ベクレル、シーベルト、毎時と年間。原発のニュースに出てくる単位
ザポリッジャ原発について、IAEAは「放射線の値は通常どおり」とたびたび発表しています。ベクレル・グレイ・シーベルトの違い、「毎時」と「年間」の数字の結び方、ウクライナの法律に残るキュリーやベルという古い単位、そしてIAEAの発表が何を伝え、誰から聞いた情報なのかを見分ける手がかりをまとめます。
オリュカのひとこと
ベクレルとシーベルトの数字は、そのまま比べられるのでしょうか。「出す側」と「受ける側」の違いを最初の表で確かめましょう。
「発電所の放射線の値は通常どおり」。ロシアの管理下にあるザポリッジャ原子力発電所について、国際原子力機関(IAEA)はこうした一文をたびたび発表しています。たとえば2026年8月29日の発表は、無人機の攻撃が3件あったと伝えたあとで「Radiation levels at the site remain normal」と書きました。この一文には数字も単位もありません。数字が出てくるニュースを読むときに、何を見分ければよいかをまとめます。
この記事は放射線の値が健康にとってどういう意味を持つかは判断しません。原子炉の数や占拠の経緯はウクライナの原子炉は15基、うち6基は占拠された原発にあるで扱っています。
ベクレル、グレイ、シーベルト
環境省の『放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料』(令和4年度版)は、放射線の単位を「出す側」と「受ける側」に分けて説明しています。
| 単位 | どちら側か | 何を表すか |
|---|---|---|
| ベクレル(Bq) | 放射線を出す側 | 放射能の強さ。1ベクレルは1秒間に1個の原子核が変化する量。土や食品、水道水に含まれる放射性物質の量を表す |
| グレイ(Gy) | 受ける側 | 放射線が通った所で吸収されたエネルギーの量(吸収線量) |
| シーベルト(Sv) | 受ける側(人体) | 人が受ける被ばくの量。放射線の種類や臓器ごとの感受性の違いで重みをつけた線量(等価線量・実効線量) |
同じ資料によれば、シーベルトで表すと、体の外から受けた被ばくも、体の中に取り込んだ放射性物質による被ばくも、同じ物差しで比べたり足したりできます。ベクレルの数字とシーベルトの数字は、測っているものが違うので、そのまま比べることはできません。
オリュカのひとこと
毎時0.23マイクロシーベルトは、どんな計算から出てきた数字なのでしょう。仮定の置き方をこの節でたどれます。
「毎時」と「年間」
ニュースでよく出る「毎時0.1マイクロシーベルト」のような数字は、1時間あたりの線量率です。1マイクロシーベルトは1ミリシーベルトの1,000分の1、1ミリシーベルトは1シーベルトの1,000分の1です。一方、「年間1ミリシーベルト」のような数字は、1年間に受ける線量の合計です。
二つを結ぶ計算の例を、環境省の同じ資料が示しています。東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、自治体が除染する地域を指定する目安になった「毎時0.23マイクロシーベルト」は、事故による追加の被ばくが年間1ミリシーベルトになる値から出ています。屋外に1日8時間、放射線を0.4倍に減らす木造の家の中に16時間いると仮定すると、年間1ミリシーベルトは毎時0.19マイクロシーベルトにあたります。これに自然の放射線の毎時0.04マイクロシーベルトを足したのが0.23です。資料は、この計算は安全側に仮定した簡易な推計で、実際の被ばくはこれより低くなりうるとしています。
ここから分かるのは、同じ「毎時」の数字でも、自然の放射線を含んだ値なのか、事故などによる上乗せ分だけなのかで意味が変わることです。ニュースの数字がどちらなのかは、発表の文面で確かめる必要があります。
ウクライナの法律に残る古い単位
ウクライナの資料には、シーベルトやベクレルの前に使われていた単位が出てくることがあります。チョルノービリの事故の汚染地域を定めた1991年の法律(第791а-XII号)は、年間の被ばくを「1.0ミリシーベルト(0.1ベル)」のように、シーベルトと古い単位のベル(бер。英語のレム)を並べて書いています。この書き方から、1ミリシーベルトが0.1ベルにあたることが読み取れます。
同じ法律は、土の汚染の程度を「1平方キロメートルあたり15.0キュリー以上のセシウム」のように、キュリー(Кі)で表しています。キュリーは放射能の量を表す古い単位で、ベクレルで書かれた資料と数字を並べるときは、単位をそろえてから比べる必要があります。ウクライナ語の資料を読むときは、単位の記号を確かめてから数字を読んでください。
