空襲警報のサイレンは3〜5分、キーウでは黄と赤の2段階に
ウクライナで危険を知らせるとき最初に鳴るのは「Увага всім」という3〜5分の警告音で、法令が定めています。2022年3月には警報アプリが1日で作られ、2026年9月からキーウでは警報が黄と赤に分かれました。避難所は法律上五つの種類があり、平時と戦時で扱いが変わります。
ウクライナのニュースでは「〇〇州に空襲警報」という一文がたびたび出てきます。そのとき現地では、何が鳴り、誰がどこへ移るのか。警報の出し方と避難所の種類は、ウクライナの法令と市の公式の案内に書かれています。この記事は、それらを2026年9月23日に確認した内容です。
先に一つ断っておきます。これは仕組みの説明で、身の守り方の指示ではありません。ウクライナにいる人は、その地域の行政と市の公式の案内に従ってください。日本の外務省は、2026年1月19日付の危険情報で、ウクライナ全土にレベル4(退避してください。渡航は止めてください。)を継続しています。
最初に鳴るのは「Увага всім」という警告音
住民に危険を知らせる手順は、民間防護法典(Кодекс цивільного захисту України)第30条と、それを受けた閣僚会議決定2017年第733号の「警報の組織に関する規程」が定めています。この規程は2026年9月3日の決定第1089号まで、8回改正されています。
規程の第19項によれば、危険を知らせる情報を流す前に、まず注意を引くための警告音「Увага всім(全員に注意)」を流します。電動サイレンか、街頭のスピーカーや放送で録音を流す形です。長さは3〜5分。自動警報システムの範囲では、事態が起きてから、または当直部署が民間防護の管理機関から指示を受けてから5分以内に住民に届けることになっています。
警告音のあとに、テレビ・ラジオ、インターネット、携帯電話会社を通じて、何が起きていて、どう身を守るかという内容が伝えられます。規程は、音声には手話か字幕を、映像には音声解説を付けるとしています。携帯電話会社の経路には、特定の基地局の範囲にいる端末の画面へ一斉に表示する仕組み(сервіс широкомовного передавання повідомлень)も含まれます(第3項・第18項)。
スマートフォンに届く通知
「空襲警報」にあたるウクライナ語は「Повітряна тривога」です。同じ名前のアプリがあります。
デジタル変革省の2022年3月1日の発表によれば、アプリ「Повітряна тривога」は、IT企業stfalcon.comの発案で、Ajax Systems社が同省の支援を受けて出したものです。緊急時の条件のもと1日で作られた、と同省は書いています。
同じ発表によるアプリの説明は次のとおりです。
- 利用者が選んだ州(область)で警報が始まったときと終わったときに通知する
- 登録は不要で、個人データも位置情報も集めない
- 空襲だけでなく、化学・技術災害などの警報も、端末がマナーモードでも大きな音で知らせる
- 警報の情報は各州の行政から直接受け取る
- 通知は街頭のサイレンと同じ内容を伝えるもので、サイレンが聞こえにくい新しい住宅地や小さな町・村での補助になる
同省は同時に、このアプリは「道具の一つ」であり、ほかの警報にも注意するよう書いています。公開の時点で選べた州は12州でした。
キーウでは2026年9月から「黄」と「赤」に
キーウ市(キーウ市国家行政府)は2026年9月6日、政府の決定により、同日6時から市内で警報を種類別に出す方式を始めたと発表しました。流れる知らせは次のとおりです。
| レベル | 知らせの文言(ウクライナ語) | 意味 |
|---|---|---|
| 黄 | Дронова небезпека | ドローンによる危険 |
| 赤 | Масована дронова загроза | ドローンの大規模な攻撃の脅威 |
| 赤 | Ракетна загроза | ミサイルの脅威 |
| 赤 | Ракетно-дронова загроза | ミサイルとドローンの脅威 |
| — | Відбій | 解除(上の脅威がいずれも確認されていない) |
発表によれば、新しい知らせは、その時点の脅威の種類と水準を示し、前の知らせを置き換えます。種類が変わるときに、間に「解除」は出ません。たとえば「ドローンによる危険」のあとに「ミサイルの脅威」が来たら、脅威がミサイルに変わったという意味です。
この方式は、9月6日の時点でペチェルシク区(Печерський)を除く全区で導入されました。ホロシーイウ区(Голосіївський)とスヴャトシン区(Святошинський)では一部の地域だけです。種類を分けられない地域では、どんな脅威でも従来どおりのサイレンが鳴り、解除の音は鳴らない、と市は説明しています。
9月8日の市の発表によれば、9月7日の時点で市内にはデジタル方式の警報の設置点が426か所、アナログ方式が146か所あり、年末までにデジタル方式を50か所増やし、全体の更新は2027年に終える予定です。市の公式アプリ「Київ Цифровий」でも、赤と黄の色で通知が届きます。
避難所は五つに分けられている
避難の先についても、民間防護法典が定めています。第32条は、2023年11月8日の法律第3441-IX号で全面的に書き改められ、2026年2月10日の法律第4778-IX号でも一部が改正されました。定義を並べると次のようになります。
| 種類(ウクライナ語) | 法典の定義の要点 |
|---|---|
| シェルター(сховище) | 気密の構造物。48時間以上とどまれ、大量破壊兵器や通常兵器の影響を防ぐか減らす |
| 放射線防護用の避難所(протирадіаційне укриття) | 気密ではない構造物。モジュール式のものを含む。48時間以上とどまれ、放射線や通常兵器の間接的な影響を減らす |
| 二重用途の建物(споруда подвійного призначення) | ふだんは本来の用途に使い、危険なときに一時的に人を受け入れられるよう設計・建設・改修された建物や、その一部 |
| 移動式の一次避難所(первинне (мобільне) укриття) | ブロック・モジュール式を含む製品。バス停や公園など屋外で、4時間までの短時間の保護に使う |
| 最も簡単な避難所(найпростіше укриття) | 地下室・半地下などの地下空間。48時間以上とどまれ、通常兵器の間接的な影響を減らす。特別期間に、ほかの避難所が一時的に足りない場合に限って使う |
