ウクライナで日本語を学ぶ1,498人。国際交流基金の2024年度調査
国際交流基金の2024年度調査によれば、ウクライナで日本語を教える機関は14、教師は93人、学習者は1,498人で、2021年度より減りました。2012年度からの推移、教師の数え方の変更、キーウの大学で日本語が教えられてきた歴史を、報告書と大学の沿革から見ます。
オリュカのひとこと
ウクライナで日本語を学ぶ人は、どれくらいいるのでしょう。最初の見出しで確かめられます。
ウクライナで日本語を教えている学校や講座は14機関、教師は93人、学習者は1,498人。国際交流基金が2024年9月から12月に行った「海外日本語教育機関調査」の、ウクライナの結果です。3年前の2021年度調査の17機関・105人・2,052人と比べると、どの数字も減っています。
この調査は、国際交流基金が3年おきに世界の日本語教育機関に対して行っているもので、2024年度の結果は2025年9月3日に公表され、2026年3月に一部の集計表が訂正されました。以下は、その報告書と集計表、国際交流基金の「国・地域別情報」ウクライナ(2025年度)、大学の公式の沿革による内容です(2026年9月時点)。
2024年度調査の数字
調査は、学校の段階ごとに機関・教師・学習者を数えています。ウクライナの内訳は次のとおりです。
| 段階 | 機関数 | 教師数 | 学習者数 |
|---|---|---|---|
| 初等教育 | 1 | 3 | 75 |
| 中等教育 | 1 | 3 | 65 |
| 高等教育 | 9 | 57 | 946 |
| 学校教育以外 | 4 | 30 | 412 |
| 合計 | 14 | 93 | 1,498 |
学習者の6割あまりは大学などの高等教育機関にいます。集計表1-1aによれば、高等教育の946人のうち801人が日本語を専攻する学生、135人が専攻以外の学生、10人が課外活動の参加者です。「学校教育以外」は、民間の語学学校や、大学・公的機関が一般の人に開く講座などを指します。
同じ調査の別の表では、14機関のうち11機関が国や自治体などが設けた公的な機関、3機関が民間の機関です。日本語や日本研究の学位を出す高等教育機関は、学士が6機関、修士が6機関、博士が4機関、準学士が1機関あります。報告書によれば、14機関のうち12機関(85.7%)がオンラインの授業を行っており、東欧全体の60.4%より高い割合です。
オリュカのひとこと
学ぶ人の数は、年によって動いてきたようです。この見出しで確かめられます。
2012年度からの推移
| 調査の年度 | 機関数 | 教師数 | 学習者数 | 学習者の内訳(初等・中等・高等・学校教育以外) |
|---|---|---|---|---|
| 2012年度 | 15 | 71 | 1,319 | — |
| 2015年度 | 18 | 97 | 1,523 | 60・163・974・326 |
| 2018年度 | 20 | 97 | 2,174 | — |
| 2021年度 | 17 | 105 | 2,052 | 187・247・1,151・467 |
| 2024年度 | 14 | 93 | 1,498 | 75・65・946・412 |
学習者数は2018年度の2,174人がいちばん多く、2024年度はそこから3割ほど少なくなっています。
調査の年によって、数え方と時期が違う
この表を並べて読むときは、三つの点に気をつける必要があります。
- 教師数の数え方が2024年度から変わりました。2021年度までは各機関に所属する教師の総数でしたが、2024年度は、一人の教師が複数の段階で教えていれば段階ごとに数えています。同じ教師が複数の機関で教えている場合は、どちらの年度も重ねて数えています。
- 2021年度調査のウクライナでの調査期間は、2021年9月から2022年3月でした。ロシアによる全面侵攻が始まった2022年2月をまたいでいます。
- 数えているのは、調査に回答した機関の学習者だけです。国際交流基金の「国・地域別情報」は、回答のあった機関の結果をまとめたものだと注記しています。独学の人や、個人で家庭教師に習う人は入っていません。
全面侵攻のあとの変化
2024年度の報告書は、ロシアによる軍事侵攻で日本語教育機関が一時閉鎖したり、教師を含む関係者が避難を余儀なくされたりする状況が続いており、機関数・教師数・学習者数のいずれも大きく減ったと書いています。一方で、日本からの支援の実績と期待を背景に、新しく学び始める人は増える傾向にあるともしています。調査そのものが難しく、ウクライナ日本語教師会の協力を得て、在ウクライナ日本国大使館の担当者が連絡のとれる機関に直接あたったとのことです。
大学で日本語が教えられてきた歴史
国際交流基金の「国・地域別情報」(2025年度)には、ウクライナの日本語教育の略史があります。大学の公式の沿革と並べると、次のようになります。
| 年 | 出来事 | 典拠 |
|---|---|---|
| 1940年代 | キーウ国立大学で日本語教育が始まるが中断。その後も開始と中断を繰り返す | 国際交流基金 |
| 1990年 | キーウ国立言語大学附属東洋語大学で、日本語を主専攻とする教育が始まる | 国際交流基金 |
| 1995年 | キーウ大学の文献学部に東洋学の課程ができ、中国語・朝鮮語・日本語を教え始める | キーウ大学文献学研究所 |
| 1996年 | キーウ国立大学で日本語が主専攻になり、日本からの教師の派遣が始まる | 国際交流基金 |
| 2004年 | キーウ大学に文献学研究所ができ、中国・朝鮮・日本文献学の講座が設けられる | キーウ大学文献学研究所 |
| 2005年12月 | キーウで初めての日本語能力試験 | 国際交流基金 |
| 2006年 | ウクライナ日本センターが活動を始める(一般向けの日本語講座は10月から) | 国際交流基金 |
