第三章 白いままの棚
新しい余白で、三人は消えた道とよく似た折り方を見つけた。前のページの道がこちらへ続いていたわけではない。案内所はページごとに新しく開く。ただ、一本を裏へ畳む癖は、どこでも同じくらいまっすぐだった。
白い札には「その先は?」とある。札の先を決める動きはまだない。オリュカは翼を出しかけ、タブリがタブを置く音で止めた。
「先を指す前に、端を見る」
「うん」
ヨリクネが脇の折り道をたどり、二人を低い棚の奥へ導いた。白い面が何段も重なり、どこまでが棚でどこからが余白なのか分からない。小さな灯が、そこで静かに浮かんでいた。
淡いラベンダー色の紙の内側に、琥珀色の光がある。光は書かれていない面を照らしたが、面に文字は浮かばなかった。
「こんばんは」とオリュカが言う。案内所に時刻はないが、その光には、誰かに出会ったときの挨拶が似合うと思った。
「こんにちは、でもいい」と灯は答えた。
ヨリクネが思わず笑い、灯の光が一度だけやわらかく強まる。
「スウネ。ここを見ていたの」

「ここ、道がない?」ヨリクネの尾が白い棚へ伸びる。「この先へ曲がれば、さっき見えなくなったみたいな小道に――」
尾の先は止まった。棚の表には折り目がない。紙の重なりをくぐっても、その先へつながる縁は見つからない。ヨリクネはもう一度角度を変えたが、同じ白い面に戻った。
「ない、のかな」
スウネはすぐに答えず、尾の先ではなく、その少し手前の境目を照らした。
「ここには、まだ置けない」
ヨリクネの尾が一折り畳まれる。
「入口の札?」
「うん。線も」
オリュカは空白の奥を見た。何も書かれていない場所の向こうに、たしかに何かが隠れているような気がする。そう言いたくなるのは、白い面が広すぎるからかもしれない。スウネの光は境目を見せるだけで、答えを持ってこない。
「じゃあ、ここは白いままで?」
「見えるままで」とスウネが言った。

タブリが棚の前へ進み、甲羅の一枚を起こす。いつものように印を置こうとして、寸前で足を止めた。ここは出発点でも帰る角でもない。
「何も置かない場所も、覚えられる?」
「形なら」とタブリは言う。「白い棚の手前で、止まった形」
オリュカは翼を畳んで、スウネの隣に立った。ヨリクネも尾を巻き戻す。問いの札は入口で静かにしている。四人は同じ空白を見ていたが、誰もその中身を言い当てようとはしなかった。
しばらくして、ページの外側からわずかな動きが来た。札が、空白の棚ではなく、すでに見えている見出しの方へ傾く。オリュカはタブリの印を確かめてからしおりを延ばした。ヨリクネはもう一つの入口をあとで戻れる場所に残す。スウネは白い棚が視界から消えない程度に光を落とした。
読まれる場所へ案内が渡ると、四人は退いた。白い札が畳まれ、棚の端がひとつずつ重なる。その最後の一瞬、スウネの光がきわめて細い折り線を拾った。
棚の端だけが、定規を当てたように揃っている。
「まっすぐ」とオリュカがつぶやいた。
「きれいな線」とタブリが言う。
ヨリクネは耳を立てた。「誰が折ったのかな」
スウネは答えなかった。わからないものに名前を付ける前に、灯の内側へ小さな光を集めていた。
目次(全8章)
このお話は、Ukrainaviの案内役オリュカと仲間たちが登場する創作の物語です。実在するウクライナの場所や出来事を描いたものではありません。挿絵は、生成画像をもとにした創作イラストです。