平時と戦時で、避難所の扱いが変わる
同じ第32条は、平時と非常時で避難所の使い方を分けています。
平時には、避難所は本来の目的を保ったまま、商業・文化・生活の用途に貸し出すことができます(第13項)。ただし、管理拠点が置かれたものや重要インフラの従業員用のものなど、常に使える状態にしておくべき避難所は除かれます。
これが、民間防護の体制が警戒態勢に移ったとき、緊急事態が起きたとき、非常事態が宣言されたとき、そして「特別期間(особливий період)」に入ると変わります。避難所は所有者を問わず、その体制に入ってから24時間以内に使える状態にしなければならず、貸し出しなどの利用も24時間以内に止めます。使える状態にした避難所には、住民が24時間、妨げなく入れるようにしなければなりません(第16項)。さらに戒厳令の期間中は、軍政府(військові адміністрації)が避難所の使い方の手順を定めることになっています(第17項)。
地下鉄の駅
キーウの地下鉄は、市が避難所として使っている場所の一つです。キーウ地下鉄(公営企業)が2026年7月30日に市の公式サイトで出した案内によれば、ロシアによる全面侵攻が始まって以降、地下の46駅は旅客の輸送と、警報中の24時間の避難所という二つの役目を持っています。
同じ案内による運用は次のとおりです。
- 夜、列車の運行が終わったあとに警報が出たときは、ふだん使っていない出入口も含めて、地下駅のすべての出入口を開ける
- 警報の前から駅にとどまるつもりなら、駅が閉まる前に入り、警察官と地下鉄の当直職員に伝えて、ホームにいる
- 駅が閉まったあと、警報の前に着いた場合は、入口に掲示された電話番号か呼び出しボタンで警察か地下鉄の職員に連絡する
- 昼間に警報が出たときは、地下駅は輸送と避難所を兼ね、列車は地下区間で運行を続け、地上区間は解除まで止める
最後の点は、9月から変わりつつあります。市の9月8日の発表によれば、9月10日から、緑の線(「зелена」лінія)の地上区間でも、黄レベルの間は列車を走らせる予定です。一方、赤の線(「червона」лінія)は、どの水準のときもアカデムミステチコ駅(Академмістечко)からアルセナーリナ駅(Арсенальна)までの地下区間だけを走る、と同じ発表は書いています。
日本からニュースを読むときに
「空襲警報が出た」という報道を読むときは、どの州・どの市に出た警報なのかを見てください。何の脅威だったのかは、キーウのように知らせが種類別になった地域と、そうでない地域とで伝わり方が違います。報道の日付と地域を確かめることは、ほかのニュースと同じです(ウクライナのニュースを読むとき、最初に確認する五つのこと)。
2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの全面侵攻以降の経過は、ウクライナの独立とロシアによる侵略の年表 1991〜2026年にまとめています。
出典・参考資料
- Кодекс цивільного захисту України(第30条の警報の手段、第32条の避難所の種類・平時の貸し出し・24時間以内の準備と常時の立ち入り・戒厳令下の軍政府の権限。2026年2月10日の法律第4778-IX号による改正を含む現行テキスト)
発行:Верховна Рада України(ウクライナ最高会議)法令データベース 確認日:2026-09-23 - Постанова КМУ від 27.09.2017 № 733「Про затвердження Положення про організацію оповіщення про загрозу виникнення або виникнення надзвичайних ситуацій та організації зв’язку у сфері цивільного захисту」(第3項・第18項・第19項:警告音「Увага всім」、3〜5分、5分以内、携帯電話の一斉配信。2026年9月3日の決定第1089号までの改正を反映した2026年9月8日版)
発行:Верховна Рада України(ウクライナ最高会議)法令データベース 確認日:2026-09-23 - За підтримки Мінцифри запускають застосунок «Повітряна тривога» для оперативної реакції на початок і закінчення тривог(2022年3月1日。開発の経緯、機能、情報源、公開時の12州)
発行:Міністерство цифрової трансформації України(デジタル変革省) 確認日:2026-09-23 - Із 6:00 6 вересня 2026 року, за рішенням Уряду, в Києві запроваджено диференційоване оповіщення про повітряні загрози(2026年9月6日。知らせの種類、解除の扱い、導入された区)
発行:Київська міська державна адміністрація(キーウ市国家行政府) 確認日:2026-09-23 - Жовтий і червоний рівні загрози: що зміниться у столиці з 10 вересня(2026年9月8日。地下鉄の緑の線・赤の線、警報設備426か所・146か所、2027年の完了予定、Київ Цифровийの通知)
発行:Київська міська державна адміністрація(キーウ市国家行政府) 確認日:2026-09-23 - «Київський метрополітен» нагадав алгоритм роботи станцій під час повітряної тривоги(2026年7月30日。地下46駅の二つの役目と、警報時の出入口・滞在の手順)
発行:Київська міська державна адміністрація(キーウ市国家行政府) 確認日:2026-09-23 - ウクライナの危険情報(2026年1月19日付。全土レベル4の継続)
発行:外務省 海外安全ホームページ 確認日:2026-09-23
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