日本の道路を走るには、ウクライナの免許の切り替えが要る
日本が認める国際運転免許証は1949年ジュネーブ条約のもので、ウクライナはこの条約の締約国ではありません。日本で運転するには、ウクライナの免許から日本の免許に切り替える手続が必要です。2025年10月に厳しくなった条件、翻訳文の頼み先、避難してきた人の書類の扱いをまとめました。
ウクライナで取った運転免許を持って日本に来た人が、日本の道路で車を運転するにはどうすればよいか。結論から書くと、ウクライナの運転免許証も、ウクライナで発行された国際運転免許証も、それだけでは日本で運転する資格になりません。日本の免許を取る必要があり、ウクライナの免許を持っている人は、試験の一部が免除される「外国免許の切替え」という手続を使えます。
この記事は、2026年9月に警察庁、警視庁、国連の条約データベースなどの公式ページで確認できた内容をもとにしています。手続が自分の場合に使えるかどうかは、この記事では判断できません。住んでいる都道府県の運転免許センターで確かめてください。
国際運転免許証が使えない理由
警察庁によれば、日本で運転するには、次の三つのどれかを持っている必要があります(道路交通法第64条、第107条の2)。
- 日本の免許証
- 「道路交通に関する条約」(1949年にジュネーブで署名された条約。ジュネーブ条約と呼ばれる)に基づく国際運転免許証
- スイス、ドイツ、フランス、ベルギー、モナコ、台湾の免許証に、決められた者が作った日本語の翻訳文を付けたもの
ポイントは二つ目です。日本が認めている国際運転免許証は、1949年のジュネーブ条約の様式のものに限られます。国連の条約データベースによれば、日本はこの条約に1964年8月7日に加入していますが、締約国の一覧にウクライナの名前はありません。ウクライナが締約国になっているのは、別の条約である1968年の「道路交通に関する条約」(ウィーン条約)で、1974年7月12日に批准しています。日本はウィーン条約の締約国一覧に入っていません。
警察庁が公表している「ジュネーブ条約締約国等一覧」(2025年8月27日現在)にも、ウクライナは載っていません。三つ目の「翻訳文を付ければ運転できる6か国・地域」にも入っていません。ウクライナ外務省の渡航者向けページ(2016年掲載)も、日本についての項目で、ウクライナの様式の運転免許証は日本では使えず、日本の免許への切替えが行われると説明しています。
ウクライナの制度では、国際運転免許証は内務省の地域サービスセンターが発行し、有効期間は3年(国内免許の有効期間を超えない)とされています(ウクライナ内閣決議第340号「運転免許証の発行等に関する規則」第33項)。ウクライナを出る前にこれを取っていても、日本での運転には使えない、ということになります。
「外国免許の切替え」とは
外国の行政機関から運転免許を受けている人は、その免許で運転できる車の種類について、日本の運転免許試験の一部(学科試験と技能試験)を免除してもらう申請ができます(道路交通法第97条の2第3項)。一般に「外免切替(がいめんきりかえ)」と呼ばれる手続です。申請すると、運転に必要な知識の確認(知識確認)と、実際の運転の確認(技能確認)を受け、支障がないと認められれば日本の免許が交付されます。
警察庁は、主な条件を次のように案内しています。
- 外国の免許が有効であること。有効期限が切れた免許は切替えに使えません。
- その免許を取った後、その国に通算して3か月以上滞在していたこと。出入国の記録がある旅券など、滞在期間を示す書類が必要です。
- 本人が申請すること。代理の申請は認められていません。
- 申請先は、日本での住所地を管轄する都道府県警察の運転免許センターなど。
国際運転免許証からの切替えは行っていない、と警察庁ははっきり書いています。切替えに使うのは、ウクライナの国内の運転免許証そのものです。
2025年10月から手続が厳しくなった
2025年10月1日に道路交通法施行規則が改正され、外国免許の切替えの手続が変わりました。警視庁と警察庁の資料から、読者に関わる点をまとめます。
- 住民票の写しが必要になった。国籍、在留資格、在留期間、在留カード番号などの「特定事項」が書かれた住民票の写しを出します。警視庁は、交付日から6か月以内のもので、マイナンバーが書かれていないものを求めています。
- 「短期滞在」の在留資格では申請できなくなった。警察庁の事務の要領は、短期滞在の人は従来と異なり免許の申請ができない、としています。
- 知識確認が10問から50問になった。イラストの問題が廃止され、文章の問題を30分以内に50問解き、45問以上の正解が必要です。以前は10問中7問以上でした。
- 技能確認も厳しくなった。警視庁は、横断歩道の通過などの課題の追加と、審査基準の厳格化を挙げています。
ウクライナから避難してきた人の場合、入国したときの在留資格が「短期滞在」だったことがあります。その場合、在留資格が変わり、住民登録を済ませてからでないと切替えの申請はできない、ということになります。住民登録の言葉は別の記事にまとめています。
