日本とウクライナの年表を、原資料で日付を確かめられる行だけで作る
日本とウクライナの関係の年表を、政府・自治体・国会の原資料を実際に開いて日付を確認できた出来事だけで組み直しました。確認できなかった出来事は落としています。税・支援・避難者の数字は、何の数字なのかを列に書き分けました。
日本とウクライナの関係の年表は、検索すればいくつも出てくる。ただ、そのうちのどの一行が、どの資料で確かめられるのかは、たいてい書かれていない。この記事では逆の順番で作った。先に原資料を開き、日付と発表主体がその本文に書いてあるものだけを年表に入れた。書いていなかったものは落とした。
この年表の作り方
入れる条件を三つに決めた。
- 日本政府・ウクライナ政府またはその機関、日本の自治体、国会の記録など、当事者が自ら出した資料であること
- そのページを実際に開いて、本文を読めたこと
- 日付が、そのページの本文に書いてあること
二つ目の条件が、思ったより効いた。日本とウクライナの関係を日付で書いている日本側の公式資料は、実のところ外務省の「ウクライナ基礎データ」にかなり集中している。国家承認日、外交関係開設日、大使館の開館、二国間の条約・取極の一覧、要人往来の表。ここを読めるかどうかで、年表の厚みが変わる。この記事では、同ページの本文(令和8年9月3日付)を実際に取得して確認したうえで、そこに書かれている日付を採った。
それでも確認できなかったものは落とした。落としたということは「なかった」という意味ではない。この作り方では裏が取れなかった、という意味である。落とした項目は記事末尾の「確認できていないこと」にまとめてある。
国と国より先に、都市どうしがつながっていた
古い順に並べると、年表のいちばん上に来るのは外交ではなく自治体である。
| 日付 | 出来事 | 発表主体(確認に使った資料) |
|---|---|---|
| 1965年7月1日 | 横浜市とオデーサ市が姉妹都市提携 | 横浜市 |
| 1971年9月7日 | 京都市とキーウ市が姉妹都市提携 | 京都市 |
| 1986年11月27日 | 日本とソビエト連邦の租税条約が発効 | 財務省 |
| 1991年12月28日 | 日本がウクライナを国家承認 | 外務省 |
| 1992年1月26日 | 日本とウクライナの外交関係を開設 | 外務省/宮澤喜一内閣総理大臣の施政方針演説(1992年1月28日 衆議院本会議) |
| 1993年1月 | 在ウクライナ日本大使館が開館(在京ウクライナ大使館は1994年9月開館) | 外務省 |
| 1995年3月 | 日ソ間で結んだ条約の承継を確認 | 外務省 |
| 2004年6月 | 技術協力・無償資金協力協定 | 外務省 |
| 2006年5月22日 | JICA「ウクライナ日本人材開発センタープロジェクト」開始(2011年5月21日まで) | JICA |
| 2012年5月 | 原子力発電所における事故へのその後の対応を推進するための協力に関する日本国政府とウクライナ政府との間の協定 | 外務省 |
| 2015年2月5日 | 日・ウクライナ投資協定(投資の促進及び保護に関する日本国とウクライナとの間の協定)にキーウで署名 | 内閣法制局 |
| 2015年6月 | 安倍晋三内閣総理大臣がウクライナを訪問 | 外務省 |
| 2015年11月26日 | 同投資協定が発効 | ジェトロ(外務省の条約・取極一覧では「2015年11月」) |
| 2017年 | 外交関係樹立25周年。「ウクライナにおける日本年」として各地で行事 | 外務省 |
| 2019年10月 | ゼレンスキー大統領が即位の礼に参列するため来日 | 外務省 |
| 2020年1月1日 | BEPS防止措置実施条約が、ウクライナが承継した日ソ租税条約に適用開始 | 財務省 |
横浜とオデーサが1965年、京都とキーウが1971年。いずれも、日本とウクライナのあいだに外交関係ができる20年以上前で、当時のウクライナはソビエト連邦の一部だった。京都市の説明によれば、提携の話は1958年に当時の駐日ソ連大使が京都市長に持ちかけたところから始まり、約10年の交流を経て1971年の提携に至っている。京都市は2022年4月1日から、文書の表記を「キーウ(キエフ)」に改めたとしている。
外交関係の開設日については、外務省の基礎データが「1992年1月26日」と書いているほか、同じ日付を当時の国会記録からも確認できる。1992年1月28日の衆議院本会議、宮澤喜一内閣総理大臣の施政方針演説である。
一月二十六日には、ウクライナ等五共和国との外交関係を樹立いたしました。
宮澤喜一内閣総理大臣 施政方針演説、1992年1月28日 衆議院本会議(国立国会図書館 国会会議録検索システム)
