ウクライナの原子炉は15基、うち6基は占拠された原発にある
ウクライナの原子力発電所は4か所・15基。そのうち6基は、2022年3月からロシアの管理下にあるザポリッジャ原発のもので、同年9月から止まっています。侵攻前に電力の半分を担った原子力が、いま9基でどれだけの電気をつくっているのかを、IAEA・IEA・エネルゴアトムの公表から示します。
ウクライナの原子力発電所を運営する国営企業エネルゴアトム(Energoatom)は、自社の紹介ページで、4つの原子力発電所で15基の原子炉を運転していると説明しています。ザポリッジャ、リウネ、南ウクライナ、フメリニツキーの4か所で、合計の設備容量は1,383万5千キロワットです。
ただし、この15基のうち6基は、2022年3月からロシア軍の管理下にあるザポリッジャ原子力発電所の原子炉です。国際原子力機関(IAEA)によれば、この発電所は2022年9月から運転を止めています。ウクライナの電力をいま実際に生み出している原子炉は、残る3か所の9基です。
4つの発電所と15基の内訳
エネルゴアトムの各発電所のページから、原子炉の数を並べると次のようになります。原子炉の型はVVERと呼ばれるもので、VVER-1000が13基、VVER-440が2基です。
| 発電所 | 所在地(州) | 原子炉 | 運転開始(同社の記載) | 2026年9月の状況 |
|---|---|---|---|---|
| ザポリッジャ | ザポリッジャ州 | VVER-1000 6基 | 1984〜1995年 | ロシアの管理下。2022年9月から停止(IAEA) |
| リウネ | リウネ州 | VVER-440 2基、VVER-1000 2基 | — | 運転中 |
| 南ウクライナ | ミコライウ州 | VVER-1000 3基 | 1982年、1985年、1989年 | 運転中 |
| フメリニツキー | フメリニツキー州 | VVER-1000 2基 | 1987年、2004年(送電網への接続) | 運転中 |
ザポリッジャ原発はエネルゴアトムが「ウクライナとヨーロッパで最大の原子力発電所」と紹介する発電所で、運転開始から累計1兆1千億キロワット時を超える電力を生んだとされます。この1か所だけで、15基の4割にあたる6基を抱えていました。
全面侵攻の前、電力の半分は原子力だった
国際エネルギー機関(IEA)が2024年9月に出した報告書によれば、2022年のロシアによる全面侵攻の前、ウクライナの電力の半分は原子力でつくられていました。石炭火力が23%、ガス火力が9%、再生可能エネルギーが11%と続きます。同じ報告書は、ザポリッジャ原発の600万キロワットが、侵攻前にはウクライナの電力供給のおよそ4分の1を担っていたとしています。
IAEAの原子炉データベース(PRIS)のウクライナのページも、原子力の比率を55%、原子力による発電量を8万1,126ギガワット時と示しています。ただしこの数字は2021年のものです。2026年9月の時点で、PRISのウクライナのページに表示されている発電量と比率は、この2021年の値が最新でした。
2022年3月4日から、ザポリッジャ原発はロシアの管理下に
IAEAは、ロシアの全面侵攻のあと二つの原子力施設がロシア軍の管理下に入ったと記録しています。一つはチョルノービリ原子力発電所の敷地で、2022年2月24日から3月31日まで。もう一つがザポリッジャ原子力発電所で、2022年3月4日からロシア連邦の管理下にあり、それが今も続いています。IAEAは、ザポリッジャを含むウクライナの5つの原子力発電所のサイトすべてに職員を常駐させています。
止まっている原子炉にも電気は要ります。燃料と使用済み燃料プールを冷やすポンプを動かし続けなければならないからです。IAEAの2026年9月の発表によれば、ザポリッジャ原発は2026年8月20日、残っていた唯一の外部送電線(330キロボルトのフェロスプラウナ1号線)との接続を、ドニプロ川北側での軍事活動によって失いました。全面侵攻以降、外部電源を失ったのは26回目で、6月以降だけで10回にのぼります。
それから約3週間、発電所は非常用ディーゼル発電機で6基の原子炉と使用済み燃料プールの冷却を続けました。燃料の消費を抑えるため、動かす発電機を4台から2台に減らし、冷却ポンプを間欠的に運転したとIAEAは伝えています。IAEAの仲介による7回目の局地的な停戦のもとで、9月5日から7日に地雷の除去と修理が行われ、送電線は再びつながりました。IAEAのグロッシ事務局長は、非常用発電機の燃料がほぼ尽きていたこと、追加の燃料の搬入などなお緊急の措置が要ることを述べています。
