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ビジネス・復興/解説

蜂蜜の枠は6,000トンから3万5,000トンに。EUとウクライナの新しい関税

EUは2022年6月から3年間、ウクライナ産品の関税と数量の枠を止めていました。その措置は2025年6月5日に終わり、10月29日には連合協定の見直しで、蜂蜜・砂糖・小麦などの無税の枠が広がりました。枠と引き換えに、ウクライナは2028年までにEUの生産基準に法律を合わせます。

画像:Ukrainavi

オリュカのひとこと

関税も枠もない3年間のあと、なぜ枠のある形に戻ったのでしょう。2022年からの経過を本文で順にたどれます。

2025年10月29日、EUとウクライナの貿易に新しい関税の取り決めが加わりました。EUに関税なしで入れるウクライナ産の蜂蜜の量は、年6,000トンから3万5,000トンに、白砂糖は2万70トンから10万トンに広がりました。一方で、ロシアによる全面侵攻のあと3年間続いた「関税も数量の枠もない」状態には戻っていません。

以下では、2022年6月の関税の免除から、2025年6月の終了、10月の協定の見直しまでを、EUの規則と決定の条文、欧州委員会の説明資料をもとにたどります。数字と状況は2026年9月時点のものです。EU加盟の交渉そのものはEU加盟を申請して4年半、ウクライナの交渉はどこまで進んだかで、穀物の輸出経路はオデーサの港が攻撃で止まった夏、ウクライナの穀物はどこから出ていくかで扱っています。

もともとの協定:多くの品目は無税、40の品目群に枠

EUとウクライナの連合協定には「深く包括的な自由貿易圏(DCFTA)」の章があり、2016年1月1日から暫定的に適用され、2017年9月1日に発効しました。欧州委員会の説明では、EUはこの協定で、40の関税割当(TRQ)に含まれる品目を除く、すべての品目の関税をなくしていました。関税割当とは、決められた量までは無税や低い税率で輸入でき、それを超えると通常の関税がかかる仕組みです。

協定の第29条は、発効から5年後に、どちらかの求めで関税の撤廃を早めたり広げたりする協議をすると定めています。ウクライナの求めで2021年に協議が始まりましたが、全面侵攻のあと中断しました(2025年の委員会決定の前文)。

2022年6月4日、関税と枠が止まった

EUは2022年5月30日の規則(EU)2022/870で、ウクライナ産品への「自律的貿易措置(ATM)」を定めました。EUが一方的に与える一時的な優遇で、2022年6月4日から適用されました。規則の前文は、その理由を「2022年2月24日以来のロシアによるいわれのない不当な侵略戦争」がウクライナの生産能力を壊し、黒海への出口を閉ざしたためと書いています。

規則が定めた主な中身は次のとおりです。

  • 工業製品に残っていた輸入関税をすべてなくす
  • 果物と野菜の「参入価格制度」の適用を止める
  • 関税割当を停止し、枠の対象だった農産物の関税もなくす
  • 適用期間中の輸入に対して、反ダンピング関税を取らない
  • EUの輸入セーフガード規則(2015/478)の適用を止める

措置は1年ごとに延長されました。2023年5月31日の規則(EU)2023/1077で2023年6月6日から2024年6月5日まで、2024年5月14日の規則(EU)2024/1392で2024年6月6日から2025年6月5日までです。

隣の国々の反発と、EUの輸入制限

欧州委員会の規則の前文によれば、ウクライナの穀物をEUの奥や域外へ運ぶ物流には混雑と高い費用があり、その結果、ウクライナに近い加盟国への輸入が増えました。委員会は2023年5月2日の実施規則(EU)2023/903で、ウクライナ産の小麦、トウモロコシ、菜種、ひまわりの種について、ブルガリア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキアの5か国では自由流通に回せない(その国の市場に出せない)とする「予防措置」を取りました。前文は、これらの国で倉庫と物流が飽和し、地元の生産者の経営に影響していると説明しています。通過は妨げないとされました。

