第六章 ひらきすぎた入口
次に開いた案内所でも、ヨリクネは脇道を見つけた。見出しの回廊から注記の縁へ、そこからもう一つの入口へ。どれも、もとからその紙にある折り目だった。
「一つに隠されたくないから、全部見せる」
蛇腹の尾がぱっと開く。アプリコット色の細い影が三方へ伸び、オリュカは一番近い枝へ、タブリは帰りの印を置ける枝へ向かった。スウネは白い棚の手前に留まる。互いの顔が、紙の山に隠れた。
「オリュカ、そこからだと入口が見えない!」
タブリの声は届いたが、どちらから来た声なのか分からなかった。ヨリクネは急いで尾をもう一段開きかけ、やめた。道を増やしても、遠ざかった仲間を近づけることにはならない。
「どこまで下見する?」
ヨリクネはオリュカへ聞いた。前なら、答えを待たずに三本の面白さを話していただろう。
尾を畳んでいる間も、二本の枝が気になって仕方がなかった。片方には細い注記の縁が続き、もう片方には高い棚の影がある。すてきなものを隠したくない。その気持ちは消えない。だがオリュカの声が、紙の山の向こうで何度も同じ位置から聞こえる。まずそこへ戻れる道をつくろう、とヨリクネは思った。
「注記の縁の手前まで。そこから先は、札を待とう」
「分かった。一緒に行こう」
尾の一本だけが開いたままになる。残る二本は畳み、後で見つけられる位置へ端を少し出す。タブリが入口の角に青いタブを置き、二人は縁の手前で折り返した。

畳んだ枝の小印がシメロの足元に滑ってきた。シメロはそれを拾い上げる。
「選ばなかった道も、案内なのか」
「今すぐ全部は歩けないから」
ヨリクネはシメロの手元を見る。「あとで選べる所に置いた」
シメロは印を返した。賛成とも反対とも言わなかったが、以前のように紙の裏へしまいもしなかった。
またページが畳まれる。次に開いた案内所の札には「どこから読めばいい?」とあった。見出しの回廊が大きく開き、遠い見出しへの道は、シメロの手できれいに揃えられている。タブリは帰りの縁を探し、ヨリクネは一つだけ枝を見せ、スウネは白い棚を照らした。オリュカはみんなの仕事が並んだ様子を見て、胸がはずんだ。
五人の居場所は近い。甲羅が紙をこつこつと叩き、尾の蛇腹は静かに鳴る。光の輪郭も見える。オリュカは、このままなら一緒に進めると思った。ただ、それぞれが置こうとする印には、それぞれの幅が要った。しおりが少し左に寄るだけでタブリの角が半分隠れ、枝を少し起こすだけでシメロの入口が狭くなる。誰も間違った道を持ってきたわけではなかった。

「入口を持つよ。こっちも、そっちも」
黄色いしおりを長く伸ばし、翼でタブを押さえ、もう片方の翼で枝が閉じないようにする。くちばしの先で、空白の棚を指した。みんなが動きやすいようにしたかった。
一つの紙面で、シメロの直線は前へ引かれ、ヨリクネの枝は横へ開いた。オリュカの翼に挟まれたタブが斜めにずれる。タブリが直そうとすると、黄色いしおりの根元が持ち上がった。
「離して。いったん、印を置き直す」
タブリの声が翼の下から聞こえる。オリュカは離そうとした。けれど、そこには枝があった。尾の先を押さえ直すと、スウネの白い棚がオリュカの背中で見えなくなった。どこかを守るたび、別の場所を自分でふさいでしまう。
シメロの長い影も回廊の端から入口へ伸びてくる。まっすぐな道を保つために、ずれた紙の角を押さえたのだ。二人の手が一枚の面の違う方向を引き、紙が薄く鳴った。
「ちょっと待って。全部、押さえれば」
「オリュカ、翼を――」
声の主が分からないまま、紙がぱたんと重なった。
最初に消えたのは入口の白い札の端だった。次に青いタブの頭が隠れ、枝は裏表の分からない細い線になる。スウネの光のある場所だけは分かるのに、その手前の折り目は見えない。オリュカの瞳いっぱいに、同じ白が広がった。
黄色い線が四つに引かれ、どこへも届かなくなる。オリュカは慌てて翼を広げたが、それがさらに入口を覆う。手を放すと、しおりも、タブも、枝も、白い棚も、折り目の裏へ落ちた。
シメロが回廊を揃えようとする。定規のような長い手が端に触れても、入口の角が見えない。一本にするための線にも、始める場所が必要なのだ。
「……見えない」
誰も動かなかった。紙がすれる音さえ止んだ白の中で、スウネの小さな琥珀色だけが残っていた。
オリュカは、翼を閉じた。ここでまた急いで開けば、誰かの足元を覆う。シメロの線を責める前に、自分の翼が塞いだものを確かめたかった。だが今は、どこにいるのかさえ聞かなければ分からない。
「タブリ?」
「いる。角の下」
「ヨリクネ?」
「いるよ。尾は畳んだ」
スウネの明かりが、小さく一度だけ揺れた。シメロの返事は遅れて届く。「ここにいる」。五人は互いの顔を見られないまま、声の間だけを持ち寄った。
目次(全8章)
- 第一章行くときは、一本で
- 第二章三つの小道
- 第三章白いままの棚
- 第四章まっすぐの友だち
- 第五章もどれない地図
- 第六章ひらきすぎた入口
- 第七章線のとなりの白
- 第八章次のページへ
このお話は、Ukrainaviの案内役オリュカと仲間たちが登場する創作の物語です。実在するウクライナの場所や出来事を描いたものではありません。挿絵は、生成画像をもとにした創作イラストです。