| 2016年 | キーウ大学の講座が「極東・東南アジア諸語文学講座」に改組 | キーウ大学文献学研究所 |
| 2026年 | 同じ講座が分かれ、「インドネシア・朝鮮・日本文献学・翻訳講座」ができる | キーウ大学文献学研究所 |
オリュカ
ウクライナの日本語教育は、いつ始まったと言えるのかな。
スウネ
資料ごとに何を始まりとしているかが、この見出しの下に並んでいるよ。
タブリ
大学での出来事の順番は、すぐ上の表でたどれるよ。
「始まり」の年は、何を数えるかで変わる
キーウ大学の日本語教育について、国際交流基金は1940年代に始まって中断をくり返したとし、日本語が主専攻になったのを1996年としています。大学自身の沿革は、東洋学の課程で中国語・朝鮮語・日本語を教え始めたのを1995年としています。さらにさかのぼると、カナダ・ウクライナ研究所の Internet Encyclopedia of Ukraine(1988年の紙版の再録)は、1920年代にハルキウの大学で日本語と日本文学が教えられ、1926年にハルキウで設立された全ウクライナ東洋学協会に日本部門があったと書いています。「いつ始まったか」は、どの町の、どの形の教育を数えるかで答えが変わります。
国際交流基金によれば、いまの高等教育の中心はキーウ国立大学とキーウ国立言語大学で、日本語を主専攻とする大学はリヴィウ、ハルキウ、ドニプロにもあります。
日本語教育を支える取り組み
国際交流基金の「国・地域別情報」(2025年度)によれば、基金はウクライナ日本センターに日本語専門家を1人派遣しています。同センターの一般向け日本語講座は、全面侵攻を受けて2022年2月にいったん止まり、同年4月に再開しました。2023年度の受講者は242人で、10代から20代が多いとされています。センターのプロジェクトとして、日本語の教科書『みんなの日本語 初級』の文法解説のウクライナ語版もつくられました。
日本語能力試験(JLPT)のキーウでの実施と受験者の数は、日本語能力試験の記事にまとめています。日本で暮らすウクライナの人が日本語を学べる場所は、日本語を学べる場所の記事で紹介しています。
出典と記事の記録
出典・参考資料
- 2024年度 海外日本語教育機関調査調査の概要、2025年9月3日の公表、報告書と集計表の一覧
発行:国際交流基金 確認日:2026-09-27 - 総括表1-1a・1-1b 日本語教育機関数・教師数・学習者数2026年3月訂正版。ウクライナ14機関・93人・1,498人、段階別と高等教育の専攻別の内訳
発行:国際交流基金 確認日:2026-09-27 - 集計表2 設置主体別日本語教育機関数、集計表4 日本語・日本研究関係学位授与機関数2024年度
発行:国際交流基金 確認日:2026-09-27 - 2024年度 海外日本語教育機関調査 報告書 第2章「9. 東欧」2021年度との比較、オンライン授業の実施率、ウクライナの状況の記述
発行:国際交流基金 確認日:2026-09-27 - 2024年度 海外日本語教育機関調査 報告書「本調査について」調査期間、教師数の算出方法の変更
発行:国際交流基金 確認日:2026-09-27 - 【お知らせ】2024年度海外日本語教育機関調査 資料内容の一部訂正について
発行:国際交流基金 確認日:2026-09-27 - 2021年度 海外日本語教育機関調査 報告書「東欧」ウクライナ17機関・105人・2,052人と内訳、2018年度の20機関・97人・2,174人、ウクライナの調査期間
発行:国際交流基金 確認日:2026-09-27 - 2018年度 海外日本語教育機関調査 報告書東欧の章、ウクライナの教師数97人・学習者数2,174人、2015年度からの増減
発行:国際交流基金 確認日:2026-09-27 - 2015年度 海外日本語教育機関調査 報告書表2-9-1:2012年の15機関・71人・1,319人、2015年の18機関・97人・1,523人と内訳
発行:国際交流基金 確認日:2026-09-27 - 国・地域別情報 ウクライナ(2025年度)沿革、日本語教育略史、高等教育の状況、ウクライナ日本センター、日本語専門家の派遣
発行:国際交流基金 確認日:2026-09-27 - Кафедра індонезійської, корейської, японської філології та перекладу: Інформація про кафедру2026年の講座の設立
発行:Київський національний університет імені Тараса Шевченка, Навчально-науковий інститут філології 確認日:2026-09-27 - Про кафедру мов і літератур Далекого Сходу та Південно-Східної Азії1995年・2004年・2016年の沿革。2025年12月9日のWayback保存版
発行:Київський національний університет імені Тараса Шевченка, Навчально-науковий інститут філології 確認日:2026-09-27 - Japan1920年代のハルキウでの日本語教育と、1926年の全ウクライナ東洋学協会の日本部門。紙版は1988年
発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(Canadian Institute of Ukrainian Studies) 確認日:2026-09-27
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