用意する書類
警察庁のページに載っている、切替えの申請に必要な書類は次のとおりです。都道府県によって追加の書類を求められることがあります。
- 申請書と、病気の症状などについての質問票
- 申請用の写真1枚(縦3.0センチ、横2.4センチ。6か月以内に撮ったもの)
- 特定事項が書かれた住民票の写し
- 本人確認の書類(旅券など)
- ウクライナの運転免許証(国際運転免許証は使えません)
- 運転免許証の日本語の翻訳文
- 免許を取った後、ウクライナに通算3か月以上いたことが分かる書類(旅券など)
- 手数料
警視庁は、外国の免許証はカード型か紙の原本が必要で、電子免許証だけでは切替えができないと書いています。ウクライナでは運転免許証を行政アプリ「Дія」で表示できますが、東京都で切替えをするなら、カードの原本を持っていく必要があるということです。免許を取った日が書かれていない場合は、それを示す書類も求められます。
翻訳文は誰に頼むか
翻訳文は、誰が作ってもよいわけではありません。警察庁は、作れる者を法令で次のように限っています。外国の公認翻訳者(法定翻訳家)の翻訳は含まれない、とも注意しています。
- 免許証を発行した国の行政機関、または日本にあるその国の大使館・領事館
- 国家公安委員会が指定した法人(警察庁のページでは、JAF(日本自動車連盟)、ジップラス株式会社、一般社団法人訪日運転者支援協会)
警視庁の「必要書類」の資料は、ジップラス株式会社が翻訳できる国の一つとしてウクライナを挙げています。JAFは、翻訳文だけで運転できる6か国・地域以外の免許証についても翻訳文を発行しており(アフガニスタンの免許証は発行を停止中)、2026年9月時点のJAFのページでは、日本の免許に切り替える目的の翻訳文は6,600円(2026年7月1日改定、税込)、スイスなど6か国・地域以外の免許は発行までの目安が平均5〜10営業日です。申請は日本国内からのオンラインに限られます。JAFは、免許証によっては翻訳文を発行できない場合がある、とも書いています。
知識確認はウクライナ語で受けられるか
警察庁は2024年5月の通達で、各都道府県警察に対し、ウクライナ語を含む20言語で学科試験と知識確認を行えるよう導入を進めるよう求めています。ただし、どの言語をいつ導入するかは都道府県ごとです。
警視庁(東京都)のページでは、外国免許切替えの知識確認問題は20言語に対応しており、その中にウクライナ語が入っています。ほかの道府県で受けるときは、ウクライナ語の問題があるかを事前に運転免許センターに確かめてください。警視庁は、日本語が話せない人には通訳できる人の同伴を求める場合がある、とも書いています。
書類を持たずに避難してきた人は
ウクライナから避難してきた人の中には、免許証や旅券を持ち出せなかった人もいます。この点について、警視庁のページには次の注記があります。
ウクライナから避難してきた人で、ウクライナの運転免許証、その翻訳文、滞在期間を証明する書類を持っていない場合は、出入国在留管理庁が発行する「ウクライナから避難された方であることを証明する書面」を見せ、ウクライナの運転免許を持っていると申告することで、それらの書類に代えることができる。ただし、免許を取った後にウクライナに通算3か月以上いた人に限る。
これは警視庁のページに書かれている取扱いです。全国共通の扱いとして警察庁が公表しているのは、難民または補完的保護対象者として認定された人が、免許証・翻訳文・滞在期間の書類を出せない場合は、都道府県警察が警察庁と取扱いを協議する、という内部の手順です(2026年4月から運用の事務要領)。東京都以外に住んでいる人は、自分の都道府県でどう扱われるかを、申請の前に運転免許センターへ問い合わせてください。
費用と、切り替えたあと
警視庁のページでは、普通免許の切替えの手数料は、申請手数料2,500円と交付手数料2,350円です。ほかの道府県の金額は、それぞれの運転免許センターで確認してください。翻訳文の料金と写真代は別にかかります。
切り替えた後にも決まりがあります。警視庁によれば、新しく交付される免許証の有効期間は、交付日から3回目の誕生日の1か月後までです。また警視庁は、免許を取った国での滞在が通算1年以上あるかを書類で確かめ、初心者マーク(初心運転者標識)の表示義務がかかるかを判断するとしています。初心運転者に当たる人は、免許証の発行日から1年間、車の前後に初心者マークを付けて運転しなければなりません。二輪車の二人乗りにも経験年数の条件があります。
| 確認すること | どこで確かめるか |
|---|---|
| ウクライナの免許証が有効期限内か | 免許証の記載 |
| 免許を取った後、ウクライナに通算3か月以上いたか。それを示す書類があるか | 旅券の出入国の記録など |