IAEAは同時に、運転停止から時間がたっているため、運転中の原子炉に比べて取り除くべき崩壊熱が大幅に少なく、全電源を失っても燃料が損傷するまでの時間はかなり長いと説明しています。そのうえで、そうした事態は防がなければならないとしています。
9月にウィーンで開かれた第70回IAEA総会について、エネルゴアトムは、カナダが提出したウクライナの原子力安全に関する決議が賛成63で採択され、ザポリッジャ原発からの許可のないロシアの軍人らの退去を求めたと伝えています。
9基で、どれだけの電気をつくっているか
IEAは2025年10月の分析で、ウクライナの電力は「残る3か所の運転中の原子力発電所」への依存が大きいままだと書いています。西部と中部にあるこの3か所で770万キロワット、国の発電設備容量の50%にあたるとしています。
エネルゴアトムの2026年3月18日の発表によれば、2025年に同社の原子力発電所がつくった電力は541億キロワット時で、計画の100.8%でした。2024年より増えたとしています。
PRISにある2021年の8万1,126ギガワット時(811億キロワット時)と比べると、2025年の発電量はおよそ3分の2にあたります。ただし、2021年はPRISに各国が報告した値、2025年はエネルゴアトムの発表で、出どころが異なります。2022年以降の国全体の発電量に占める原子力の比率は、公的な統計で確認できる数字が見当たりません。エネルゴアトムは会社紹介で「ウクライナの電力需要の55%、秋冬には70%を満たしている」と書いていますが、何年の数字かは示されていません。
戦争は3か所の運転中の発電所にも及んでいます。IAEAは2026年9月、南ウクライナ、フメリニツキー、リウネの各原発とチョルノービリの敷地で、周辺の監視区域にドローンが繰り返し確認されていると伝えています。原発の近くの変電所が損傷すると、原子炉が送電網に電気を送れなくなったり、原子炉の安全を保つための外部電源が脅かされたりすることを、IEAは2024年の報告書で指摘しています。発電所への攻撃と電力網の復旧については、発電所が狙われ続ける国で、電気を小さく分けてつくるで扱っています。
燃料の調達先と、建設中の原子炉
エネルゴアトムの発電所紹介は、南ウクライナ原発を核燃料の調達先の多様化の先駆けと位置づけています。米ウェスチングハウス製の燃料を国内で初めて装荷した発電所で、3号機は2018年から、2号機は2020年から、ウェスチングハウス製の燃料だけで運転しています。リウネ原発では2022年にVVER-1000で、2023年にはVVER-440でも、ウェスチングハウス製の燃料の使用が始まりました。
新しい原子炉の計画もあります。PRISはウクライナの原子炉を「運転中」15基(正味の出力で1,310万7千キロワット)、「建設中」2基(207万キロワット)、「恒久停止」4基(351万5千キロワット)と分類しています。フメリニツキー原発はもともと4基の計画で、エネルゴアトムは新しい原子炉の建設を同発電所の優先課題の一つとしています。リウネ原発では、米国型のAP1000を採用する5号機の計画を掲げています。いずれも完成の時期は、この記事の資料からは分かりません。
一つ注意が要るのは、PRISが「運転中」と数える15基には、ザポリッジャの6基が含まれていることです。帳簿の上ではウクライナの原子炉は15基のままですが、ウクライナの送電網に電気を送っているのは9基です。数字を見るときは、どの基準で数えた15なのかを確かめる必要があります。
数え方の違いを表にすると
| 数字 | 何を数えたか | 出どころと時点 |
|---|---|---|
| 15基・1,383万5千キロワット | エネルゴアトムが運営する原子炉の数と設備容量(ザポリッジャを含む) | エネルゴアトム会社紹介(2026年9月確認) |
| 15基・1,310万7千キロワット | PRISで「運転中」に分類された原子炉と正味の出力(ザポリッジャを含む) | IAEA PRIS(2026年9月確認) |
| 770万キロワット | 運転中の3か所の原発の発電設備容量。国全体の50% | IEA(2025年10月) |
| 55%・811億キロワット時 | 国の発電量に占める原子力の比率と原子力の発電量 | IAEA PRIS(2021年の値) |
| 541億キロワット時 | エネルゴアトムの原発が1年間につくった電力 | エネルゴアトム(2025年の値、2026年3月発表) |
原子力は、全面侵攻の前も後も、ウクライナの電力の柱であり続けています。変わったのは、15基のうち6基が、自国の送電網から切り離された場所にあることです。
出典・参考資料
- About us(4発電所・15基〈VVER-1000 13基、VVER-440 2基〉・設備容量13,835MW、電力需要の55%・秋冬70%という記述)
