難民、国内避難民、避難者 — 同じ意味で使わないためにで扱っています。
2022年3月、戒厳令が続くかぎり毎月
最初の決定第332号は、給付を「戒厳令の期間と、その終了・解除のあと1か月」のあいだ、毎月支払うと定めていました。額は一人あたりで、障害のある人と子どもは月3,000フリヴニャ、それ以外の人は月2,000フリヴニャです。申請は、行政サービスのポータル「Дія」(アプリを含む)で作る申請書で行うとされていました。決定は、この給付のために社会政策省へ100億フリヴニャ(原文は「10000 млн. гривень」)を国の予備費から充てることも決めています。
2014年からの国内避難民に払われていた月々の給付を2022年3月1日の時点で受けていた人には、この新しい給付が申請なしで割り当てられる、という規定もありました。
2023年8月から、半年ごとの給付に
2023年7月11日の決定第709号は、支給の手順を定めた「手続き」(Порядок)を全面的に書き直しました。現在の本文では、2023年8月1日から、初めて申請した人への給付は6か月の期間を単位に割り当てられます。2023年11月1日からは、家族を単位に申請し、家族の一人がまとめて受け取る形も定められました。額は、障害のある人と子どもが月3,000フリヴニャ、それ以外が月2,000フリヴニャのままです。
同じ手続きの第7項は、初めて申請する人について、申請前の3か月間または受給中に次のようなことがあれば給付しない、と定めています(主なものだけを挙げます)。
- 登録が必要な車(製造から5年未満。原付・トレーラーなどは除く)を買った
- 10万フリヴニャを超える土地・住宅・有価証券などの購入や、一度に10万フリヴニャを超える支払いをした(医療・教育などは除く)
- 預金口座に合計10万フリヴニャを超える額がある
- 合計10万フリヴニャを超える外貨や金属を買った
- 戦闘・占領の地域の一覧に入っていない場所に、住める家を持っている(床面積が一人あたり13.65平方メートル未満の場合などは除く)
- 自分の持ち家を人に貸している
働ける年齢で仕事をしていない人は、給付を割り当てられてから3か月以内に、就職する、個人事業を始める、雇用センターに失業者として登録する、などの手を打つことが求められます(第5-1項。子どもの世話をしている人、障害のある人などは除く)。
2024年3月からの延長の条件
2024年1月26日の決定第94号で、延長の仕組みが変わりました。同じ決定は、2024年3月1日以降の延長の申請を2月1日から受け付け、2〜4月に本人が申請した人には3月1日から支給するとしています。
現在の本文では、延長のしかたは大きく二つに分かれます。
- 申請なしで自動的に延長される人(第13-1項):年金額が「働けない人のための最低生活費」の4倍以下の年金受給者、障害等級1級・2級の人、障害のある18歳未満の子ども、重い病気の子ども、孤児など
- 申請して延長を受ける家族(第13-2項):家族の一人あたりの月平均の収入が、過去3か月で同じ最低生活費の4倍を超えないことに加え、子どものいる家族で働ける人が働いている、働けない人だけの家族である、などの条件のどれかに当てはまる場合
延長には回数の上限があります。第13項は、延長は非常事態または戒厳令の期間中に限り、半年の期間を何回までとする、と定めています。この上限は、決定が改正されるたびに引き上げられてきました。
| 閣僚会議決定 | 延長の上限 |
|---|---|
| 第989号(2024年8月30日) | 半年×2回 |
| 第1507号(2024年12月27日) | 半年×3回 |
| 第1033号(2025年8月26日) | 半年×4回 |
| 第390号(2026年3月18日) | 半年×5回 |
| 第1087号(2026年9月3日。2026年9月1日から適用) | 半年×6回 |
オリュカのひとこと
国外に30日を超えて出ると止まる、という規定。日数はいつから数えるのでしょうか。
国外に出ているときは止まる
手続きの第6項によれば、受給中の人が国外に続けて30日を超えて、または半年の期間の中で合計60日を超えて滞在すると、その半年の期間の終わりまで給付が止まります。出張、子どもの療養、研修、学業、治療、家族の病気や死亡など、書類で示せる理由があると判断された場合は、この日数が60日と90日に延びます。国外に移り住んだ場合や、もとの住まいに戻った場合は、窓口に届け出る義務があります。
国外にいた人が初めてこの給付を申請するときは、ウクライナに戻ってから15営業日以上たってから、本人が申請することになっています(第8項)。
申請の窓口は年金基金へ
2025年6月25日の決定第765号で、手続きの中の「社会保護機関」という言葉は「ウクライナ年金基金の機関」に置き換えられました。現在の本文では、申請書は年金基金の機関、市町村の担当者、行政サービスセンター(ЦНАП)の担当者のいずれかに、国内避難民として登録した場所で出します。納税者番号を持つ人は、技術的に可能であれば Дія で電子申請もできる、とされています。Дія については「Дія」の電子パスポート、国境では使えず国外での法的効力もないで扱っています。
制度は、2022年の「戒厳令のあいだ毎月、全員に同じ額」から、半年ごとに条件を確かめて払う形へと変わってきました。額は2022年から変わっていない一方、延長できる回数の上限は、2024年8月の2回から2026年9月の6回まで引き上げられています。この給付を受けられるかどうかは、住んでいた地域、家族の構成、収入や財産によって変わります。個別の扱いは年金基金の窓口で確かめる必要があります。
出典・参考資料
- Постанова КМУ від 20.03.2022 № 332「Деякі питання виплати допомоги на проживання внутрішньо переміщеним особам」(現行の本文。支給額、半年の期間、第5-1・6・7・8・13・13-1・13-2項、改正決定の一覧)
発行:Верховна Рада України(ウクライナ最高会議)法令データベース 確認日:2026-09-24 - 同上 2022年3月20日の当初の版(戒厳令の期間と終了後1か月の毎月支給、額、Дія での申請、100億フリヴニャの予算)
発行:Верховна Рада України 法令データベース 確認日:2026-09-24 - Постанова КМУ від 11.07.2023 № 709「Деякі питання підтримки внутрішньо переміщених осіб」(手続きの全面改定)
発行:Верховна Рада України 法令データベース 確認日:2026-09-24 - Постанова КМУ від 26.01.2024 № 94(2024年3月1日以降の延長の申請と支給開始)
発行:Верховна Рада України 法令データベース 確認日:2026-09-24 - Постанова КМУ від 30.08.2024 № 989(延長の上限「два шестимісячні періоди」)
発行:Верховна Рада України 法令データベース 確認日:2026-09-24 - Постанова КМУ від 27.12.2024 № 1507(上限を「два」から「три」へ)
発行:Верховна Рада України 法令データベース 確認日:2026-09-24 - Постанова КМУ від 26.08.2025 № 1033(上限を「три」から「чотири」へ)
発行:Верховна Рада України 法令データベース 確認日:2026-09-24 - Постанова КМУ від 18.03.2026 № 390(上限を「чотири」から「п’ять」へ)
発行:Верховна Рада України 法令データベース 確認日:2026-09-24 - Постанова КМУ від 03.09.2026 № 1087(上限を「п’ять」から「шість」へ。2026年9月1日から適用)
発行:Верховна Рада України 法令データベース 確認日:2026-09-24
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