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ウクライナの人・文化・社会・未来を、日本と世界につなぐ

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第四章 まっすぐの友だち

次の案内所には、遠くの見出しまで続く長い回廊があった。折り段が幾重にも重なり、入口からは途中の縁が見えない。白い札にあるのは、いつものように短い問いだけだった。

「どこから読もう?」

オリュカがしおりを伸ばそうとしても、先は途中の折り段で揺れた。タブリは入口の右にある短い折り返しへ青い印を置き、一度そこまで戻れることを足で確かめた。ヨリクネは脇へ回れそうな道を二つ見つけた。どれも行ける場所にはつながる。けれど入口から眺めると、初めの一歩がわかりづらい。

「ここを、揃えればいい」

背の高い紙の定規が回廊の向こうに立っていた。濃いスレート色の面と銅色の細い縁。細い瞳は四人ではなく、折り段の段差を見ている。

「だれ?」とオリュカ。

「シメロ」

シメロは長い裾を一度だけ動かし、重なった紙の端を同じ向きへ揃えた。折り段の間に、すっと一本の見通しが通る。離れていた見出しが近づいたように見えた。実際には見出しの場所は変わっていない。見える道だけが整ったのだ。

オリュカは思わず前へ出た。しおりがためらわずに伸びる。これなら最初の一歩を示せる。

「すごい。ここまで、一目で見える」

シメロが整えたまっすぐな紙の道を、オリュカが見つめる創作イラスト

「入口は、一つで十分だ」

シメロの声は静かだった。自分の仕事を誇る顔でも、四人を見下ろす顔でもない。迷っている札の前へ、通れる幅を作ったことを確かめている顔だった。

タブリが足元を見る。「帰りの角は?」

「あとから整える」

「この小さい曲がり角は?」とヨリクネ。

「今は、曲がらなくても着く」

スウネが白い棚の方を振り向いた。揃った面の裏側に、その輪郭だけが細く残っている。何か言おうとして、光が内側へ集まる。しかしオリュカが明るく振り返ったので、声はまだ出なかった。

「ほら、歩ける。試してみよう」

白い札が外側の動きに合わせて、見出しの方へわずかに傾いた。オリュカはそれを見てから先へ進んだ。タブリの甲羅がつける小さな音、ヨリクネの蛇腹の擦れる音、スウネの光が遅れてついてくる気配。シメロの道は本当に歩きやすかった。折り段ごとに立ち止まらず、見出しの手前まで一息で着く。

「ありがとう」とオリュカは言った。「これなら、最初の場所まで迷わない」

シメロは短くうなずいた。その姿にオリュカは、最初の日の自分を少し見た。誰かが立ち止まったら、早く入口を示してあげたい。その気持ちを、シメロも知っている。

ところが折り返そうとしたとき、タブリの声が下から届いた。

「ここに置いた印は?」

入口近くの平らな面に、青いタブは見えない。タブリは甲羅の一枚を伸ばしたが、端は裏側へ畳まれて指が入らなかった。

「下にある」とシメロは言った。

まっすぐな紙の道を整えながら、帰りの青い印を端へ折るシメロの創作イラスト

「下には、手が入らない」

「着いてから整える」

オリュカは来た方向を見た。入口は見えている。黄色いしおりも一直線に伸びたままだ。だが、踏み出すと紙の薄い端が反対向きに閉じる。行きには広かった幅が、帰りには足先を受け止めない。

「ねえ、ここから戻れる?」

シメロの垂直な線が、わずかに軋む。

「入口は、見えている」

「見える。けど、足が乗らない」

ヨリクネが尾を脇へ伸ばす。道の折り目は紙の裏に残っている。しかし尾を通すと回廊が狭まり、オリュカもタブリも動けなくなった。

「ごめん。ここで広げると、みんなの足場をふさぐ」

ヨリクネは自分で尾を畳んだ。三つの道を見せすぎた日の軽さが、もう声にはない。

スウネの光が、畳まれた白い棚の端をなぞる。

「あの棚……」

紙の縁がぴんと張り、声の続きを遮るような小さな音を立てた。シメロが最後の段差を揃えたのだ。スウネは消えていない。ただ、見えるのは裏側に残った淡い光だけだった。

オリュカはその光を見つめた。初めに「試してみよう」と言ったのは自分だ。速い道を選んだ楽しさも、この足場のなさも、シメロ一人に預けることはできない。

「先に進もうって、言った」

「進めた」とシメロ。

「うん。すごく歩きやすかった。だから、ここから戻る道も見たい」

シメロは細い瞳を入口へ向けた。すぐには答えない。

「今、開けば、一本ではなくなる」

「一本で足りると思ったことがある」とオリュカは言った。「着くまで、本当に足りた」

その先の言葉を探しているうちに、タブリが裏の端へ甲羅のタブを差し込んだ。届かない。けれど離さない。オリュカは翼を差し出しかけ、タブリの足元を見て、そこで止めた。勢いで引けば、また別の角を散らしてしまう。

「紙は、そこにある」とタブリ。

「今は必要ない」とシメロは言った。声が大きくなることはない。それだけに、畳まれた縁は少しも動かなかった。

オリュカは、まっすぐな線の上に立った。遠くの入口は、たしかに美しく見える。白い棚は折り重なった面の奥にあり、ヨリクネが見つけた道も、タブリの青い角も、すべて紙のどこかにはある。

あるのに、今いる場所からは使えない。

オリュカのしおりの先が、細く揺れた。帰るためには、まずどこへ足を置くのかを、みんなで確かめなければならなかった。

目次(全8章)
  1. 第一章行くときは、一本で
  2. 第二章三つの小道
  3. 第三章白いままの棚
  4. 第四章まっすぐの友だち
  5. 第五章もどれない地図
  6. 第六章ひらきすぎた入口
  7. 第七章線のとなりの白
  8. 第八章次のページへ

このお話は、Ukrainaviの案内役オリュカと仲間たちが登場する創作の物語です。実在するウクライナの場所や出来事を描いたものではありません。挿絵は、生成画像をもとにした創作イラストです。