いずれも「日本政府がそう述べた」という記録であって、それ以上でも以下でもない。ただ、同じ日付が、いまの外務省のページと当時の議事録という性格の違う二つの資料に出てくる。年表の一行としては、これで十分に足が付く。国家承認はその前年の1991年12月28日で、こちらは外務省の基礎データでのみ確認した。
1986年の条約が、2025年まで生きていた
この年表のなかで、日本の企業と個人にいま直接効くのは税のルールである。日本とウクライナのあいだの租税条約は、長いあいだ「日ソ租税条約」だった。1986年11月27日に発効した日本とソビエト連邦の条約を、ソ連解体後にウクライナが承継した形で使い続けていた。財務省の租税条約等の一覧(2026年6月26日現在)でも、ウクライナは「旧ソ連との間の条約が承継されています」と注記された国のひとつとして載っている。
これが全面的に改められた。新しい条約は2024年2月19日に署名され、2025年8月1日に発効した。源泉所得税に関する規定は、2026年1月1日以後に支払うべきものから適用される。つまり、この記事を読んでいる時点では、すでに新しい税率で動いている。
| 所得の種類 | 改正前(1986年発効の日ソ租税条約) | 改正後(2026年1月1日以後に支払うべきもの) |
|---|---|---|
| 配当 | 15% | 5%(議決権保有割合25%以上・保有期間6か月以上)/15%(その他) |
| 利子 | 免税(政府受取等)/10%(その他) | 免税(政府受取等)/5%(金融機関受取、年金基金受取等)/10%(その他) |
| 使用料 | 免税(著作権)/10%(その他) | 5% |
国税庁のパンフレットは、限度税率以外の変更点も挙げている。短期滞在者免税の183日の数え方が「他方の締約国の課税年度において開始し、又は終了するいずれの12か月の期間」を基準に見直されたこと。免税の対象が勤務による報酬に限られ、自由職業の役務による報酬は対象外になったこと。大学等で教育を行う個人の2年間の免税規定が廃止されたこと(発効日時点で旧条約の特典を受ける権利がある人には経過措置がある)。そして、ウクライナの居住者が軽減・免除を受けるには、2026年1月1日以後に最初に支払を受ける日の前日までに「租税条約に関する届出書」を源泉徴収義務者を経由して提出する必要があること。
2022年2月24日以降
2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの全面侵攻のあと、日本側の動きは日付のついた公式発表として残るようになった。ここから先は、原資料が見つけやすくなる。
| 日付 | 出来事 | 発表主体(確認に使った資料) |
|---|---|---|
| 2022年2月24日 | ロシアによるウクライナへの全面侵攻。同日、内閣総理大臣記者会見 | 首相官邸(英語版) |
| 2022年2月26日 | 外国為替及び外国貿易法に基づく措置(財務省が掲載する一連の措置のうち最も古いもの) | 財務省 |
| 2022年3月8日 | 自衛隊の装備品の供与に係る書簡の署名・交換 | 首相官邸(英語版) |
| 2022年3月18日 | ウクライナ避難民対策連絡調整会議 第1回会合(第2回は4月1日) | 内閣官房 |
| 2022年6月17日 | JICAが緊急経済復興開発政策借款に650億円を追加し、総額780億円に | JICA |
| 2023年3月21日 | 内閣総理大臣がキーウを訪問。首脳会談と「日本・ウクライナ特別グローバル・パートナーシップに関する共同声明」の署名式 | 首相官邸(英語版) |
| 2023年5月 | ゼレンスキー大統領がG7広島サミットに出席するため来日 | 外務省 |
| 2024年2月19日 | 日・ウクライナ経済復興推進会議(東京)。同日、新租税条約に署名 | 首相官邸(英語版)、財務省 |
| 2024年6月13日 | G7プーリア・サミットの機会に「日・ウクライナ支援・協力アコード」に署名 | 首相官邸(英語版) |
| 2025年6月5日 | JICAがキーウで「ウクライナのための特別収益前倒し融資」の貸付契約に調印 | JICA |
| 2025年6月 | 情報保護協定 | 外務省 |
| 2025年8月1日 | 新租税条約が発効 | 財務省、国税庁 |
| 2025年9月12日 | 外国為替及び外国貿易法に基づく措置(財務省が掲載する一連の措置のうち最も新しいもの) | 財務省 |
| 2026年1月1日 | 新租税条約の源泉所得税に係る規定の適用開始 | 国税庁 |
| 2026年4月16日 | 日本を含む公的債権者グループとウクライナ政府が、債務支払猶予の延長に係る覚書(MoU)に署名 | 財務省 |
