2022年2月11日からレベル4。外務省の危険情報の読み方
ウクライナ全土には2022年2月11日から外務省の危険情報レベル4(退避勧告)が出ています。4段階の意味、法的な強制力がないこと、レベルより本文を読むべき理由、「継続」「引き上げ」の見方を、2026年9月時点のウクライナと周辺国の危険情報を例に説明します。
外務省の海外安全ホームページでウクライナを開くと、国全体が「レベル4:退避してください。渡航は止めてください。」と表示されます。ウクライナ全土がこのレベルになったのは、ロシアによる全面侵攻の13日前、2022年2月11日でした。2026年9月の時点でも、全土のレベル4が続いています。
「危険情報」は、日本人が海外へ行くときの判断の目安として、外務省が国や地域ごとに出している情報です。4段階のレベルが目に入りやすいのですが、外務省自身は、大事なのはレベルよりも本文だと書いています。レベルの意味、ページの読み方、そしてウクライナとその周辺国の危険情報を例に、何が書かれているのかを見ていきます。
4段階のレベルの意味
外務省の「『危険情報』とは?」のページは、4段階を次のように説明しています。
| レベル | 外務省の説明 |
|---|---|
| レベル1:十分注意してください。 | その国・地域への渡航、滞在に当たって危険を避けていただくため特別な注意が必要です。 |
| レベル2:不要不急の渡航は止めてください。 | その国・地域への不要不急の渡航は止めてください。渡航する場合には特別な注意を払うとともに、十分な安全対策をとってください。 |
| レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告) | その国・地域への渡航は、どのような目的であれ止めてください。(場合によっては、現地に滞在している日本人の方々に対して退避の可能性や準備を促すメッセージを含むことがあります。) |
| レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告) | その国・地域に滞在している方は滞在地から、安全な国・地域へ退避してください。この状況では、当然のことながら、どのような目的であれ新たな渡航は止めてください。 |
レベル3とレベル4の違いは、すでに現地にいる人への呼びかけにあります。レベル3は新しく行くことを止めるよう求め、レベル4はそれに加えて、いまいる人に出ていくよう求めます。
レベルは、国どうしの危険の比較ではない
同じページは、レベル分けは「危険の度合いを概念的にわかりやすく区分するための工夫」であり、事件や事故の発生頻度を統計で比べたものではない、と断っています。想定すべき危険が、政情不安、暴動、内戦、テロ、一般犯罪、自然災害とさまざまで、国どうしを単純に比べられないからです。また、危険情報が出ていない国も、渡航に危険がないという意味ではない、とも書いています。
危険情報が想定している読み手は、安全対策の専門家ではない一般の個人旅行者です。企業や機関が組織として安全対策をとって人を送る場合とは、渡航すべきかの判断も、とるべき対策も違ってくる、と外務省は説明しています。
法律で渡航を禁じるものではない
海外安全ホームページは、掲載している海外安全情報について次のように書いています。
このホームページに掲載する海外安全情報は、法的な強制力をもって皆様の渡航を禁止したり、退避を命令したりするものではありません。同様に旅行会社の主催する旅行を中止させる効力もありません。
外務省海外安全ホームページ「海外安全情報」(2026年9月確認)
つまり、レベル4の「退避勧告」も、法律上は命令ではなく勧告です。ただし、4段階のうち最も強い呼びかけであることに変わりはありません。外務省は同じページで、「自分の身は自分で守る」との心構えで安全対策に努めるよう求めています。
旅行会社との関係についても、外務省は説明を加えています。旅行会社は、危険情報のレベルにかかわらず、自分の責任で企画旅行を実施するかを判断している。レベルに応じて旅行の中止やキャンセル料の扱いを決める会社もあるが、それは会社の判断であり、キャンセル料など旅行契約の問題は旅行会社と客の間で解決すべきものだ、という内容です。外務省には「レベルを上げてほしい」という要望がたびたび寄せられるが、危険情報は国民の生命・身体への影響を基準に出している、とも書いています。
ページのどこを読むか
ウクライナの危険情報のページは、次の順に並んでいます。
