本文へ移動

ウクライナの人・文化・社会・未来を、日本と世界につなぐ

Ukrainavi Ukrainavi

文化・歴史/解説

ホームズのゲームを11本つくった、キーウのFrogwares

キーウのゲーム会社Frogwaresは2000年に設立され、会社の作品一覧には題に「シャーロック・ホームズ」が入るゲームが11本あります。アイルランドの子会社、数え方で変わる作品の数、『The Sinking City』の権利をめぐる発売元との争い、全面侵攻のあとの開発を、会社の発表と報道から見ていきます。

イメージ画像

オリュカのひとこと

ホームズのゲームは、何本あるのでしょう。数え方の見出しで確かめられます。

シャーロック・ホームズを主人公にしたゲームを、20年以上にわたってつくってきた会社がキーウにあります。Frogwares(フロッグウェアズ)です。会社の作品一覧には、2002年の『Sherlock Holmes: The Mystery of the Mummy』から2023年の『Sherlock Holmes The Awakened』まで、題に「シャーロック・ホームズ」が入る作品が11本並んでいます。

会社は2000年の設立で、ウクライナとアイルランドを拠点としています。2019年にはホームズとは別の作品『The Sinking City』を出し、その販売の権利をめぐって発売元と4年あまり争いました。2026年8月18日には続編『The Sinking City 2』を発売しています。会社の発表と報道から、この会社の歩みを見ていきます(2026年10月時点)。

2000年、キーウで設立

Frogwaresの公式サイトの会社紹介は、2000年に設立された独立系のゲーム開発スタジオで、拠点はウクライナとアイルランドだと書いています。会社は2020年8月26日、Steamの告知で「Frogwaresは今日で20歳になった」と記念しています。

キーウの英字紙Kyiv Post(2019年8月)によれば、会社をつくったのはフランス人のワエル・アムル(Waël Amr)です。もう一人のフランス人とともに、2000年にキーウで設立しました。社名は、英語でフランス人をからかって呼ぶ「froggies」にちなんだ自嘲だと説明しています。6人で始めたチームは、記事の時点で80人を超え、その多くがウクライナの人でした。

同じ記事によれば、会社は最初からアイルランドのダブリンに子会社を置き、西側の会社と取引するための法人として使ってきました。2000年代のウクライナではドルやユーロが流通しておらず、通貨フリヴニャは値動きが大きくて取引に使うのは危うかった、とアムルは話しています。会社の公式サイトの著作権表示は「Frogwares Ireland Ltd」で、ゲームなどの分野で「Sherlock Holmes」の名を使うには「Frogwares Ireland」の同意が要ると書いています。

作品の年表

会社紹介のページにある作品の一覧(「2000年から開発してきたゲーム」)を、古い順に並べ直しました。2024年以降の2本は、Steamの告知で確かめた発売日です。

年作品典拠
2002年Sherlock Holmes: The Mystery of the Mummy会社の作品一覧
2003年Journey to the Center of the Earth会社の作品一覧
2004年Sherlock Holmes: Secret of The Silver Earring(The Case of the Silver Earring)会社の作品一覧
2005年80 Days会社の作品一覧
2006年Sherlock Holmes: The Awakened会社の作品一覧
2007年Sherlock Holmes versus Arsene Lupin会社の作品一覧
2008年Dracula: Origin会社の作品一覧
2008年Sherlock Holmes: The Awakened Remastered会社の作品一覧
2009年Sherlock Holmes versus Jack the Ripper会社の作品一覧
2012年The Testament of Sherlock Holmes会社の作品一覧
2013年Magrunner: Dark Pulse会社の作品一覧
2014年Sherlock Holmes: Crimes and Punishments会社の作品一覧
2016年Sherlock Holmes: The Devil’s Daughter会社の作品一覧
2019年The Sinking City会社の作品一覧
2021年11月16日Sherlock Holmes Chapter One会社の作品一覧
2023年4月11日Sherlock Holmes The Awakened会社の作品一覧
2025年5月13日The Sinking City RemasteredSteamの告知
2026年8月18日The Sinking City 2Steamの告知
会社の作品一覧は公式サイトの会社紹介のページ(2024年4月13日の保存版で確認)。同じ一覧には『The Mystery of the Mummy』のニンテンドーDS版も別の行で載っている。
  1. オリュカ

    数え方で変わるって、どういうことかな。

  2. タブリ

    どの一覧で数えたかは、この見出しの最初の段落にあるよ。

  3. スウネ

    別の売り方の話は、二つ目の段落にあるね。

ホームズのゲームは何本か:数え方で変わる

会社の作品一覧で、題に「シャーロック・ホームズ」が入るのは11本です。ただし、この数え方では、2006年の『The Awakened』と、それを2008年につくり直した版、2023年に一から作り直した版が、それぞれ1本に数えられています。