| 2026年7月 | シビハ外相が来日(外務省の要人往来表でいちばん新しい行) | 外務省 |
円建ての支援額は「限度額」であって、渡した額ではない
金額の入った行は、年表のなかでいちばん読み違えやすい。円借款の2件を並べてみる。
| 調印日 | 借款名 | 金額(供与限度額) | 条件 |
|---|---|---|---|
| 2022年6月17日 | 緊急経済復興開発政策借款(追加分) | 追加650億円、追加後の総額780億円 | 金利年1.0%、返済期間30年(うち据置10年)。世界銀行との協調融資 |
| 2025年6月5日 | ウクライナのための特別収益前倒し融資(ERAローン) | 4,719億円 | 金利TORF+90bp、返済期間30年(据置なし)。返済原資はロシアの国有資産凍結に起因してEUで発生する「特別な収益」 |
どちらも「供与限度額」である。契約で上限として決めた額であって、実際に振り込まれた額ではない。2025年の4,719億円は、返済の原資が日本やウクライナの財政ではなくEUで発生する収益とされている点で、性格がそれまでの円借款と違う。金額だけを並べて「日本の支援は増えた」と言うと、この違いが消えてしまう。
ドル建ての「累計支援額」は、もう少しやっかいである。外務省の基礎データは、この点を一文でこう書いている。2022年2月のロシアによるウクライナ侵略以降、日本は人道、財政、復旧・復興の分野で総額約200億ドルの支援を「表明・実施」している(2025年末時点)。落としてはいけないのは、この「表明・実施」という書き方のほうである。表明しただけの額と実施済みの額がどう足されているのか、内訳がどうなっているのかは、この一文からは分からない。時点も2025年末で、いまの数字ではない。この金額を引用するなら、「2025年末時点」「表明・実施」「人道・財政・復旧復興の合計」という条件を、金額と一緒に運ぶ必要がある。
輸出は戻り、輸入は戻っていない
二国間の貿易額は、財務省貿易統計(普通貿易統計)の「地域(国)別輸出入時系列表」で暦年ごとに確認できる。輸出・輸入はいずれも日本から見た方向である。
| 暦年 | 日本からウクライナへの輸出 | ウクライナから日本への輸入 |
|---|---|---|
| 2021年 | 640.3億円 | 799.2億円 |
| 2022年 | 357.2億円 | 470.6億円 |
| 2023年 | 601.3億円 | 128.5億円 |
| 2024年 | 660.2億円 | 117.6億円 |
輸出と輸入で、動き方が違う。日本からの輸出は2022年に前年の約56%まで落ちたあと、2023年・2024年と2021年の水準近くまで戻っている。ウクライナからの輸入は戻っていない。2021年の799.2億円に対して2024年は117.6億円で、およそ7分の1である。「日本とウクライナの貿易」とひとまとめにして合計額だけを見ると、この非対称が消える。なお2025年の暦年値は、この記事の確認時点では確定値として公表されていない。
避難してきた人の数と、制度の名前
出入国在留管理庁は、ウクライナから日本に来た人の数を更新して公表している。
| 項目 | 人数 |
|---|---|
| ウクライナ避難民として受け入れた人の累計(2022年3月2日以降、ウクライナまたは第三国からの入国者) | 2,902人 |
| うち、日本に在留している人 | 1,931人 |
| 男性/女性(累計) | 887人/2,015人 |
| 18歳未満/18〜60歳/61歳以上(累計) | 363人/2,138人/401人 |
ここで混ぜてはいけないのが制度の名前である。日本が受け入れたウクライナ避難民の在留資格は「特定活動」であり、これは難民認定とは別の手続きである。「避難民」「難民」「補完的保護対象者」は、日常の言葉づかいでは近い意味で使われるが、日本の法律上は別の制度を指す。上の表の数字は、出入国在留管理庁が「ウクライナ避難民」として集計している人数であって、難民認定を受けた人数ではない。
この年表の使い方
ここに並べたのは、一行ずつ出典に辿り着ける出来事だけである。逆に言えば、ここに載っていない出来事が起きなかったわけではない。日付を一つ引用するときは、その日付がどの資料の本文に書いてあったのかを、引用する側が確かめられる形にしておく。年表という形式は、出典の抜けがいちばん目立たない形式でもあるからだ。
出典・参考資料
- ウクライナ基礎データ(令和8年9月3日付)
発行:外務省 確認日:2026-09-23 - ウクライナとの新租税条約が発効します(令和7年7月2日)
発行:財務省 確認日:2026-09-22 - ウクライナとの新租税条約が署名されました(令和6年2月19日)
発行:財務省 確認日:2026-09-22 - 我が国の租税条約等の一覧(2026年6月26日現在)