この措置は6月5日まで適用されたあと、同じ内容の実施規則(EU)2023/1100で、適用が2023年9月15日までと定められました。WTO(世界貿易機関)の記録によれば、ウクライナは2023年9月18日、ポーランド、ハンガリー、スロバキアの3か国がそれぞれ課したウクライナ産農産物の輸入に関する措置について、WTOでの協議を要請しました(紛争番号DS619〜DS621)。

2024年の延長に入った「緊急ブレーキ」

2024年の規則(EU)2024/1392は、延長と同時に歯止めを加えました。卵、鶏肉、砂糖、オーツ麦、トウモロコシ、ひき割り穀物(グローツ)、蜂蜜の7品目について、その年の輸入量が、2021年7〜12月・2022年・2023年の輸入量の平均に達したら、欧州委員会は14日以内に、その品目の関税割当を元に戻さなければならないという仕組みです(第4条第7項)。

欧州委員会の説明では、このブレーキは5品目で作動しました。

品目枠を戻した欧州委員会規則規則の日付
オーツ麦(EU)2024/17262024年6月18日
砂糖(EU)2024/18252024年7月1日
(EU)2024/18272024年7月1日
ひき割り穀物(EU)2024/19992024年7月19日
蜂蜜(EU)2024/21662024年8月20日
欧州委員会(通商総局)のウクライナとの貿易のページと、各規則の官報掲載の本文による(2026年9月24日確認)。

欧州委員会が作動した品目として挙げる中に、鶏肉とトウモロコシは入っていません。

2025年6月5日に終わり、翌日から元の枠へ

3回目の措置は、延長されずに2025年6月5日で終わりました。欧州委員会の説明資料(2025年7月)によれば、6月6日からは、連合協定のもともとの関税割当が再び開かれ、協定の見直しが実施されるまでの経過措置として使われました。

見直しの経過は次のとおりです。

日付出来事
2025年6月30日EUとウクライナが、協定第29条にもとづく見直しで原則合意
2025年10月13日EU理事会が、欧州委員会に見直しを認める
2025年10月14日EU・ウクライナ連合委員会(貿易)が決定第3/2025号を採択
2025年10月29日決定が発効(採択から15日目)
欧州委員会(通商総局)のウクライナとの貿易のページ、決定第3/2025号(EU官報 L 2025/2130)第5条による。

決定は、2025年の枠の量を、新しい年間の枠の12分の7とすると定めました(第2条)。年の途中から新しい枠に移ったためです。

オリュカのひとこと

牛肉と豚肉の枠は、見直しで増えたのでしょうか。見直し前と後の量を、下の表で比べられます。

新しい枠:増えた品目、据え置かれた品目

欧州委員会の説明資料は、見直しでは小麦・トウモロコシなどの穀物、砂糖、蜂蜜、鶏肉、卵は「EUの農業にとって敏感な品目」として増やし幅を抑え、それ以外の肉には追加の量を認めなかったとしています。主な品目は次のとおりです。

品目見直し前の枠(年、トン)見直し後の枠(年、トン)
普通小麦(粉を除く)1,000,0001,300,000
トウモロコシ(粉を除く)650,0001,000,000
大麦(粉を除く)350,000450,000
小麦・大麦・トウモロコシの粉(新設)30,000
オーツ麦4,0007,700
白砂糖20,070100,000
蜂蜜6,00035,000
鶏肉と鶏肉調製品(2つの枠の合計)90,000120,000
卵と卵白(2つの枠の合計)6,00018,000
牛肉12,000変更なし
豚肉(2つの枠の合計)40,000変更なし
バター3,0007,000
脱脂粉乳5,00015,400
りんごジュース20,00030,000
欧州委員会「ウクライナとのDCFTAの見直し 質問と回答」(2025年7月)の表から抜粋。見直し後の量は決定第3/2025号の付録B(EU向けの関税割当の一覧)と一致する。

反対に、枠そのものがなくなって無税になった品目もあります。説明資料が挙げるのは、発酵乳、加工したクリーム、きのこ、食品調製品、ぶどうジュース、全粉乳、ヨーグルト・ケフィアなどです。

条件は、2028年までにEUの生産基準に合わせること

新しい枠には条件が付いています。決定で協定に加えられた附属書I-Eは、ウクライナが2028年12月31日までに、付録Cに並ぶEUの法令に自国の法律を合わせることを求めています。付録Cには、家畜の飼育・輸送・と畜の際の動物福祉、農薬の販売と使用、動物用医薬品、飼料、遺伝子組換え作物などの規則・指令が並んでいます。