一方、Steamで会社が売っている詰め合わせ「Sherlock Holmes Complete Adventures」は、「これまでに出たホームズとワトソンのすべての冒険」をうたい、11本のゲームを収めています。こちらには、会社の作品一覧にない『The Mystery of the Persian Carpet』と『Sherlock Holmes and The Hound of The Baskervilles』が入り、2002年の『The Mystery of the Mummy』と2006年版の『The Awakened』は入っていません。どちらも11本ですが、中身は同じではありません。

  1. オリュカ

    同じゲームなのに、題が二つあるのかな。

  2. ヨリクネ

    どの作品の話かは、この見出しの最初に出ているよ。

  3. タブリ

    題の違いは、この見出しの本文で見比べられるね。

同じ作品の、別の題

2007年の『Sherlock Holmes versus Arsene Lupin』は、Steamでは『Sherlock Holmes – Nemesis』という題で売られています。Steamの紹介文は、フランスの若い怪盗アルセーヌ・ルパンがスコットランド・ヤードとホームズに挑戦する話だとしています。2004年の作品も、会社の一覧に「Secret of The Silver Earring」と「The Case of the Silver Earring」の二つの題が並べて書かれ、Steamでは『Sherlock Holmes: The Silver Earring』です。

オリュカのひとこと

若いホームズとは、どんな作品なのでしょう。この見出しで確かめられます。

若いホームズへ

2021年11月16日に出た『Sherlock Holmes Chapter One』について、会社は2020年7月のSteamの告知で、世界でいちばん有名な探偵の知られていない一面、つまり若いころを描くことにした、と書いています。

2022年7月29日、会社は次の作品が、2006年の『The Awakened』を一から作り直し、物語も大きく書き直したものだと発表しました。若いホームズが、知り合ったばかりのワトソンと、初めての大きな事件に挑む話です。H. P. ラヴクラフトの作品から着想を得た物語で、その前は「Project Palianytsia(パリャヌィツャ計画)」という仮の名前で予告していました。

『The Sinking City』の権利をめぐる争い

『The Sinking City』は、ラヴクラフトの作品に着想を得た、1920年代の水没した町を舞台にしたゲームです。発売元はフランスのBigben Interactive/Nacon(ナコン)でした。2020年8月、作品はいくつかのオンラインの販売店から消えます。英国のゲーム媒体VGCが掲載したFrogwaresの声明と、Naconの発表から、双方の言い分を並べます。

Frogwaresの声明によれば、契約は制作が始まって2年後の2017年に結んだ「ライセンス契約」で、資金の一部を出してもらう代わりに、4つの販売先で売る権利を渡したもので、作品の知的財産は自分たちのものだといいます。発売元の支払いが遅れ続け、2019年8月に訴えを起こし、2020年4月20日に契約を打ち切ったと説明しています。Naconは、声明は契約の内容を誤って解釈していると反論し、作品の開発は「主にNACONが資金を出した」としています。

Naconが2021年1月5日に出した発表によれば、パリ控訴院は2020年10月28日、Frogwaresによる契約の打ち切りを「明らかに違法」とし、契約の期間が終わるか、契約違反についての判断が出るまで、契約を続けるよう命じました。一方、Frogwaresは、Steam向けの版を渡せというNaconの求めを裁判所は2020年7月と10月の二度退けた、と主張しています(英国の媒体TheSixthAxisによる)。2021年2月にNaconがSteamで売り出した版について、Frogwaresは改ざんされた海賊版だとして削除を求め、Naconはこれを否定しました(Game Informer、TheSixthAxisによる)。

2024年1月2日、Frogwaresは、自分たちがすべての販売先で『The Sinking City』の唯一の発売元になったと発表し、「ようやくこの件をすべて終わりにできてうれしい」と書きました。判決によるのか、話し合いによるのかは、この発表には書かれていません。

2022年からの作品づくり

2022年5月16日、会社はEpic Gamesの助成金「Epic MegaGrant」を受けたと発表しました。助成金は、社員をより安全な地域へ移し、ウクライナの奥の地域やEUの国へ移った人の暮らしを支えることに使うと書いています。

2022年7月の発表では、作り直しの『The Awakened』をクラウドファンディングのKickstarterで支援を募って完成させる理由を、戦争が次々に新しい課題を投げかけ、本来は制作に回すお金が必要になるからだと説明しました。2023年4月11日に発売したあと、会社は、2022年の初めには社内の全員でつくる別の作品を計画していたが、戦争でその計画は崩れた、と振り返っています。

