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ビジネス・復興/データ・資料

ウクライナのコンピューター・サービス輸出、最大の相手は米国、2位はマルタ

ウクライナ国立銀行の統計では、2025年のコンピューター・サービスの輸出は66億5,500万ドルで、うち35.9%が米国向けでした。2位はマルタ、3位は英国、4位はキプロス。相手国は取引相手の所在地で数えられ、ソフトウェアが使われる国とは限りません。2010年から伸びた数字と、全面侵攻後の動きを国別に見ます。

ウクライナ国立銀行(NBU)は、国際収支の統計の一部として、サービスの輸出入を種類別・相手国別に公表しています。2026年9月18日に更新された年次のファイルによれば、2025年の「コンピューター・サービス」の輸出は66億5,500万米ドルでした。そのうち23億9,240万ドル、35.9%が米国向けです。2位は英国でもドイツでもなく、地中海の島国マルタ(5億7,800万ドル)でした。

この記事は、この数字が何を数えたものかを確かめたうえで、相手国別の内訳と2010年からの推移を並べます。分野全体の規模や、国内の付加価値など別の「IT」の数字との違いは、戦時下のウクライナの産業の記事で扱っています。

「コンピューター・サービス」に入るもの、入らないもの

国立銀行の方法論の説明によれば、サービスの分類は国連などが編んだ『国際サービス貿易統計マニュアル2010』(MSITS 2010)に対応しています。同マニュアルは、コンピューター・サービスを「ハードウェアおよびソフトウェアに関連するサービスとデータ処理サービス」と定めています。含まれるものとして挙げられているのは、特定の利用者のために注文でつくるソフトウェアの開発・供給、ソフトウェアやハードウェアのコンサルティングと導入、システムの分析・設計・プログラミング(ウェブページの開発とデザインを含む)、保守、データ処理、ホスティングなどです。

入らないものも決まっています。ソフトウェアを複製・配布する権利のライセンス料は「知的財産権等使用料」に、特定の利用者向けではないコンピューター講座は教育サービスに分類されます。もう一つ、同マニュアルは、サービスの提供と労働の提供を区別しています。雇用関係にある人への支払いはサービスの取引ではなく「雇用者報酬」として扱う、という原則です。国外の会社に直接雇われて働く人の報酬は、この原則に従えば、コンピューター・サービスの輸出には入りません。

数字の出どころについて、国立銀行は、銀行が報告する非居住者との取引の記録(国際取引報告システム)と、国家統計局が四半期ごとに行うサービス輸出入の調査が主な情報源だと説明しています。また2014年以降の数字は、ロシア連邦に一時占領された地域を含みません。

相手国は「取引相手がどこの居住者か」で決まる

MSITS 2010は、サービス貿易を相手国別に分けるとき、取引相手の「居住する経済圏」で分けるよう勧めています。つまり表の国名は、ウクライナの企業や個人がサービスを売った相手が、どの国の居住者として記録されたかを示します。ソフトウェアが実際に使われる国や、最終的な依頼主の本社がある国を示すものではありません。マルタやキプロスが上位に並ぶ理由を、この表から読み取ることはできません。

相手国2021年2025年2025年の割合
米国2,728.42,392.435.9%
マルタ481.1578.08.7%
英国697.6556.78.4%
キプロス287.6480.17.2%
イスラエル334.1263.64.0%
スイス285.4248.43.7%
ドイツ268.6236.63.6%
エストニア130.7216.53.3%
ポーランド99.9190.12.9%
アラブ首長国連邦71.7168.92.5%
コンピューター・サービス輸出の合計6,9436,655100%
単位は百万米ドル。ウクライナ国立銀行「External Trade in Goods and Services」年次ファイル(2026年9月18日更新)の表2.3と表2.1による。2025年の上位10か国を示した。割合はこの記事の計算。2014年以降は一時占領地域を含まない。

2025年の上位10か国で合計53億3,130万ドル、全体の約8割になります。日本は表に個別の行がなく、「その他の国」(2025年は1億490万ドル)に含まれています。