IAEAの発表は何を伝えているか
IAEAによれば、2026年9月の時点で、IAEAの職員はウクライナのすべての原子力発電所とチョルノービリの発電所に常駐しています。週ごとの発表の多くは、放射線の値そのものより、原子力の安全を支える条件を伝えています。外部の送電線がつながっているか、非常用のディーゼル発電機の燃料が何日分あるか、周りで戦闘の音や無人機が確認されたか、職員が圧力を受けずに働けているか、などです。
放射線については、IAEAは発電所から届く情報を伝える形をとっています。2026年5月22日の発表は、ザポリッジャ原発の敷地の内外にある複数の放射線の観測所のデータが毎日IAEAに送られていると書きました。ところが7月15日の発表では、IAEA本部で見られるデータにもとづくと、敷地の外にある観測所の3分の2を超える数がデータを送っていないようだとしています。発電所側は、停電や損傷で送れていない観測所があると説明し、いまの体制でも原則として監視の目的は果たせるが、余裕と予備は減っていると評価しました。IAEAは、緊急時の監視にどう影響するかを引き続き調べるとしています。
チョルノービリについても同じです。2026年5月7日に立入禁止区域で1,100ヘクタールの火災が起きたとき、IAEAは「発電所側は、火災の間もその後も異常な放射線の値は検出されなかったと確認した」と伝えました。「通常どおり」という一文は、誰かが測り、それをIAEAに伝えたという事実の報告です。
誰の発表かを分けて読む
ザポリッジャ原発は2022年3月からロシアの管理下にあります。IAEAの発表に出てくる「発電所(the plant)」や「発電所の代表者」は、この管理下の発電所側を指します。ウクライナ側では、原発を運営する国営企業エネルゴアトムや、国家原子力規制検査局(ДІЯРУ)が別に発表を出しています。IAEAは両方から情報を受けて、どこから聞いたかを書き分けています。
数字のあるニュースを読むときは、次の順で確かめると読み違いが減ります。
- 誰が測った数字か(発電所、規制機関、IAEAの職員、第三者の機関)
- どこで測ったか(敷地の中か外か、どの町か)
- 単位は何か(ベクレルか、シーベルトか、古い単位か)
- 「毎時」か「年間」か、自然の放射線を含むか
- いつの値か、ほかの日と比べて変化はあるか
ニュースの一般的な読み方はウクライナのニュースを読むとき、最初に確認する五つのことにまとめています。
出典と記事の記録
出典・参考資料
- 放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和4年度版)「ベクレルとシーベルト」
発行:環境省 確認日:2026-09-24 - 同「単位間の関係」ベクレル・グレイ・シーベルト、等価線量と実効線量
発行:環境省 確認日:2026-09-24 - 同「グレイからシーベルトへの換算」
発行:環境省 確認日:2026-09-24 - 同「事故後の追加被ばく線量(計算例)」毎時0.23マイクロシーベルトの由来、屋外8時間・屋内16時間・低減係数0.4
発行:環境省 確認日:2026-09-24 - 同「放射能の単位」相当の説明1ベクレルの定義
発行:環境省 確認日:2026-09-24 - Закон України від 27.02.1991 № 791а-XII第1条・第2条。мЗв と бер の併記、Кі/км²
発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24 - Update 351 – IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine2026年5月22日。観測所のデータの日々の送信
発行:国際原子力機関(IAEA) 確認日:2026-09-24 - Update 3582026年7月15日。敷地外の観測所の3分の2超がデータを送っていない
発行:国際原子力機関(IAEA) 確認日:2026-09-24 - Update 3642026年8月29日。無人機の攻撃3件と「Radiation levels at the site remain normal」
発行:国際原子力機関(IAEA) 確認日:2026-09-24 - Update 3502026年5月14日。チョルノービリの火災と放射線の値
発行:国際原子力機関(IAEA) 確認日:2026-09-24 - Update 3672026年9月17日。すべての原子力発電所への職員の常駐
発行:国際原子力機関(IAEA) 確認日:2026-09-24
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