発行:財務省 確認日:2026-09-22 - 我が国とウクライナとの間の租税条約に対するBEPS防止措置実施条約の適用関係の概要
発行:財務省 確認日:2026-09-22 - 源泉所得税の改正のあらまし 日ウクライナ新租税条約関係(令和7年8月)
発行:国税庁 確認日:2026-09-22 - ウクライナ関連情報(外国為替及び外国貿易法に基づく措置の一覧)
発行:財務省 確認日:2026-09-22 - ウクライナに対する債務支払猶予延長に係る覚書(MoU)の合意について(令和8年4月16日署名)
発行:財務省 確認日:2026-09-22 - 鈴木財務大臣とウクライナのシュミハリ首相及びマルチェンコ財務大臣の面会と日・ウクライナ経済復興推進会議の開催(令和6年2月19日)
発行:財務省 確認日:2026-09-22 - ウクライナ避難民に関する情報(2026年8月31日現在・速報値)
発行:出入国在留管理庁 確認日:2026-09-22 - 第123回国会 衆議院本会議 1992年1月28日 宮澤喜一内閣総理大臣施政方針演説
発行:国立国会図書館 国会会議録検索システム 確認日:2026-09-22 - 第180回国会 衆議院本会議 2012年4月17日(原子力発電所事故後協力協定への言及)
発行:国立国会図書館 国会会議録検索システム 確認日:2026-09-22 - 投資の促進及び保護に関する日本国とウクライナとの間の協定(平成27年条約第9号関係、署名2015年2月5日キエフ)
発行:内閣法制局 確認日:2026-09-22 - 日・ウクライナ投資協定が11月26日に発効
発行:ジェトロ(日本貿易振興機構) 確認日:2026-09-22 - 日・ウクライナ経済復興推進会議(協力文書56件)
発行:ジェトロ ビジネス短信 確認日:2026-09-22 - ウクライナ向け円借款貸付契約の調印(2022年6月17日)
発行:JICA 確認日:2026-09-22 - ウクライナ向け円借款貸付契約の調印(2025年6月5日・ERAローン)
発行:JICA 確認日:2026-09-22 - ウクライナ日本センター(UAJC)プロジェクト期間
発行:JICA 確認日:2026-09-22 - Visit to Ukraine(2023年3月21日、The Prime Minister in Action)
発行:首相官邸(英語版) 確認日:2026-09-22 - Japan-Ukraine Conference for Promotion of Economic Growth and Reconstruction(2024年2月19日)
発行:首相官邸(英語版) 確認日:2026-09-22 - Japan-Ukraine Summit Meeting (Summary)(2024年6月13日・支援協力アコード署名)
発行:首相官邸(英語版) 確認日:2026-09-22 - Response following Russia's aggression against Ukraine(2022年2月24日以降の対応一覧)
発行:首相官邸(英語版) 確認日:2026-09-22 - ウクライナ避難民対策連絡調整会議(第1回2022年3月18日、第2回2022年4月1日)
発行:内閣官房 確認日:2026-09-22 - キーウ(キエフ)市(ウクライナ)姉妹都市提携1971年9月7日
発行:京都市 確認日:2026-09-22 - オデーサ市 姉妹都市提携1965年7月1日
発行:横浜市 確認日:2026-09-22 - 普通貿易統計 確定 24-04 2024年分 地域(国)別輸出入時系列表(1-12月:確定)中東欧・ロシア等(財務省貿易統計をe-Statが配信)
発行:財務省関税局・税関/総務省統計局 e-Stat 確認日:2026-09-22 - 普通貿易統計 2023年分 地域(国)別輸出入時系列表(1-12月:確定)中東欧・ロシア等(財務省貿易統計をe-Statが配信)
発行:財務省関税局・税関/総務省統計局 e-Stat 確認日:2026-09-22
訂正・更新の記録
- 公開時点では外務省のウェブサイトに到達できず、年表から落としていた項目を追加しました。国家承認日(1991年12月28日)、外交関係開設日(1992年1月26日)、両国大使館の開館時期、二国間の協定、日本の支援総額などです。年表は22行から32行になりました。既存の記述に誤りがあったための訂正ではなく、確認できる資料が増えたことによる加筆です。追加した行の出典は「出典・参考資料」に加えています。
記載内容に誤りを見つけた場合は、訂正のご連絡からお知らせください。確認のうえ、訂正した内容と経緯を記事に記載します。