- 地図:地域ごとのレベルを色分けして示す。
- 【危険レベル】:地域とレベル。ただし書き(例外や条件)が付くことがある。
- 【ポイント】:レベルを決めた理由の要約。
- 詳細:概況、地域別の情勢、滞在中に守ることなど。
- 問い合わせ先:外務省の窓口と現地の大使館の連絡先。
外務省は、「重要なのは、4つの目安そのものよりむしろ本文です」と書いています。同じレベルでも、ただし書きや地域の分け方で意味が変わるからです。
見出しとレベルの横にある言葉
危険情報の見出しやレベルの横には、前回からの変化を示す言葉が付きます。ウクライナの危険情報の見出しは「【危険レベル継続】(内容の更新)」で、レベルの横には「《継続》」とあります。過去の発出には「(引き上げ)」「(新規)」も見られます。レベルが同じでも、本文は更新されていることがあります。ページの「更新日」も合わせて見てください。
危険情報とは別の情報
国のページには、危険情報のほかにも情報が並びます。外務省の説明では、「スポット情報」は限られた期間・場所の事件や事故などを速報的に知らせるもの、「広域情報」は特定の国に限らない広い範囲の注意を知らせるものです。感染症については、同じ4段階の区分を使う「感染症危険情報」が、別の基準で出されます。ウクライナのページには、2026年9月時点で感染症危険情報は出ていませんでした。
ウクライナの危険情報は、どう変わってきたか
外務省が月ごとにまとめている過去の発出記録から、2022年初めの動きを並べます。
| 発出日 | 地域 | レベル |
|---|---|---|
| 2022年1月24日 | クリミア自治共和国とセヴァストポリ市/ドネツィク州とルハンシク州 | レベル3(渡航中止勧告)を継続。滞在中の人には、事情が許す限り早期の退避を検討するよう求める |
| 2022年1月24日 | 上記を除く全土 | レベル3に引き上げ |
| 2022年2月11日 | ウクライナ全土 | レベル4(退避勧告)に引き上げ |
| 2026年1月19日(2026年9月時点の最新) | ウクライナ全土 | レベル4を継続 |
2022年2月11日の危険情報は、引き上げの理由を、国境周辺でロシア軍の増強などにより緊張が高まり、隣国ベラルーシではロシアとの軍事演習が始まり、ロシア軍の船舶が新たに黒海に入るなどして、「事態が急速に悪化する可能性が高まっています」と説明していました。今後、民間航空機の運航が止まり出国が非常に難しくなるおそれがあるとして、滞在中の人には民間の商用機を含む最も安全な手段で直ちに退避するよう求めています。13日後の2月24日、ロシアはウクライナへの全面侵攻を始めました。
2026年1月19日付の危険情報は、ロシア軍による地上作戦やミサイル、ドローンなどによる攻撃が続いており、今後も被害が続くと見込まれるとして、全土のレベル4を続けています。キーウ市について、防空体制が強化され直撃は減ったものの、迎撃された破片による被害が出ていること、午前0時から翌朝5時まで外出禁止令が出ていることも書かれています。
レベル4の「ただし書き」
2026年1月19日付の危険情報のレベル4には、ただし書きが付いています。ウクライナの復旧・復興に寄与する企業・団体の取組などとして、真にやむを得ない事情でキーウ市とその周辺、リヴィウ州に渡航する必要がある場合は、組織としての安全対策を準備したうえで、渡航の2週間前までに外務省の窓口に相談する、というものです。渡航計画に求められる条件は、キーウの日本大使館は、いまパスポートを扱っていないの記事で紹介しています。これは組織として安全対策をとることが前提の手続きで、個人の旅行に向けたものではありません。
周辺の国の危険情報
ウクライナと国境を接する国の危険情報を並べると、同じレベルの数字でも、地域の区切り方とただし書きが国ごとに違うことが分かります。
| 国 | 危険情報(更新日) |
|---|---|
| ポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア | 危険情報は出ていない |
| モルドバ | トランスニストリア地域:レベル3、それ以外の全土:レベル1(2023年8月29日) |
| ベラルーシ | ウクライナとの国境周辺地域:レベル4、それ以外の全土:レベル3(2024年12月12日) |
| ロシア | ウクライナとの国境周辺地域:レベル4、それ以外の地域(モスクワ市を含む):レベル3(2025年9月12日) |
