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人と暮らし/解説

そばは麺ではなく粥に。世界3位の産地ウクライナのフレチカ

ウクライナ語で「フレチカ」と呼ばれるそばの実は、麺ではなく粥にして食べる穀物です。事典が挙げる食べ方、「ギリシャの」に結びつく名前の由来、そしてFAOの統計で2021年から4年続けて世界3位だった生産量を、年ごとの数字で並べます。

画像:Ukrainavi

オリュカのひとこと

日本では麺になるそばを、ウクライナではどう食べるのでしょう。粥のほかの使い道も最初の節に並んでいます。

ウクライナ語で「フレチカ」(гречка)と呼ばれるそばの実は、ウクライナの食卓でいちばんよく食べられる穀物の一つです。ただし日本のように粉を打って麺にするのではなく、実をそのまま煮て粥(カーシャ)にします。国連食糧農業機関(FAO)の統計では、ウクライナは2021年から2024年まで4年続けて、そばの生産量で世界3位でした。

料理の全体像はウクライナの食卓──ボルシチのユネスコ記載と、地域で変わる料理で扱っています。ここでは、そばという作物と食べ方、名前、生産量に絞ります。

麺ではなく、粒のまま煮る

カナダのアルバータ大学カナダ・ウクライナ研究所(CIUS)が編む『Internet Encyclopedia of Ukraine』(IEU)の「Traditional foods」の項は、ウクライナで最もよく食べられる穀物としてそば(カーシャ)、キビ、そしてフツーリシチナとザカルパッチャのトウモロコシ粉を挙げています。同じ項は、麦や大麦、そば、キビ、オート麦、トウモロコシの挽き割りを煮たり焼いたりした料理を「古いウクライナの食べもの」と説明しています。

同項によれば、そばは粥のほかにも次のように使われてきました。

  • レミシカ(лемішка):そば粉を練った濃い粥
  • サラマハ(саламаха):そば粉かライ麦の粉を水で煮た薄い粥
  • クヴァシャ(кваша):そば粉かライ麦の粉を発酵させた甘い料理
  • ピリシュキ(小さなパイ)、ヴァレーヌィキ(包んでゆでる料理)の具
  • ホルブツィ(キャベツ巻き)の中身。米や肉の代わりに、そばやキビの挽き割りを包む
  • ゆでたり焼いたりした肉の付け合わせ

植物としては、そばは麦や米と同じイネ科ではありません。IEUの「Grains」の項は、小麦・ライ麦・大麦・米・オート麦・トウモロコシがイネ科に属するのに対し、そばはタデ科に属すると書いています。日本で麺にするそばと同じ仲間の植物です。

11世紀にアジアから来た、と事典は書く

IEUの「Traditional foods」の項は、ウクライナの地でライ麦がおよそ2,000年前に伝わり、そのあと11世紀にそばがアジアから入った、と説明しています。どの経路で伝わったかまでは書いていません。

「ギリシャの」に結びつく名前

ウクライナ国立科学アカデミーのポテブニャ記念言語学研究所が編んだ『ウクライナ語語源辞典』(Етимологічний словник української мови)の「гречка」の項は、この語を「грек」(ギリシャ人)と結びつけ、ギリシャ人を通じて東スラヴの人々のもとに入った植物の名前だと説明しています。同じ項によれば、ポーランド語の hreczka とスロヴァキア語の hrečka はウクライナ語から入った語です。

辞書が示しているのは語の成り立ちの説明で、そばが実際にギリシャから運ばれたことを示す記録ではありません。上で見たIEUの「アジアから」という説明とは、別の問いへの答えとして読む必要があります。

生産量は年によって2倍以上ちがう

FAOの統計データベース FAOSTAT によれば、ウクライナのそばの生産量は、2015年から2024年までの10年間で8万5,020トン(2019年)から21万720トン(2023年)までの幅がありました。収穫面積も6万9,200ヘクタールから18万5,300ヘクタールまで大きく動いています。

年生産量(トン)収穫面積(ヘクタール)1ヘクタールあたり(トン)
2015128,100127,7001.00
2016176,430153,7001.15
2017180,440185,3000.97
2018137,010113,3001.21
201985,02069,2001.23
202097,64084,1001.16
2021105,78091,9001.15
2022147,690121,0001.22
2023210,720147,9001.42
2024113,65090,3001.26
出典:FAO「FAOSTAT 作物・畜産物の生産」(2026年9月24日に取得した一括データ。品目「Buckwheat」)。ウクライナの値にはすべて「公式の数値」の記号が付いている。1ヘクタールあたりの収量はFAOSTATの値(kg/ha)をトンに直し、小数第3位を四捨五入した。

2022年以降の値には、ロシアによる全面侵攻のあとの占領地域と戦闘地域の一部が含まれていません。国家統計局の集計の範囲が変わった経緯は、小麦の収穫量も面積も3割減。数字で見るウクライナの三大作物で説明しています。

オリュカのひとこと

「世界で3番目」は、どんな条件つきの順位なのでしょう。推計値の混じり方を表の注記で確かめましょう。

世界では3位、1位はロシア

同じFAOSTATで国別の生産量を並べると、2021年から2024年まで、1位ロシア、2位中国(本土)、3位ウクライナの順は変わりません。世界の合計に占めるウクライナの割合は、2023年が約9.8%で、ほかの3年は6%前後でした。

年1位 ロシア2位 中国(本土)3位 ウクライナ世界の合計ウクライナの割合
2021919,147502,369105,7801,866,6005.7%
20221,222,382506,440147,6902,245,7256.6%
20231,079,971504,266210,7202,149,8679.8%
2024979,962504,358113,6501,970,2305.8%
単位はトン(1トン未満を四捨五入)。出典:FAOSTAT(同上)。中国と世界の合計の多くの年、ロシアの2023・2024年の値は、各国の公式の数値ではなくFAOの推計・補完値。割合はこの記事の計算。

順位は、各国の統計のつけ方にも左右されます。この表の中で公式の数値が4年とも並んでいるのはウクライナだけで、中国と世界の合計にはFAOの推計が含まれます。「世界で3番目」は、この条件つきの順位です。

出典と記事の記録出典 4件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. Traditional foods最もよく食べられる穀物、11世紀にアジアから伝来、レミシカ・サラマハ・クヴァシャ、具や付け合わせ
    発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-24
  2. Grainsそばはタデ科。Bohdan Krawchenko 執筆、初出は Encyclopedia of Ukraine 第2巻、1988年
    発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-24
  3. Етимологічний словник української мови「гречка」грек との関係、ポーランド語・スロヴァキア語への借用
    発行:ウクライナ国立科学アカデミー ポテブニャ記念言語学研究所(Goroh の電子版で閲覧) 確認日:2026-09-24
  4. FAOSTAT Production: Crops and livestock productsBuckwheat。ウクライナの生産量・収穫面積・単収2015〜2024年、国別生産量と世界合計2021〜2024年、フラグ
    発行:国連食糧農業機関(FAO) 確認日:2026-09-24

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