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日本とのつながり/解説

横浜とオデーサ、京都とキーウの姉妹都市は何を約束したのか

姉妹都市には法律上の定義がなく、提携書の本文に書かれるのは多くの場合、友好親善と相互理解の促進です。横浜市とオデーサ市、京都市とキーウ市の提携は、どんな文書で結ばれ、誰が担い、何が続いてきたのか。2023年に横浜とオデーサが結んだ覚書は、目的と期限を書き込んだ、もう一段具体的な文書でした。

日本の自治体とウクライナの自治体の姉妹都市提携として、自治体国際化協会(CLAIR)の姉妹提携データベースに載っているのは2件である。1965年7月1日の横浜市とオデーサ市、1971年9月7日の京都市とキーウ市。どちらも、日本とウクライナの外交関係が開設された1992年より前に結ばれている(その経緯は日本とウクライナの年表で扱った)。

「姉妹都市になった」という一文は、ニュースでもよく目にする。では、その提携は具体的に何を約束しているのか。提携を結ぶことと、交流が続くことは、同じことなのか。二つの提携の記録を、文書・目的・担当・活動実績に分けて見ていく。

姉妹都市には、法律上の定義がない

CLAIRの「姉妹自治体提携Q&A」は、最初にこう書いている。姉妹(友好)自治体の定義について、法律上定められているものはない。交流は人と人とが触れ合う自由な発想のもとに行われるもので、定義づけになじまないからだと考えられる、と。

そのうえでCLAIRは、統計を取るための基準として、次の三つをすべて満たすものを「姉妹(友好)自治体」として扱っている。

  • 両首長による提携書があること
  • 交流分野が特定のものに限られていないこと
  • 議会の承認を得ていること(交流には何らかの予算措置が必要になると考えられるため)

京都市も、自らの「姉妹都市とは」のページでこの三つの要件を引いている。CLAIRによれば、日本で最初の姉妹自治体提携は1955年12月の長崎市と米国セントポール市で、提携数は現在1,700件を超える。「姉妹都市」「友好都市」「友好交流都市」と名前が違っても、三つの基準を満たせば同じ扱いになる。京都市は姉妹都市とは別に、特定の分野に絞って民間の交流を主体とする「パートナーシティ」という枠も設けている。分野を限らないことが、姉妹都市の条件の一つだからである。

提携書に書かれるのは「友好」まで

では、その提携書には何が書かれるのか。CLAIRのQ&Aによれば、表題は「盟約書」「宣言書」「共同宣言」「友好協定」などさまざまで、本文には両国・両市民の友好親善や相互理解の促進が記される。今後の交流の中身について話し合ったことは、提携書とは別に合意書として作ることもあり、個別具体の事柄は提携書に盛り込まず別立てにした方が無難だという。

提携書には双方の首長が署名し、署名の日付が多くの場合そのまま提携日になる。首長が代わっても提携書の効力は変わらない。

つまり、姉妹都市の提携書そのものは、多くの場合「何を、いつまでに、誰がする」という約束の文書ではない。友好関係を結ぶという意思の確認である。具体的な約束は、あるとすれば別の文書に書かれる。

二つの提携は、どんな文書で結ばれたか

CLAIRのデータベースは、提携ごとに「提携日の根拠」「提携協定書の有無」「提携委員会等の組織」を載せている。二つの提携を並べると、記録のされ方がかなり違う。

項目横浜市 ─ オデーサ市京都市 ─ キーウ市
提携日1965年7月1日1971年9月7日
提携日の根拠記載なし両市長宣言文調印の日
提携協定書「無」「有」(名称:姉妹都市宣言書)
提携委員会等横浜・オデッサ友好委員会(1966年7月25日設立)なし
きっかけ(各市の説明)1964年にオデーサ市から打診。ともに戦火からの復興を経験した国際港湾都市であることが縁1958年に駐日ソ連大使が京都市長に提案、翌年キーウ市長から書簡で正式に申し入れ
自治体国際化協会(CLAIR)姉妹提携データベースの各提携の詳細ページ、横浜市・京都市の公式ページによる(確認日2026年9月23日)。委員会名はCLAIRのデータベースの表記のまま(同データベースは市名も「オデッサ」と表記している)。

横浜市の欄の「無」は、CLAIRのデータベース上の記載である。提携の際にどんな文書が交わされたのか、あるいは交わされなかったのかは、横浜市の公式ページでは確認できない。京都市側は、1971年に京都市長がキーウ市を訪問して「姉妹都市結成宣言」を行ったと説明し、CLAIRのデータは提携にあたって市会の承認を得たと記している。ただし宣言書の本文は公開されていない。