Game Developerによれば、会社は自分たちが管理するオンラインの販売店でロシア向けの販売をやめ、『The Awakened』からロシア語の対応を外しました。2025年3月には『The Sinking City 2』の支援をKickstarterで募り、チームはウクライナにいて、完全に独立したままだと書いています。

停電と攻撃のなかでの開発

2023年2月16日、会社は『The Awakened』の発売を延ばすと告知し、民間のインフラへの攻撃で停電が続き、制作の流れを丸ごとやり直さなければならなかったと書いています。2025年10月21日には『The Sinking City 2』の発売を2026年の前半へ延ばすと発表し、ドローンやミサイルによる攻撃と停電を理由に挙げました。実際の発売は2026年8月18日です。家庭の停電の予定表は電気の料金と停電の記事にあります。

キーウのゲーム会社の中で

同じキーウでは、GSCゲームワールドが『S.T.A.L.K.E.R.』をつくっています(GSCの記事)。

2014年の献辞

Kyiv Postは2019年の記事で、2014年の『Sherlock Holmes: Crimes and Punishments』が、ユーロマイダンで亡くなった人びと「天上の百人」にささげられたことを伝えています(「天上の百人」は尊厳と自由の日の記事)。

出典と記事の記録出典 19件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. Company and Licensing2000年の設立、ウクライナとアイルランドの拠点、2000年からの作品一覧、商標と著作権の持ち主。2024年4月13日の保存版
    発行:Frogwares(Frogwares Ireland Ltd) 確認日:2026-10-31
  2. Frogwares turns 20!2020年8月26日
    発行:Frogwares(Steamの告知) 確認日:2026-10-31
  3. Where we are going with a young Sherlock2020年7月6日
    発行:Frogwares(Steamの告知) 確認日:2026-10-31
  4. Frogwares receives Epic MegaGrant2022年5月16日。2024年6月13日の保存版
    発行:Frogwares 確認日:2026-10-31
  5. Sherlock Holmes The Awakened revealed. Kickstarter incoming.2022年7月29日。作り直し、若いホームズ、Project Palianytsia、Kickstarterの理由
    発行:Frogwares(Steamの告知) 確認日:2026-10-31
  6. A few words on the Sherlock Holmes The Awakened Release Date2023年2月16日。発売の延期と停電
    発行:Frogwares(Steamの告知) 確認日:2026-10-31
  7. A thank you from us to you2023年4月28日。2022年初めの計画の変更
    発行:Frogwares(Steamの告知) 確認日:2026-10-31
  8. Frogwares is now the sole publisher of The Sinking City2024年1月2日
    発行:Frogwares(Steamの告知) 確認日:2026-10-31
  9. The Sinking City Remastered Is Out Now!2025年5月13日
    発行:Frogwares(Steamの告知) 確認日:2026-10-31
  10. The Sinking City 2 Kickstarter is Live!2025年3月6日。ウクライナのチーム、独立
    発行:Frogwares(Steamの告知) 確認日:2026-10-31
  11. New Release Window, Brand New Screenshots and UE5 Interview2025年10月21日。2026年前半への延期と理由
    発行:Frogwares(Steamの告知) 確認日:2026-10-31
  12. The Sinking City 2 is Out Now!2026年8月18日
    発行:Frogwares(Steamの告知) 確認日:2026-10-31
  13. Sherlock Holmes Complete Adventures(収録作品の一覧)/Sherlock Holmes - Nemesis紹介文
    発行:Valve(Steam) 確認日:2026-10-31
  14. NACON apprises partners that The Sinking City returns to stores2021年1月5日。パリ控訴院の2020年10月28日の決定
    発行:NACON(フランス金融市場庁 AMF 提出の発表) 確認日:2026-10-31
  15. The Sinking City's developer details huge publisher row leading to store removal2020年8月25日。Frogwaresの声明とNaconの反論
    発行:VGC 確認日:2026-10-31
  16. Nacon fires back at Frogwares in The Sinking City dispute2021年3月4日。双方の発表
    発行:TheSixthAxis 確認日:2026-10-31
  17. Frogwares accuses publisher Nacon of pirating The Sinking City to sell on Steam2021年3月1日
    発行:Game Informer 確認日:2026-10-31
  18. Meet Ukrainian game studio behind hit detective games2019年8月2日。創業者、ダブリンの子会社、社名、6人から80人、天上の百人への献辞
    発行:Kyiv Post 確認日:2026-10-31
  19. How Russia's invasion of Ukraine is affecting developers like Frogwares2023年6月2日。ロシアでの販売停止、ロシア語対応の削除
    発行:Game Developer 確認日:2026-10-31

記載内容に誤りを見つけた場合は、訂正のご連絡からお知らせください。確認のうえ、訂正した内容と経緯を記事に記載します。