2010年の4億ドルから、2021年の69億ドルへ

同じファイルの表2.1には、2010年からの年ごとの値があります。コンピューター・サービスの輸出は2010年に4億400万ドル、2013年に12億9,200万ドル、2021年に69億4,300万ドルでした。2010年から2021年の11年間で約17倍です。サービス輸出全体に占める割合は、2010年の2.2%から2021年には37.8%、2025年には41.8%になっています(割合はこの記事の計算)。

国別に見ると、この間に金額で最も大きく伸びたのは米国向けで、2011年の2億6,320万ドルから2021年の27億2,840万ドルになりました。マルタ向けは2011年の180万ドルから2021年の4億8,110万ドルへ、キプロス向けは2,210万ドルから2億8,760万ドルへ増えています。

全面侵攻のあと、どこが減り、どこが増えたか

2022年2月24日にロシアによるウクライナへの全面侵攻が始まった年、コンピューター・サービスの輸出は73億2,900万ドルで、統計のある期間で最も多い値でした。その後は2023年67億2,700万ドル、2024年64億4,600万ドル、2025年66億5,500万ドルと推移しています。

2021年と2025年を比べると、相手国ごとの動きは分かれます。米国向けは12.3%減、英国向けは20.2%減、イスラエル向けは21.1%減。一方でキプロス向けは66.9%増、エストニア向けは65.6%増、ポーランド向けは90.3%増、アラブ首長国連邦向けは2.4倍になりました(増減率はこの記事の計算)。ロシア向けは2021年に5,070万ドルありましたが、2022年は770万ドルとなり、2023年以降はほぼゼロです(2023年は約2万2,500ドル)。

2026年の数字も出始めています。同じ日に更新された四半期のファイルでは、2026年1〜3月が16億4,400万ドル、4〜6月が16億9,900万ドルで、上半期の合計は33億4,300万ドルでした。前年の同じ期間(32億1,000万ドル)より約4%多い値です。ただしこれは2026年9月18日の更新時点の値で、後から改訂されることがあります。

同じファイルの中でも数字がずれる

読むときに一つ注意があります。国立銀行はファイルの冒頭で、2022〜2024年のサービス貿易の数字を、戒厳令下で国家統計機関への統計報告の義務を再開した2025年7月3日付法律第4505号にもとづく統計局の更新情報で改訂した、と注記しています。その結果かどうかは説明されていませんが、2022年のコンピューター・サービス輸出は、種類別の表2.1では73億2,900万ドル、相手国別の表2.3では73億4,900万ドルと、同じファイルの中で2,000万ドル違っています。2023年のサービス輸出全体も、表2.1が166億1,700万ドル、表2.3が166億200万ドルです。

差は全体から見れば小さいものの、国別の数字は一度出たあとも動くことがあります。引用するときは、どの表の、いつ更新された値かを添えるのが確実です。

出典・参考資料

  1. External Trade in Goods and Services(Trade_y_en.xlsx、最終更新2026年9月18日。表2.1 サービス輸出の種類別2010〜2025年、表2.3 コンピューター・サービス輸出の主要相手国別2011〜2025年、冒頭の注記)
    発行:ウクライナ国立銀行(NBU) 確認日:2026-09-24
  2. External Trade in Goods and Services, quarterly(Trade_q_en.xlsx、最終更新2026年9月18日。表2.3 コンピューター・サービス輸出の四半期値、2025年第1四半期〜2026年第2四半期)
    発行:ウクライナ国立銀行(NBU) 確認日:2026-09-24
  3. External sector statistics(上記ファイルの掲載ページ)
    発行:ウクライナ国立銀行(NBU) 確認日:2026-09-24
  4. External Sector Statistics of Ukraine: Methodology and Data Sources(BPM6準拠。国際取引報告システムと国家統計局の四半期調査がサービス統計の主な情報源であること、サービス分類がMSITS 2010に対応すること)
    発行:ウクライナ国立銀行(NBU) 確認日:2026-09-24
  5. Manual on Statistics of International Trade in Services 2010(MSITS 2010。3.57〜3.58 取引相手の居住経済圏による国別計上、3.59 サービスの提供と労働の提供の区別、3.224〜3.231 コンピューター・サービスの範囲と除外)
    発行:国連ほか(United Nations, Statistical Papers Series M No.86/Rev.1) 確認日:2026-09-24

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