| 在留資格が「短期滞在」ではないか。住民登録が済んでいるか | 在留カード、市区町村の窓口 |
| 特定事項が書かれた住民票の写し(6か月以内) | 市区町村の窓口 |
| 日本語の翻訳文 | JAF、ジップラス株式会社など |
| 知識確認をウクライナ語で受けられるか、予約が必要か | 住所地の運転免許センター |
| 書類が足りない場合の扱い | 住所地の運転免許センター |
最後に一つだけ。日本の免許を取る前に、ウクライナの免許証や国際運転免許証で運転すると、無免許運転になります。切替えが済むまでは運転しないでください。
出典・参考資料
- 外国の運転免許をお持ちの方(日本で運転するための三つの方法、翻訳文で運転できる6か国・地域、翻訳文を作成できる者と法定翻訳家が含まれないこと、切替えの条件(通算3か月以上の滞在、本人申請、住所地での申請)、必要書類)
発行:警察庁 確認日:2026-09-23 - Q&A(国際運転免許証から日本免許への切替えは行っていないこと)
発行:警察庁 確認日:2026-09-23 - ジュネーブ条約締約国等一覧(R7.8.27現在。ウクライナの記載がないこと)
発行:警察庁 確認日:2026-09-23 - 「外国免許等関係事務取扱い要領」の改正について(通達)(令和8年1月8日、警察庁丙運発第59号。令和8年4月1日から運用。住民票の写しの添付、短期滞在の者は申請できないこと、知識確認は30分以内に文章形式50問・45問以上、難民等の取扱い)
発行:警察庁 確認日:2026-09-23 - 外国語による学科試験等の実施の拡大を始めとする外国人が円滑に運転免許を取得できる環境の整備について(通達)(令和6年5月13日、警察庁丁運発第83号。ウクライナ語を含む20言語)
発行:警察庁 確認日:2026-09-23 - 道路交通法(昭和35年法律第105号)第97条の2第3項、第107条の2
発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-09-23 - Convention on Road Traffic, Geneva, 19 September 1949(締約国一覧。日本の加入1964年8月7日、ウクライナの記載がないこと)
発行:United Nations Treaty Collection 確認日:2026-09-23 - Convention on Road Traffic, Vienna, 8 November 1968(ウクライナの署名1968年11月8日・批准1974年7月12日、日本の記載がないこと)
発行:United Nations Treaty Collection 確認日:2026-09-23 - Постанова КМУ від 08.05.1993 № 340 «Про затвердження Положення про порядок видачі посвідчень водія та допуску громадян до керування транспортними засобами»(第33項:国際運転免許証は3年、国内免許の有効期間を超えない)
発行:Верховна Рада України(法令データベース) 確認日:2026-09-23 - Японія(ウクライナの様式の運転免許証は日本で使えず、日本の免許に切り替えるとの記載。掲載日2016年12月25日)
発行:Міністерство закордонних справ України(ウクライナ外務省) 確認日:2026-09-23 - 令和7年10月1日施行・改正道路交通法施行規則について(住民票の写し、知識確認50問・45問以上・イラスト問題廃止、技能確認の課題追加、住民票は交付日から6か月以内)
発行:警視庁 確認日:2026-09-23 - 外国で取得した運転免許証を日本の運転免許証に切り替えるには(ウクライナから避難した人の書類の特例、通算3か月以上、手数料、通訳の同伴、有効期間、初心者標識)
発行:警視庁 確認日:2026-09-23 - 必要書類(日本語)(原本が必要で電子免許証のみでは切替できないこと、翻訳文の作成者とジップラス株式会社の対象にウクライナが含まれること)
発行:警視庁 確認日:2026-09-23 - 注意事項(初心運転者標識の確認に通算1年以上、二輪車の二人乗り)
発行:警視庁 確認日:2026-09-23 - 外国語により受験できる学科試験について(外国免許切替知識確認問題の20言語にウクライナ語を含む)
発行:警視庁 確認日:2026-09-23 - 翻訳文の申請方法(切替え目的6,600円・2026年7月1日改定、特定6か国・地域以外は平均5〜10営業日、日本国内からのみ申請、発行できない場合があること)
発行:一般社団法人日本自動車連盟(JAF) 確認日:2026-09-23
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