ロシアのレベル3のただし書きは、2025年9月12日の更新で改められ、真にやむを得ない事情がある場合は、ウクライナに隣接する5州と北カフカス地域を除いて渡航・滞在を「妨げません」とされました。その場合も、特別な注意を払い、現地の大使館・総領事館と密接に連絡を取るよう求めています。ベラルーシについて外務省は、日本がベラルーシに対して、ロシアによるウクライナ侵略に関与したとして制裁を科しており、日本人であることを理由に危険が生じる可能性が懸念される、と書いています。モルドバのトランスニストリア地域は、モルドバ政府の施政権が及んでおらず、事件や事故に巻き込まれても十分な救済措置をとれない、というのがレベル3の理由です。
地図の色だけを見ると同じに見える地域でも、理由と条件は違います。これも、本文を読む必要がある理由の一つです。
危険情報は、日本人に向けた情報
外務省は、危険情報を「全ての在留邦人及び邦人渡航者を対象として」出していると書いています。日本国籍の人が渡航や滞在を判断するための目安であって、ほかの国の人の出入国を決めるものではありません。ウクライナの国籍を持つ人がウクライナに出入りするときの条件は、ウクライナ側の法令、たとえば戒厳令のもとでの出国の制限などによって決まります。これについてはウクライナの戒厳令で止まっていること、止められないことの記事にまとめています。
最新の危険情報は、外務省の海外安全ホームページで国の名前から調べられます。外務省は「たびレジ」という無料の海外安全情報の配信サービスも運営しており、渡航の予定がない人でも登録すれば、外務省からの最新の安全情報を日本語で受け取れます。危険情報は情勢に応じて改訂されるため、この記事のレベルや日付も、読む時点では変わっている可能性があります。
出典・参考資料
- 「危険情報」とは?(4段階の説明、発出の目安、統計的比較ではないこと、個人渡航者を想定していること、旅行会社の企画旅行との関係、「重要なのは本文」)
発行:外務省 海外安全ホームページ 確認日:2026-09-24 - 海外安全情報(法的な強制力をもって渡航を禁止・退避を命令するものではないこと)
発行:外務省 海外安全ホームページ 確認日:2026-09-24 - 海外安全情報の活用術(スポット情報・広域情報の説明)
発行:外務省 海外安全ホームページ 確認日:2026-09-24 - 「感染症危険情報」とは?
発行:外務省 海外安全ホームページ 確認日:2026-09-24 - ウクライナの危険情報【危険レベル継続】(内容の更新)(2026年1月19日)
発行:外務省 海外安全ホームページ 確認日:2026-09-24 - ウクライナ 危険・スポット・広域情報(感染症危険情報が出ていないこと)
発行:外務省 海外安全ホームページ 確認日:2026-09-24 - 海外安全情報の検索 02月の渡航関連情報(2022年2月11日 ウクライナ全土レベル4引き上げ、理由)
発行:外務省 海外安全ホームページ 確認日:2026-09-24 - 海外安全情報の検索 01月の渡航関連情報(2022年1月24日 全土レベル3引き上げ、クリミア・セヴァストポリ・ドネツィク州・ルハンシク州のレベル3継続)
発行:外務省 海外安全ホームページ 確認日:2026-09-24 - ロシア 危険・スポット・広域情報(2025年9月12日の危険情報)
発行:外務省 海外安全ホームページ 確認日:2026-09-24 - ベラルーシ 危険・スポット・広域情報(2024年12月12日の危険情報)
発行:外務省 海外安全ホームページ 確認日:2026-09-24 - モルドバ 危険・スポット・広域情報(2023年8月29日の危険情報)
発行:外務省 海外安全ホームページ 確認日:2026-09-24 - ポーランド 危険・スポット・広域情報(危険情報なし)
発行:外務省 海外安全ホームページ 確認日:2026-09-24 - スロバキア 危険・スポット・広域情報(危険情報なし)
発行:外務省 海外安全ホームページ 確認日:2026-09-24 - ハンガリー 危険・スポット・広域情報(危険情報なし)
発行:外務省 海外安全ホームページ 確認日:2026-09-24 - ルーマニア 危険・スポット・広域情報(危険情報なし)
発行:外務省 海外安全ホームページ 確認日:2026-09-24 - たびレジ(外務省 海外安全情報配信サービス)
発行:外務省 確認日:2026-09-24
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