発行:エネルゴアトム(Energoatom) 確認日:2026-09-24 - Zaporizhzhia NPP(6基・1984〜1995年の運転開始・累計1.1兆kWh超・ウクライナと欧州で最大)
発行:エネルゴアトム 確認日:2026-09-24 - South Ukraine NPP(3基・1982/1985/1989年・ウェスチングハウス燃料〈3号機2018年、2号機2020年から専用〉・燃料多様化の先駆け)
発行:エネルゴアトム 確認日:2026-09-24 - Rivne NPP(VVER-440 2基・VVER-1000 2基・ウェスチングハウス燃料〈2022年VVER-1000、2023年VVER-440〉・5号機にAP1000)
発行:エネルゴアトム 確認日:2026-09-24 - Khmelnytskyi NPP(4基の計画・1号機1987年、2号機2004年に系統接続・新規建設は優先課題)
発行:エネルゴアトム 確認日:2026-09-24 - The Committee for the Assessment of Financial and Operational Activities rated Energoatom’s performance for 2025 as satisfactory(2026年3月18日。2025年の発電量541億kWh・計画比100.8%・2024年比増)
発行:エネルゴアトム 確認日:2026-09-24 - ZNPP must operate under Ukraine’s control: international community calls for the plant de-occupation and release of illegally detained nuclear workers(2026年9月18日。第70回IAEA総会のカナダ決議、賛成63)
発行:エネルゴアトム 確認日:2026-09-24 - Nuclear Safety, Security and Safeguards in Ukraine(チョルノービリ2022年2月24日〜3月31日、ザポリッジャ2022年3月4日からロシア連邦の管理下・継続中、5つの原発サイトに職員常駐)
発行:国際原子力機関(IAEA) 確認日:2026-09-24 - Update 364 – IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine(2026年8月29日。8月20日にフェロスプラウナ1号線との接続喪失、ドニプロ川北側の軍事活動)
発行:IAEA 確認日:2026-09-24 - Update 365 – IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine(2026年9月5日。26回目の外部電源喪失、7回目の局地停戦、非常用発電機4台→2台、冷却ポンプの間欠運転、2022年9月から停止、崩壊熱)
発行:IAEA 確認日:2026-09-24 - Update 366 – IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine(2026年9月11日。約3週間の非常用発電機運転、6基と燃料プールの冷却)
発行:IAEA 確認日:2026-09-24 - Update 367 – IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine(2026年9月17日。6月以降10回・通算26回、9月5〜7日の作業で再接続、非常用発電機の燃料がほぼ枯渇、各原発周辺のドローン)
発行:IAEA 確認日:2026-09-24 - PRIS Country Statistics: Ukraine(運転中15基・13,107MW〈正味〉、建設中2基・2,070MW、恒久停止4基・3,515MW、原子力比率55%・81,126GWh〈2021年〉)
発行:IAEA 動力炉情報システム(PRIS) 確認日:2026-09-24 - Ukraine’s Energy Security and the Coming Winter(2024年9月。侵攻前は原子力が電力の半分・石炭23%・ガス9%・再エネ11%、ザポリッジャ6GWで電力供給の約4分の1、変電所の損傷と原発)
発行:国際エネルギー機関(IEA) 確認日:2026-09-24 - Ukraine’s energy security: A pre-winter assessment(2025年10月。残る3か所の運転中の原発が発電設備容量の50%・7.7GW、西部と中部)
発行:IEA 確認日:2026-09-24
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