目的と期限を書き込んだ、もう一つの文書

具体的な約束の例は、2023年に現れる。2023年3月16日、横浜市とオデーサ市は「持続可能な都市発展に向けた技術協力に関する覚書」を結んだ。横浜市は記者発表資料に覚書の全文を載せている。

前文は、1965年7月1日の姉妹都市提携以来、行政・文化・医療などの分野で交流を重ねてきたこと、2022年2月24日のロシア連邦による侵略の開始以降、横浜市が移動式浄水装置や防寒服を供与するなどの緊急人道支援を行ったことを述べる。そのうえで合意した内容は三つである。

  • オデーサ市とその周辺都市における都市インフラの復旧・復興と持続可能な開発について協力を進める
  • 各国の法令の範囲内で、安全保障上の利益を考慮しつつ、必要な情報を相互に提供する
  • 協力の方法や実施内容は、両者が別途協議して決める

覚書は署名の日から効力を持ち、「2026年3月31日まで有効」とされた。両者が協力の結果を評価し、合意すれば更新できる。日本語・ウクライナ語・英語で作成され、意見が分かれたときは英語版に基づいて協議する、とも定めている。

姉妹都市の提携書が期限を持たない友好の宣言だとすれば、この覚書は、分野(都市インフラの復旧・復興)と期限と見直しの手続きを持つ文書である。それでも、何をどれだけするかは「別途協議」に委ねられている。覚書を結んだことと、個々の事業が実行されたことは、また別に確かめる必要がある。

京都市とキーウ市の間にも、提携後の文書がある。京都市の交流記録によれば、2011年1月、ウクライナ大統領の京都訪問の際の歓迎行事で「キーウ市と京都市の協力に関する議定書」の調印式が行われ、同年9月の提携40周年の訪問でも両市長が議定書に調印した。これらの議定書の本文は、京都市の公式ページでは公開されていない。

誰が担っているのか

提携の文書に署名するのは市長だが、日々の交流を動かすのは別の人たちである。

市の側では、国際交流の担当部署が窓口になる。ただし、その名前は変わる。横浜市のオデーサ関連の記者発表を見ると、2023年3月は国際局国際協力課、2025年8月は国際局グローバルネットワーク推進課が担当で、横浜市ウクライナ支援ポータルの問い合わせ先は政策経営・国際戦略局グローバル都市戦略課になっている。京都市の2026年7月の発表は、総合企画局国際都市共創推進室の担当である。

市民の側にも担い手がいる。横浜市によれば、提携の翌年の1966年に市民による横浜オデッサ友好委員会ができ、2004年1月にはウクライナの学術団体から賞を受けた。京都市の記録には、2002年6月に「京都キーウ交流の会」が発足したとある。2022年以降、京都市のキーウ支援の寄付金の受け皿になっているのは「姉妹都市キーウ市支援事業実行委員会」である。

活動の記録を、どう読むか

横浜市が公開している「オデーサ市とのこれまでの交流史(1965年〜2014年)」を見ると、1960年代後半には経済使節団や市民団の往来があり、1980年代末から1990年代初めにかけては、市民団、スポーツチーム、劇団の往来が毎年のように並ぶ。1991年10月には保健医療交流団の派遣が始まった。一方、2000年代に入ると、記録は5年ごとの周年事業が中心になる。2011年には、東日本大震災に際してオデーサの市民と学校から、横浜市を通じて被災地に義援金が届いている。

2022年2月以降、記録は再び密になる。オデーサ市への移動式浄水装置の供与、2022年7月から8月のオデーサの柔道クラブの子どもたちの一時避難の受け入れ、2023年3月のオデーサ市長による横浜市会本会議場での演説と覚書の締結。2024年7月には横浜市と国連開発計画(UNDP)がウクライナ支援での連携に合意し、爆風で被害を受けたオデーサ市第141保育園の復旧を支援している。横浜市によれば、UNDPがウクライナ国外の自治体とこの種の合意文書を結んだのは世界で初めてだった。2025年8月には、この保育園に遊具などを整えるためのクラウドファンディングが始まった。

京都市の記録も似た形をしている。キーウ市のページに並ぶ交流は、2001年の提携30周年、2011年の40周年、2016年のキーウ市長の来訪、2017年の京都市代表団のキーウ訪問など、周年と要人の往来が軸で、一覧は2018年10月で終わっている。2022年以降は別のページに、市長と市会議長の連名の親書(2022年2月16日、2023年2月24日)、両市長のオンライン会談(2022年4月6日)、寄付金6,079万9,548円の送金(2022年5月13日)、毛布やカイロ、救急医療用品の送付が続く。2026年7月28日には、市立小・中学校で使い終えた学習用パソコン1,400台が、キーウ市内の学校に向けて出港した(到着は10月中旬から下旬の予定)。