ウクライナは毎年、進み具合を報告し、2028年末までに最終報告を出します。欧州委員会が「合わせた」と判断できなければ、協議を経て、EUは該当する品目の優遇の全部または一部を止めることができます(附属書I-E第2条)。

もう一つがセーフガード(緊急の輸入制限)です。追加の関税削減で輸入が増え、どちらかの側に深刻な困難が生じるか、そのおそれがあるとき、その側は通知と協議を経て、適切な措置を取れます。EU側では、加盟国の1つまたは複数で困難が生じた場合も含まれます(附属書I-E第3条)。決定はさらに、2028年に、ウクライナの加盟交渉の進み具合も見ながら、関税撤廃をさらに進めるかを両者で評価すると定めています(第3条)。

ウクライナの側も枠を広げた

見直しは双方向です。ウクライナがEU産品に設けている関税割当は3品目で、欧州委員会の説明資料によれば、豚肉は2万トンから4万5,000トン、鶏肉は2万トンから12万トン、砂糖は4万トンから10万トンに増えました。ウクライナは、乳製品や飼料、魚などでEU産品の関税も下げるかなくします。

全面侵攻の直後にEUが開いた「関税も枠もない」3年間は、ウクライナの経済を支えるための一時的な措置でした。2025年10月からの枠組みは、期限のない協定の一部として、量の上限と、EUの基準への歩み寄りと、緊急の歯止めを組み合わせたものです。

出典と記事の記録出典 11件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. Regulation (EU) 2022/870自律的貿易措置の内容、前文のロシアの侵略戦争への言及、適用期間2023年6月5日まで
    発行:欧州議会・EU理事会 確認日:2026-09-24
  2. Regulation (EU) 2023/10772023年6月6日から2024年6月5日までの延長
    発行:欧州議会・EU理事会 確認日:2026-09-24
  3. Regulation (EU) 2024/13922024年6月6日から2025年6月5日までの延長、第4条第7項の緊急ブレーキの7品目と基準期間
    発行:欧州議会・EU理事会 確認日:2026-09-24
  4. Commission Regulations (EU) 2024/1726, 2024/1825, 2024/1827, 2024/1999, 2024/2166緊急ブレーキで枠を戻したオーツ麦・砂糖・卵・ひき割り穀物・蜂蜜と規則の日付
    発行:欧州委員会 確認日:2026-09-24
  5. Commission Implementing Regulation (EU) 2023/9035か国での小麦・トウモロコシ・菜種・ひまわりの種の予防措置、2023年5月2日
    発行:欧州委員会 確認日:2026-09-24
  6. Commission Implementing Regulation (EU) 2023/1100予防措置の2023年9月15日までの適用
    発行:欧州委員会 確認日:2026-09-24
  7. Decision No 3/2025 of the EU-Ukraine Association Committee in Trade Configuration2025年10月14日採択、第2条の12分の7、第3条の2028年の評価、第5条の発効、附属書I-Eの生産基準・セーフガード、付録Bの関税割当の量、付録Cの法令
    発行:EU・ウクライナ連合委員会(貿易) 確認日:2026-09-24
  8. EU trade relations with UkraineATMの適用期間、緊急ブレーキが作動した5品目、2025年6月30日の原則合意・10月13日の理事会・10月29日の発効
    発行:欧州委員会 通商総局 確認日:2026-09-24
  9. Review of the Deep and Comprehensive Free Trade Area with Ukraine: Questions and Answers2025年7月。見直し前後の関税割当の表、6月6日からの経過措置、ウクライナ側の枠
    発行:欧州委員会 確認日:2026-09-24
  10. DS619 Poland — Measures Concerning Agricultural Products from Ukraine2023年9月18日の協議要請
    発行:世界貿易機関(WTO) 確認日:2026-09-24
  11. DS620 Hungary/DS621 Slovak Republic — Measures Concerning Agricultural Products from Ukraine同日の協議要請
    発行:世界貿易機関(WTO) 確認日:2026-09-24

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