二つの記録から読み取れるのは、提携そのものは60年、55年と途切れずに続いていても、交流の密度は時期によって大きく変わるということだ。そして、公式ページの一覧は、市が記録として選んで載せたものである。一覧に載っていない年に何もなかったとは限らないし、一覧の最終更新日より後のことは、そこには書かれていない。

協定を結ぶことと、交流が続くこと

姉妹都市の提携書は、首長が代わっても効力が変わらない。その意味で、協定は続く。しかし交流には予算がかかり、だからこそCLAIRは議会の承認を姉妹都市の条件に入れている。事業を動かすのは担当部署と市民の団体で、具体的な協力は、目的と期限を書いた別の文書で決められることがある。

姉妹都市の記事やニュースに出会ったら、四つを分けて見るとよい。どんな文書が交わされ、それは公開されているか。その文書は友好の宣言か、分野と期限を持つ合意か。いま担っている部署と団体はどこか。そして、日付のついた活動の記録が、いつまで更新されているか。

出典・参考資料

  1. 姉妹(友好)都市提携数(CLAIRが「姉妹都市」として扱う三つの要件)
    発行:一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR) 確認日:2026-09-23
  2. 姉妹提携データ 当該国・地域別提携相手先一覧 ウクライナ(登録2件)
    発行:一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR) 確認日:2026-09-23
  3. 姉妹提携データ 横浜市─オデッサ市(提携年月日、提携日の根拠、提携の動機及び経過、提携委員会等、提携協定書の有無)
    発行:一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR) 確認日:2026-09-23
  4. 姉妹提携データ 京都市─キーウ市(提携年月日、提携日の根拠、提携の動機及び経過、提携委員会等、提携協定書の有無と名称)
    発行:一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR) 確認日:2026-09-23
  5. 姉妹自治体提携Q&A Q1〜Q2・Q6・Q8(法律上の定義がないこと、1955年の最初の提携、1,700件超、名称の違い、提携書の内容と効力、期限付き提携)
    発行:一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR) 確認日:2026-09-23
  6. オデーサ市(最終更新2026年1月1日。提携の経緯、交流史、横浜オデッサ友好委員会)
    発行:横浜市 確認日:2026-09-23
  7. オデーサ市とのこれまでの交流史(1965年〜2014年)(PDF)
    発行:横浜市 確認日:2026-09-23
  8. オデーサ市と「持続可能な都市発展に向けた技術協力に関する覚書」を締結しました(令和5年3月16日記者発表。覚書全文を含む)
    発行:横浜市 国際局国際協力課 確認日:2026-09-23
  9. 国連開発計画(UNDP)と連携してクラウドファンディングを開始(令和7年8月5日記者発表)
    発行:横浜市 国際局グローバルネットワーク推進課 確認日:2026-09-23
  10. 横浜市と国連開発計画(UNDP)が世界初の連携で、オデーサ市の保育園の復旧を支援します(2024年7月)
    発行:横浜市ウクライナ支援ポータル 確認日:2026-09-23
  11. 横浜市とオデーサ市について(問い合わせ先の部署、一時避難の受け入れ期間)
    発行:横浜市ウクライナ支援ポータル 確認日:2026-09-23
  12. 姉妹都市とは(CLAIRの要件の引用、京都市の姉妹都市一覧)
    発行:京都市 確認日:2026-09-23
  13. パートナーシティとは
    発行:京都市 確認日:2026-09-23
  14. キーウ(キエフ)市(ウクライナ)(提携のいきさつ、これまでの主な交流内容)
    発行:京都市 確認日:2026-09-23
  15. 【お知らせ】京都市長とキーウ(キエフ)市長とのオンライン会談の開催結果について(2022年4月6日)
    発行:京都市 確認日:2026-09-23
  16. 【お知らせ】キーウ市への寄付金の送金(第1回目)について(2022年5月16日)
    発行:京都市 確認日:2026-09-23
  17. ロシアによるウクライナ侵攻1年に際しての姉妹都市キーウ市長宛て親書の送付について(2023年2月24日)
    発行:京都市 確認日:2026-09-23
  18. 【お知らせ】ウクライナ情勢の悪化に対する姉妹都市・キエフ市への親書の送付について(2022年2月16日)
    発行:京都市 確認日:2026-09-23
  19. 姉妹都市キーウ市への支援物資発送のお知らせ(第5次支援)(2026年7月30日。これまでの物資支援の内訳、寄付金の受け皿)
    発行:京都市 総合企画局国際都市共創推進室 確認日:2026-09-23

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